ドンテンカーンドンテンカン、ドンテンカーンドンテンカン   作:コジマ汚染患者

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第5話

「はぁああああ!」

 

「無駄だ」

 

角刈りをまず倒さないことには始まらない。拳を握り、全力の突きを放つ。しかし、角刈りがまたしても見えないほどの速さで距離を取り、そして高速で接近してくる。

 

「っだらぁ!」

 

「っ!こいつ・・・!」

 

(近づかせるのはまずい・・・だが距離を取りすぎてもダメだ!人質から離れすぎたら、チャラ男の方が動いたら対処できねぇ!)

 

接近してくる角刈りに蹴りを放ち必要以上に近づいてこないよう牽制する。何にしても今重要なのは人質になってる女性の救出だ。・・・ってか、あいつは

 

(なんでキラキラしてんだよあのアホ!?)

 

ふと人質の女性を見ると、何がなんだかと怯えた表情の3人とは対照的に、まるで新しいおもちゃを見つけたような子どものような目をしている発目がいた。

 

「よそ見してんじゃねぇ!」

 

「!っと・・・!」

 

いかん、危うく蹴りをくらうとこだった。しかし、先ほどから攻撃してくるのは角刈りだけで、チャラ男はニヤニヤしているだけだ。

 

「こいつ1人じゃぁ話にもなんねぇな!てめぇもかかってこい!」

 

「・・・言ってくれるな」

 

「はっはっは!面白いこと言うな。・・・が、ダメだ」

 

不機嫌になる角刈りと、笑いながらも不機嫌という妙なテンションのチャラ男。額に手を当て、足で地面をトントンと叩いている。

 

「テメェがどんな理由で俺らを監視していたのかは知らねぇが、一つわかることとすりゃあまず人質が有効だってことだ。人質が関係ねぇなら最初から突入して俺らとやり合えば良いんだしな。それと、今の発言でまた良いことがわかったぜ。どうやら俺らが離れさえすれば人質を助ける策があるみたいだな。尚更ここから動く理由がねぇ。何故なら・・・」

 

「!?」

 

「俺様の最強の個性があるからなぁ!」

 

チャラ男が指を鳴らすと、またしても目に見えない衝撃波が飛んでくる。

前転回避し背後を確認すると、まるで鋭利な刃物で斬ったかのような斬撃痕が工場の壁にできていた。

・・・こいつの個性、もしかして!

 

「セァ!」

 

「!?」

 

接近してきた角刈りに蹴りを入れ、距離ができたのを確認してチャラ男へと向かう。

 

「お、やるぅ!でも良いのかぁ?」

 

「がっ・・・!?」

 

「やってくれたな・・・!」

 

「うちの相棒は、早くてタフだぜ?」

 

ふっ飛ばしたはずの角刈り・・・!こいつ、001の蹴りをくらってなんで!

背後から奇襲を受け、地面に組み伏せられてしまう。上に角刈りが乗っかり、無様にも地面に這いつくばらされ、地面を削るように滑ってくる俺を見下ろして、さらに笑みを深めるチャラ男。

 

「ははは・・・!お前たしかに身体能力は高いなぁ!でもな、しょうがないよな?俺らより弱いんだからよぉ!」

 

「ぐっ、こっ、このぉ・・・!」

 

「動くなよ」

 

狂ったように笑い続けるチャラ男を睨みつけると、ピタリと笑いを止め頭を踏みつけてくる。・・・くっそ、仮面越しとはいえ痛てぇ。

 

「さてと、テメェは何処のどいつだぁ?ヴィラン(同業者)か?ヴィジランテ(クソみてぇなむかつくやつ)か?それともやっぱりヒーロー(ゴミ)か?」

 

こいつ、頭をグリグリと・・・!角刈りも力強ぇ、どうやって鍛えりゃこうなるんだよ。

 

「・・・答える必要があるとでも?」

 

「・・・」

 

歯を食いしばりながらそう言うと、チャラ男は真顔のまま頭から足をどかし、人質の元へ向かう。・・・おい、まさか、やべぇ!

 

「そうかそうか・・・じゃあ、『1人につき一回』。意味はわかるよなぁ?」

 

「ヒィ!?」

 

そっと腕を持ち上げ、指を重ねて人質の方へと向けるチャラ男。くそ、反応をミスったか!

 

「待てよ!相手は俺だろうが!」

 

「はいはいそーだねー。でもお前が舐めた態度とるから、1人消えちまうなー。あー可哀想だなぁー」

 

そう言って指をこすり合わせるチャラ男。感情のままに立ち上がろうとするが、角刈りはまるで岩のように動かない。

 

「ど、っけぇぇぇ!」

 

「退くかよ。そこで黙ってみてな」

 

「まずは、一人ィ!」

 

チャラ男が指をこすり合わせるのを、スロー再生のようにゆっくりと見ていた。

 

「よいしょー!」

 

「!?」

 

「っな!?」

 

突然、何かが人質の中から飛び出して、チャラ男が吹っ飛ぶ。そのまま資材の山へと飛んでいき、山が崩れ姿が見えなくなる。・・・あの伸びる腕のようなアイテム!

 

「おい、緩んでるぜ?」

 

「しまっ!?」

 

吹っ飛んだチャラ男に気を取られた角刈りを背中から落とし、そのまま襟を掴む。相方がやられて動揺したのか、簡単に抜けた。

 

「はなせ・・・!」

 

「オーケイ・・・行ってこい!」

 

「!?」

 

暴れ出そうとする角刈りを振り回して、勢いをつけてチャラ男へとぶん投げる。未だ動揺が抜けきらなかった角刈りは個性で飛ぶことも出来ずチャラ男を巻き込んで置いてあった資材の山へと突っ込んでいった。

 

「無事ですか!?」

 

タイミングだと判断し、人質4人を立たせる。震えている人もいたが、どうにか歩くことはできるようだ。

 

「・・・君も、早く逃げるんだ!」

 

「待って下さい、あなたのそのスーツ凄いですね!それに見ましたか、のびーるハンドの実力!パワーに関して10%ほど増強してみましたが、いやー上手くいきました!」

 

「いいから逃げろや!」

 

呑気に一人だけそんなことを言ってくる発目に苛立ちつい素で突っ込んでしまう。すると流石に分別くらいはあったのか、他の女性を気遣いつつ工場の入り口に向かう。

 

「・・・!伏せて!」

 

「きゃぁぁ!」

 

突如背後から殺気を感じ叫ぶ。チャラ男の個性の衝撃波が俺達の斜め上を通り過ぎて工場の天井に直撃する。堕ちてくる瓦礫から守るため、発目を抱えて倒れ込む。暫くして顔を上げると、完全に入り口は塞がれており、また窓のあった箇所も滅茶苦茶に壊され、逃げられなくされていた。

 

「くそ、他の人は・・・!?」

 

「うぅ・・・」

 

「た、助けて・・・」

 

どうやら怪我はしているが無事だ。奇跡的に血を流している人もいない。ただ、3人とも気絶しているようで、揺すってみたが起きない。

 

「あー・・・何?お前ら」

 

「!」

 

「全くやってくれる・・・!流石に殺そう!」

 

「そーだなぁ。ここまで馬鹿にされるとそれしか考えられねぇわ」

 

チャラ男と角刈りが、怒り心頭といった面持ちで現れる。角刈りが纏う風も強力になっており、チャラ男の目からはハイライトが消えている。

 

「あの女は殺そう。他のも、楽しんでからやるつもりだったけどもういいわ」

 

「俺はあの黄色いのだ。・・・っ、おい、時間だ」

 

「あ?・・・あー。しゃーねぇ、もっかい打つか」

 

そう言って二人とも同時にポケットに手を入れ、注射器のようなものを取り出す。・・・薬か?なんにせよ、これ以上は多分守りきれない、攻勢に出るしかねぇ!

 

「おい発・・・アンタ、この人達を頼む。介抱してやってくれ」

 

「あなたは?」

 

「俺は・・・」

 

ベルトのジャッキーへと手をかける。多分だが、仮面の中の俺は獰猛に笑っているんだろう。戦いを目前にした緊張感と高揚感に浸かりながら、ヴィラン達を睨む。

 

「・・・あいつらのお相手をしないとな。寂しがって離れてくれそうにない」

 

「言うねぇ・・・殺す」

 

「おいおい、二人とも相手してくれんのか?・・・生意気ィ〜」

 

相手が注射器を首筋に当て、親指をぐっと押さえ込むのと同時に、ジャッキーを弾くように操作する。

 

ライジング!

ディストピア!

 

「・・・っ、来い!」

 

「ははははhハハハ!」

 

「く、くくくくくくくkkkック!」

 

明らかに様子がおかしくなったヴィラン達。奇声を発しながら目を爛々と光らせ、それぞれに攻撃の予備動作に入っている。

痛みを堪え、体から吹き出る血の色の蒸気を身に纏いながら、俺は駆け出した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「これは・・・!」

 

私は、目の前の光景に目を疑った。帰り道、あのチャラ男なヴィランに捕まった私は、似たような経緯であろう他の女性の方達と身を寄せ合い、ヴィラン達の様子を見ていた。助けに来てくれたらしい黄色い装甲のスーツを着た・・・多分男性ですね、彼がヴィラン達と戦うのを見ていたが、状況は芳しくなかった。スーツの彼もかなり体術が強いのは素人目に見てもわかりましたが、いかんせんヴィラン側の個性が悪い。

 

風を纏い高速移動する個性に、指を鳴らすだけで手を伸ばした方向に鎌鼬のような衝撃波を飛ばす個性。遠距離と近・中距離のバランスの取れた個性であり、チャラ男の攻撃を避ければ角刈りが、角刈りをよければチャラ男が、といった具合に翻弄されていました。

 

彼が捕まった際にはもう終わりか、とも思ったが、ふとまだ背負っていた鞄の中にあるアイテムを思い出し、咄嗟に近づいてきたチャラ男を殴り飛ばしたのは痛快でした。

 

そして今。出口を塞がれ他の人達が気絶し、逃げることがほぼ不可能となった中、私は目の前の光景に目が釘付けになっっていました。

 

「おおおおおおお!!」

 

「ははははは、やるなぁおい!だがさすが個性増強薬、威力が段違いだぜぇ!!」

 

「こいつら・・・!」

 

ヴィラン二人は、謎の薬を打ってから様子がおかしくなった。急にテンションがハイになっており、さらには個性の威力が明らかに上がっていた。角刈りは先程までより速度が上がり、視認するのも難しくなっている。チャラ男に至っては、あまりに指鳴らしが早すぎて、パチン、パチンどころか、パチチチチチチ!となっている。無差別に撃ち込んでいるのか、工場内の至る所に斬撃痕が出来てゆく。

 

「やらせるかよぉ!」

 

しかし対する彼も負けてはいなかった。妙な音声が流れると同時に、全身から血の蒸気を噴き出しており、角刈りに負けない・・・いやむしろそれをやや超えているほどのスピードで移動しヴィランの攻撃から私達を守っていた。時折目の前に現れ、ヴィランの衝撃波を防いでくれているが、その時以外は黄色い線のような光しか見えず、跳ねるように工場の壁、床、天井が軋んでいる。

 

「あああああうぜぇぇぇ!いい加減くたばれぇ!」

 

「死ね!」

 

「誰が死ぬか!テメェらこそぶっ倒してやる!」

 

均衡が崩れたのは、その後すぐだった。

 

「・・・ぐっ!?」

 

「・・・!逃げて!」

 

「隙ありぃ!」

 

彼が・・・全身の蒸気が消え、急に停止し膝をついたのだ。頭を下げ、苦しそうに片膝をつくその隙を逃さず、チャラ男の衝撃波と共に角刈りが上空からかかと落としをしている。

辛うじて見えたその動きに咄嗟に叫ぶ。しかし明らかに逃げるには間に合わない。

 

「・・・せあ!」

 

「なっ!?・・・ぐあぁ!」

 

「!相棒!?」

 

しかし、彼は弾かれたように手を伸ばし、上空から襲いくる角刈りの足を目にも留まらぬ速さで掴む。驚愕に染まる角刈りの顔、しかし次の瞬間その表情が苦悶に歪む。

 

「てめぇ、相棒を盾に!?」

 

「近くにいた、こいつが悪い・・・まじで威力高いな・・・スパッといってるし」

 

立ち上がる彼とは対照的に、倒れ込む角刈り。どうやら最初からわざと止まり、角刈りをおびき寄せたようだった。しかも、チャラ男の攻撃の盾に使ったのだ。・・・角刈りは背中に傷を負い、気絶しているようだった。

 

「テメェ、テメェェ!」

 

「っと!来いよ、あとはテメェだ!」

 

相方が倒れたことに怒りチャラ男が再び乱射を開始する。彼はすぐに動き出し、先ほどには劣るものの素早い動きでチャラ男に接近する。

 

「なっ!?」

 

「オラァ!」

 

「フグッ!?」

 

見事なボディーブローが決まり、ヴィランが飛んでいく。壁にぶつかり停止したが、痛みで呻きながらのたうちまわっている。

 

「とどめだ・・・!」

 

(行ける!)

 

彼がダメ押しとばかりに拳を握りヴィランへと接近していく。

それを見ながら、私はどこかでもう大丈夫だと気を抜いていたのでしょう。

 

「捕まえたぞ・・・!」

 

「!?」

 

私の腕が、突如強く握り締められていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

終わりだ・・・!ヴィラン達の連携を崩し、いまチャラ男を追い込んだ。こいつを気絶させれば・・・!

 

「止まれぇ!こいつがどうなってもいいのか!?」

 

「!?」

 

警戒しつつまさか、と振り向く。そして最悪の状況に愕然とする。

 

「すいません・・・!」

 

「それ以上は抵抗するなよ?こいつの頭を吹き飛ばすぞ!」

 

そこには、発目の両手を後ろで押さえつけ、風をまとった腕を首筋に当てている角刈りがいた。

突然の事態に、一瞬、時間にしても1秒かからないほどではあるが硬直してしまう。

 

「・・・っがあ!?」

 

そして、その隙を見逃すほど相手は弱くなかった。

 

「いや~よくやってくれたぜ相棒。おかげでこいつを仕留めることができたぁ!」

 

「て、めぇ・・・!」

 

いつの間にか起き上がっていたチャラ男の個性による衝撃波が腹部を貫く。・・・あ、やべぇ。変身が、とけ・・・

 

「・・・え?」

 

「ほぉ、まだ高校生のガキか」

 

「こいつ、危険だな」

 

「まーなぁ。あ、この面白そうなアイテムは貰ってやるよ」

 

地面に倒れこむと同時にベルトが外れ、プログライズキーと共に血に落ちる。俺を中心とした血溜まりが広がっていく中、発目の戸惑いの声と、俺を嘲るヴィラン達の声が聞こえる。

 

(ちくしょう・・・悪いのは発目じゃねぇ!しっかりと気絶確認をしなかった俺のミスだ・・・!くそ、もう意識が・・・)

 

擦れる視界の中、フォースライザーとプログライズキーが拾われていく。視界だけで無く触覚もイカれてきたのか、冷たかった工場の床に何も感じなくなってゆく。

 

『おいおいおいおい!冗談じゃねぇぞ戦人!?んな体じゃお前の意識が消えても俺が乗っとれねぇ!ふざけるな、起きろ!』

 

エボルトが何やら焦ってやがる。だが、もう指がうごかねぇ・・・あのチャラ男、出血がひどくなるように荒く切りやがった。妙に器用なことしやがって・・・

 

『んなこと言ってる場合か!くそ、擬態で対応・・・馬鹿な、出れないだと!?戦人本当に起きろ!』

 

「さぁて、妙なモン拾ったが、使い方わからねぇなぁ。こいつはもう死ぬだろうし」

 

「確かこの女アイテムを使っていた。自分で作ったとも聞こえたし、こいつに調べさせよう」

 

「は、離して下さい!」

 

「あーいいなぁそれ。ついでにちょっとばかし楽しませてもらうのもありだなぁ」

 

「・・・っ!嫌です!誰か!助けて下さい!誰かぁ!」

 

「無駄無駄!ここにゃもうお前を助ける奴なんていねぇよ!」

 

・・・発目?ああ、そっか、あいつがいたな・・・。そっか、あいつが・・・

 

『!?これは・・・!』

 

あいつが・・・誰かが助けを求めてる・・・泣いている・・・なら、行かないとな。

 

「・・・あぁ?」

 

ーーーーーーー「仮面ライダー」なら!

 

「そこ・・・までに、しとけよ」

 

ゆっくりと、だが決して止まらないようにして立ち上がる。体が悲鳴をあげてるし、腹掻っ捌かれてるし、疲れたしフォースライザーで動きすぎて反動きてるっぽいなこれ。あーいてぇ。

 

「乾・・・さん?」

 

「テメェまだ動けたのか。目障りな野郎だ、とっとと死ねばいいってのに」

 

ああ、なに泣いてるんだお前。発目ってのはもっとこう、不敵に笑いながら、誰彼構わずサポートアイテムを自慢して、マイペースに、尚且つ楽しそうにしてるモンだろうが。

 

『ハザードレベル3.5、3.7!?は、ははは、いいぞぉ、ここに来て急激に上がってやがる!これなら俺の力で体を応急処置だが治せる!』

 

「・・・エボルト、あれ出せ。『ハザード』を使う」

 

「あん?何言ってんだテメエ?」

 

『はははは、いいぞ、そら使え使えぇ!』

 

怪訝な表情を浮かべるヴィラン二人。そんなのお構いなしに俺は、段々と止血されていく傷の鈍い痛みに耐える。するとどこからともなく俺の体にベルト、『ビルドドライバー』が巻きついていく。普段使わないからと、エボルトに保管してもらっていたのが功を奏した。

 

「な、何処から!ってか、テメェ傷はどうした!?」

 

「妙な真似するな!こいつどうなってもいいのか!?」

 

「・・・黙れ」

 

「「・・・っ!?」」

 

動揺するヴィラン達を睨みつけながら、ベルトに挿さったままになっているトリガー、『ハザードトリガー』の保護カバーを開け、スイッチを押す。

 

ハザードオン!

 

流れる音声を聞きながらフルボトル、『ラビットフルボトル』と『タンクフルボトル』を取り出し振る。そのまま上部のキャップを回し、ドライバーにセットしていく。

 

ラビット!

タンク!

 

スーパーベストマッチ!

 

ドンテンカーンドンテンカン!ドンテンカーンドンテンカン!

 

軽快な、しかし何処か不穏な音声が流れる中、ハンドルを握り、意を決して回す。

 

ガタガタゴットンズッタンズタン!ガタガタゴットンズッタンズタン!

 

回していくと共に鋳型のようなものが前後に形成されていき、最後の確認音声が聞こえる。

 

are you ready?

 

「・・・変身」

 

その後、前後の鋳型が俺を挟み、ゆっくりと離れていく。赤と青の複眼に、それ以外の全てが黒いからだ。不規則に伸びるトゲの生えたその姿は、かつて聞いた話では実験に失敗し黒焦げになった博士らしい。

 

アンコントロールスイッチ!

ブラックハザード!

ヤベーイ!

 

これが、俺の自由になれる中で最も危険と言えるライダー。

『仮面ライダービルドハザードフォーム』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「・・・なんだ?真っ黒野郎。テメェ状況わかってんのか、あぁ!?」

 

妙だ。

起き上がったガキを見て、最初は死に損ないが最後に面白いものを見せてくれそうだ、くらいの認識だった。腹を裂き、出血多量。助かる術はなく、呆気ないとは思ったが危険な奴だったし勝てたから良し、とそう思っていた。ベルトのようなものが出てきた時も、死に際の足掻きだと高を括っていた。

 

(だが、なんだこの違和感。いや、この恐怖は!?)

 

そう、死に損ないだ。今目の前にいるのはもう恐るるに足らないガキだ。その筈なのに、本能が、ヴィランとして生きてきた中で培った危機察知能力が、そのガキを危険だと警鐘を鳴らしている。

先ほど黒いスーツを身に纏ったあたりから更にけたたましく鳴っている。妙な板に挟まれたと思ったら、板が消えガキはまた新しい格好になっていた。下を向いたまま静かに佇んでおり、目以外が黒いその姿だけでも不気味だ。

 

「・・・」

 

「なんとか言えオラァ!本当に殺すぞ!」

 

「待て相棒、何かやべ」

 

「・・・あ?」

 

相棒が叫ぶ中、何かがヤバイ、と一度黙らせようと声をかけた・・・その瞬間に、既に相棒の風を纏っていた腕は曲がってはいけない方向へと曲がっていた。

 

「あ、ああ、ああああああああああ!?!?」

 

「落ち着け相棒!その女を離すな・・・」

 

痛みと理解不能の事態に狂乱する相棒に指示を出す。目を離したつもりはなかった。だが瞬きをしている、ほんの数瞬の間に、ガキは俺を通り過ぎ、相棒の腕を捻り上げていた。速すぎる・・・!?

 

「・・・」

 

ガタガタゴットンズッタンズタン!ガタガタゴットンズッタンズタン!

ready go!

ハザードアタック!

 

「ゴヘ!?」

 

妙な音声と共に、蹴りが相棒の腹へと突き刺さる。くの字に折れ、吹き飛んでいく相棒。その風圧で俺や人質の女が吹き飛ばされる。・・・なんて蹴りだ、まるでオールマイトじゃねぇか!?

 

「た、たしゅ、たしゅけっ・・・!?」

 

「・・・」

 

命乞いをするしか出来なくなった相棒。地面に投げ出されたそこへゆっくりとガキが歩いていく。相棒の顔は恐怖と絶望に染まっていた。個性で逃げるとか関係ない、圧倒的な力に心が折れたのだ。

 

咄嗟に指を合わせ、照準を合わせる。この際相棒を巻き込んで構わない、とにかくこいつを殺す・・・!

 

「なっ!?」

 

「・・・」

 

しかし誰よりも早く動いたのは、またしてもガキだった。指をこすり合わせ、今にも個性が発動しようとしていた腕が、掴み上げられ、横に引っ張られる。目の前まで移動していたガキが、腕を掴んで横に逸らした。そんなわかりきったことを知覚しながら、俺はそれ以上の恐怖に襲われていた。

 

(なんなんだこの化け物は・・・!?)

 

殺気なんてものじゃなかった。ガキの、仮面で見えない目の奥にあったのは、無。ただ淡々とした、「排除すべきモノを排除する」というかのような目だった。

 

「・・・」

 

「!?ぎゃっ!や、やめろぉ!う、腕がぁ!?」

 

掴まれていた腕に激痛が走る。見るまでもなく、握られただけで骨が粉砕されたと分かった。激痛に呻く間も無く、地獄は続く。

 

マックスハザードオン!

 

「ひっ!?」

 

ガタガタゴットンズッタンズタン!ガタガタゴットンズッタンズタン!

ready go!

オーバーフロー!

 

ガキが腰に巻いている機械のボタンを押し、ハンドルを回す。俺の腕はいまだに掴まれたままだ、もう片方の手にはガキから奪った機械を持っている。

 

(や、ヤバイ・・・!何がかはわからねぇ、けど明らかにヤバイ!これは、これだけは食らっちゃいけねぇ!)

 

「は、離せぇ!離してくれぇ!」

 

恥も外聞も捨て、もっていた機械を放り投げ必死に腕を引き剥がそうともがく。噛み付く、殴る、蹴る。しかしどんなことをしても手は離れてくれない。

 

「・・・」

 

「ひ、ひぃ、ヒィィィィ!?」

 

黒いオーラのようなモノがガキの身体中から噴き出ている・・・!?

ま、まさかこれを俺に!?

 

「わ、分かった!もうこんな事しない、女どもも解放する!」

 

「・・・」

 

拳が握られる。

 

「け、警察にも自首する!相棒も説得するし、薬の出所も、ちゃ、ちゃんと話す!だから!」

 

大きく振りかぶられた拳に、オーラが集まっていく。

 

「だ、だから・・・頼む・・・」

 

あ、終わった・・・

 

ヤベーイ!

 

「死にたくなギュブッ!?」

 

眼前に迫った拳を最後に、俺の意識は途絶えた。




ヴィランverガードベントは、いつかやりたいと思ってた(ゲス顔)
戦人くん無双・・・ただし最後だけ。
いい加減に原作入らないとダレそうなんで結構時間飛びます。
こんな血の気の多い生活してるけど、こいつらまだ中3なんですよ・・・ヤベェな(確信)
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