ハイスクールN×D Re:make   作:紺狐はボクっ娘信者

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章ラストの話の予定です


27話 和平、調停します

 で、結局会議の日が来たんだけど、何を着ていけばいいんだろうか。だって制服ってなるとなんか雰囲気的に緩くなりそうだし。

 多少気合い入れたとしても思いっきり滑ったら痛いし。かなり悩む。

 いっその事アロハシャツで行くか?……やめとこ。さすがに怒られそうだ。

「何を悩んでいるの?」

 不思議そうに顔をのぞきこんでくるヴィル。

「いや、今日の会議って何を着ていこうかなって。制服で行くのもなんか貫禄的?になんかダメなのかなって」

「細かいことを気にする」

 余計なお世話だ。

「じゃあヴィルは何を着ていくんだ?」

「いつも着てる青いドレス」

「お前、あれかなり似合ってるから雰囲気的には百点満点だろ」

「なんで急に口説くの」

 口説いてるつもりはなかったんだが。素直な本心ってやつだ。

「そんなに悩むならスーツでいいと思う。礼装と言ったらアレだし。筋肉もあるから映えると思う」

「……そうするか」

 と、言われてそのままスーツを着て、会議の会場にいる状態だ。

 場所は駒王学園をモチーフとした空間で、校舎の中にある一室が来賓用の部屋のように作り替えられていた。

「……スーツ、ですか?」

 明らかに反応に困っている様子の一夜。と言うより頬がどこか赤い気がする。

 一夜は黒のドレスに身を包んでいて、とても似合っている。うん。役得ってやつか。

「ん?悪いか?」

「……悪くは無いですが」

「って、顔赤いぞ?大丈夫か?」

 少し首を傾げつつおでこをくっつけてみる。

 うん、熱はないっぽい。ただ顔は赤いけど。

「……きゅう」

 あ、フリーズした。体調悪いのか?ほんとに。

「……ナチュラルにそういうことするよね」

 何故か呆れた様子の遥。薄い緑のドレスに身を包んでいる。

 一応今回の衣装は全部俺もちってことで支払ってるからどんなのかはわかってるんだけど、ただ……実際に着てる姿を見ると流石に凄いな。見とれる。

「いつもの事です」

 もはや呆れた様子も見せてくれない白音さん。

 白いドレスに身を包んで……これじゃ結婚式じゃって思ったけど、どう転んでもろくな事にならなそうだから黙った。

「ま、主は唐変木だから仕方ない」

「誰が唐変木だよ。お嬢様」

「全く、何をしてるの。せっかくの会議なんだから、もう少し……ね?」

「そ、そうですよっ!もっと……楽しく、です!」

 ゼノヴィアは薄い青のドレス。イリナは明るいオレンジ色のドレスに身を包んで……。アーシアは白音と同じく白いドレスだ。うん。役得ってこういう時に使う言葉なんだろうなと思う。

「結局みんなのドレス姿見てデレデレしてる」

 と、ジト目で睨んでくるヴィルさん。濃い青……と言うより濃紺のドレス。俺が初めてあった時もこのドレス着てたっけ。

「うん。やっぱりそのドレス似合ってるよ、ヴィル。綺麗だ」

「お世辞よりも会議のことを考えて」

「お世辞じゃないんだけどな……」

 ま、今はそれでいいか。

「結局勝ち組はヴィルさん……」

「兄様が珍しくストレートに……」

「あーゆーのが好きなのかな」

「いや、どちらかと言うと思い出補正と言うやつだ」

「……ま、まけませんっ」

「むむ、数年のロスは大きいですね……」

 外野の声は無視することにしよう。

「なんだなんだ?ここは結婚式場じゃないんだぜ?それと舞踏会の会場でもな」

 あとでしばこう。この総督。

「茶化すなよ。女の子はオシャレをしたいもんだ」

「それは誰に対して見せたいのかね」

「独り占めするさ」

「うわ、こいつ独占欲高ぇわ」

 案外嫉妬深いんだよ。

「そろそろ、始めましょうか」

 そこに転移してきたのは金髪の美少年。優男風の男だ。

「ゼノヴィア、イリナ。紹介するよ。熾天使で有名なミカエルだ」

「なっ……。あのお方が、有名な」

「私、ファンだったの……」

「ま、聖職者にとっては神様の次に偉い存在か」

「お初にお目にかかります。私はミカエル。以前は本当に申し訳ないことを」

「いえいえっ!こうして生きてますので……!」

「イリナと同じく、私も生きているのでそれ以上は何も言うつもりは無いです」

「……ありがとう」

 ま、一件落着でいいか?あの件は。

「全く。こんなに女の子をはべらせて。リーアたんとの結婚は……」

「紹介したくないけど紹介するよ。そこの赤髪がサーゼクス。現四大魔王の一角だ」

「……シスコンさん?」

「あぁ。リアスの実の兄で重度のシスコン。ただ、実力は折り紙付きだ。俗に言う逸脱者に分類される奴だ。悪魔のカテゴリーの外にいるって意味でな。こいつを含めて3人いる」

「はぇ……強いけど残念な人なんだ」

「人間性のステータスの全てを戦闘力にふったやつだ」

「随分な紹介をしてくれるね。私はサーゼクス・ルシファー。よろしく、淑女さん」

「うん。取り繕えばただのイケメンだな」

「あとイッセー君。リアスと結婚するんだよね、ねぇ?」

「知らん。結婚相手くらい好きに決めさせろよ。俺も、リアスもな」

「……ふむ、そう来たか。なに、策は山ほど……」

「グレイフィア」

「はい、一誠様」

 俺の一言でサーゼクスは拘束されていった。

「ちなみにあの銀髪メイドがサーゼクスの嫁だから。眷属の女王で主従関係間での結婚とか聞いたな。没落した貴族の出で……とかなんとか」

「つまり、前例はあるんですね。眷属と王の結婚は」

 おっと、墓穴を掘ったようだ。

「面倒だから早く始めようぜ」

 と、仕切り始めるアザゼル。

 一応現場には今回の一件の被害者のリアス眷属とソーナ眷属、そして天界陣営と堕天使陣営、悪魔陣営というメンツ。さすがに護衛は二人は連れている状態。

 ただ悪魔陣営はグレイフィアがいる分戦力過多ってかんじだ。

「で、今回の議題は和平だ。そこの兵藤一誠を基軸とした和平を提案する。ただ、馴れ合うってわけじゃない。協力関係を提携しようって試みだ」

「それは先日のコカビエルの一件があったからかい?」

「その件は本当に申し訳なかった。だが、その前から構想があったのは確かだ。このままいがみ合ってても互いに新世代が育たずに滅びゆくだけだ。なら、協力した方がいいだろ」

「それでイッセー君を手元に置いて、と?」

「馬鹿言え。悪魔陣営だよ、こいつは。ってか、鷹白千夜ってこいつを転生させた主様ラブだから、そいつのために動くってのが基本軸だぞ、こいつ」

「半分正解半分不正解。俺は俺が大切だと思ってるヤツらのために力を振るう。それは眷属であり、周りの人間であり、千夜先輩ってだけだ」

「ほら、こんな感じだぜ?こんなやつを手篭めになんて出来るかよ。だからこそ信用出来る。公平な立場で陣営を見てくれるからな」

「それについては同意します。ただ、和平についてのメリットとデメリットを提示して頂きたい」

「俺らの研究している情報の提供と、これからの研究結果の提供。それによって完成したものの提供ならどうだ。最も、危険度の高いものは承認を必要とするが大半はそれを撤廃するようにする」

「随分と破格な条件を提示するね」

「それだけ本気だってことだよ。ただデメリットとしてお前達にも戦力の提供と情報の提供を提示する。当たり前だろ?そうでもしなきゃただ俺達は下働きだ」

「妥当ですね。むしろ資金提供と言うのかと思いました」

「そこまで高レートはふっかけねぇよ。あくまで俺は和平が目的だ。いい加減戦争には飽き飽きなのよ」

 うまいな。あくまで和平を盾に全部を押し通そうとしてる。交渉術としてはなかなかに悪くないと思う。

「それに、俺からはひとつの情報を提供する。『渦の団(カオス・ブリゲード)』についてな。今新興勢力として勢力を拡大してる組織だ。そいつらに対する対抗策も作りたい」

 カオス、ブリゲード?初めて聞く名前だ。

「……具体的には?勢力図は?」

「詳しくはわかってないが、旧魔王派や英雄派と言った派閥があるのは情報として入っている。なんならロンギヌス所有者も居るからな。聖槍持ちだな。なんならお前らのところの旧魔王の子孫も参加してるって話だ」

 なんだその危険集団。テロ組織まんまだろ。

「何故そこまで詳しい。裏で繋がっているのか?」

「なら和平じゃなくて宣戦布告するだろうが。前にうちのヴァーリがスカウトされたんだよ。無論蹴散らしたが。その時にベラベラ喋ってた」

「その情報を鵜呑みに?」

「なわけないだろ。ただ、ブラフだとしてもそれを考慮して動きたいのが本音だ。もし本当なら後手に回れば回るほど面倒だ。なら協力するしかないだろ」

「ってかその話は俺も初めて聞いたぞ」

「話してねぇからな。不確定要素はこういう場での共有のみに留めるのが吉だぞ。……ま、マッチポンプを疑われても仕方が無いと思う。そこは信用してくれとしか言えん」

「ま、その通りだな。それが嘘なら俺は降りる。なんなら俺の全勢力をもってお前らを潰す」

「あぁ、そうしてくれ。そうやって睨まれてる方が俺の潔白も保証される。俺はそれだけのリスクを背負ってる訳だが……。お前らはどうする?和平を結ぶか、それとも結ばずにカオス・ブリゲードに滅ぼされるか。聖槍持ちが本当にいるなら悪魔や俺ら堕天使はほぼ負けてるようなもんだ」

「たしかに。上澄みが残ったとしても大半は消されるだろう。それこそ、下手をしたら聖槍以外のロンギヌス持ちがいる可能性もある」

「だろ?それにあれだ。各勢力の発展にも繋がる。悪い話じゃないと思うぜ」

「私としては賛成です」

「私も賛成だ」

 これはアザゼルの作戦勝ちだな。思ったより利権を優先しないやつを連れてきて、こんな条件出されたらまずは呑むしかない。こいつ、相手を自分の好きに動かす事に長けてる。

「で?じゃあ俺に対する見返りは。そんな大役を任せるんだからそれ相応のものがあるだろ」

「やっぱり来たか。何を望む?」

「まぁ、最低限の地位の確立だな。下手にこっちを馬鹿にしたり手を出してくるやつも出てくる可能性があるからな。ある程度の権限が欲しい」

「まぁ、無難だな」

「あと資金源だな。別に大量に寄越せとは言わないけど眷属が生活できる程度は寄越せ。幾らになるかは分からんが、それなりにはな」

「それはこっちで考えてるから安心しろ」

「あと二つだな。私生活への干渉の禁止。あくまで最低限はな。プライベートの時間は寄越せ。だからある程度の連絡手段はそっちで確立してくれ。スマホとかでもいい」

「それも考えてる。通信限定の人工神器を渡す予定だ。あくまでメッセージを表示すタイプのな」

「じゃ、最後に。家のリフォームを頼む。この状況じゃ眷属全員は住めない」

「それこそ引越しすりゃいいんじゃないのか?手配するぞ」

「わざわざ目立ってどうすんだよ。あくまで住む場所が欲しいからだ。だからそこの保証をしろって話。だからある程度は無茶していいからリフォームしてくれ」

「そういうもんかね。リフォームの方が目立つと思うが。一応手配はしておく」

 よし、これで最低限は確保出来た。及第点ってことにしておくか。

「一誠君は善人ですね。もっと吹っ掛けてもいいんですよ。グリゴリの施設の私物化とか、人体実験や虐殺していい権利とか。あ、サンプルの提供も──」

「お前をキングにしなくて本当に良かったよ」

「正直俺もそう思う」

「なんでですか!?」

 心で思っても普通は口に出さないんだよ。そういう外道なことは。

「ま、これで終わりでいいか。最後に写真でも撮影するか?」

「別に。普通に和平結ぶだけでいいだろ」

 案外淡白な終わりなこって。

「冗談だって。ま、そろそろ解散でいいか?」

「まぁ、それで……」

 一瞬、空間の気配が変わる感覚に襲われた。

 敵襲か?ここは隔離された空間だぞ?誰かリークしやがったのか?それともどこからか漏れたか?

「なぁ、ヴァーリ。お前裏切ってないよな?」

 と、アザゼルが背後の男に向かって問いかける。銀髪のイケメン。久しぶりに見たけど相変わらず顔が良くてイラつく。

「それは無い。俺の行動原理は最強と戦うことだ。なら敵側に行くよりそこの男と戦う方がよっぽど楽しい」

「その言葉、信じるぞ」

「まぁ、大丈夫だろ。ここにいる全員俺がいれば屠れる。敵だって判断すれば消せばいい」

「だ、そうだ。それは事実だろう。現に素の状態でも俺より魔力量が多く見える。下手な動きを見せたらその時点で首が飛びそうだ」

 よく分かってるな、自分の立場ってやつが。

「じゃ、俺もここにいる全員に改めて実力を見せるか。そうでもしないと和平の前提が崩れるからな」

「私も手伝う?」

「いいよ。せっかくのドレスが汚れたら大変だ。お姫様はそこで帰りを待っててくれ」

『Welsh Dragon Balance Breaker!!』

 颯爽と上着を脱いで外套を展開する。力の上昇は十分、か。

「おい、ヴァーリ。これが終わったら遊んでやるから大人しくしてろよ」

「了解」

 ヤレヤレといった様子で肩をすくめるヴァーリ。

「……じゃ、行くか」

 そのまま、駆け出して窓から飛び降りた。

 周囲は元々の結界の他に別に結界が貼られている。敵側全員に対するバフ目的か?それとも……。

 ま、一気に倒せば終わりか。一々考えるのも面倒だ。

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!』

「行こうか、雑魚共。祈る時間はもう十分だろう?」

 真紅の機械的な龍の翼をはためかせて高速で移動する。結界の中心に到着したタイミングで敵の数の確認。

 敵はざっと見積もっても百人。手練の魔法使いもいるか。下手したら最上級悪魔クラスの手練もいると想定するか。

「関係ねぇよ、数なんて」

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!』

『Juggernaut Blaster!!!!』

 赤龍帝の力をフルに使った一撃。無論バランスブレイカー状態での話だが。

 赤龍帝の能力は主に四つ。倍加、譲渡、反射、透過だ。反射は言葉の通り、攻撃等を反射させる、というシンプルな能力。透過も防御貫通というシンプルながらに強力な能力ではある。

 それを俺の任意の範囲で空間内を埋め尽くすように展開し、魔力を放出させた。

 要するに防御不能回避不能の全体攻撃を食らわせたってことだ。しかも当たれば確実に死ぬってオマケ付きのな。

「よし、終わったか」

 はぁ、とため息を吐きつつ全員が消し飛んだのを確認した後に元の場所に戻った。もちろん外套は解除した状態で。

「規格外、という他ないな。あの中にはおそらく上級……いや、最上級悪魔と同等レベルの魔法使いもいただろう。それを一瞬で消滅とか、それこそ神でもできるか怪しいぞ」

 アザゼルが完全にドン引きしている。こいつに本気の1部を見せるのは初めてだったか?いつもは魔力ブッパくらいしかしないから当然と言えば当然だけど。

「ふふ、これが龍神に次ぐ力の持ち主……!」

 厄介なのに目をつけられた気がするけど気にしないことにしよう。

 ま、眷属のみんなは聖剣コンビ以外は当たり前って反応してるあたり俺の評価ってそんなもんなんだろうなって。

「ってか、間違ってないなら増援が来るぞ。下手したら今の奴らより強いのがな」

「だろうな。で?どうすんだ?」

「ヴァーリが何とかしろよ。俺はある程度強くないと相手したくないんだよ。さっきみたいに数が多いなら時間潰しにもなるけど、あれじゃあな。もちろん、お前の相手も同じくだ」

 こうでも言えば諦めるか?遠回しにお前は弱いから戦いたくないって嫌味っぽく言ってみたが。

「ふふ、ふふふ。わかったよ。今のあれを見せられて黙っているほど大人ではないさ。なぁ、兵藤一誠。上が見えないというのは楽しいものだな」

 うわ、心底楽しそうにしてるよ。戦闘狂だよ、こいつ。火に油注いじゃったよ。

「なぁ、アザゼル。あれを使うぞ」

「加減して使えよ、ヴァーリ」

 こくり、と頷くと俺と同じく窓から飛び降りた。

 その瞬間、ヴァーリの身体が黒い光に包まれた。明らかに異質な魔力。それは、前に感じた邪龍のそれと同じで。

「おい、あれはなんだ」

「人工神器だよ。クロウ・クルワッハに協力させたな」

「は?あいつ相当強かったよな」

「全盛期の二天龍程度には強い。それの力の全てが神器に封じられている」

「うわ、戦いたくねー」

「鼻曲げるから戦ってやれよ。あと、クロウ・クルワッハはヴァーリだから協力してるって感じだ」

「うわ、完全協力体制かよ。絶対強いやつだろ、それ」

「それ、一誠君が言う?」

 そんなに呆れなくてもいいじゃないですか、遥さん。

「使いこなせば俺レベルになりそうなんだよな。下手したら」

「ダウト。お前レベルは無い」

 俺そこまで人外じゃないと思う。

「お、あいつ鎧纏ったぞ。俗に言うバランスブレイカーと同じやつだ」

 見た目は明らかにごつい鎧姿。前に見た赤龍帝の篭手の正規バランスブレイカーの漆黒バージョンっていうのが正しいか。

「そんで敵が……ってあいつ、たしかレヴィアタンの末裔じゃなかったか?」

 ヴァーリの目の前にいる褐色の女性。確かあいつは旧魔王の血族ってことで見た記憶がある。

「……あ、ホントだ。前に見た事あったけど、もしかしてさっき言ってた旧魔王派ってやつか?」

「あんな奴が反社組織に着くなんて世も末だな」

「奇しくも、和平の正当性が立証されてしまった訳だな」

 サーゼクスが複雑そうな顔してる。まぁ仕方ないけど。

「迫害してきた人」

 ぼそり、とヴィルが呟く。

「……やっぱり、俺が」

「ううん。あの人の血で手を汚して欲しくない」

「……そっか」

 結局のところ、心の傷を完全に治す方法は無いのかもしれない。……少しくらいは手助けになればいいとは本気で思う。

 そう思いつつ、優しく抱きしめて頭を撫でると体を預けてくれた。うん、絶対に守ろう。

「おーおー。お熱いね。もうお前ら全員結婚したらどうだ?」

「地獄みたいな提案すんな。で?あいつどうするつもりなんだ?」

「小細工なんていらないだろ。正面から勝つさ」

 アザゼルの発言は的を得ていた。

 目の前に現れた悪魔をただの身体能力だけで蹴散らした。まさに鬼神、と表現するのが妥当な程に圧倒的だった。魔力操作をしているだけの一撃で腕は吹き飛び、腹はえぐれる。明らかに破壊力としては超逸品だ。

 しかもそれをほんの一秒程度の間でやって見せたんだ。流石にその強さには驚かされる。

「終わったぞ、アザゼル」

 その姿のまま俺達の方に戻ってくるヴァーリ。確かに威圧感も魔力の質も高い。下手したらサーゼクスと俺、一夜以外の全員は屠れるんじゃないかってレベルだ。

「さぁ、俺と戦ってもらおうか。兵藤一誠」

「その前に聞くが、その状態はあとどれくらい維持出来る?」

「せいぜい五分だろう。まだこれは安定していなくてね。アザゼルのチューニング待ちさ」

「完成したらロンギヌスレベルだぞ、それ。そんなレベルの代物を簡単に作れるわけねぇだろ」

 ま、それもそうか。

「分かったよ。それが解除されるまでな」

「はは、分かった。今の俺がどれほど通用するか試させてもらおう」

 と、再び校庭に戻る。

 流石に無策だと少しは怪我をしそうだな。作戦は……まぁ、あの徒手空拳の対応とかか。情報が少なすぎるな。俺も遊ぶか。

「一応説明しておこう。この神器の能力は侵食。要するに防御不可って訳だ」

「ご丁寧にどうも。ま、早速遊ぼうか」

 ただ、おもむろに地面を蹴った。コンマ数秒の間に距離を詰めて……。

「甘いな」

 まぁ、もちろんこの程度は対策される。それに合わせてカウンターじみた右ストレートを合わせてくる。

 威力は上々。狙いは及第点ってとこか。

 それに合わせて腕を蹴り飛ばし、一回転してアッパーじみた一撃を腹部に叩き込んだ。

 鎧はまるで薄氷のように砕け、数十メートルほど吹き飛ばされていた。

「がはっ!……ふふ、軽い一撃でこれか。楽しい、楽しいな兵藤一誠!血が湧くと言うとはこのことを言うのか!」

「うるせぇ戦闘狂。さすがに鎧は脆いか?出力が安定してない証拠だろ。もっと魔力操作でそこを補えよ」

「これでも大砲程度なら傷がつかないんだけどね?」

「その数百倍でも破壊できないようにしないと鎧の意味が無いぞ?おぼっちゃん」

 再び距離を詰めた。単純な肉弾戦を始めるために。

 まずはあいつの自信を砕く。単純な肉弾戦だとあいつに技術で分があると思われても癪だからな。

 数メートル圏内での打撃戦。アイツの攻撃を紙一重でかわしながら素手で鎧を砕く。しかもあえてカウンター気味にだ。

 動作から全てを読んで、全てを粉砕し尽くす。それが出来てしまうほどに実力差があるのが実情だろう。

「がはっ……はぁ……はぁ……」

 ただ蹴りあげ、叩きつけ、吹き飛ばしと格ゲーのはめ技のように一方的に攻撃を続けた。

 二分もする頃には全身の鎧は砕け落ちて、血だらけのヴァーリがたっている状態になっていた。

「出力は上々。威力もかなり有るが、まぁ……魔力から動きを読みやすすぎるんだよ。それじゃ威力だけ上げても宝の持ち腐れだぞ?」

「ふふ……。まだ、強くなれるのは……楽しいな……!」

「こんだけボコボコにされてまだ心折れてないのかよ。筋金入りの戦闘狂だな。ま、俺も今回は楽しかったよ。じゃ、そろそろ戻ろうか」

「……いや、その前に俺の仲間も見てもらおうか」

 と、意味深な発言をしたのと同時に空間内に見知らぬ人物が現れた。

 なにやら身の丈程の棒を持っているが……。この感じ、前にどこかで……。

「一応、俺の眷属候補の美猴。カオス・ブリゲードから足を洗わせた」

「よう、赤龍帝。はじめましてだな!」

 ん?この声……この魔力というか、気……そして如意棒……?

「あ、お前闘戦勝仏の息子がなんかか?前に修行つけてもらった時に同じような雰囲気を感じたぞ」

「げっ。ジジイと知り合いかよ。あの組織に入ってた事は内緒だからな。本当に殺される」

「面白そうだから話すか。どうせヴァーリみたいに戦闘狂なんだろ。その系列で」

「喋んなよ!?……ま、その手合いだな。ヴァーリに負けて俺っちは着いていくことを決めたってわけさ。ま、それを一方的にボコすアンタには引いたけどよ」

 それはこいつが弱いのが悪いと思う。

「なら気の操作を教えてやれよ。仙術に付随する技術は魔力に応用できるから」

「あいあい。で、今日はこれでお開きかい?」

「そうだろうな。これ以上やったらヴァーリは多分死ぬし」

「舐められたものだな……俺はまだ……」

 と、強がったのと同時に僅かに残っていた鎧が消滅した。限界が来たのだろう。

「……楽しい時間はすぐに過ぎるものだ」

「ま、次は一撃入れてみろよ。待ってるから」

「……!はははははっ!そう待たせないさ!ひと月以内に……げふっ」

「無理すんなよ。下手したら骨も結構イってるから。アーシアにみてもらえ」

「……すまない。それと、必ずリベンジさせてもらう」

 まぁ半年は勘弁願うが。

「一応言うけど、夏と冬はやめろよ。こちとら学生なんだ。修学旅行とか色々ある」

「わかった。善処する」

 これ聞いてないやつだろ。

 

「ま、これで実力が証明された訳だが……。お前手を抜いたろ」

 と、会議室に戻ったタイミングでアザゼルに真顔で言われた。

「その心は?」

「覇龍を使ってないからだよ。完全にそこを見せずにあれだぞ。最早恐怖すら覚える」

「いや、ここでそれ使ったら空間壊れるだろ」

 こいつはここにいるヤツら全員殺すつもりなのだろうか。

「……覇龍?」

 きょとん、とヴィルが首を傾げる。

「赤龍帝と白龍皇の神器だけにある進化形態だよ。……いや、暴走の方が正しいか」

「都合良く言い換えんなよ?こいつ以外は全員暴走して寿命削って死んでったよ。ただ、こいつはそれを克服して昇華させたんだよ」

「はぇ……。もうそうなってなかったらイッセー君はどうなってたの?」

「お前ら元教会組があぁなった時点で暴走して日本更地にして死んでたよ。下手したらアジアくらいは消し飛んだかもな。……いや、そこの……アーシアって言ったか?そいつが死んだ時点で暴走も有り得た。ってか、その時が一番確実だな」

「随分と人を危険人物扱いするな、おい」

「間違いじゃないだろ。てか、お前がさっき言ってた大切なやつの一人でも死んだらまた暴走形態に逆戻りも有り得る」

 まぁ、それは否定しないけど。

「安心しろよ。それだけお前らが愛されてるってこった。案外、押し倒せば既成事実くらい作れるかもな」

「お前、後でグリゴリ爆破するぞ」

「冗談だよ。ジョークも分かんねぇのか?」

 それを真に受ける奴らしかいないから困ってるんだろ。

 まぁ、もっと制限を設けてるのは黙ってた方がいいんだろうけど。奥の手扱いで。

「ま、これで調停で良いか?こいつが本気出したらサーゼクスでも死ぬ。つまりそれは見れないってことだ。ここでお開きってことだ」

「これで無理に見せろと言っていたら戦争ものだったよ、アザゼル」

「冗談にしちゃ笑えねぇな、サーゼクス。そこまでアホじゃねぇよ、俺は」

「ブレイザー総督がねぇ」

「お前後で覚えとけよ」

 後でしれっとこの呼び方を定着させよ。

「もう戦争なんて時代遅れなのさ。若い奴らの台頭を楽しんで余生を過ごす。それが最高だろ」

 その言葉を締めとして、和平が成立した。

 ……結局俺が貧乏くじな気がしてならないけど。

 




「ね、何でヴァーリって人を眷属にしなかったの?」
 と、キョトンとしている様子の遥。
「いや、戦闘狂の相手は嫌だから。真面目に疲れるし、あいつの場合回復したら襲ってくるからやだ」
「過去に経験がありそうな話だね」
「過去に少しな。そんなことより次回予告だな」
「今までそんなことしてこなかったでしょ」
 そう呆れないで欲しい。新しい試みなんだから。
「あー……こほん。千夜先輩との里帰り!眷属総出で冥界に行くけど、そこには若手悪魔最強の男が……!?実はヴァーリに負けないレベルの戦闘狂だった!?負けないで、兵藤一誠!今負けちゃったら、千夜先輩との約束はどうなっちゃうの!?次回!兵藤一誠、死す!デュエルスタンバイ!」
「完全に有名なやつのパクリだよねそれ。あと兵藤一誠は君でしょ」
「冷ややかな目で見ないで。あ、里帰りの部分は本当だからそれとなく楽しみに?」
「はぁ……。こんなぐだぐだな感じになると思うけど、出来れば見限らないで欲しいな。じゃあ、また次回で会おうね」

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