織田信奈の野望IF「金は天下の回り物っ!」   作:Takenoko is God

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第02話 津島湊

尾張・津島湊

 

 

木曾三川の河口地帯にその港はある。

現代では輪中地帯の沖を更に埋め立ててレゴランドなどが出来ている名古屋港湾部だが、この時代は輪中がそもそも小規模なため津島がほぼ河口であり、遥か遠くに伊勢の玄関口にして離れ小島の長島が見える。

弥富あたりは完全に干潟なので現代ではまるで考えられない離島っぷりに感じられる。

 

そして今、俺の眼前に広がっている光景は時代劇の商人街そのものであった。

 

 

「さぁて、いっちょ一儲けしますか!」

「そうは言われるが小笠原氏、南蛮の筆を売る当てはありゅのでごじゃりゅか」

「おう、任せろ。こういう金策は得意なんだよ。とりあえず納屋衆の寄合所はどこにあるか分かるか?」

 

 

俺の納屋に向かうという発言に五右衛門は?マークを浮かべた。

 

 

「納屋衆でござるか?それがしはてっきり商家へ行くものと思っていたでごじゃるが・・・」

「五右衛門、確かに物を売るには商人に会うのが一番手っ取り早い。

だが俺は今物を売りに来たんじゃあない、稼ぎに来たんだ。」

「小笠原氏、なんだか今までで一番悪い顔をしているでごじゃるよ。」

「簡単な話だ、商人の仕事とは物の価値を決めることだ。

かみくだいて言えば、商人は物を買うにしてもその先の売り場面を見越して絶対に利益が出るように計算して値を決める。

つまり足元を見てくるんだよ。

一方で納屋は蔵貸しだ。

津島なんて一級の湊の納屋は賃料もバカ高い。

その納屋を持っている豪商なんだから金ならいくらでも持ってる。

ちょいとカマをかければ商人よりも値が付くんだよ。」

「そういうものでござるか、それでは納屋衆の寄合所でごじゃりゅな。」

 

大体金持ちっていうのは無意味な物に金を注ぎ込む悪癖がありがちだ。

そう説明し、五右衛門に先導してもらって俺は寄合所へ向かった。

これは俺にとってのこの時代の初陣だ。

絶対に負けられないという気持ちをもう一度頭の中で反芻して俺は暖簾をくぐった。

 

 

 

 

 

「・・・うーん、ちょいとやり過ぎたか・・・?」

「どう見てもやりすぎでござる!こんな大金どうしゅりゅのでごじゃりゅか!」

 

 

30分後、俺の懐には三百両もの銭が転がり込んできていた。

 

 

「えっと、確か戦国時代の1両って4万とかだっけか・・・1200万円?」

「何を意味不明なこと言ってるのでごじゃるか!あと顔が気持ち悪いでごじゃりゅ!」

「あれ?俺なんかやっちゃいましたかね?」

 

どうにもニヤニヤが止まらない。

これなら一式装備を整えて余りあるし、なんなら起業すらできそうだ。

 

ちなみにただのボールペンがそんな大金に成り代わったマジックはこうだ。

納屋衆の寄合所に殴りこんだ俺は、まずボールペンの使い方を実演して見せた。

まぁ紙に書くだけなのだが。

そしてボールペンを新しい南蛮の筆と偽り、競売形式で売ると宣言したのだ。

元々金持ちの多い納屋衆でしかもここは津島、外国人の出入りもそれなりにある街で南蛮文化への興味を皆が持っている。

あとは競りのスタート金額を50両とバカ高く設定して納屋衆の意欲を煽ったのだ。

すると納屋衆たちは我先にと諸手を上げて賭けだした。

そりゃもう青天井に。

結果落札したのは津島一の収集癖で知られる納屋の豪商であったのだが、なんと彼は自前の蔵を売るとまで言って金を工面してしまった。

流石に少し申し訳ないと今更感じている。

せめて新品のボールペンを差し上げたかったが、生憎この時代にボールペンはオーパーツが過ぎる。

近いうちにかすれてしまうであろうボールペンと泣いて喜ぶ豪商に対してひきつった笑みを浮かべながらそそくさと金だけ貰って寄合所から逃げてきて今に至る。

 

 

「ま、まぁこれで金は手に入れたし、なんだかいたたまれないからさっさと買うもの買ってずらかるぞ。」

「承知でござる。して、何をご所望でござるか?」

「ひとまずはこの先の備えも兼ねて刀と脇差、あと甲冑だな。

その後は馬も仕入れたいと思うんだが、揃うか?」

「お任せでござる。そうと決まれば鍛冶屋からでごじゃるな。」

「よし、行くか!」

 

元々盗賊みたいなことをしているだけあって五右衛門は案外ノリが良い。

そうして俺と五右衛門は津島の海岸近くの工房街へと足を向けるのであった。

 

 

 

 

津島の工房に入った俺はまず防具鍛冶の暖簾をくぐった。

刀などは見て買えば良いが防具はサイズを合わせる必要がある、この時代の店売りの防具は俺にはいささか小さいので採寸を先に済ませ作ってもらっている間に街を見てまわる算段だ。

様々な甲冑が並ぶ店内を物色し、軽装だが胸あてや脛あて・袖などはしっかりとした具足と頭のサイズに合う兜を見繕って採寸とお代を済ませた後、俺は五右衛門の案内で武具屋を訪れていた。

 

 

「へぇ、刀にもいろいろあるんだなぁ。」

「小笠原氏、ご存知ないのでござるか。日本刀は長さによって読み方が変わっちぇきゅるのでごじゃりゅよ。」

 

 

五右衛門の解説を聞きながら物色を続ける。

どうやらこの店には木剣や竹刀のような練習用の剣も置いてあるようだ。

街の子供が目を輝かせて刀を見ている姿も見える。

 

 

「しかし、刀の良し悪しは正直よく分からんな。店主に聞くか・・・。

おーいご主人はおられるか?」

 

 

すると店の裏手から刀匠と思わしきいかにも職人気質っぽい見た目の老人が出てきた。

思えばこの時代の人とまともに話すのは俺が未来人だと知っている五右衛門を除けばこれがほぼ初めてだ。

違和感が出ないように喋りに気をつかうようにしなくては・・・。

 

 

「お呼びかな?」

「あぁ、太刀と脇差を見繕いに来たんだが、これというものがいまいち分からんのだ。

ご主人に聞くのが手っ取り早いと思うてな。

銭に糸目はつけないから一番良いのを頼む。」

「なるほどのう…、それならば良い物があるわい。あいや暫く待たれよ。」

 

そういうと店主は一度裏手に戻り、刀と脇差を一本ずつ携えてきた。

 

 

「これはどうかの、今朝方備前より届いた一品じゃ。」

 

 

受け取り刀を抜く。

鏡のように磨き上げられた刀身は俺の顔をくっきりと写しており、刃には傷一つない。

薄い刀身にも曲がりなどは見られず、工芸品の域に達しているといっても過言ではない、間違いなく一級品だと思えた。

 

 

「その刀はな、この地の領主様であった織田信秀公に献上するつもりで備前の一級鍛冶師に大枚をはたいてつくらせたんじゃが、件の信秀公は病に伏して亡くなられてしもうてのう・・・、どうすべきか悩んでおったのじゃ。」

 

 

「なるほどな、だがそれなら家督を継いだ織田信奈だったか?に送れば良いのではないか?」

「うむ、普通ならそうするのじゃが・・・、お主は聞いてはおらんか?織田信秀公の葬儀のことを」

 

織田信秀の葬儀といえば歴史を齧ったことがあればピンとくる。信長が位牌に焼香を投げつけたというアレだ。

昨日五右衛門から織田家について簡単に説明を受けたが、どうやら信長は女性らしく、名前も「信奈」と名乗っているようだ。

俺の知っている歴史と異なるため、これが本当にタイムスリップなのか少し怪しい感じもしてきたが、しかし信奈になっていても尾張の大うつけであることに変化はないらしい。

しかしこれはチャンスだ、織田信奈に近付く口実として使わない手はない。

 

「確かに信奈姫は幼少の頃より津島にはよくおいでになられていた。この鍛冶にも幾度となく来ておったし渡せるのであれば渡したいのじゃ。

しかし葬儀の件が噂となり信秀公の刀など今更受け取って貰えるか・・・、それに家督を継いで間もなく今川が攻めてきおった。

ようやく刀は届いたがこの状況では刀一本を那古野へ届けるのも老骨には荷が重うての。」

「なるほどな・・・仔細承知した。ならばこの刀と脇差は俺が買い取らせてもらおう。

ついでに信奈殿にも渡せる機会があればお渡しすることを約束する。」

「お主、そう出来るのであればこちらとしてはありがたいが・・・そんなことが出来るのか?」

「おう!任せておけ。俺は元々織田家に仕官することが目標だったからな。これくらいのことは容易い。」

「おお、ありがたい。それではお頼み申しますぞ。」

 

こうして俺は織田信秀の遺品ともいえる刀を引き取ることとなった。

簡単に譲って貰えたが、やはりこの時代に珍しい体格で武人と思われているのだろう。

店主が刀を納める箱を取りに行ってくると言うので店先で待たせてもらっている間に、俺は今後の事を考えていた。

信秀の刀を手に入れたことで、次の目標として織田家へ士官するという道筋が見えてきたのだ。

今の織田家は今川家からの攻撃に加えて内部分裂もあり喉から手が出るほどの人材不足、つまり新参者にチャンスが巡ってきやすい環境にある。

ある程度の実績を積み上げて士官すれば初めから足軽働きということはないだろうし、俺が秀吉の代役を務める可能性を考慮しても悪い選択肢ではないはずだ。

ただそうなると、本能寺の変という史実と向き合う未来が来るのだが、それはまたその時考えるとしよう。

 

 

 

心の内でこの先の方針を定めていると、店主が戻ってくるなり問いかけてきた。

「して、お主初めて見る顔じゃが名はなんというのじゃ?」

「ああ、俺は小笠原金槻だ。一応今は素浪人・・・ということになるかな。」

「うむ、金槻殿。これも何かの縁じゃ、もののついでで済まぬがもう一つ頼みを聞いてもらえんかの。」

「ん?何だ申してみよ。」

「実はじゃの、美濃の山中に明智という集落があるのじゃが、そこの生まれの姫武将に種子島を仕入れるように頼まれておったのじゃ。」

「種子島・・・少し前に南蛮から伝わった武器か。」

「うむ、品はとうに届いておるのじゃが、つい最近美濃でも政変があっての。

そのいざこざに巻き込まれておるのか一向に取りに来られぬのじゃ。」

 

美濃の政変、明智という地名を聞いてピンときた。

 

「美濃の政変・・・油売りの斎藤道三が土岐家を乗っ取ったという奴だな。」

「そうじゃ、その明智の姫は十兵衛という。どうにも斎藤道三の側近となったらしく国盗りによる国内の安定化に忙しいようなのじゃ。」

「なるほど、美濃にいる明智十兵衛殿に種子島を届ければ良いのだな?

丁度良い、この後犬山へ向かうつもりだったから少し足を延ばせば良いだけだ。」

「かたじけないの、それではお頼み申す。種子島も取ってまいるから向かいの茶店で少しくつろいでおられよ。」

「ああ、わかった。」

 

かくして、俺は刀の他に明智十兵衛という姫武将に渡す種子島も預かることとなった。

そんな俺の心の内はこうである。

「いやこの店主何者だ?というか光秀も女の子なの!?」

 

 

 

 

 

「小笠原氏、先ほど店で織田家に仕官いたすと申しちぇいたでごじゃるが、それがし初耳でごじゃるよ。」

 

武具屋の向かいの茶屋で団子と抹茶を嗜んでいると、どこからともなく五右衛門から質問が飛んできた。

どうやら俺の買い物中も武具屋の屋根裏に潜んで話を聞いていたらしい。

 

「ああ、言ってなかったからな。」

「大丈夫でござるか?今の織田家はかいめちゅしゅんじぇんにごじゃるが・・・」

「心配ない、むしろ織田家にはここから成り上がる要素に満ちているんだ。」

「どういうことでごじゃるか?」

「確かに見た目で言えば織田家は今川に攻められ、しかも内部は清州・那古野・末森で分裂状態だ。しかし今織田家が滅ぶことはあり得ない。

まず今攻めている今川家だが、攻めているとは言っても戦っている兵はほぼ三河の松平だろう。」

「そうでござる。今川は松平を臣従しゃしぇちぇいりゅでごじゃるよ。」

「三河兵は数が圧倒的に足りていないからな、流石に分裂状態の織田でも抑え込める。

さらに仮に今川本隊が出張ってきたとしても奴らの本拠は駿河・遠江。あまりに遠い。」

「遠いと、どうなるでござるか?」

「簡単なこと、疲れるだろ。疲弊した兵なんぞいくら居ても同じことさ。」

「なるほど、確かに昨日の今川勢の勢いは兵数の割には大しちゃことにゃきゃったでごじゃるな。」

「ああ、数が少ない上に連戦の松平と遠征軍の今川だからな。覇気なんてありゃしない。

加えて言えば織田家は鳴海を取られたとは言え、熱田からこの津島にかけては絶対に死守するだろう。

背後が最後の本拠なんだからそりゃ織田勢も火事場の馬鹿力で必死になる。元来防戦は本拠に近い方が有利だしな。」

 

 

「・・・織田家が今川では滅ばないということは分かったでござる。しかし成り上がるというにょはにわかに信じりゃれにゃいでごじゃるな。」

「そうか?この津島を押さえておくだけで織田家には無尽蔵に銭が手に入るから軍備に投資し放題だぞ。

それに尾張は平地で人口も多い。この時代は大抵農民兵だから人口の多さがそのまま国力になる以上、兵士として動員できる人数の多い尾張や摂津・相模のような平地を抑えている勢力が大抵強いんだよ。武田みたいな特例もいるけど。」

 

「うーむ、それがし小笠原氏のことを少し勘違いしていちゃでごじゃるな。」

「え、どう思ってたの・・・」

「戦場で右往左往して何も出来ない無能だと思っていたでござる。」

「なんでそこだけ噛まないんだよ!ちょっと傷ついた!」

「して小笠原氏、この後は如何するのでござるか?」

「スルーなのね・・・。今日はひとまず津島で掘り出し物は無いか見て回ったら犬山へ向かって川並衆と顔合わせだな。

これだけ銭があれば馬も買えるし少し余裕が出来た。のんびり行こうか。」

「小笠原氏、それがしが聞きたいのは今日ではないのでござる。今後の行動の方針を教えちぇいちゃぢゃきたいのぢぇごじゃる。」

「あー、今後ね。ひとまずは先に美濃かな、例の種子島を届けないと。」

 

織田信奈への士官と明智十兵衛へのお届け物、どちらを先に済ませるかで俺は明智十兵衛をえらんだ。

明智十兵衛、俺がいた現代では明智光秀という名で知らぬものはいない名将にして、本能寺の変を起こしたと伝わる謀反人。正直会うのが怖いが歴史好きとしては楽しみでもある。

先程も少し考えたが、織田家へ士官する方針を決めた以上は本能寺という出来事が起こる可能性を考えねばならない。

もちろん秀吉ではなく俺が入ったことでそもそも本能寺の変は発生しないこともあり得るが、織田信奈をいつか死ぬ君主として先の準備をするのか、本能寺を回避する方向でいくのかの結論は出ていない、それを決めるのは士官後でも遅くないだろう。

そして織田家士官に際し有利な条件を作るためにも、まずは今夜会うことになる五右衛門の仲間、川並衆も含めて使える手札を増やすことが先決だと結論づけた。

 

「可能であれば明智十兵衛とは顔見知りになっておきたいな。今後織田家に仕官するにしても斎藤家との伝手は欲しい、早速の大仕事になるな。」

「織田家と斎藤家は今敵対しているでごじゃるが、斎藤家との繋がりは織田家仕官にはみゅしろ邪魔ではごじゃらぬか?」

「いや、逆だ。今の織田家は四方全てと敵対している。その中から確実に和議を結ぶとなると斎藤家一択だと思うよ。」

「にゃるほど、まぁそのあたりは小笠原氏にみゃかしぇるでごじゃるよ。」

「ああ、ありがとう。一応五右衛門にはその先の方針も伝えておくよ。

美濃に種子島を届けたら川並衆と共に近江へ向かい、そこでこの金を使って米をしこたま買う。」

「買って、どうするでござるか?」

「売る。簡単だろ?そのためにも五右衛門に頼みがあるんだが。」

「な、何でこざるか。」

「この津島や周辺の商人街の米の相場を調べておいて欲しいんだ。出来ればこの先道中通る所も全て。頼めるか?」

「それくらいならお安い御用でござるが・・・本当にそれで織田家に仕官できるのでごじゃるか?」

「まぁ見てな。お、武具屋の爺さん来たぜ。」

 

 

 

武具屋の爺さんは大きな布袋を2つ持って現れた。

 

「お待たせしたのう。こちらが刀と脇差じゃ、してこちらが種子島じゃ。」

「ありがとうございますご主人。」

 

爺さんは依頼の品一式を手渡すと俺に深々と頭を下げた。

 

 

「では、よろしくお頼み申しましたぞ。」

「お任せください!それじゃあ五右衛門、行こうか。」

「承知にござる。」

 

 

その後、俺と五右衛門は防具鍛冶に甲冑を取りに行き

馬を2頭と馬具も仕入れ、一路犬山へと向かうのであった。

 

 

 

 

「・・・はい、これで米については大丈夫です。では、明日那古野城の米蔵までお運びいただけますね?」

「ええ、此度の戦でも相当に米が必要なようで。米五郎左様」

「そうなのです。今川家に押されつつあって米も目減りしている状態は40点です。何か逆転の一手は無いものか、家臣たちも頭を悩ませているのですよ。」

「左様でございましたか。それでしたら逆転の手になるかは分かりかねますが、面白い噂なら先ほど耳にしましたぞ。」

「ほう、それはどのようなもので?」

「なんでも、納屋衆の寄合所で素浪人が見たこともない南蛮の筆を持ち出して競りを行ったそうです。その筆はガラスの細工のようなもので、小筆より更に細いものらしく中に墨汁を詰めて書けば薄く文字が書ける代物らしいのですが、なんと三百両もの値がついたとか。」

「三百両とは・・・してその筆を売りこんだ素浪人はいずこへ?」

「それがどうにも足取りが掴めませんでな、寄合所を出た後は武器防具を揃えに工房街へ向かったようで、一級品の武器防具に種子島まで携えて戦支度でもしているのかと思えば犬山の方へ向けて去っていったとのことです。」

「犬山ですか・・・」

「話によれば小さな乱破を共に連れていたとのことですので、もしや名の立つ将かもしれませぬ。」

「なるほど、その浪人の風貌は分かりますか?」

「えぇ、なんでも顔の若さの割に大柄なようで、あとは少し黄色がかったガラスを嵌めた眼鏡をしていたとのことです。」

「眼鏡ですか、それはまた珍しいものを・・・しかし南蛮の筆に眼鏡となると南蛮人ではないのですか?」

「それがしもそれを疑いもうしたが、どうにも日ノ本人らしいのです。あと言葉の訛りが若干尾張訛りのようだが、その割には少し風変りな口ぶりをしていたとのことでして。」

「眼鏡の大柄な男で日本人・・・実は昨日、鳴海から退いてきた部隊の将が大柄で風変りな身なりの男が突如現れたと思えば、かなりの逃げ足で去っていったという報告をしているのです。

その将は気味悪がって逃げた方向に矢を射かけて撤退したそうなのですが、何か関係あるのかもしれません。これは一度調べる必要がありそうですね・・・。」

 

 

米五郎左こと丹羽長秀は、この不可解な人物の捜索を小姓に指示するのだった。




2021/3/18追記
ちょっとした誤記修正をおこないました。
あと書いてから間をあけて読むと津島の工房の店主からそこはかとなくチュートリアル担当っぽさが出てる気がしますね・・・
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