本当にすみません
結局のところ、ゆっくりなんて出来ずに放課後になった。男子からは嫉妬の視線。女子からは玩具でも見つけた子供のような視線を向けられ続けている。……なんなの、この状況。
「お疲れ様。今日は部活休みだし、一緒に帰らない?」
隣から優しい声音で話しかけてくる遥。本当に癒される。
「生憎、ご主人様からの呼び出しがかかっててな。一緒に帰ることは出来なそうだ」
「ご主人様って、生徒会長のこと?」
「ああ。無視したらあとが怖い」
「あはは、そうだね」
まあ、呼び出し自体はそこまで嫌ではない。何をされるかわからない、という不安さえなければ。
「んー、それじゃあ私もついて行こうかな」
「遥がいいなら頼む」
「大船に乗ったつもりで任せなよ」
「大船にしては小さ……いひゃい、いひゃいよはるはひゃん(痛い、痛いよ遥さん)」
冗談で身長いじりをすると思い切り頬を抓られる。しかも長時間痛みが残るような類のものを。
まあ、いじると顔真っ赤にして頬を膨らませるからかなり可愛い。……評価は下がるけど。
「ごめんなさい、は?」
「ごめんなさい。もう二度と言いません」
そして、数十秒後に解放され、涙目で謝罪した。
「じゃあ、帰りにドーナッツひとつね?」
「紅茶もつけますよ、お嬢様」
「んむ、よろしい」
むふーっ、とドヤ顔の遥。やっぱりかわいい。
「しーぐれっ、私にも奢ってよ」
そう、元気良さそうに話しかけてくるこよみ。
「便乗すんな。俺は遥に奢らなきゃならんのだ」
「えー、いいでしょ?ひとつ増えるだけだしさ」
「結構な被害なんだけどな。学生の財布の中身をどんだけ過大評価してんだ」
「奢ってあげなよ。私のお願いでも、聞けないの?」
「はいはい、わかったよ。お嬢様」
「なんで遥の言うことだけは聞くんだよぉ……」
え、なんでって、その方が面白いし。
「一誠君、意地悪はダメだよ。最初から奢るつもりだったのに、面白がってからかってたでしょ」
どうやら遥お嬢様には全てお見通しだったようだ。
「それに、こよみもわかってて乗らない」
「はーい」
ツッコミ役がいると、割と直ぐにまとまってしまう。もう少し演技力をつけるべきか。
「そんじゃ、こよみも行くってことでいいんだよな」
「うん。私はそれでいいよ」
「それじゃ、行くか」
ということで、三人組は千夜先輩の元へ向かうのであった。
ーー生徒会室
「よう、千夜先輩。今朝ぶりだな」
生徒会室に着くと、そこには凛として姿勢よく座っているい千夜先輩の姿があった。やっぱり、この人はなんだかんだいって美人だよなぁ。
「「お久しぶりです。千夜先輩」」
続くように挨拶をするこよみと遥。
「ええ、久しぶり。私は一誠君を呼んだのだけれど、どうしたのかしら?」
「一誠君のお守りです」
「イッセーに餌付けされました」
「間違ってはないけど、その言い方はやめてくれ」
「まあ、いいわ。先輩がいた方が教えやすいかしら」
よく良く考えれば、この二人が眷属としても悪魔としても先輩になるわけだ。聞けることは聞いておこう。
「それで、今日は悪魔の仕事について教えるわ」
「悪魔の仕事?契約を取りに行くとか言うあれの事か?」
「半分正解。同行者でもそういうことをする輩はいるけれど、私達は違うわ。悪魔の仕事は大きくわけてふたつ。ひとつは人間の元に赴き、要望を叶えて対価を貰うこと。もうひとつははぐれを始末すること。でも、私の眷属は主にはぐれ狩りを主に行っているわ」
「前者が魂を貰う系統ってわけか」
「厳密に言えばそうではないけれど、その認識でいいと思うわ。魂ではなくてもお金や絵画、お酒といった嗜好品でも対価として成立するもの」
それは要するに何でも屋では。
「それで、はぐれってなんだ?」
「自身の欲望を満たすために主を手にかけた者、ね。ただ、これは一般の見解であり、ものによって違うわ」
「と、言うと?」
「ケースバイケース、と言うやつね。例えば、身内を人質に取られて転生させられた人間が、主を手にかけるとか」
「なんだそりゃ。それでお尋ね者になるなんて、ひどい話もあるもんだな」
「あくまでこれはこれはひとつの事例よ。大半は私利私欲のために主を殺しているから、手加減は無用ちなみに、はぐれは悪魔だけではないわ。堕天使やドラゴンもたまに来るわ」
「バイオレンスすぎんだろ、この町」
「ちなみに、私達ははぐれ狩り専門。そのうち討伐しに行くこともあるでしょう」
「その時までに覚悟を決めておく」
まあ、いざとなれば容赦なく倒すんだろうけど。
「それと、執拗いけれど、赤龍帝が下級堕天使の槍で貫かれるものなのかしら。いくら人間レベルまで落としていたとしてもそう簡単に貫けるわけがないと思うのだけれど」
「心当たりが無いわけじゃないが、まだ確証を得れないんだ。.........こんな芸当を可能にするのはひとつくらいしかないと思う」
「心当たり?」
「確証を得てない情報を流したくないんだ。そこは分かってくれ」
「.........ええ、今はそうするわ。でも、危険なことになる前に必ず報告すること。いいわね?」
「分かってるよ。ご主人様」
「長話もあれでしょう。そろそろ帰りなさい」
千夜先輩の言葉を聞き、ふと時計の方を見る。針は四時半を示していた。
「じゃあ、千夜先輩も一緒に行こうぜ」
「なんで、また」
「親睦を深めるという体裁で皆でカフェにでも行こう、というのが本音。嫌と言っても連れてくぞ」
「......全く、強引ね。貴方は」
そう言って微笑む千夜先輩。その姿を見てズキリ、と頭が痛んだ。
脳裏にとある光景が浮び上がる。一面、火に包まれた空間。そこらじゅうに死体が転がり、死の気配が漂う地獄。そこにいる、一人の女性の姿を。
「どうかしたのかしら?」
不思議そうに覗き込んでくる千夜先輩。
今まで忘れていた記憶が吹きでるように脳内を支配する。
嗚咽を漏らしながら涙を零し始める。なんというか、心をおおっていた壁が崩れていくような感覚に襲われた。
「ちょっと、イッセー 。大丈夫っ!?」
動揺するこよみの声も、だんだん遠のいていく。そのまま目の前が真っ暗になるのと同時に意識を手放した。
FGOしてるので多分投稿頻度悪くなります