今年は投稿遅くならないように頑張りたいと思います
午後十一時頃。旧校舎のオカルト研究部部室に集合していた。事前のミーティングを兼ねて色々話す、というのが目的だが。
現状というのは思ったよりも深刻で、ライザー単騎だとしても俺抜きなら全滅もあり得ると言った状態。……ま、一週間程度で力関係が変わるわけはないが。
「で、結局どうする。このまま俺が干渉しないで戦ったら消耗戦で負けると思うが」
「……そうね。恐らくはそうなるでしょう」
「予想はできてたってとこか。性格とかはともかくあの再生力は普通に厄介だし」
まあある程度は抵抗できるように成長したのはすごいと思うが。
「……私でも、無理ですか」
「無理。言ったろ、消耗戦で負けるって。白音が仙術で戦ったとしてもそれが解除されたらその時点で丸焦げ。なんならその前にも火傷多数でリタイアが目に見えてる」
「……そう、ですか」
「あいつの家系の能力がやばいってだけで白音は強いから安心しろよ」
そう言いながら頭を撫でてみる。
「……でも、今活躍できなければ」
「意味はあるっての。失敗を経験して成長するもんだぞ」
俺も失敗して死にかけたこといっぱいあるし。
「じゃあ、無策で戦うのかしら」
「いんや。ライザーは俺が倒すってことでいいんじゃないか、今のとこは。俺とライザー戦ってる時は近くに来るなってことくらいで」
流れ弾でリタイアとかシャレにならんし。
「でもそれじゃあ成長に繋がらないから、基本的に眷属同士の戦いには手を出さないことにする。攻撃を向けられたら別だけど」
「一誠君はどうするんだい?」
「白音につく。大丈夫だと思うが、仙術のコントロールが乱れた時に対応できるようにな」
「となると、僕と朱乃さんは単独行動になるわけだね」
「そうなるな。あと、聞かれても能力名とか能力を教えるなよ。致命的な問題になる可能性が高い」
まあ、有名になれば全員把握されそうだけど、今だけのアドバンテージを捨てるのは愚行だ。
「朱乃先輩は……どうするか。リーアと協力して戦況の把握と、やばそうになったらそこに向かうなり迎撃なりするってとこだろ」
「……そうなりますわよね」
「クイーンは基本的にキングの右腕だからな。当たり前のように戦場に出ていって搦手でやられるなんて一番やってはいけないことだ。最小限のリスクで最大限のリターンを考えるのが基本」
まあ前線に出て行って殴り倒すキングなら知ってるけど。あれは例外中の例外だし。
「リーアはとりあえずここにいろ。ってか俺がやられるってことがない限り動くな」
「随分念入りに言うのね」
「当たり前だろ。リーアの性格なんて俺が一番把握してるっての。どうせライザーと一騎打ち……なんて考えてるんだろうけど、そんなことした時点で負けが確定するからな」
せいぜい一回二回倒せても物量でやられるし。なんなら本気出せば瞬殺だろうし。
「キングってのは要だ。一番やられちゃ駄目な役割で、常に冷静にならなきゃダメだぞ。戦場には姿を見せずに眷属を最適に動かすのが仕事」
「……それは、勝ったと言えるのかしら。イッセーにおんぶにだっこ状態で」
「そんなこと言い出したら大体のキングは眷属を動かして勝ってるっての。役割が違うの。戦うのは眷属の役目で、動かすのはキング。それを履き違えた時点で戦況は崩壊する」
プライドを持つことは大切だけど、優先させるタイミングを間違えると痛手を負うからな。
「眷属に任せてどーんと胸張って待ってりゃいいんだよ。あとはこっちの仕事だ」
そう言って笑顔を見せると、リーアは複雑そうな表情を見せた。
「あ、そういや報酬どうしよ」
「いきなりがめつい話になったわね」
「サーゼクスに言ったのはいいけど何も思いつかないんだよ。金を要求なんてしたくないし、飯とかにも困ってる訳でもないし。かといって下手なこと言ったら怒られそうだし」
「下手なことって?」
「そうだなぁ……リーアとデートとか?」
ふと、部室に戦慄が走ったような気がした。空気に亀裂が入ったような緊張感。
「なぜ、それで怒られると思ったのかしら?」
「サーゼクスにそんなこと言ってみろよ。滅びの魔力で町ごと吹っ飛ばされるぞ」
「まぁ……それは言えてるけれど」
あのシスコン、リーアの事になったら何しでかすかわからん。
「……先輩は、部長とデートしたいんですか?」
「正確には遊びに行きたいって感じだな。合宿にも来れてなかったし。二人で遊びに行くのもいいかなって。ま、二人きりなわけだしデートって事になるだろ」
「そ、そうね。多少イチャついても文句を言われる筋合いはないわよね。イッセーの報酬なのだから」
「……口実ができたみたいです」
まあそれを言われると痛いが。
「まあ無理だったら、少し恥ずかしいけど膝枕……とか?」
「あらあら、膝枕で喜ぶのですか?それでは、私がしてあげましょうか?」
何言ってるの、朱乃先輩。
「嫌じゃないけど遠慮しておくよ。首を縦に振ったら殴られそうだし」
「あら、残念」
「ちょ、朱乃!何を言っているの」
「あら、リアス。ちょっとからかっただけよ」
朱乃先輩はどこまで本気で言ってるか分からない。
「そろそろ着替えてくるか」
「あら、制服じゃないの?」
「本気でやるからな。前に作ったのを着てくる」
そう言って部室から出る。特に着替えに困る訳でもないから数分程度で戻ってきたが。
「よう、待たせたな」
白いワイシャツと黒いジーンズに身を包んで部室に入る。まあ、ちょっと特殊なものだけど。
「それは、イッセーの趣味かしら」
「半分な。この服は俺の魔力を糸にして作られてるからかなり頑丈だぞ。極論いえば超至近距離でサーゼクスが本気で魔力を放っても壊せない」
「漫画にでもでてきそうなものね」
「まあ、服の耐久度が高いだけで単純な打撃の振動とかまでは防げないけどな。攻撃を受けて服が破けるのが嫌だってだけ」
「そういう所を気にするのね」
「後、誰か服が破けた時にとりあえず着せるとかな。割とあるし」
なんか一部で反応あった気がするけど気にしないことにした。
「とりあえずそろそろ時間だろ。集中しようぜ」
「「「「はい(ええ)(そうね)」」」」
とりあえず、服の説明なんて今はこんもんでいいだろ。どうせゲーム中にバレるし。
ーー午前零時・結界内にて
午前零時に転移魔法陣にて特設の会場へと移動した。フィールドは駒王学園をまんまコピーしたもので、地の利はこっちにあると言える。
それで、現在はオカルト研究部部室を模した部屋にいる訳だが。あっちは本校舎の方にでもいるのか?
「まあ、これはこっちに対しての優遇ってやつだろうな」
「もし、このフィールドじゃなかった場合、どうするつもりだったんだい?一誠君」
「ここ以外の地点を吹っ飛ばしてライザー以外をリタイアさせてライザー自身をリンチする」
「一誠君を的に回さなくて良かったと思うよ」
苦笑する木場。
「まあ、そんなことはしねーよ。破壊した時点で評価さがる場合もあるし」
「そうだよね。さすがにそんなことはね」
「俺だって色々考えてるんだよ。じゃあ、どこから攻め落とそうか」
旧校舎と本校者は正反対の場所に建っており、その中心には体育館が存在している。そして、その周辺には諸々の施設……校庭やらプールやらといった基本的なものらテニスコートとか、果てには乗馬する所もある。なんでもありではある。
「無難に考えるなら体育館を取った方がいいって考えるよな」
「そうよね。そこをとってしまえば戦略に幅が広がるし」
「だから、そこを捨て石にする可能性が高い。あいつは作戦を遂行させるためには躊躇しないで眷属を犠牲にさせるからな。兵士を三人か四人……それか他のを一人くらい置いて時間稼ぎして遠距離攻撃でぶっ飛ばす、ってとこだろ」
「随分とライザーの性格に詳しいのね」
「前にちょっとな。……ま、いいか。遊んでこようぜ。な、白音」
そう言いながら、白音の手を引いて部室を出た。なにやらリーアは複雑そうな顔をしていたが気にしないことにした。
ーー体育館
数分後、体育館に到着する頃には、中に四人の女性の姿があった。たしか、ライザーの眷属で兵士の子三人と戦車の子一人だったっけか。
ちっこい……もといロリ体型でブルマを着ている二人がいるが、たしか双子で兵士だっけ。チャイナ服を着ている子がたしか戦車。それで、ライザーと俺が軽く話してた時に差し向けられた子が兵士……であってたはずだ。
「……先輩に手篭めにされていた子が」
「言い方。手篭めじゃなくて無傷で止めたが正解」
「……まさか、私のことが」
「出会ってすぐに惚れるほどメルヘンチックではない」
いや、初めて会った訳じゃないけど惚れる要因がほぼないし。ミーティングのときを含めれば三度目だし、会うの。
「ミラ、初めて会った時から赤龍帝の事色々言ってたからね。再会した時もーー」
「イル、お願いだから黙って」
どうやら修羅場からは逃げられないようです。
「というか、覚えてたんだな。ライザーは俺の事覚えてなかったのに」
「私達は助けてもらったからねぇ。あんな事されて忘れる方がおかしいよ」
「あはは、それもそうか」
「……先輩、あんな事とは?」
「暴走した魔獣から助けたことがあったんだよ。その時はこいつら悪魔になりたてで戦闘能力皆無だったし」
「そうそう。でも、手篭めにされていた子は若干居たけどね」
「……先輩?」
もしかして、今日が命日になりますか。
「ま、流石に赤龍帝なら女の一人でもできてるとは思ったけどね。ミラも諦めが悪いし」
「ちょ、ネル!!!」
「残念ながら今はフリーだよ。誰とも付き合ってない」
「え、本当に?」
「うん、本当」
「……主と魔王様にプロポーズしたとか色々問題になってましたけど」
平然と爆弾落とすのやめて欲しい。
「プ、プロポーズ……!?」
「俺からの発言は控えとくよ」
もうそろそろ面倒だ。早く終わらせて眠りたい。
「まあ、これと言って時間がかかる訳でもないけど」
そう言い、イルとネルの肩に触れる。
『
脳内で機械的な音声が響けば、二人はまるで力が抜けたように床にへたり込む。
「なに、これぇ……?」
「ちから、がぁ……」
何やら色っぽいというか可愛らしい声を出してるが、特に反応しない事にしよう。あとが怖い。
「神器の応用だよ。相手のキャパオーバーになるくらい力を譲渡して動けなくしてる。外傷はないから安心しろよ」
「……ネタばらしするんですね。私も初めて見ましたが」
「見せたことないからな。それに、知ってても対処出来ないよ。一部の神器持ちか特殊な家系のやつくらいにしか」
例えば今レーティングゲームランキング1位の奴とかな。
「このっ……!」
直ぐに異変に気づいたのか、直線的に突っ込んでくるミラ。前とは違い、武器を持たずに直線的な打撃を繰り出そうとする。
「……ったく、学習しろよ」
放たれた拳は俺の体に到着することは無かった。というのも、当たる三十センチ前くらいの場所で停止したのだ。
「なんですかっ、これっ」
ただひたすらに連打を繰り出されるも、その全てが同じくらいの場所で停止して一撃も食らわせることが出来ない状態。
「アキレスと亀って知ってるか。ま、簡単に説明するなら俺に近づけば近づくほど遅くなるって事で、要するに俺には攻撃は当たらない」
「……っ!?」
「まあ、あくまで理論上はな。世界トップクラスなら貫通するよ。例えば魔王とか」
サーゼクスとかその空間ごと削り取るからなぁ。オーフィスに至っては無視して攻撃できるし。
「逆に、俺からは好きに触ることが出来る」
そう言いながら、ミラの右ストレートが止まったタイミングで優しく手を取り、軽く引っ張る。
「きゃっ……!」
可愛らしい悲鳴とともに胸に飛び込んでくるミラ。まあ怪我のないように優しく抱きとめたが。
「えっ、ええっ!?な、なんでっ」
「なんでって、怪我するとダメだし」
「これはレーティングゲームっ。怪我をするのは当たり前じゃ」
「いや、年頃の女の子の体に傷をつけるのは気が引けるし」
『
先程と同じように力を譲渡する。抱きしめてるせいで床に倒れ込むということは無かったけど、体を預けるような形になって。
「……先輩。女の子と抱き合いたいからそんな事をしてるんですか」
「いや、抱きつかれるのはセラだけで十分なんだが」
そう言いながら、ミラを優しく床に寝かせた。
「そのまま襲われちゃう?」
何を言ってるんだブルマ娘。
「そういうのは大人……というか、もっといい女になってからな。子供相手に発情しな……げふっ」
何故か白音に仙術込の打撃を貰った。くっそ痛い。
「……私も、成長期なので」
なにやら張り合われてる様子で。
「……っ!」
奇襲をかけるように突っ込んでくるルークこと
「ふっ……!」
的確に急所のみを狙う鋭い連続攻撃。それら全てが並の下級悪魔なら一撃で昏倒させられる程の威力を保有している。
「中級悪魔くらいの実力は余裕であるな。躊躇せず急所を狙いに行く思い切りも買いだ」
その攻撃全てを紙一重で回避する。
「どうして……っ」
「急所だけを狙うから回避しやすいんだよ。それにワンパターン。強くなるいい素材を持ってるのに。勿体ない」
「……っ!」
攻撃のスピードが更に上がるも、攻撃パターンが変わらないせいで簡単に避けられてしまう。
「スピードもかなり有るし。積むべきは実戦経験か」
「どうしてっ!人間の時は……!」
「そりゃ人間相手なら多少はスピードとパワーは拮抗するが、悪魔や人外との戦闘は全く別だぞ。熊相手に生身の人間が戦いを挑むか?普通」
悪魔同士だとそれよりも酷い場合がある。龍王が転生してる場合もあるし。
「今回の場合、相手が人型なんだからフェイントを含めて翻弄しに行くのが正解。例えば……」
ただ、雪蘭の右のパンチに合わせてカウンターを放つ。無論、寸止めしてダメージは与えないけど。
「……っ!?」
「単調だからカウンターを取りやすい。……ま、そういうのは戦闘経験を積んで身につけるものだからな。経験が少なくてこのレベルならかなり凄い」
白音って化け物クラスの才能持ってるやつを知ってるから、比較するのは可哀想だと思う。
「取り敢えず今日はここまでな」
『
そう言って優しく肩に触れて例に漏れず無効化する。
「……なんで、その子には攻撃をさせたんですか?」
不思議そうにつぶやく白音。
「ま、ちょっとな。実力を知りたかったとこもあるし。ミラの場合は前の時点で何となくわかったし。イルとネルは武器の時点で論外だったし」
イルとネルはチェーンソーを使って攻撃するって聞いてたけどアニメじゃないんだし。使い勝手も悪いから武器のとこから矯正しなきゃならない。
「女の子を傷つけたくないって言うのは建前だったの?」
「好き好んで女を殴りたいと思ってる奴に見えるのかよ。……ま、いいや。ゲーム終わるまで話でもしててくれ」
半分呆れながらも白音を連れて体育館を出た。
「……なあ、白音。俺DVするやつに見えるか」
「……真面目に気にしてる先輩、面白いです」
面白がらないでくれ。
「……大丈夫ですよ。優しい自慢の先輩です」
そう言われるとかなり恥ずかしいところはある。
「……あ。照れてますね、先輩」
「うっさい。こっち見るな」
もうこの話題は気にしないことにした。