個性[超人]   作:2NN

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新たな戦い

 ヴィラン連合によるUSJ襲撃事件の翌日、セキュリティの強化や会議などがあったため雄英高校は臨時休業となった。学生であれば臨時で休みともなれば大いに喜ぶものだが誰一人としてその休日を楽しむものはいなかった。臨時休業の翌日には学校が始まり全員が揃ってまた授業を受けることができると思っていたのだが一番怪我をおていたローレルの席には誰も座っておらず、それを見た全員の顔に少しばかり影がさす。

 

 その空気をどうにかしようと少しずつ会話が始まる。今一番アツい話といえば勿論一昨日の襲撃事件に関する話。テレビでは大々的に放送されA組の生徒もわずかな時間だがテレビに映ったのだ。葉隠はグローブとブーツのみだったが。そんな話をしていると飯田が歩きながらの高速移動によって教卓へと立つ。

 

「みんな!朝のホームルームが始まる! 私語を謹んで席につけ!」 

 

「ついてるだろ〜。」

 

「ついてねぇのおめぇだけだ。」

 

 正論を言われた飯田は体を震わせてしまったと零しながら席についた。自分が席につけと指示を出しておきながらその本人が立っていたのだからかなり落ち込んでいる。次の話題として今日のホームルームは誰が担当するんだろうという話題が上がる。相澤は襲撃事件によって入院していると思われるため別人が来るのだろうと話をしていると教室の正面のドアが開く。 

 

「おはよう。」

 

「「「相澤先生復帰はえぇぇ!!!」」」

 

 教室に入ってきたのは全身包帯まみれの相澤だった。両腕にはアームホルダーを装着し、顔全体に包帯が覆われていて露出している部分は一切ないためどうやって前が見えているのかが不思議に思う。真面目な飯田が相澤に安否を送るが

 

「俺の安否はどうでもいい。何より戦いは終わってねぇ。」

 

 相澤の戦いという言葉に生徒に緊張が走る。もしかしてまだヴィランが関係しているのではと思い身構え、峰田は頭を抱えて体を震わせる。 

 

「雄英体育性が迫ってる。」

 

「「「クソ学校っぽいのキター!!!」」」

 

 A組の大きな声が校舎に響き渡った。

 

「ヴィランに侵入されたばっかなのに体育祭なんかやって大丈夫なんですか?」

 

「また襲撃なんかされたら・・・」

 

 生徒たちから体育祭は本当に開催しても大丈夫なのかと不安の色を見せる。体育祭には毎年多くのヒーローが来て生徒たちを見ていくため確かに安全かもしれない。しかし逆に言えば観客や生徒も多いため守る対象も多い。ヴィランに攻められれば全員を助け出すことが本当にできるのかは怪しいところだ。

 

「逆に開催することで雄英の危機管理体制が盤石だって示す考えらしい。警備も例年の5倍に強化するそうだ。なによりウチの体育祭は最大のチャンス。ヴィラン如きで中止していい催しじゃねぇ。」

 

 緑谷の後の席に座る峰田から弱気の発言が聞こえてくる。

 

「ウチの体育祭は日本のビッグイベントの一つ。かつてはオリンピックがスポーツの祭典と呼ばれ全国が熱狂した。今は知っての通り規模も人口も縮小し形骸化した。そして日本において今、かつてのオリンピックに変わるのが雄英体育祭だ。」

 

 毎年ヒーローが来るというのも主には軽微とスカウト目的だ。高校を卒業してからはプロ事務所のサイドキックになるというのがセオリーなのだ。中には独立しそびれて万年サイドキックになる者もいるのだが。

 

「当然名のあるヒーロー事務所に入ったほうが経験値も話題性も高くなる。時間は有限、プロに見込まれればその場で将来が開けるわけだ。年に一回、計3回だけのチャンス。ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ。その木があるなら準備は怠るな!」

 

「「「はい!」」」

 

「ホームルームは以上だ。」

 

 全員の大きな返事を聞いて相澤は教室を出て行こうとする。

 

「あの、先生!ケントさんはどうなってるんですか?」

 

 緑谷が相澤を呼び止めてローレルの安否を聞く。盛り上がりを見せたクラスもそれを聞いて静かになった。やはり全員気になはなっているのだ。相澤も足を止めて再び全員に向き直る。

 

「命の方に問題はない。傷の方は病院でリカバリーガールが少しずつ治療中だ。」

 

 それを聞いて全員の顔に安堵が見受けられる。しかしそこから相澤の「だがな」という言葉でその顔もすぐにどこかへ吹き飛ぶ。

 

「意識の方は入院してから未だに目覚めてない、目が覚めてもおかしくないはずだって婆さんが言ってたがな。」

 

 未だに目が覚めない。事件から1日空いているのにもかかわらずローレルは未だに眠り続けている。命に別状はないと言われても安心などできなかった。

 

「他人のことを考えている余裕があったらまずは自分のことを考えろ。」

 

 そういって相澤は教室から出て行ったしまった。

 

 

 

 

 

 午前中の授業が終わり生徒たち雄英体育祭について話し始める。 気合を入れたり、他人を羨んだり、自分を売り込んだりと反応は様々だった。

 

「みんな、すっごいのりのりだ。」

 

「君は違うのかい?ヒーローになるため在籍しているのだから萌えるのは当然だろう。」

 

 みんなの気合いの入りように驚きの声を上げる。そこへ近くにいた飯田が話し始め独特な動きで自分にも気合が入っていることを表現する。それを見ていた蛙吹が「変」といってうたのだが飯田の耳には届いていなかった。

 

「デクくん、飯田くん。」

 

 背後から自分たちを呼ぶ声が聞こえてきた。その声は普段からよく行動を共にする麗日の声だったがいつも以上に音程が低かった。振り返っるとそこには鋭いは気を纏った麗日が立っていた。

 

「頑張ろうね!体育祭!」

 

「どうした?全然麗日じゃないよ麗日?」

 

「みんなわたしがんばる!!!」

 

 普段では絶対しないような怖い顔をしながらクラスにいる他の生徒に向かって宣言をする。ここに来て麗日のキャラがふわふわしだしたことにツッコミが入った。緑谷は麗日になぜヒーロー目指したのかを聞いていなかったこと思い出した。飯田と麗日の二人を誘って食堂へと向かう道中になぜヒーロー目指しているのか聞いてみることにした。

 

「お金!?お金欲しいからヒーローに?」

 

「究極的に言えば・・・なんかごめんね不純で。飯田くんとか立派な動機なのにわたし恥ずかしい。」

 

 頭をもしゃもしゃと書きながら恥ずかしそうに答える麗日。普段から頬は少し赤いが今はさらに赤くなっており恥ずかしがっていのが見てわかる。

 

「なぜ?生活のために目標を掲げることの何が立派じゃないんだ?」

 

「うん。でも意外だね。」

 

 フォローするように飯田がおかしなところなどないといい緑谷もそれに同意する。お金が欲しいからヒーローを目指すというのが普段の彼女からは想像がつかない。緑谷が意外だというと麗日はその理由を話し始めた。

 

 彼女の実家は建設業を営んでいる。しかし仕事があまり回ってきていないためお金はあまりなかった。そこに麗日は大きくなったら父と母の手伝いをすると申し出た。両親が苦労している様をただ見ていることができなかったのだろう。まだ小さかった彼女だが自身の個性を使えば重機を必要とすることないことに気がついた。どんな資材を浮かせて運べるためコストがかからないと。しかし両親はその申し出を受け入れることはなかった。

 

「親としてはお茶子が夢変えてくれたほうが何倍も嬉しい。」

 

 小さい頃からヒーローに憧れていることを知っている両親は娘の夢を自分たちのせいで潰して欲しくはない。そう思って断ったのだ。

 

「私は絶対ヒーローになって、お金を稼いで、両親を楽させてあげたいんだ。」

 

 彼女の顔には決意が見えており必ず達成させるという強い思いが込められているのがわかった。これが彼女の原点、オリジンだった。その話を聞いた飯田は両手を高く上げて拍手し歓声を上げている。はたから見れば変な奴と思われても仕方がないほどに。そこへいつもよく聞くアメリカンな高笑いが聞こえてきた。

 

「緑谷少年がいた!ご飯、一緒に食べよう。」

 

 その体には全く似合わないサイズの弁当箱を手に持ったオールマイトがそこにいた。包んでいる風呂敷は可愛らしい水色の水玉模様だ。普段の姿と緑谷への昼食の誘いに激しいギャップを感じた麗日は笑いをこらえられず吹き出してしまった。誘われた緑谷は二人の顔を見た後一緒に食べることとなった。

 

 

 

 

 

「あれ?ここはどこ?」

 

 暗闇の中ローレルの意識は覚醒した。見渡す限りの黒一色、目に映るのは自分自身の体のみ。

 

「確か雪山みたいなところで脳みそくんと戦って吹き飛ばした後に・・・どうしたんだっけ?」

 

 ローレルは遭難ゾーンで濃霧との激しい戦いを繰り広げた。最後の方では左腕が折れて使い物にならなくなってしまっていたため能無の足を掴んで振り回し遠心力を利用して投げ飛ばしたのだ。その直後に意識を失い今に至る。浮遊感があり体も半透明であるため夢か何かだと思っていると突如、戦おうとする時にいつも呼びかけてくる謎の声が聞こえてきた。声のする方を見てみると醜く歪んだ人の顔のみで形成された何かがいた。その顔一つ一つが毎度のように聞こえてくるのと同じ声と同じセリフで叫んでいる。

 

 その声はローレルの意識が初めて覚醒した時に感じた不快感ととても似ておりあの冬期頭に流れてきたのはこいつなのではと予想する。こんなわけのわからないものが自分に話しかけてきたのかと思うと気持ちが悪くて仕方がない。すべての顔がローレルの方を向きまたローレルもその顔を見ていたため自然と目線がぶつかる。するとその顔は近づき始めてきたためその気持ち悪さと不快感から離れようとするのだが体が思うように動いてくれない。

 

 徐々に飲み込まれていく体には今まで感じたことがないようなおぞましさで溢れていた。飲み込まれてしまえば気が狂ってしまうのではないかと錯覚してしまうほどだ。

 

「ちょ、離れて!気持ち悪い!」

 

 抵抗しようにも自由がきかないため何もできず、唯一できることがあるとすれば声を上げることのみだがその行為も相手には全く伝わっていない。徐々に飲み込まれていく体を見続けるローレル。少しずつ体が飲み込まれていくと同時に、自分という存在が何かによって浸食されていく感覚を覚えた。最後まで諦めることなく争うが首から下はすべて飲み込まれてしまった。

 

「いやああああああああ!!!」

 

 耐えきれず大きな声を上げて彼女の視界は暗転した。

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