織田信奈の野望IF「金は天下の回り物っ!」   作:Takenoko is God

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第19話 風雲急

尾張・清州城

 

 

道三救出戦の夜、俺たちは清州を訪れていた。

道三救助のためとはいえ、俺と犬千代は織田家の兵の数百を損じている。

その戦いの一連の動きについて、信奈へ報告するためだ。

 

「夜分遅くに失礼します。信奈さまに面通しを願います。」

 

「おや、これは金槻どのに犬千代どの。それにこちらの爺さんは何者ですかな?」

 

本丸の門番に聞かれ、俺は小声で返す。

 

「斎藤道三どのでございます。

一応信奈さまには内密に動いた結果なので、あまり他言しないでいただきますようお願いします。」

 

「な!?今日の昼の評定では美濃で動乱が起きたと言っておられましたが・・・」

 

「はい、実は秘密裏に道三どのをお救いするために動いておりました。

なんとか道三どのの救助は出来ましたが、色々厄介なことになりましてな・・・」

 

「相分かった、門内で暫し待たれよ。」

 

俺たちは門の子扉から中へ入ってそこで待つ、暫くすると寝巻き姿の信奈と長秀さんが現れた。

 

 

 

「蝮!死んだかと思っていたわ!よく無事だったわね・・・」

 

「うむ、ワシも死ぬつもりじゃったんじゃがのう・・・

金槻どのに諭されてこうして落ち延びた次第よ。」

 

「お金、あんたそういえば昼の評定で川並衆を動かすとか言ってたわね。

それが上手くいったということかしら?」

 

「ああ、ただ全部が全部完璧にいった訳でもない。

今回のことで色々と分かったこともあるし、一度報告しておかないといかんと思ってな。」

 

「分かったわ、とりあえず上がりなさい。」

 

「すまんな夜中に押しかけて。そういや長秀さんは何しにここへ?どうやら泊まりみたいだが。」

 

「私は信奈さまに浅井との同盟の件で相談を受けておりました。

一応まだ浅井からは使者は来ておりませんので、今ならまだ先手を打てるのではと思い色々と考えていたところでございます。」

 

「あー、そうか。でもそれも道三が生存しているなら考え方もかなり変わるんじゃないか?」

 

「その通りです金槻どの、正直言いまして美濃が敵に回る時点で浅井との同盟は不可避でしたから、金槻どのが道三どのを連れ帰ってこられたのは素晴らしい勲功です。90点。」

 

そうこう話しつつ、俺たちは本丸御殿の部屋に入った。

 

 

 

「・・・以上が、今回の義龍軍との戦いの顛末だ。」

 

「なるほどね、お金も無茶したわねぇ・・・。」

 

部屋に入って暫く、俺は信奈に事の顛末を説明した。

長良川を下って道三の救出を行ったこと、霧が晴れて敵に補足されたこと、最終的に羽島から玉ノ井にかけて撤退戦を強いられ、預かった千の兵から損害が出たことなどだ。

 

「まず兵についてね、確かに損害は痛いけど同盟相手である道三救出なら一応理由は通るし、今回は状況が状況だったから不問とするわ。

一宮の兵は千五百まで増強するから、犬千代は引き続き頼むわ。

あと美濃との国境地帯の監視網の兵についても体制を強化するわよ。

次に川並衆についてだけど、今回の戦いでの功を認めて正式に織田家に編入とするわ。

今後も金槻配下の戦力として頑張ってもらいなさい。」

 

「ありがとう。これで川並衆の連中も報われるよ。」

 

「次に今後についてね、これで美濃との合戦は不可避になったからますます厳しい戦いになるわ。

それとこれはさっき三河の国境線から入った情報なんだけど、松平が近々動きそうな気配があるの。」

 

「左様でございます。実は先ほどまでその松平・今川の動きと浅井について私と姫で内密に相談をしておりました。

そこで知恵者である金槻どのの意見を伺いたいと思っていたところでした。

そんなところに金槻どのが参られたと聞いて驚きました、85点です。」

 

「なるほど・・・

松平は具体的にどのような動きを見せているのでしょうか?」

 

「半農の兵の招集、そして駿河への出入りが主ですね。

実は当主の元康どのがここ暫く駿府との往復を繰り返しておりまして、それが止んだと思えば募兵を始めました。

ほぼ間違いなく募兵の完了と共に出陣してくると思われます、30点。」

 

「うーん、だとすると出陣までもって1週間といったところですね。

これはなかなか厳しいですよ・・・

美濃の斎藤家は今日少し叩けたのと、美濃を抑えたばかりで安定化が必要なので今回は出てこないと思いますが、そもそも今川との合戦は道三どのの援軍を想定して考えておりました。

織田の独力で倒すのは少し骨が折れますよ。」

 

「そうなのです、そこで浅井との同盟という話になるのですが・・・」

 

「お金、正直に言いなさい。

あなたはここで浅井と同盟すべきだと思う?」

 

暫しの逡巡ののち、俺は自分の考えを述べた。

 

 

「反対だな。まず浅井の同盟の目的はまず間違いなく尾張を盗むこと、目的が家なのにわざわざ家中に入れる必要はない。

それに昼も言ったがそもそも斎藤義龍の謀反をそそのかしているのが浅井だ。

俺たちが浅井に目を向けるのは美濃を取ってからでないといけない。

京への足掛かりとして浅井と同盟はすべきだが今ではないっていうのが俺の答えだ。」

 

「やっぱりそうなるわよねぇ・・・

それで本題なんだけど、今川に対して何か策はないかしら?」

 

「策と言えるほどのものではないが・・・

松平の様子を深く探るべきかとは思う。

松平は今川に臣従の身、松平の戦意が低ければこちらに寝返らせるまでは行かなくても、少し合戦を避けた動きをしてくれるかもしれん。

そうすれば今川本軍を相手にすることも出来なくはないが・・・

どちらにしても相手は大軍、少しマシになる程度で根本的な解決とはとても言えない。

織田独力で勝つには奇襲をかけて大将首に全力であたるくらいしかないと思う。」

 

「デアルカ、敵の勢いを削いで奇襲で大将首を狙うということね。」

 

「金槻どの、確かに松平の戦意を削ぐというのは有効なのですが、そこにも一つ問題があるのです。」

 

「どういうことです?」

 

「松平は服部党という忍者集団を雇っています。

かの有名な服部半蔵を中心とした部隊です。

彼らが守る中で松平の中枢を探るのは到底無理な話なのです・・・、20点。」

 

「あぁ、そういうことですか・・・それは確かに辛いですね・・・

となるとやはり出来る限りの兵力を集めて奇襲しかありませんな。

美濃からの援軍がない以上籠城はあり得ませんから・・・」

 

俺は未来を知っているから桶狭間の戦いというワードが脳裏にちらつくが、実際状況はかなり厳しい、このような状況で楽天的に勝てるとはとても言えなかった。

重苦しい時が流れるなか、ここまで沈黙を続けていた道三が声をあげた。

 

「確かに厳しいのう。しかし、ワシには信奈どのがまだ勝てる可能性を残しておると思うのじゃが?」

 

「道三どの、それは一体どういうことですか?」

 

長秀さんの疑問に俺たちもうなずく。

 

「簡単なことじゃ。この状況に陥ってなお、ここにおる者たちは誰も降伏を考えておらん。つまり誰も勝ちを諦めておらんのじゃ。

戦の勝敗は最後はその気持ちで決まるものじゃ。

最後まで諦めずに戦い抜けば、必ず勝機は訪れるものじゃわい。

先ほどの金槻どのの撤退戦もそうじゃ、あのような無理な戦いであっても金槻どのや犬千代どの、それに十兵衛の気持ちでワシはここまで逃げることが出来た。

その気持ちを忘れなければ、必ず今川相手にも勝機は訪れるわい。」

 

その言葉に全員がハッとする。

 

「・・・そうね、その通りよ!全員が諦めなければ必ず勝てる!いえ、わたしたちで勝ちをつかみ取るのよ!」

 

「その意気です姫。100点です。」

 

「・・・犬千代も、全力で戦う。」

 

「俺たちにできることがあるなら任せてくれ。

もちろん最後まであきらめない。」

 

道三の言葉を境に、全員の目に熱がこもる。

 

「ここにいるあなたたちには先に伝えておくわ!

今川との戦いは奇襲を行うわよ!

でも奇襲はギリギリまで敵に悟らせてはいけないわ。

万千代はいつでも兵を動かせるように準備よ。

また各城に諸将を配置して籠城の構えを見せておきなさい。

今川の目を欺くのよ!」

 

「かしこまりました。」

 

「お金!犬千代!2人は美濃の見張りを続行!何かあれば直接わたしにまで伝えなさい!」

 

「了解。」

 

「・・・わかった。」

 

「道三は清州で保護するわ。今後の美濃獲りの時には協力してもらうわよ!」

 

「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。任せておれ。」

 

こうして、織田家の面々は各自の覚悟をもって今川との決戦の準備にのりだした。

 

全員が解散した時には時間は丑三つ時に差し掛かっていた。

 

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