織田信奈の野望IF「金は天下の回り物っ!」 作:Takenoko is God
「・・・はぁ、やっぱり夢じゃないか・・・」
突如戦国時代に飛ばされて2日目の朝、俺はようやく今の状況を現実として認めた。
夢の中で寝て起きるなんて芸当は流石にできないだろうし、顔をつねったりして試したが全てダメだった。
昨日は色々ありすぎて疲れた。
ゲームの休憩に仮眠をとって起きたら戦国時代、しかもいきなり戦場のど真ん中だった。
何を言っているのか分からないと思うが安心してくれ、俺も分かってない。
その後侍に追われて走って逃げていたら矢を射かけられて万事休す、かと思えばいきなりおっさんが飛び出してきて俺を庇った。
なんとそのおっさんは木下藤吉郎だと言う。
力尽きた木下藤吉郎に仕えていたというロリ忍者、蜂須賀五右衛門の後を追って戦場から少し離れた小川で現状の説明を受けた。
曰く、ここは尾張国の金山だという、元々俺の自宅があった場所にほど近い。
曰く、今は天文22年だという、西暦にして1553年、現代から500年近く前となる。
曰く、この戦闘は鳴海城を落とした今川勢が熱田方面へ落ち延びる織田軍を追討している所だという。
改めて思い出して頭が痛くなる。
現代に帰る手段が分からないのが何よりの苦痛だが、今はそれ以上に気になることがある。
それは天下人、豊臣秀吉が既に他界してしまったという事実だ。
戦国を終わらせるキーマンが不在というのは余りにも怖い。
信長の野望で言えばイベント進行が不可能な状態、こうなると当然史実とは異なる未来に突き進んで行くことになる。
とりあえず木下藤吉郎は織田方の足軽をしていたということは五右衛門から聞いたが、俺がかわりに秀吉になるために織田に加わるのが良いのかも微妙なところがある。
そもそも俺は現代っ子の陰キャ高校生である、背丈はこの時代水準で言えば相当大柄とはいえ、運動神経はかなり厳しいだろう。 そんな状態で足軽として働けるか、答えは否である。
おそらく戦場に出て数日生き残れば良い方だろう、となるとある程度の地位に立てる状態を整えてから士官すれば良いか?
そんな手立てがあれば良いが、そんなものあるわけもなく、まさに一寸先は闇の状態に陥っている。
だいいち、秀吉のいない状態で織田家が史実通りに覇を唱えることが出来るかも分からないのだ。
そうこう唸っていると件の相棒?となった五右衛門がやってきた。
「小笠原氏、いつまで寝ておられるのじゃ、もう午の刻でごじゃりゅぞ。」
「相変わらずのかみかみだな・・・。
おはよう五右衛門、今更だけど昨日は助かった、ありがとう。」
ちなみに今は金山からほど近い、熱田の旅籠に身を寄せている。
ひとまず落ち着ける所へ行きたいという俺の頼みを聞き入れてくれた五右衛門が案内してくれた。
「さて、それじゃあそろそろ動くとしますか。考えてても仕方ねぇしな。」
そう自分に言い聞かせ起き上がる。
色々悩むことはあるものの、この世界が夢ではない以上腹は減るし飯も食う。
そういった路銀も五右衛門に借りている今、まずはこの世界での生活を安定させなければならない、すなわち衣食住の健全化だ。
そう結論付ければ後は早い、今日からは行動を起こすことにした。
なんせこの世界で俺は500年先の知識を持っていることになる、武力に期待は出来ないが知識面ではチートも良いところだろう。
歴史を改変するのは少々不安だが、木下藤吉郎が死んでいる時点で何をかいわんやであるし、現実問題どう生きていくにせよ先立つものは必要なのである。
「そういや五右衛門は朝からどこに行ってたんだ?」
「拙者は小笠原氏の装束を仕入れて参った。その衣はここでは少々目立つのでごじゃる。」
そう言って五右衛門は俺に上下の和装束とふんどしを俺に手渡した。
ちなみに五右衛門には俺が未来から来たことは伝えている。
まぁ本人は半信半疑だろうが・・・
未来から来たことを証明する手立ても今はこの身なりとズボンのポケットに入っていたスマートフォン、他には身につけていたブルーライトカットの色付きメガネや胸ポケットに入れていたボールペンくらいしかない。
一応ボールペンを未来の筆だと書いて見せ驚かせはしたから未来から来たとこも信じてくれていると信じたい。
思考もそこそこに慣れないふんどしに手間取りつつも着替えて宿を出る。
今から行く目的地はこの付近では一番の繁華街、津島の湊だ。
まずはここで当面の資金を工面することにした。
今日の行程はこうだ
まず津島の湊で新しい南蛮の筆だと言って既にインクの切れかかった俺のボールペンを売りに出す。この時代にはない物だからそれなりの値はつくはず・・・。
そしてその金を元手に俺の武器や防具を一式整え、ついでに五右衛門に宿代を返す。
その後は五右衛門が率いている川並衆という川族のねぐらに上がり込む。
ねぐらは木曽川、犬山の少し上流ということなので急がないと日が暮れてしまう。
馬でも買えたら儲けもんだなぁと頭の中でそろばんを弾きつつ、俺と五右衛門は津島へと赴くのだった。