ハイスクールN×D Re:make   作:紺狐はボクっ娘信者

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24話

 集合時間は零時ジャスト。場所は駒王学園ってことになり、現在集合している状態だ。

 戦闘に参加するメンバーとしては俺、教会組、リアス眷属、そして千夜先輩の眷属というメンツ。

 まぁ、これが妥当だろう。俗に言う最高戦力ってやつだ。なんなら俺一人でどうとでも出来るから、ある程度の力量を持ってる奴を教育する方がいいって判断のところが大きい。

 学園には大規模な結界。それこそ下手なミサイル程度なら防げる程度の。まぁ、ないよりはマシ程度なんだが。

「で、どうするつもりなの?」

 はぁ、とため息を吐く遥。

「人工神器で呼び出す。そして俺が消す。以上」

「随分と簡単なチャートだこと」

「呆れるなよ。その方が確実なのはわかるだろ?」

「まぁ、そうなんだけどね。お兄ちゃん一人で戦わせておけばどうとでもなるし」

「だーから、露払いよろしくねって話だろ?憂姫や遥ならどうとでもなるだろ」

「ちょっと。私は?」

「こよみ?パンチで周り吹き飛ばすからダメ」

「ぶー、けち」

 そんなこと言っても治す手間を考えるなら壊さない方がいい。

「ま、最初は様子見だって。ってか、俺よりも戦いたいヤツがいるし」

 と、ある方向に視線を誘導すると、そこには殺意に塗れた木場の姿があった。

「ありがとう、一誠君。僕にこんな機会を与えてくれて」

「お前の為だけじゃねぇよ。ただ……決着つけろよ?」

「……うん。そうさせてもらうよ」

 ま、これで木場の方は大丈夫か。

 あとは、何事もなく終わらせるだけ。そう、それだけなんだ。

「じゃ、呼び出すか」

 そう言うと、アザゼルから渡された人工神器に魔力を流して起動させた。

 現れたのは長髪の男性。背に八枚もの翼を生やす堕天使。ただ……あんなに汚かったか?堕天使の翼って。アザゼルの方がまだ綺麗だった気はするが。

「なるほど。アザゼルが俺に何かをしていたな。無駄に転移させる方法を用意していたとは」

 ふてぶてしい態度に、少し困惑を覚えてしまう。なんだ、この余裕。

「随分と余裕だな。この戦力差でおかしくなったか?」

「間抜け。この状況を想定せずにこんな行動を起こすわけないだろう。まぁ、まずは小手調べだ」

 校庭全域に巨大な魔法陣が展開される。この形式は、確か堕天使が多用する転移用魔法陣。

 そこから現れたのは無数のケルベロス。ざっと見ただけで二十匹はいるが、まぁ倒したら追加されると見たほうがいいか。

 それに神父二人。ひとりが白髪頭で小太りな爺さん。もう一人が以前教会で戦った白髪の少年神父。まぁ面倒なメンツか。

「資料にあった通りか。バルパー・ガリレイ。そこの爺さんが聖剣計画の首謀者だ。それにまたあったな、少年神父」

「ひゃははははっ!合縁奇縁とは正にって奴ですかい!?」

 相変わらずうるさいヤツだ。

「知り合いか、フリード」

「知り合いも何も、こいつが山を吹き飛ばした張本人ざんすよ。貧乏くじにしちゃできがわるい」

「安心しろよ。俺はお前らには手を出さねーよ。お前らには」

 はぁ、とため息を吐く。もう全部が面倒くさくなってきた。

「そこの爺さんに用があるのは俺じゃないんだ。こっちの俺の親友の方でな」

 と、視線をやるとわなわなと震えている木場の姿があった。

「お前が……首謀者……」

「ん?どこかで見覚えがあると思っていたが、あの時の被験者の一人か。成程。あの時被験者が一人脱走していたと聞いていたが、まさか悪魔に堕ちていたとは」

「……御託はいい。何故あんなことをした。何故、僕たちを利用した」

「理由も知らずに復讐でも考えていたのか?バカバカしい。まぁ、今は気分がいい。特別に教えてやろう」

 そう言うと、バルパーは懐からひとつの塊を出した。蒼く透き通った美しい結晶。

「これは聖剣を扱う際に必要な因子だ。それを人工的に人間の体から抽出したもの。あの時作った出来損ないだ」

「……まさか、その為に人体実験を」

「まぁ、最後のひとつになってしまったがね。これを取り込むだけで聖剣……折れたもの程度なら扱えるようになる代物だ。教会の連中も技術だけは応用して摂取しているようだがね」

「本当かい?教会側の二人」

「製造方法までは知らないが、聖剣使いが祝福を受ける際に同様のものを身体に取り入れる。しかし、殺人等とだいそれた話は聞いたことがない」

「当たり前だ。奴らは祈りを捧げに来た人間から死なないように摂取し、結晶化させているに過ぎない。私の確立した技術を使ってね」

「なら、何故……僕たちを殺そうとした」

「モルモットは廃棄するものだ。それこそ異端に触れたのならばね」

「お前は……人の命をなんだと……」

「身寄りのない人間に人権など保証されると思うか?」

 まぁ、これがその計画の全てなのだろう。人権のないの判断した子供を利用した人体実験。その犠牲者が木場。それ以上でもそれ以下でもない。

「……酷い」

「よくある話だろう。そこの魔女。いかに偽善者ぶったとしても、人体実験の歴史は変わらない。それすら見ないふりをして生きているのがお前たちだろう」

「ま、よくある話だよな。天界側だけじゃなく悪魔側でも、堕天使陣営でも。少なからずそう言うことをしてきたって歴史はあるんだろ」

 あえて、空気を読まずに言葉を発する。周りのヤツらがどんな表情をしようとも関係ない。

「ただまぁ……今の人間社会の人権意識のせいで異端扱いされてるだけで、合法だった時代もあるんだろうさ」

「……」

「ま、それを差し引いた上であえて言うが……こんな言葉があるだろ。因果応報って。過去に他人にしてきだんだろ?なら、お前にとってのそれが今ってだけの話だ」

「そこの悪魔は擁護するのでは無いのか?」

「なわけないだろ。あくまでそういう歴史があったってだけで、俺の親友に酷い事をしたって事実は変わらない。それだけで万死に値するよ」

 はぁ……と頭を乱雑にかく。

「一々面倒なんだよ。誰が生み出した技術がとか、それを誰が利用しただとか。結局は最初に人を生み出したお前が諸悪の根源でしかないんだ。それなのに他のやつに同じく利用されたら御免こうむる?通んないだろ。いくらなんでもそんな話」

「イッセー君……」

「だから、お前は死ぬんだよ。お前が利用してきた連中に、惨たらしく……気持ちの捌け口として利用されてな」

 と、それだけ言ってバルパーの持っていた因子を奪い、木場に渡した。

「……僕達は主の為と祈りを捧げながら、どんな非道な実験にも耐えてきた。それを実験動物の廃棄?……僕はは今まで生きていいのか。仲間を犠牲にして生き延びたことを後悔して生きてきたのに」

「それはお前が勝手に考えたことだろう。因子があったところでどうとでもできまい。フリード。そこの悪魔ふたりを殺せ」

「だーからボクちゃんじゃどうにも……!?」

 ただ、濃密なまでの殺気を放った。魔力に乗せて、明確にお前を殺す光景をイメージさせるように。

「今の話聞いて俺だって相当頭にきてんだよ。少しでも動いてみろ。身体の半分が消し飛ぶと思え」

「ら、らじゃー……」

「……フリード!?何をしている。そんな戯言に耳を貸すな!」

「まだ状況がわかってないみたいだな。木場以外動くな。それを破った誰であろうと容赦せずに殺す」

 まぁ、これだけ脅しとけばバカでも動かないだろ。

「……僕と共に生きよう。全てから解放されて、ただ自由に」

 そう、木場が呟いたのと同時に因子が砕け散った。それは神器と溶け合い、融合し、一つの形となった。

「……至りましたね」

「至ったって、まさか……?」

禁手化(バランスブレイカー)。その名前の通り世界が許容した禁じ手です。お兄ちゃんが偶に纏っているロングコートもそれの一種です」

「えと、それは一体……?」

「神器の進化形態、とも呼べる状態だよ。所有者の意識が世界の流れに逆らうほど劇的な変化を起こした時に至ることが出来る能力。大体はものすごく強いよ」

 まぁ、例外もいるけどな。

「……双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)

 木場の手に握られていたのは異質な剣。黒い刀身に聖剣のオーラと魔剣のオーラが内包されたもの。今までの剣とは比べ物にならないほどに強そうだ。

「聖魔剣とでも名付けようか」

「うわ、初めて見たわ。そんなイレギュラー」

 絶対に出来ないと思ってたんだけど、まぁ成功例が目の前にいるから否定しようも無いか。

「じゃ、お疲れさん。来世じゃもっとまともに生きろよ?来世があるかどうかは知らないけど」

 木場は思うままにバルパーに剣を振り下ろした。ただ、明らかに……復讐じゃなく、目の前の巨悪を消滅させるって意志を感じた。ま、及第点ってところか。

「ま、これで終わりか」

 因縁に決着はついたっぽいし。一件落着ってやつか。

「あまり殺気を放たないで欲しいな、イッセー」

「そうだよー。こわかったよー」

「教会コンビは雰囲気壊すの大好きかっての。本気でやるわけないだろ。大切な幼馴染様にお嬢様なんだから」

「だからその呼び方はやめろと……っ」

「三文芝居にしてはまだ見られたな。最も、金を払うほどの価値もないが」

 うっわ、コカビエル。強キャラ感出してるけど最低な事口走ってるよ。まぁこの光景を作り出した俺も悪役か。悪魔だから上等ってところもあるけど。

「じゃ、憂姫。遥。露払い宜しく」

「えー……脅されて動けないよぅ」

「同じくだよ、お兄ちゃん」

「悪かったって。後でだいたいの言うこと聞いてやるから」

「「言質とったからね」」

 こんな時に息を合わせるのはやめて欲しい。何されるかわかったもんじゃない。

魔女の嘲笑(ライ・イズ・ペイン)

 憂姫の神器── 魔女の嘲笑(ライ・イズ・ペイン)。任意の対象に負荷を与えるという至ってシンプルな効果だ。ただ、憂姫の場合、負荷の概念を拡大解釈して、重力操作の段階まで昇華したものになっている。

 要するに、見たものをぺしゃんこにする能力。

「私もやろっか」

 対する遥は魔剣グラムを握っている。

 魔剣グラムは、要するに最強の魔剣。しかもドラゴンスレイヤーの効果付きの。まぁ、要するに超ドラゴン特攻の最強武器。

 見てるだけで悪寒がするレベルのオーラを放っている。絶対に敵に回したくない。

 その大きさは精々一メートル程度。黒い刀身の西洋剣。特に装飾は無いが、それ故に異質。もう見たくないもんあれ。

「「じゃ、消えてね」」

 二人の攻撃はほぼ同時だった。遥が剣を振り下ろしたのと同時にケルベロス全体を飲み込むほどのオーラの奔流が放出される。まぁその前に憂姫が視界に入れてぐしゃっと潰れたわけだけど。それをオーラで消し飛ばした感じだ。

 ……ってか、よく結界もったな。アイツら思ったより凄い。

「……」

 コカビエルもドン引きしてて面白い。

 まぁ、矢継ぎ早に次のケルベロス軍団も召喚される訳だが。これ以上は本当に結界が壊れるからもうあれか。別のやつに頼むか。

「……イッセーの周りはイレギュラーが多いのだね」

「アイツらが特別なだけ……とも言いきれないか。ゼノヴィア。イリナ。次頼んでいいか?」

「いーよっ。私もそろそろ本気見せたかったし」

「了解だ。私も体がなまりそうだったからね」

 と、ゼノヴィアはデュランダルを出現させた。イリナの方は……金色の剣。聖魔剣と同じサイズだけど、どこか異質な気がする。

「ふふん、エクスカリバー四本分を統合したさいきょー武器!」

「それ実質半分カリバーだろ。」

「三分の二カリバーだもん!」

「張り合うところはそこじゃないだろう」

 やっぱりイリナの手綱握ってるのこの子だよ。扱いになれてるもん。

「……こんな化け物相手にしてられねーっつの。ここはたいさ──」

「お前エクスカリバー持ってんだろ。置いてけよ」

 と、フリードに命令する。

「ははーっ!命だけはー!」

 謎の芝居口調で三本の聖剣を渡してきた。

「お前、実は結構余裕だろ」

「バレちった?だって勇者様が無益な殺生はしねーでしょ?」

 その呼び方はやめてほしい。

「イリナ。ちゃんとエクスカリバーにしてやるから待ってろよ」

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!』

『Transfer!』

 と、できるだけ力を上昇させて、それを神器で生み出した宝玉に譲渡する。

 それを基点としてイリナの持ってる聖剣に三本のエクスカリバーを合わせてーっと。

「よし、できた」

 出来上がったのは淡い緑の宝玉が装飾されたエクスカリバー。ちゃんと七本を完璧に統合済だ。

「イッセー。勝手にそんなことしていいのかい?」

「全盛期より強くチューニングしてるんだから大丈夫だろ。なんなら追加能力で所有者の身体強化くらいは使えるようにしたぞ。実質赤龍帝の聖剣(エクスカリバー・オーバーロード)ってとこか?」

「厨二病っぽい」

 アザゼルのが少しうつったんだよ、たぶん。

「使い勝手はいつもとおなじでいいから使ってみろよ」

 こくり、と頷いたのと同時に思い切り駆け出した。

 エクスカリバーの特性のひとつの、所有者の速度を上げる効果と、赤龍帝の身体能力強化を同時に使っているのか、相当早い。というかアレ人間のままで最上級悪魔クラスのスピードしてるぞ。

「くらえっ!」

 無造作に振り払った一撃。等身をムチのようにしならせながら、破壊力をあげる効果と身体能力強化を掛け合わせて一気に剣を凪ぐ。

 ただ一瞬。コンマ数秒にも満たない時間で全部消滅させちまった。

 ……あれ聖剣効果もあるけど本人のスペックと技術が高すぎてあのレベルになってるやつだ。人間社会レベルなら最強名乗ってもいいレベルだぞあれ。

「私も負けていられないな」

「いやもう敵居ないから。ってか、あの時見せた威力を放ったらダメ押しで結界壊れるぞ」

「むぅ……仕方ない」

 なんか犬みたいで可愛いな、ゼノヴィア。

「……」

 さっきより余計にドン引きしてるよあの人。もう下手したら帰りたくなってるレベルだよあれ。

「……聖魔剣か。随分と異質なものを生み出したな。それに全盛期クラスのエクスカリバー……ふふ、面白い」

 あ、キャラ取り繕ってる。もう手遅れだと思うけど。

「しかし面白いこともあるものだ。システムが機能していると言うのに、こんなものが出来上がるとはな」

「何が言いたい」

「神が死んでいるからイレギュラーが発生した、と言っている」

 急に何を口走ってるんだ、こいつは。神が死んでいる?いつ?そんな禁忌に近い話題をなぜ出した?

「聖書に記された神は既に死んでいる。世界を司るシステムも熾天使が運用しているから成り立っている。だからこそ、そんなイレギュラーが生まれると言っているんだ」

「……神が、死んでいる?」

「……まぁ、ありえなくはな……ッ!?」

 ぐしゃり、と耳障りな音が聞こえた。

 イリナとゼノヴィアの胸から剣が突き刺すような形で生えていた。明らかに異質な光景だった。短刀程度の刀身が胸から生えているのだから。

「……おい、なんだよこれ。アーシア!」

「……は、はいっ」

 少し気遅れしたのか、俺が叫んだの同時に二人に駆け寄って神器を行使し始めた。

 ただ、明らかに出力が弱い。さっきの話を聞いたからか?神器は心の状態に左右されるけど……しのごの言ってられないか。

「けほっ……無駄だ……これは教会の人間が禁忌を知った際に発動する術式……禁忌を隠すために……うぐっ……殺すための……」

「喋んな。少しでも体力を温存しろ」

 剣は数秒ほどで胸から抜け落ちたが、出血量が酷い。心臓を潰されてるのか?なんにせよ、このままじゃ死ぬ。

「……しってたよ、こうなるって……でも、最後に……いっせーくんを見られたから……しあわせ、かな……?」

「縁起でもないこと言うな。まだまだ楽しい事してないだろ。再会したばっかで遊びにも行けてないんだぞ。おい」

 冷静に喋ってるようで相当取り乱してる。何とかこいつらを助ける方法は……。ただ、それだけを。

「神が居なくなって俺の為に生きてくれよ。死なないでくれ。……頼むから」

「……はは、それは無理な……」

「……えへへ、そーゆーところ……だい、すき……」

 それだけを言い残して、二人は意識を手放した。

 絶対に死なせはしない。二人が助かる方法ってなると、フェニックスの涙か転生させるしかない。転生させた際の欠損の修復機能による蘇生くらいしか、助ける方法は無い。

 あぁ、くそ。嫌な予感が的中しちまった。てか、遠慮なしにコカビエルを殺してればこんなことにはならなかった。全部俺の失態だ。

「……一誠君?」

「頼む、千夜先輩。二人の体を持って結界の外に出てくれ。そしてできるだけ結界を強化してくれ」

「……何をするつもり?」

「コカビエルを殺すつもりだよ」

 血の気の引くようなほど感情の篭ってない声。それで、本気だとわかってくれたのか、二人の体を抱えて結界の外に逃げてくれた。他のみんなも同様にだ。

 良かった。これですきにやれる。

「こうなることを予想してたのか?」

「勿論。その術式の話も聞いていたからな」

 あぁ、そういう事か。

 これで全部全部、こいつの掌の上ってことね。

 これじゃまるで俺がピエロみたいだな、全く。

「……ま、それが最後の言葉でいいんだな。今際の際だぞ。このド外道」

 

 ただ、冷たく言い放った。

 

「お前だけは、絶対に許さない」

 

 ただ、明確な殺意を乗せて言葉を紡ぐ。

 

「我、目覚めるは双極の理をその身に宿し天龍なり」

《始まってしまうね》《ああ、始まってしまうの》

「夢幻を嗤い、無限を憂う」

《世界が否定するのは》《世界が肯定するのは》

「我、天を統べし覇者と成りて」

《いつだって愛だった》《いつだって力だった》

《何度でもお前達は滅びを選択するのだな》

「汝を紅蓮の煉獄と、白銀の極地へと誘おう」

 

『Juggernaut Over Drive!!!』

 

 四肢が黒く変色し、機械的な翼が生える。

 その四肢には強靭な鎧。その双眼には呪いを。

 その存在が肯定されてはならない。否定されてはならない。

 それが、この力の根源であり、起源。

 禁忌をその身に宿した者に対する、罰。

 

「なんだ、その姿は」

 

 明らかに動揺しているコカビエルを他所に、おもむろに手を虚空にかざした。

 

『Half Dimension!』

 

 その力は空間そのものを半減させる禁忌。

 空間操作なんてものは生物に許された範疇を超えているからな。

 この能力を応用して、空間のスピードを限りなくゼロにちかづけて攻撃を防ぐことも出来る。

 今回の場合は、コカビエルの周囲の空間を極限までスローにして動きを止めるだけだが。

 

「時間が無いんだ。さっさと終わらせるぞ」

 

 カシャカシャと背中の翼が変形し、その一部が砲台のように変化した。まぁ、これで末路はわかったろ。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!』

『Over Dragonic Impact!!!』

 

 その砲身から放たれるは無慈悲の咆哮。圧倒的なまでの魔力の奔流はコカビエルを飲み込み、結界すら余裕で貫いた後に空中で弾けた。

 まぁ、許してもらえる範疇だろ。などと思いつつ力を霧散させた。

 

「やりすぎよ、全く」

 どうやら許して貰えないようで。結界ないに再び入ってきた千夜先輩に小突かれた。

「お兄ちゃん、やりすぎ。私の結界を壊すとか本気で撃ったでしょ」

「本気でキレて、ちょっとな」

「全く……」

 後でアイスで機嫌とろ。

「それで、この二人はどうするのよ」

「あぁ、そうだな。今からが大変なんだよ……」

 と、懐からスマートフォンを取りだしてとある相手に電話をかけた。それこそみんなご存知サーゼクスさんだ。

『……どうしたんだい?こんな時間に』

「率直に言う。駒をよこせ。なんならさっさと最上級位にまで上げろ」

『随分と無茶を……』

「切羽詰まってんだよ。時間もあまりない」

『君にコマを与えるとろくでもないことにつかわれそうで嫌なんだけどね』

「御託はいいからさっさと寄越せ。極論地位はどうでもいいけどな」

『はいはい。いまからアジュカに連絡しておくよ。君がそんなに慌てるなんて珍しいこともあるものだね。今はそれで勘弁することにするよ』

 ぷつ、と電話が切れたのと同時に目の前に赤い駒が転移された。チェスをモチーフにした駒で、俗に言うイーヴィルピース。転生アイテムだ。

「……絶対に死なせるかよ」

 おもむろに二人の体に駒を近づけ、転生させた。イリナは騎士。ゼノヴィアは戦車に。

 一分程度で意識が戻り、何とか……本当になんとか、生き返らせることが出来た。

 これ後もう少し遅れてたら魂が離れて転生すらさせられない状況になってたからなぁ。良かった良かった。

「……ここは?」

「意識があるなら地獄だろうな。第二の人生おめでとう、とでも言うか?」

「君はよく軽口を叩く。概ね分かったよ。私……いや、私達は悪魔になったんだね」

「まぁ、俺のエゴでな。嫌だったか?」

「ふふ、嫌なら今すぐに自決しているさ。この手にはデュランダルがある事だしね。……先程の聖剣計画の話を聞いて教会のやり方に心底嫌気がさしたからね。それに今の仕打ち。到底看過できないさ」

「そうか。ま、結果オーライってやつか」

 絶対に死なせるか、とか色々小っ恥ずかしいセリフはいたから覚えてなさそうでよかった。

「んー……」

 どうやら、イリナも起きたようだ。

「おはよ、私の神様」

 どうやら覚えているようだ。

「イリナ。そういうのはここぞと言う時に囁いて逃げ道を無くすために使うんだ」

「余計な入れ知恵するんじゃねぇ……」

 二人とも無事に覚えていましたとさ。地獄かよ、ほんと。

「で?イリナは悪魔になってどうだよ。俺が転生させといて言うのもなんだけど」

「夜だし、前よりは身体能力は高い感じがするかな」

「いや、そうじゃなくて。恨み節とかないのか?勝手に転生させてー、とか」

「悪魔になったって聞いた時点で眷属になる気まんまんだったから」

 この子逞しすぎる。

「ま、これでなんとか……一件落着、かな」

「んなわけねぇだろ。このバカ」

 と、呆れ顔で転移してくる総督様。

「俺は捕獲しろって言ったよな?」

「イレギュラーくらいあるだろ」

「イレギュラーであんなもんぶっぱなされてたまるか。あれ神レベルでも直撃したら屠れるだろうが。……事後報告諸々してもらうからな。あと、やっぱりお前も巻き込ませてもらうわ」

「何の話だ?」

「三大勢力で同盟を組む。その柱になってもらう。だから眷属集めしとけよ?おい」

「は?何を急に」

「今回の一件は同盟を組むための言わば体裁ってやつだ。今後こんなヤバいやつが現れた時の対抗策をどうするかってな」

「それを飼育してたのはお前だろうが」

「飼育っていうな。あくまで俺の元同僚だぞ」

「で?コカビエルを例に出してってわけか。そんで?そんなことしたら堕天使サイドが不利になるだけだろ」

「あ?奥の手としてお前を懐柔すんだよ。それかオーフィスとか」

 こいつド外道すぎる。全部掌の上じゃねぇか。

「ま、その必要もなくなったがな。お前を中心として発足したら誰も逆らわないだろ」

「待て。俺はそんなこと了承してな──」

「最上級悪魔に無理やり昇進」

「……うっ」

「教会陣営の最強格二人の引き抜き。それにコカビエルの捕獲失敗。更に言うならこの後の事後処理」

「……あー、分かったよ。眷属集めりゃいいんだろ。もう目処はだいたいついてるよ」

 まぁ、数人トレード予定であとはスカウトだけどな。

「お兄ちゃん。私をトレードするの?」

「いや、してもアーシアだけだろ。お前ら全員抜けたら千夜先輩一人になるし」

「ぶー、わかったよ」

 まぁ、納得して貰えたようで何より。

 ……ま、面倒だけど平和のために頑張るか。……って、らしくないか。

「あ、ちなみに私は入れてもらうよ」

 と、遥さんが空気をぶったぎるように爆弾を落とした。

「さっきの、言質とってるからね」

「いやだから、千夜先輩の方が弱体化しすぎるだろ。若手悪魔同士でレーティングゲームもあるだろうし」

「大丈夫。グラム持ってる時点で参加出来ないから」

 まぁ、それもそうか。他の武器を使えばいいって言うのも野暮なんだろう。

「なら、遥までか」

「えー、ずるーい」

「忖度だー!」

「こよみと憂姫うるさい。あとは千夜先輩にでも言え」

「怒りの矛先を私に向けるのはやめなさい」

 まぁ、頼んだ。主様!

「……八つ裂きしてやろうかしら」

 随分と怖いお話で。

「おーおー、ずいぶんとおっかない眷属になりそうだ。最低でもサーゼクスより強い眷属を集めてくれよ。そうじゃねぇと柱になれねぇからな」

「フェンリルでも眷属にするか?」

「勘弁だっての。1匹で組織壊滅するわ」

 サーゼクスに止められそうな気はするが。やっても使い魔程度にしておくか。

「ま、そんな話だ。事後処理はこっちでやっとくからさっさと帰って寝ろよ」

「そうする。……ま、明日から忙しくなるか」

 明日は明日の俺に任せようと。そう考えることにした。

 

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