織田信奈の野望IF「金は天下の回り物っ!」   作:Takenoko is God

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第03話 川並衆

尾張・犬山近郊「川並衆のねぐら」

 

 

夕刻前に津島を発ち、俺小笠原金槻と相棒の忍、蜂須賀五右衛門が犬山へ着いたのは既に夕暮れだった。

 

道中、乗馬経験あるからと調子に乗って馬を選んでいた俺だが、実際に走らせるとなると存外難しく、五右衛門から手ほどきを受けていたら思っていたより遅くなってしまった。

 

「全く、小笠原氏が馬にも乗れにゅとは思わなきゃったでごじゃる。」

 

「・・・いやホントすみませんでした。調子乗ってました・・・」

 

ちなみに今は馬にも慣れて自分で手綱を握っているが、それでも五右衛門の先導つきなので、また近いうちに練習しなくてはと心に決めている。

 

 

 

そうこうしているうちに犬山に到着し、今は川並衆との合流地点を目指している所だ。

 

「しっかし、犬山は街の雰囲気が俺がいた時代と大差ないぞ・・・」

 

まだこの時代に飛ばされて丸1日しか経ってないにも関わらず、そんなことを呟きつつ感慨深げに木曽川沿いを駆ける。

 

橋こそ無いが川と山の風景、回りの建物が平屋ばかりなので大きく見える犬山城の城郭(ちなみに犬山城は現代でも戦国期の天守が改築されつつも現存している)と城下町の本町通りの街並みは俺の知っている犬山の城下町とそう違いは無かった。

 

 

「さて小笠原氏、着いたでごじゃるよ。」

 

「おう、ここが川並衆のねぐらか。しっかし何もない所だが・・・」

 

俺と五右衛門が馬を止めたのは犬山から少し行った先にある、木曽川沿いの山林だった。

 

「ふ、ふ、ふ。拙者の郎党ども、川並衆でごじゃる。あいことばはやみゃ!」

 

 

「「「親分の舌っ足らずが、出たあああ!待っていたぜえ!」」」

 

 

突如、ズザザッ!と森の四方から屈強な野郎どもがわらわらと現れた。

 

なんというか、圧が凄いし暑苦しいし殺伐としてる気がする。

 

「うにゅう。だきちゅくな、だきちゅくなぁ!」

 

五右衛門はムサい野郎どもにド派手な祝福を受けていた。

 

絵面が一歩間違えたら「くっころ」だなぁと一歩引いて俺はその惨劇を眺めていた。

 

 

「五右衛門、本当にこいつらの親分なのか?弄ばれてるようにしか見えんぞ・・・」

 

そう言いつつ五右衛門を救出する。

しかしどうやらその行動が川並衆のカンに触ったようで、

 

「親分に抱きつかれてやがるこの小僧!処せ!!」

 

「俺たちの永遠の偶像であられる親分になんて真似を!処せ!」

 

「こいつぁとんでもねぇ悪党に違いねぇ。いや違っても俺たちが悪党にする!処せ!!」

 

 

・・・なんだか唐突に思考が現代に戻ってFFF団みが深いなと感じた。

 

 

 

そんな気持ちが緩んだ直後、殺気を感じた。

次の瞬間首筋に冷たい何かを感じた。

 

「おいこら、坊主。親分に代わってこの前野某さまが川並衆を紹介してやらあ。

とにかく親分には容易く触れるんじゃねぇ、次に触れた殺すぞ。いいな?」

 

「お、おう分かった。だからこの物騒なものを収めてくれ、おちおち会話も出来やしねぇ。

それで、前野某殿だっけか?あんたがここのまとめ役ってことでいいのかな?」

 

「ああ、普段は忍稼業で留守にすることが多い親分の代理を務めてる。」

 

その後前野某から川並衆についての説明を受けた。

 

曰く、川並衆は元は五右衛門の父親が率いていた川族だったとのこと。

曰く、ここにいるのは盗賊とはいえ元は侍だったのが落ち延びたなれの果てだということ。

曰く、五右衛門は木下藤吉郎と組み大名に奉公して出世したら川並衆のごろつきを再び侍の身分に戻そうと尽力していたとのこと。

 

つまり五右衛門は俺に仕えることで、川並衆の再雇用を目指すという目的を持っているということだった。

 

ちなみに川並衆たちは川族としてここ犬山をねぐらにしているが、一応国人衆としての顔もあるらしく少し木曽川を下流に下ったところにある玉ノ井周辺に国人衆としての屋敷と小さな田畑を持っているという。

表向きちゃんとした組織が裏で悪事をやっている、まるでヤクザだ。

 

大方の説明を聞き終え、川並衆と五右衛門のスキンシップもひと段落し、他の川並衆の面々も落ち着いたところでついに俺の挨拶の時間となった。

 

 

 

「お初にお目にかかります。俺の名は小笠原金槻、五右衛門には既に伝えているが多分未来から来た・・・と思います。

正直自分でもまだ状況の整理がついていないところもありますが、木下殿と五右衛門に命を救われた以上、彼の成そうとしたことを受け継ぎ、皆様方を武士の世界へと戻すことに全力を尽くしますので、何卒宜しくお願い致します!」

 

 

すると川並衆から歓声と共に次々に質問の声があがった。

 

「未来って、だいたいいつ頃からきたんだ。」

 

「小笠原ってことは上流の信濃から落ちてきたのか?そういえば最近小笠原氏が武田に滅ぼされたとか聞いたが。」

 

「だいいち、俺たちを武士に戻すってのもどうするんだ?お前だって素浪人だろうが。」

 

まぁこうなるよな・・・と心の中で毒づきつつもそれぞれに答えを返していく。

 

「今の時代から大体500年弱ってところだ、俺もなんで急にこんなことになったかは分かっていないが、ひとまずはその原因を探すこともしつつこの世界で生き抜いていきたいと思っている。

あと信濃の小笠原氏とは直接関係は無い。もしかした俺の祖先がその小笠原氏なのかもしれんが、そこまでは何とも・・・」

 

・・・

 

「なるほどな、お前の素性については大方理解したぜ。第一ここは野盗の集まりだからな、そんなに出自は気にしねぇ。だが俺たちの頭を張る以上、最後の質問にはしっかり答えてもらうぞ。」

 

そう前野某に促される。

 

「もちろん、じゃあ肝心の計画について話すから全員よく聞いてくれ。

ひとまず今後の目標だが、俺は織田信奈に仕官するつもりだ。

とは言ってもただで門を叩いても門前払いされるからな。

これから暫くは織田信奈に持っていく手土産を用意するのに時間を使う。

そのためにも皆に協力してほしいこともあるから合わせて説明するぞ。

 

まず第一に美濃の斎藤家との伝手を作る。

今の織田家は四方が敵だからな。

どこか一方、出来れば大きな商業地である井ノ口を抑える美濃の蝮・斎藤道三と和議を結ぼうと画策するはずだ。

それが商業施策が強みの織田家の方針に最も合致しているからな。

幸いにして美濃の伝手にはとっておきの手段を既に見つけている。

実は今日津島の武具店で美濃の明智十兵衛という姫武将に渡す予定の種子島を預かっている。

明智十兵衛は斎藤道三の側近だ、これを渡す際に近づいて親交を得る。

 

次に第二の手土産として米を集める。

現在織田家は今川家に攻められている。

防衛自体は出来るが兵糧の不足や高騰は著しいだろう。

そこで俺が今日手に入れた銭を使って米をかき集める。

とは言っても俺の手持ちの二百両じゃたかが知れている。

とりあえず実際に商売で使うのは永楽銭だから後で両替するが、確か1両と1貫がほぼ同じだからな。ひとまずこの手持ちを増やすことから始める。

 

そこでお前たちの出番だ。ひとまずこの後五右衛門には昨秋から今に至るまで戦が無かった国を調べてもらう。

また別に川並衆にはこの周辺の町の物産品の相場を調べてもらう。

あとは安く売っている所と高い相場がついている所のある産物を買い集め、高い所でまとめて売れば差額が儲けになる。

金がたまれば戦がなかった町に赴いて米をしこたま買い込む。

戦が無いってことは米がだぶついてるってことだからな、あとはそれを尾張に運んで仕官の手土産にするだけだ。」

 

 

「なるほどな、確かにそれで大量の米を持ち込めば織田の姫さまにとっては喉から手が出るほど欲しい逸材に見えるって寸法か。」

 

「ああ、どうせ仕官するんだ。それならより度肝を抜いてやらんと面白くないからな。

一応他にも個別で手を打つが、織田家が今川に白旗あげてしまっては元の木阿弥だからな。

ひとまずは一か月で集めれるだけの駒を集める。

それを全部ぶつけて任官される官職の格をあげてやるさ。」

 

俺が渾身の決め顔で悪どい笑みを浮かべてやると、川並衆の野郎どもも一様に表情を緩め、そして会話は終わったとばかりに次の瞬間酒盛りが始まった。

やはりいつの時代も呑みニケーションがあるのは変わらないらしい。

一応年齢上酒はマズいのだが、この時代だと俺はとっくに元服している歳、なら良いかと堂々と酒を煽った。

 

こうして俺と川並衆の通称「山吹色のお菓子で織田の蔵を埋める」作戦が始まった。

 

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