織田信奈の野望IF「金は天下の回り物っ!」   作:Takenoko is God

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第16話 評定

尾張・清州城

 

 

正徳寺での道三と会談を行ってから数日、織田家では評定の開かれる日となっていた。

 

評定とは、仕事を割り振られている将たちが信奈の元へ一堂に会し、前回評定からの業務の進捗や新たな方針の提案などを行う場である。

織田家の場合は、1か月から1か月半に1度というペースで行われている。

まだ織田家に仕官してから数週間程度の俺はもちろん初めての評定だ。

参加する面子については都度必要な人員が集まるのだが、今回は信奈、俺の他、長秀さん、犬千代、勝家のいつもの面々、更に各地に散っていた諸将もこの場に集まっていた。

対今川戦をどうするか、織田家の未来がかかった非常に重たい評定が今日の議題なのだ。

 

「それでは、只今より評定を始めます。まずは今月の収支についてです。」

 

長秀さんが仕切って評定をスタートさせる。まずは、前回以降に使った金と得た税などの報告を始めるのが織田家にとっては慣例になっているとのことだった。

 

「・・・以上が、今月の収支についてでございました。また別件ではございますが、米二万石と銭二千両の納入がございました。」

 

最後に長秀さんがそう一言添えると、諸将からざわめきが広がった。

これは長秀さんから事前に伝えられていたことだが、俺は今回の評定で挨拶があるため仕官の際の目録についても報告に上がるということだった。

 

「その別件についてなのですが、もう一つ報告がございます。この度織田家に仕官された方がおられますので、この場で紹介いたします。小笠原金槻どのです。」

 

呼ばれて、俺は立ち上がり一歩前へ出る。

 

「紹介に預かりました、小笠原金槻です。

今は一宮の郡代と普請奉行のお役目を務めさせていただいております。

以後お見知りおきの程、よろしくお願いいたします。」

 

すると立ちどころに周囲から「あれが噂の玉ノ井の・・・」とか「どうやら未来から来たとか大法螺を吹いているらしい」などといった小声が飛び交った。

どうにも俺が未来から来たことは既に噂になっているらしいが、ひとまずここは黙って自分の下座に戻る。

 

「金槻どのは、仕官の折に先ほど申しました米と銭に加え、金槻どのが開発を行った玉ノ井湊の収益3割を織田家へ納める手柄を立てております。

また先の斎藤家との同盟交渉についてもかなりの成果を既に上げております。100点です。」

 

長秀さんにここまで褒められると少しむずがゆい気もするが、悪い気はしない。

 

「それでは続きまして、信勝さまの件についてです。こちらについては勝家どのに報告していただきます。」

 

直後、ざわつきがぴたっと止む。信勝謀反の件はそれだけ家中にとって大きな出来事であった。

実は今日来ている諸将の中にも信勝派だった人間が少なからずいる。信勝の清州攻めが急のことであったため対応できず、結果として出兵できなかっただけという人達だ。

 

「はっ、此度の信勝さまの謀反については、信秀公の意思に従わずに信勝さまを祭り上げた土田御前さまや諸将の動きを私が抑えきれなかったことによって発生いたしました。

結果的には信奈さまの計略もあり被害は軽微であり、事態についても素早く鎮静化出来ましたが、部隊を動かしてしまった以上タダで許されるというわけにはいきません・・・」

 

「デアルカ、みんな聞きなさい。これについては謀反を鎮圧した日のうちに発表した通りとするわよ。

信勝は降格、謀反に加担した諸将は改易、そのせいもあって今回は評定の参加者も減っているわ。

また信勝本人については分家の津田に名を改めさせたうえで新参のお金の元に預けさせているわ。

お金?信勝改め信澄の様子はどう?」

 

「はっ、信澄どのには玉ノ井の地にて港湾設備の普請の手伝いをさせております。

とはいっても雑用ですが、まぁ社会勉強も兼ねて程々に働かせております。」

 

信勝改め信澄は謀反の後、俺が預かっている。

謀反の罰としては割と異例のことなのだが、打ち首に比べればマシということで信勝派の面々も新参の俺の元に信澄が降ることには反対しなかった。

ちなみに玉ノ井に土地を一つ貸しており、そこで甘味屋を経営させて商いを勉強させるつもりだ。

信澄にはういろうくらいしか強みが無かったので、そこから始めるしかなかった。

 

「みなさま、そういうことでございますが此度の姫の決定に対して意見のある者はおられますか?」

 

評定の行われている大広間に静寂が広がる。

ここで文句を言おうものなら信勝派として同じように処分されかねない、当然の反応だった。

 

「それではこれにて結審いたします。また先の信勝どの謀反の際に活躍された将兵には給金の他に手当をつけることとなっております。」

 

手当とは、とどのつまりボーナスである。

家騒動を今川に利用されずに終えることが出来たため、珍しく太っ腹な対応をしているのだが、恐らく信奈の本音はここで羽振りの良さを見せて信勝派の再度の反信奈運動を抑制する狙いもあるように感じる。

 

「では信勝どのの件については以上となります。

続いては美濃の斎藤氏との同盟についてです。

こちらは姫から直接ご説明がございます。」

 

すると全員の視線が信奈に集まる、信奈は一呼吸おいて話しだした。

 

「今回わたしは美濃の蝮と同盟を組むことに決めたわ。

今の尾張にとって目下の敵は今川よ!あの十二単自体は大したことないけど、あの太原雪斎が遺した武田・北条との三国同盟や三河の狸が厄介よ。

それに今の織田家じゃ今川単独でも独力で相手にするのは厳しいのはみんな分かってるでしょう?

既に道三との交渉も終えてるわ、あと道三は近く隠居するみたいだから、私が美濃を譲り受けることになっているわ!

今後美濃を譲り受けたら本拠を稲葉山に移す予定だから、各自準備しておくこと。いいわね!」

 

信奈の簡潔な説明を聞き、諸将は再びざわつきだした。

美濃を譲り受けるということもなのだが、思えば那古野から清州に移ったのもまだ最近のことなのだ。

こう何度も城主が居城を移すことは珍しく、それについていかなければならない将兵にとっては折角清州の生活が安定したところでこれはたまったものではない。

信奈に反感を抱く者が多少なりともいる理由は、この信奈のワンマン的な行動にあった。

しかし、当主である信奈にたてつく者もおらず、再度大広間に静寂が戻る。

ここで正面から信奈に反旗を翻す者がいないあたり、やはり信勝の謀反を手早く収めたのにはそれなりの効果があったようだ。

 

「斎藤家との同盟について補足いたしますと、まもなく道三どのの姫君が尾張へ参られます。

また同盟の約定については不可侵や有事の援軍などとなっております。」

 

長秀さんが補足し、同盟の件については話が終わる。

その後諸将からそれぞれ報告が上がり(今川との前線には動きが無いことも確認された)、一旦昼休みとなった。

午後は本題である今後の方針について話がされる予定であり、俺も正徳寺で道三と信奈に出した案を提案することとなっている。

 

 

 

一旦うこぎ長屋に戻り昼飯を取っていると、暫く近江を探らせていた五右衛門がやってきた。

 

「小笠原氏、お久しゅうごじゃる。」

 

「五右衛門じゃないか、お帰り。近江はどうだった?」

 

「小笠原氏の予想が当たったでごじゃるよ。長政は織田のぶにゃとのどうみぇい、それも婚姻をごしょみょうでごじゃる。」

 

「うん、やっぱり来たか。」

 

五右衛門からの報告はこうだ。

近江の浅井長政が信奈との政略結婚による同盟を所望している。これは後顧の憂いを絶つというよりも、津島や玉ノ井の権益を狙ったものだと思われる。

現状織田と浅井では浅井が格上のため、信奈としてはかなり不利な条件で下手すれば浅井に家ごと吸収されかねない同盟内容となるかもしれない。

また美濃を信奈が抑えてしまうと浅井と織田の力関係が逆転するため、道三に謀心を抱いている斎藤義龍をけしかけてるとのことだった。

義龍は美濃譲り状の件もありほぼ間違いなく謀反を起こすと思われた。

 

「これは・・・マズいな」

 

この動きは織田家にとっては非常に不味い。仮に斎藤義龍が美濃を抑えた場合、尾張と美濃の2国を信奈が抑えるのは至難の業となる。

美濃譲り状は斎藤道三の独断で決められたものであり、斎藤家の家臣団や元来守護大名として美濃を治めていた土岐家の承認を得ていない。

そのため、美濃の地侍や農民にとっていきなり領主が織田信奈になるというのは青天の霹靂なのだ。

当然支持されるかは怪しいものがあり、美濃は軍事力で獲りに行く必要がでてくるが、ここで北の斎藤と戦争をすると南の今川は黙っていない。

このままでは今川と斎藤に挟まれて圧殺されかねない状況に陥るが、その時に斎藤の背後の浅井から同盟の提案が来た場合、織田はそれに縋るしかなくなる。

信奈の婚姻や湊の権益など、織田家が抑えている金の成る木を全て吸い取られることになり、そうなると今川どころか松平にすら戦に勝てるか怪しくなってくる。

これは完全に織田を殺しに来る動きだった。

 

「五右衛門、ありがとう。これは大至急信奈に伝える。それと五右衛門にはもう一仕事お願いしたい。」

 

「なんでござるか?」

 

「玉ノ井に走って川並衆を動かして欲しい。長良川のねぐらへ大至急移動し、筏を用意しておくように伝えてくれ。

もし斎藤義龍が動いた場合、道三は岐阜城から落ちることになる。その道三を救出するために稲葉山のすぐそばを通る長良川で待機だ。」

 

実は川並衆の川族としてのねぐらは犬山だけではない、木曾三川の各地に散っており、揖斐や谷汲、関などにもある。

今回は長良川上流、刀鍛冶の街である関のねぐらを使うことで稲葉山からの救援が出来ないか画策してみることにした。

 

「承知」

 

そう一言残して、五右衛門は消えた。俺も次の手を思案しつつ、急ぎ本丸へ戻った。

 

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