貴方は転生という概念をご存知だろうか?ざっくりと言ってしまえば、死後に別人、もしくは別の存在に生まれ直すというものだ。この生まれ直すとは文字通りの意味であり、本来は記憶の継承は行われない。ましてや別の世界に転生するなど、あり得ないを通り越し、失笑ものの笑いばなしだ。
だからこそ、この話はいくつもの偶然が、天文学的な確率で重なってしまったが故に起こった事故のようなもの。道を歩いていたら隕石が直撃した、というレベルの偶然が、そのあり得ないを引き起こしてしまったのだと理解していただきたい。その少年は特別だったのか?
それはそうだろう、死んだ直後にたまたま地震が起こって空間が不安定になったところに、たまたま近くに有った高圧電線がちぎれて、たまたまそれが死んだ体から離れる直前の魂にぶつかって、たまたま脳に蓄積された記憶を魂に転写してしまって、たまたまその高圧電流が次元の隙間を作ってしまって、たまたま違う世界に記憶を持ったまま行ってしまった、などというあり得ない偶然に見舞われたのだから
(あれ…?ここは…どこだろう…?僕は…ああそうだ、たしか死んだんだ…ああ、苦しかったなあ…)
その魂の死因は小児喘息による呼吸困難、喘息と言うとたいしたことない、と思われがちだが対処が遅れるとこの魂のようにあっけなく死んでしまうのだ。この魂の不運はその記憶を受け継いでしまったこと、そしてもうひとつ
(けど…ここは…?なにも見えない…なにも感じられない…)
この魂の不運は何より、
転生とは本来絶対的なもの、世界の命の総数は決まっていて、違う世界から
これが例えば神と呼ばれるような高次元の存在の戯れや謝罪によるものであれば話は違っただろう。しかし、この魂が迷いこんだのは紛れもない偶然、何者かの意思の介入する余地など一切ない。
(なんで…こわい、こわいよお…!)
故にこの魂は魂のまま、記憶を受け継いだが故にこういうものなのだと諦観することもできず、脳がないから狂うこともできず、感覚器官がないからなにかを感じることすらできぬまま、揺蕩うだけ、
『ほう、これはなんともまあ珍しい』
しかしこの世界には、
『違う世界から
その神は、その魂に興味を持った。
否、語弊があった。正しくは、その魂が持つ記憶に、興味を持ったのだ。
『ふ』
『ふはは』
『
(?!なに!?)
神の笑い声は、感覚器官を持たぬはずの魂であってさえ…否、
『面白い、面白いぞ!ああそうだ、いいことを思い付いた!貴様に肉体をくれてやろう!魔法とやらを使える肉体を!ああそれだけでは面白くないな、なにがいいか…そうだ、
この神は、ハッキリと言ってしまえば荒御魂…人に仇なす神であり、人の悶え苦しみ葛藤する様が大好物であった。だからこそ、苦しい思いをして死んだ魂に
『それと…ああ、そうさなあ……貴様のなかにあるこの世の未来の知識、それよりもずっとずっと苛烈なものにしてくれよう。貴様の知識よりもより多くの人間が死ぬようにしてくれよう。
『さあ行くがよい、精々悶え苦しんで死んでくれよ?』
『は!』
『はは!』
『ははははははははははははははははははははははは!』
(そんな…!待って……嫌だ!また死ぬなんて嫌だ!もうあんな苦しい思いはしたくない!
どれほど思っても、嘆いても、神を悦ばせるだけで結果が変わることはない。神による裁定は絶対のもの、ただの人に逆らえるものではない。
故に、始まってしまうのだ。この魂にとっての、地獄のほうがまだましな、荒御魂に目をつけられるという災厄から始まる、第2の人生が
感想、批評大歓迎