「どけ邪魔だデク!」
馴染みのある声が聞こえたと思えば目の前に現れた黒霧が爆発した。やってきたのは爆豪、その爆発により緑谷は黒霧から離れることが出来た。そのまま黒霧の良いいつモヤがかかっていない部分を掴み地面に倒す。
別の方向からは轟がきていた。足元から伸びた氷は能無の足とワープゲートを伝ってオールマイトの掴まれている腹に達さないギリギリのラインまで凍らせる。それにより力が緩んだため能無の拘束から逃れることができた。
爆豪と一緒に来た切島は死柄木へと攻撃するのだがすんでのところで避けられてしまう。全員黒霧によって各地へと飛ばされていた面子だが各々の力を使い自力でここまでたどり着いてきたのだ。
轟、爆豪、霧島の三人が介入したことでオールマイトは自由になり、その様子を遠くから見ていた生徒たちは一安心した。イレイザーを運んでいる蛙吹と峰田も目が離せなくなっており足が止まっていたのだがすぐに入り口へと歩き出す。遠くから麗日がそれを発見し、二人がイレイザーを背負っているところを見て手伝いへと走る。
爆豪はワープゲートによって飛ばされる前に黒霧が危ないという言葉を使っていたことをしっかりと覚えていた。そこから全身を黒いモヤで囲んで実体部分を隠していたのではと予想を立ててそれを前提に立ち回った。その結果は見事に大当たり。
黒霧がどうにか逃れようと身をよじるが爆豪がすぐに爆発を起こして止める。自分が怪しい動きをしたと判断したらすぐに爆破させるという脅しを含めて。その姿はヒーローとは言えなかった。
「攻略された上に全員ほぼ無傷。すごいなぁ最近の子供は、恥ずかしくなってくるぜヴィラン連合。能無。」
その声とともに凍らされた半身を無視してワープゲートから無理やり立ち上がる。それにより右足と右手が砕けた。その姿を見た緑谷たちは動揺するがすぐにオールマイトの声で我へと帰る。能無の氷ついた半身が砕け散ると先ほど砕けた足と手が再生し始めた。
「なんだ!?ショック吸収の個性じゃないのか!?」
「別にそれだけとは言ってないだろ。これは超再生だな。能無はお前の100%にも絶えられるように改造された超高性能サンドバッグ人間さ。」
改造という言葉で全員に驚きが走る。能無はヒトが改造された姿、生半可な実験などでは実現などするはずがない。緑谷たちはさらに警戒して構える。
「まずは出入り口の奪還だな。行け、能無。」
死柄木の命令により能無が走り出す。その速さは凄まじくオールマイトですらなんとか見えているほどだった。そんな速度で動いている能無を生徒たちが捉えられるはずがなく黒霧を押さえている爆豪へと接近して拳が振るわれる。ふるわれた拳からは衝撃により風が吹き荒れた。緑谷たちはその風により体制が崩され何かが壁に衝突した。
「かっちゃん!」
煙が晴れた場所には拘束から解放された黒霧と能無の姿。それを見て先ほど壁に叩きつけられたのが幼馴染みだと理解した緑谷は爆豪の名を呼ぶ。だがそのすぐ後ろに爆豪が尻をついて座っていたことに気がつく。
「避けたの?すごい!」
「ちげーよ黙れカス。」
あの速度を回避した爆豪を素直に褒める緑谷だが帰ってきた言葉は辛辣そのもの。そこで轟が壁に衝突したのが一体何だったのかにいきついた。ホコリが晴れた場所にはクロスアームブロックの構えをとったオールマイトがいた。爆豪を放り投げて無理やり割り込んでいた。先ほどまではあったシャツの袖は上腕二頭筋まで無くなっておりその威力の凄まじさが分かる。
「加減を知らんのか?」
「仲間を助けるためさ、仕方ないだろう。さっきだってほらそこの・・・あー地味なやつ。あいつが俺に思いっきり殴りかかろうとしたぞ?他がために振るう暴力は美談になるんだろう?そうだろう?ヒーロー。」
死柄木が言っていることは全てが間違っているとは言えなかった。ヒーローも同じ暴力を使って事件を解決している。仲間を助けるために相手へと攻撃するのはヴィランもヒーローも同じ。違うとすれば普段からその力を自分のために使っているか他人のために使っているかという点だ。
「俺はなオールマイト、怒ってるんだ。同じ謀略がヒーローとヴィランでカテゴライズされ、良し悪しが決まるこの世の中に。何が平和の象徴、所詮抑圧のための暴力装置だお前は!」
「無茶苦茶だな。そういう思想犯の目は静かに燃えるもの。自分が楽しみたいだけだろう、嘘つきめ。」
オールマイトの言葉に死柄木の目が細くなる。思ってもいない言葉を並べて嘘だと見破られたが思うところなど何もない。なぜなら全てが嘘だから。
「3対5だ。」
「モヤの弱点はかっちゃんが暴いた。」
「とんでもねぇ奴らだが俺らでオールマイトのサポートすりゃ、撃退できる。」
この場にいる轟、緑谷、爆豪、切島はこのままオールマイトと一緒にヴィラン連合と戦う気でいた。直接ではなくともいい、少しでもオールマイトを有利になるならと。
「ダメだ!逃げなさい。」
だがオールマイトが四人の前に庇うようにして立ち逃げるように指示を出す。轟が自分がサポートしていなければ危なかったと反論するがオールマイトは感謝だけしてこれから自分たちが目指すヒーローの本気を見ていろと言って拳を強く握る。
唯一オールマイトの事情を知っている緑谷は脇腹から流れる血や思わず活動限界の[時間]という言葉をこぼしてしまう。がしかし幸いなことに誰も気に留めることはなかった。それに小さくサムズアップで答えると能無のいる方へと体を向ける。
「能無、黒霧、やれ。これは子供をあしらう。」
自身の手を見つめて拳を握る。残りの時間は一分もないほどに追い詰められている。さらには5年前におったけがと力の継承によってかなり衰えてきている。
(しかしやらねばなるまい。)
死柄木が緑谷たちへと走って距離を埋める。それを撃退するために全員が構える。
(何故なら私は・・・)
時代から時代へと継がれてきた七つの光、それが今力強く輝いた。
(平和の象徴なのだから!)
突如オールマイトの顔から笑みが消えとてつもないプレッシャーが放たれる。そのあまりの凄まじさによって走っていた死柄木も振り返った。オールマイトが走り出すと能無も同時に走り出しお互いの拳をぶつける。その威力によって死柄木の体は空へ飛ぶ。
「おいおい、ショック吸収だってさっき自分で言ってたじゃんか。」
「そうだな!」
右左とお互いの拳を高速でぶつけ合う。先ほどの能無の一撃ですら緑谷たちの体は吹き飛ばされた。今度の真正面からの殴り合いが生む衝撃は、それが連続で襲ってくるため姿勢を低くし地に手をつかなければ耐えられない。
「君の個性がショック無効ではなく吸収ならば!限度があるんじゃないか?」
踏ん張るための足場は陥没し両の手は高速で動いているため幾つもの残像が見えている。以前負った怪我を殴られた一度怯みかけたがそこで更にギアを上げる。
「私対策?私の100%を耐えるなら!さらに上からねじ伏せよう!」
能無との殴り合いの中、一歩また一歩と前に出ながら連打を続ける。口から血を吐きながらも一発一発に全力を込めながら殴っており少しずつ、だが着実に能無を圧倒している。
「ヒーローとは常にピンチを打ち壊して行くもの。」
能無の体を空中へと吹き飛ばしそれを追いかける。反撃を喰らうもその手を弾き地面へと投げ飛ばす。それにより地面に大きなクレーターができるが能無はそれでも立ち上がる。
「ヴィランよ、こんな言葉を知ってるか!」
オールマイトは未だに立ち上がろうとしている途中で万全ではない能無の目の前へと降り立ち腕を深く引いて構える。
「さらに向こうへ!Plus Ultra!」
その右手には今まで受け継がれてきたワン・フォー・オールの光が宿り能無の体へと突き刺さった。オールマイトの拳がショック吸収の限度を超えて能無の体を空高くに打ち上げる。衝撃により体を動かすことができない能無はUSJの天井を突き破り空高く飛んでいってしまった。
「ショック吸収をなかったことにしちまった。究極の脳筋だぜ。」
「デタラメな力だ。再生も間に合わねぇほどのラッシュってことか。」
全員がトップヒーロー、プロの世界を目の当たりにした。能無が吹き飛ばされた場所には土埃ができており口や頭から血を流したオールマイトが立っていた。
「やはり衰えた、全盛期なら8発も打てば十分だったのに。400発以上も打ってしまった。」
自身の胸に拳を当てて笑顔を浮かべる。その笑顔を見て緑谷もようやく安心できた。この時土埃に隠れていて見えてはいなかったがオールマイトの体からは煙が出ていた。マッスルフォームを維持するための時間がやってきた証拠だ。
「さてヴィラン、お互い早めに決着つけたいね。」
死柄木は能無がやられたことで動揺しており体を震わせていた。打つ手がなくなり焦りや怒り、そして苛立ちなどの感情がごちゃ混ぜになっていた。
「衰えた?嘘だろ?完全に気押されたよ。よくも俺の能無を・・・チートが!」
その苛立ちを抑えるために死柄木は自身の首を爪で掻き続けている。黒霧が生徒を逃げられたと報告してきた時も同じようにしていたため苛立つと自分の首を掻いく癖があるのだろう。
「おいおい、どういう事だ。全然弱ってないじゃないか。あいつ、俺に嘘教えたのか?最後の手段だ、連れてこい黒霧。」
「分かりました。」
その言葉とともに黒霧はワープゲートを使って消えていった。オールマイトはまだ何かあるのかと警戒をするが既に限界を迎えているため動くどころかマッスルフォームを維持することさえ難しい状態だった。
「俺たちの目的はオールマイト、お前を殺す事だ。けどそれ以外にももう一つ、ローレル ケントを連れて行くって目的があるんだ。」
「なに!?」
死柄木が時間を稼ぐために自身の目的を告げる。オールマイトは既に動けないためそれもほとんど意味はないのだがそうとは知らない死柄木は与えても問題がない程度に情報を与えて時間を稼ぐ。
「ローレル ケントにはなオールマイト、お前に与えた能無よりさらに強力に改造された能無をぶつけてる。そいつを今こっちに連れてきてやるよ。」
(Holy shit!これは流石にピンチだぞ!)
オールマイトは内心焦りまくっていた。ただでさえ先ほどの能無にも苦戦を強いられているのにも関わらずより強力な能無を今どうやって対処するのかを。緑谷たちも顔が青ざめており足が震えている。
「正直な話俺としては逆だと思ってるんだけどな。お前を殺しにきてるのに上位互換を生徒なんかに回すなんておかしいってな。まあ作った奴がそうしろって煩かったから仕方ないか。」
一歩でも動けばマッスルフォームが溶けてしまうオールマイトは素直に話を聞くしか手段はなかった。死柄木は自分の作戦が上手くいっていることを信じて疑うことはなかった。黒いモヤのワープゲートが出現し黒霧が姿を現す。だがらそこにいたのは黒霧のみで他には誰一人として出てくることはなかった。
「おい黒霧、能無はどうした?」
「それが・・・能無の姿はどこにもありませんでした。天井に穴が開いていたのを見ると外に飛ばされたのかもしれません。」
「・・・は?」
オールマイトに向けたものよりもより強力なものをたかだか生徒一人によって何処かへ追いやられたと聞けば聞き返したくなるのも無理はないだろう。その話を聞いたオールマイトはチャンスだと思い死柄木と黒霧の二人へと声をかける。
「どうした?もっと強い奴を連れてくるんじゃなかったのか?さっきまで散々喋ってたけど、本当にできると思ってるのか。」
普段よりも低い声で鋭い眼差しで睨み付ける。その迫力に死柄木は震えた声を出して後ずさる。オールマイトの後ろにいる緑谷たちはこの場を離れて邪魔にならないようにしようと話していた。だが緑谷はオールマイトが限界であり虚勢を張っている事を見抜いていた。
(正直もう一体の能無とやらが居なくなっていて助かった。もう一歩も動くことはできない。)
オールマイトはさらに動揺させるために、そして少しでも時間を稼ぐために挑発をする。このまま撤退してくれることを願って。それを聞いた死柄木は迷っていた。能無を失ったことでオールマイトを倒せるという自信が無くなり戦うことに踏み出せないでいる。
そこへ黒霧が死柄木を落ち着かせるためにこの状況で使えるものを話していく。能無が与えたダメージ、棒立ちの生徒、立ち上がろうとしている手下、そして自分たち二人の連携により生み出されるチャンスについて。それを聞いた死柄木は落ち着きを取り戻しオールマイトへと向き直る。
主犯格である二人をオールマイトへと任せて立ち上がったヴィランたちと戦い他の生徒たちを助けに行こうと提案する切島。爆豪と轟もそれに賛成のようだったが緑谷のみがオールマイトの方をずっと見ていた。
(僕だけが知ってるんだ。危険度で考えればモヤの方だ。オールマイトはおそらく限界を超えてしまっている。モヤに翻弄されればきっと。)
死柄木は能無の仇だと言って走り出す。オールマイトは心の中で来るんかいと自身の作戦が失敗したことを嘆いた。心の中で増援が早く来ることを祈っていると自身のすぐ横に見知った人物である緑谷が飛んできていることに気がついた。狙いは黒霧の実態部分、両足は飛んだ時に両方折れてしまった。無事なところは右腕のみだがその腕にも全力で力を込めて殴りにかかる。
「オールマイトから、離れろ!」
だが死柄木と黒霧の判断も早かった。黒霧の中に手を伸ばすと緑間の顔のすぐ前に伸ばした手が現れ今にも掴みかかろうとしていた。死柄木は確実に一人を潰せることに喜び声をあげて笑っている。伸びてきた手によって緑谷の顔に影ができてしまうほど接近したその瞬間、どこか遠くから銃声がなり死柄木の手を貫通する。
「来たか!」
オールマイトが向いた先はUSJの出入り口。
「ゴメンよみんな!遅くなったね!すぐ動けるものをかき集めてきた!」
「1Aクラス委員長飯田天哉!ただいま戻りました!」
そこにいたのは増援を呼ぶためにUSJを飛び出て走り続けていた飯田。そして雄英に勤めている多くのヒーローたちの姿だった。意識を取り戻し立ち上がっていたかヴィランたちも増援の登場により流石にまずいと思ったのか一斉に攻撃を始める。
「YEAHHHHHHH!!!!」
そこをプレゼントマイクが自身の声で大きな声を出し全員の耳を塞いだ。そこへエクトプラズムが、自身の個性で口から煙を吐き出して分身を作り出しヴィランたちを殲滅していく。
「手分けして生徒たちの保護を!」
雄英高校の校長である根津もブラドキングの方に乗りながら登場し教師たちに指示を出す。それを見た死柄木はゲームオーバーだといい黒霧のワープゲートで逃げようとするのだがそこへ先ほども打たれた銃弾を浴びてしまう。銃を撃っていたのはスナイプという教師で遠距離にいる相手の位置と弱点を把握し、それを撃ち抜くことができる。
黒霧により死柄木の体は隠されそれ以上当たることはなかったが今度は13号が個性を使って黒霧を吸い込もうとする。死柄木がいるため反撃することも避けることもできないため一刻も早くこの場から逃げようとする。その際死柄木は目を見開いてオールマイトを睨みつけていた。
「今回は失敗だったけど、今度は殺すぞ!平和の象徴・・・オールマイトォ!!」
その言葉を最後にワープゲートの奥へと姿を消しモヤも消えてなくなった。この日、1年A組は始めてのヴィランドの戦いを経験した。悪意にまみれた世界の住人はまだ彼らには到底早いものだった。
「何もできなかった・・・」
両足が折れてしまっているため地面に伏せながらも自分の無力を嘆いた緑谷。水難ゾーンでは協力して脱出出来たものの自分一人で何も出来ていないことに後悔していた。
「そんな事はないさ。」
そう声をかけてくれたのは緑谷にとって憧れであり師であるオールマイト。右半身は既にマッスルフォームが解けてしまっており本当に全てを出し切ったことを痛感させられる。
「あの数秒がなければ、私はやられていた。また助けられちゃったな。」
その言葉に緑谷は救われた。自分は無力ではなかった、何か一つでも力になることができたのだと。涙と鼻水を流しながらも笑顔を浮かべた。
「オールマイト・・・無事で・・・良かったです・・・」
誤字、脱字が多いです。申し訳ありません。