ーーちゅん、ちゅんっ。
耳に小鳥がさえずる声が入ってくる。いつもよりも日差しが辛い。上手く目も開けられない。
これは……悪魔の弱点と同じか?たしか日光に弱いとかなんとか聞いた気がするし。となると、あいつに気づいてもらえた、と考えるのが妥当か。
「ふわ……ぁ……もう、朝か」
寝惚け眼をこすりながらゆっくりと体を起こす。
いつものパジャマではなく、何故かボロボロの制服に身を包んでいる。
「……ん、なんだ?」
ふと、隣に知らない温もりを感じる。なんというか、とてもいい匂いがして.......とっても柔らかくて.......。.......柔らかい?
「……っ!?」
嫌な予感を覚えながらゆっくりと布団を上げてみると、そこにはあの人と揶揄していた張本人である生徒会長がいた。制服は乱れ、何やら悲しげな表情を浮かべながら眠っている。
「ん……んん?」
現在の状況を確認しよう。
朝起きたら、同じ布団であの女が寝ている。昨夜の記憶は、俺が瀕死になったところまでしかない。制服も乱れてる。
……あれ、これやらかしてしまいましたか。
「ん……あ、いっせー.......くん。おはよう.......」
最悪の結論にたどり着いたタイミングで目を覚ます生徒会長。やたら顔を合わせようとせすずに、窓の向こうを見ている。
.......これはまずい。最悪のパターンの可能性が高い。ここは素直に謝るべきか。
「.......ごめんなさい」
気づいた時には土下座をしていた。ジャパニーズドゲザ。誠意を示す最大の行為であり、これ以上の謝罪方法を思いつかなかった。
「.......え?なんで謝っているの?」
「何故か、こうしなければいけない気がした」
「.......?.......あ、盛大な勘違いをしているわ、一誠君」
自分の格好を見て、何かを察したような生徒会長。
「私と一誠君に既成事実はないの。だから顔を上げて」
「え、じゃあなんで布団の中に?」
「それを含めて説明するわ。.......私の方が謝らなければならないの」
「.......へ?」
あれから二十分程経過した現在。リビングには生徒会長と憂姫、そして俺というよくわからないメンツが顔を揃えている。なんなの、この状況。
「まずは、一誠君。.......本当にごめんなさい。貴方を悪魔へ転生させてしまったわ。それも、私のエゴで」
申し訳なさそうに頭を下げる生徒会長。
「やっぱりそうなるよな。フェニックスの涙じゃ、あれは治せないだろうし」
「やっぱり、こっち側の人間だったのね」
「そうだよ。ってか、聞いてなかったか、魔王から。じゃあ、初めましてだ。一応、世界で三番目に強い赤龍帝だ。基本的に魔力を人間レベルにまで落とした状態で生活してるから簡単にやられるんだよ。まあ、もうあんなヘマは食わないけどな」
「つまり、油断してたからやられたと」
「そうじゃなきゃあんな奴にやられねぇよ」
ポリポリ、と頬を掻きながらそう答えると千夜先輩はこほん、と咳払いする。
「.........とりあえず、話を戻しましょう。私は昨日付で貴方の主になった。ここまでは大丈夫かしら」
「ああ、大丈夫だ。それで、俺は何の駒なんだ」
「
「兵士か。ま、妥当なところか」
兵士の駒の特性的に、俺の戦い方に一番合いそうではある。
「.........じゃあ、一誠君。これからよろしくお願いするわね」
「ああ。これからよろしくな、ご主人様」
ぺこり、と礼儀正しいように礼をすれば、千夜先輩は屋上で会った時のような荘厳な雰囲気を漂わせ始めた。なんというか、凛としているというか。とにかく、この方が千夜先輩ぽくていい。
「それじゃあ、眷属の紹介をするわね。ここにいる憂姫と貴方の幼なじみの千代田こよみ。そして貴方と同じクラスの笛吹遥。その三人ね」
全員顔見知りというか、かなり話したりしてる人だった。
「え、そのメンツなのか」
「ええ、そうよ。こよみは
「軽くは憂姫から聞いたから知ってる。まあ、こよみはイメージ通りだよ」
当たり前のように軽自動車を片手で投げ飛ばしてくるやつが戦車じゃなかったら世紀末だ。
「ちなみに、私は
「それが一番しっくりくるよ。前線で戦うってタイプじゃないだろ」
「えへへ……そうだね……」
そう言って、憂姫は笑顔を見せた。そりゃあ前線で剣とか振り回すタイプではないだろ、確実に。
「それで、笛吹遥は
「ん、わかった。それで、俺は何をすればいいんだ。直ぐに契約取りにでも行けばいいのか?」
「そんなわけないでしょう。学生の本分は勉強。そういったことも大切だけれど、それで勉学が疎かになっては本末転倒よ」
「生徒会長様はお固いな」
「あら、必要最低限のハードルは突破しろ、と言ってるのよ。それ以上ーープライベートにまで干渉するつもりは無いわ」
要するに恥になるようなことはするな、と。
「ということで、学校に行きましょう、一誠君」
「……え、一緒にか」
「これは仕事よ。初仕事が主のエスコート。光栄じゃない?」
「どうせ駄々こねたって無駄なんだろ」
「飲み込みが早くて助かるわ」
そう言うと、一瞬にして制服に着替える千夜先輩。早業とかそんなレベルじゃない。おそらくだが、魔力とかそんな力を使ったのだろう。
「それじゃあ行くわよ?」
「わかりましたよ、主様」
そして強制的に登校させられるのであった。
「あれ、私だけ蚊帳の外」
あとで憂姫には色々と埋め合わせをしようと心に決めて。