『見た人を笑顔にする魔法』を覚えた。   作:くまねこ

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別作の息抜きとネタ消費です。
よろしくおねがいします。


仁科陽葵はアイドルです

私、仁科陽葵(にしなひまり)はアイドルだ。

 

つい最近に新設された346プロダクションのアイドル部門としては最古参、事務所への在籍歴も長い。

私よりも昔から在籍しているのは──子役時代から所属している泰葉ちゃんくらいだろう。

中学3年生からモデルとして3年、アイドルとしては2年。

ぶっちゃけモデルとしては泣かず飛ばずだったものの、アイドルとしては今のところ大成功、たぶん。

 

これも全て『見た人を笑顔にする魔法』のお陰である。

この魔法を使うと、自分を見た人は暖かく優しい気持ちになって、自然と笑顔になる……らしい。

心なしか、メイクや表情までキマるのだから便利すぎる魔法だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「──今日は皆、来てくれて本当にありがとでした!これ以上のアンコールは本当になしだからねっ!」

 

2時間にも渡るライブとアンコールもこれで終わり。

予定された終了時間も既に過ぎていて体力も限界だが、会場を一周してファンに手を振る。

……おまけに自分に魔法を重ねがけ。よし、これでまだまだ最高の自分のはず。

最後に観客に一礼してから舞台袖へ。

楽屋までの道中に、裏方のスタッフさんへ感謝と労いの言葉を忘れない。

私は笑顔を振りまくアイドルだからね!

 

 

「仁科さん、お疲れ様です」

 

「あ……、た、武内さん……っ!今日の私どうでしたか?」

 

「──良かった、と思います」

 

「う……」

 

そうは言うものの、武内さんの表情はいつもと変わらない。

もうすぐ始まる新しいプロジェクトの統括者として、最近良く顔を合わせるこの人、正直ちょっと苦手だ。

なにせ魔法に反応しない。

効果が切れているのか、と魔法をかけ直しても顔色一つ変わらなかった。

……もしかして魔法が効いてないんじゃないだろうか。

 

 

「……その、事務所まで送りましょうか?」

 

「い、いえ、結構です!……手を煩わせたくないので……」

 

ぼーっと眺められて居心地が悪かったのかもしれない。

でも、そんな気まずそうに声をかけられて、了承するはずがないだろうっ!

それに、まだ私にはやることがあるのだ。

 

「──えっと、まだお礼を言えてないスタッフさんがいるので、言いに行ってきます……っ!」

 

「……了解です」

 

やや強引気味に楽屋を出てしまったが、お礼を言いに行くのはいつものことだ。

 

アイドルは一人にして成らず。

音響さんや照明さん等、裏方スタッフ全員のお陰で輝けていることを私は知っている。

だからこそ、スタッフは私の魔法で笑顔にしてあげたい。

私はもう売れないモデルじゃない、人に笑顔を振りまくアイドルなのだ。

 

「照明の方、ですよね?今日のライブではありがとうございました!スタッフの皆さんのお陰で、私も──」

 

ちらりと時計を見るとまだ夜の8時、1時間くらいは挨拶回りできそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

【346プロ】 ひまりちゃんライブ速報 【PART.108】

 

 

 

 315 : 名無しの追っかけ  

 

 陽葵ちゃんやっぱりいけるやん!

 

 

 319 : 名無しの追っかけ

 

 あ〜^いい笑顔っすね〜^

 見るだけで心がぽかぽかするんじゃ〜^

 

 

 320 : 名無しの追っかけ

 

 スタッフに止められるほどの全力のファンサービスすこだわ

 けど媚びてるようには感じないんだよなぁ、不思議 

 

 

 322 : 名無しの追っかけ

 

 楓さんの下位互換とは何だったのか

 

 

 328 : 名無しの追っかけ

 

 元モデルだけあって手足長いからダンスが映えるわ

 

 

 333 : 名無しの追っかけ

 

 >>322

 あんな歌上手いのにモデルだったのがおかしいってそれ一番言われてるから

 

 

 334 : 名無しの追っかけ

 

 >>322

 楓さんみたいな特徴的な武器がないのに、比較論が出るあたり、陽葵ちゃんは凄いんやな……って

 

 

 337 : 名無しの追っかけ

 

 ソロライブでも余裕が出てきたわね。

  

 

 342 : 名無しの追っかけ

 

 >>334

 褒めてんのか貶してるのか分からん……、全然わからん……

 

 

 345 : 名無しの追っかけ

 

 プロ意識めっちゃ高くて好き

 痰が絡みやすくなるからって乳製品ほとんど取らないらしい

 

 

 348 : 名無しの追っかけ

 

 無茶振りとか大体応えてくれそうだし、あえてあの紅い目に蔑まれたい

 

 

 349 : 名無しの追っかけ

 

 ワイ清掃員、ライブ終了後のひまりちゃんに励ましてもらう

 一生推すねクォレハ……

 

 >>337

 でたわね。

 

 

 351 : 名無しの追っかけ

 

 もしかして346のモデル部門って無能なのでは?

 

 

 352 : 名無しの追っかけ

 

 >>348

 キモE

 

 355 : 名無しの追っかけ

 

 おれの乳製品かけたいっすねぇ…… 

 

 

 358 : 名無しの追っかけ

 

 >>355

 ○すぞ

 

 >>349

 kwsk教えてくれ 何でもする

 

 

 360 : 名無しの追っかけ 

 

 それでよく167まで身長伸びたなぁ、胸は……

 

 

 363 : 名無しの追っかけ

 

 >>360

 (ほぼ)ないです

 

 

 369 : 名無しの追っかけ

 

 >>349だけど

 仁科ちゃん、ライブ終わった後も残ってスタッフに挨拶に行ってたんよ

 そんでワイとすれ違った時に「丁寧にお掃除してくれてありがとうございます!」って言われた

 目を合わせて笑いかけてくれたんやで惚れるわあんなん

 

 

 372 : 名無しの追っかけ

 

 は?羨ましすぎるが

 

 

 373 : 名無しの追っかけ

 

 リハーサルでスタッフ全員に差し入れするらしいな

 

 

 375 : 名無しの追っかけ

 

 >>369

 はい濃厚接触

 

 

 379 : 名無しの追っかけ

 

 育ちが良いんか?それともこれも打算なんやろか……

 

 

 381 : 名無しの追っかけ

 

 あんな可愛い子が打算で動くわけ無いだろ!

 

 

 384 : 名無しの追っかけ

 

 モデルとしてなんで売れんかったんやろ?

 楓まゆ美嘉はモデルとしても上手くいってたのに……

 

 

 386 : 名無しの追っかけ

 

 今はなんか自分に自信があるように見えるわ

 モデルっていう職業が合わなかったんかもしらん

 

 

 388 : 名無しの追っかけ

 

 陽葵のカメラマンが悪かった説濃厚やで

 実際、動いてる時のほうが写真より圧倒的に可愛い

 

 

 390 : 名無しの追っかけ

 

 >>388

 ほんまカメラマンつっかえ!

 陽葵ちゃんの可愛さを捉えきれないとか引退しろ

 お陰で踊って歌う姿が見えるわありがとな!!

 

 

 394 : 名無しの追っかけ

 

 >>388

 どっちも可愛い定期

 でも確かに映像の方が印象に残るというか……、動きに可愛さが乗るタイプの可能性

 

 

 396 : 名無しの追っかけ

 

 ここライブ感想板だろ?もっとライブ語ろうぜ

 

 

 399 : 名無しの追っかけ

 

 >>396

 今日のダンスにはセクシーさもあった気がする

 二十歳になって大人の魅力も出てきたねぇ

 

 

 400 : 名無しの追っかけ

 

 二十歳……、陽葵はワシが育てた

 

 

 402 : 名無しの追っかけ

 

 >>400

 いや、オレが育てたね

 

 

 409 : 名無しの追っかけ

 346プロが正式に新しいプロジェクト打ち出したらしいぞ

 乗り込めー!

 

 【346プロ】 シンデレラプロジェクト発表 【祝】

 

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「やっほー★陽葵ちゃんエゴサ?アタシもよくするんだよねー!」

 

「ぴゃぁ!?──城ヶ崎さんっ、驚かせないでくださいっ!」

 

ライブ大成功おめでとう、とイタズラっぽく笑いかけてくれるのはピンク髪のギャルっぽい女の子。

私と同時期に雑誌モデルからアイドルに転向した城ヶ崎さんだ。

──転向といっても、ほぼ両立させている形だったりする。

 

美嘉さんはチッチッチと言いながら左右に指を振り、待ってましたという風に胸を張った。

──でかい。

 

「シンデレラプロジェクトに妹が選ばれたの!だからこれから城ヶ崎じゃなくて美嘉でヨロシク★」

 

どっちも振り向いちゃうからね!と冗談混じりな城ヶ崎さん。

……自分のライブに集中しすぎて、全然知らなかった。

それにここ最近はレッスンルームに籠もりっきりだったし。

オーディションが始まっている話は聞いていたが、もうそんなに話が進んでいたのか。

 

「分かりました……美嘉……さん……でいきますねっ」

 

「うん!年下なのにずっと苗字で気になってたから丁度いいよ!」

 

美嘉さんじゃなくて美嘉ちゃんでも良いよー、と少し照れくさそうに笑う。

城、……美嘉さんと違って、私は魔法のお陰だから本来はここにいる資格はないし。

カリスマギャルとして、ストイックに自身を研磨し続ける美嘉さんを年上というだけでちゃん付けなんてできない。

 

 

「……ところシンデレラプロジェクトってもうデビューしたんですか?」

 

「そこから!?……今はプロジェクト名が出たくらいでメンバー発表はまだなの!武内プロデューサーが補欠の子に声かけてるらしいよ★14人だって!」

 

「──14人も!?随分とライバルが増えますね……」

 

後発が増えていくと、事務所の後押しが少なくなるのは間違いない。

昨日のように大きなハコでまたライブできるとは限らないのだ。

それに、今は魔法のお陰でアイドルとして人気があるが、──もし使えなくなったら。

急に使えるようになったものなのだから、明日使えなくなるかもしれない。

また売れない日々には戻りたくない。

 

「むしろ後輩が増えて嬉しいじゃん★陽葵ちゃんなら心配しなくても大丈夫だよ!アタシもいるし★」

 

「──そうですねっ!教えてくれてありがとうございますっ!……レッスンしてきますね……っ!」

 

「……うん、頑張ってね!」

 

まだ何か言いたそうな美嘉さんには申し訳ないが、凡人は少しでも、今できることを積み立てておかないと。

唯でさえ同期には楓さんの歌、美嘉さんのダンスといった絶対に勝てない相手がいるのだ。

そして、今あの二人と同じ場所に立てているのも魔法のお陰。

きっと後輩ができたらすぐに霞んでしまうような存在。

 

──もっと、もっと努力が必要なのだ。

ちゃんと胸を張って、皆と肩を並べられるように。

 

 




自分の努力を全部魔法のお陰にしがち系主人公
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