個性[超人]   作:2NN

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前を向いて

「はっ!」

 

 次に目が覚めた場所はベッドの上だった。周りを見れば自分一人だけの部屋におり腕には点滴がはいっているためここ後病院であることがすぐにわかった。

 

(・・・さっきまで気色悪い夢を見てたきがするけどなんだっけ?)

 

 目が覚めれば先ほどまで見ていた夢の内容はすっかり忘れてしまっていた。忘れてしまったものは仕方がないと切り替えてナースコールを押す。それを聞きつけた看護婦がやってきてローレルが目を覚ましたことを伝えに医者を呼びに行った。気分はどうか?痛む箇所はあるか?少し前の記憶はあるかと簡単な確認を済ませると雄英に連絡をすることになった。

 

「無茶をしすぎです。一歩間違えれば死んでいた可能性があります。これからは気をつけてください。」

 

「はい。」

 

 そう言って医者は病室を出て行ってしまった。看護婦には後数時間で雄英から教師が来るからそれまで休んでいるようにと言われたためベッドに横になる。妙に目が覚めてしまったため眠ることができずただただ時間が過ぎるのを待つばかりだった。そうしてただ黙っている状態で数時間が経った。

 

「相澤だ。」

 

「どうぞ。」

 

 扉がノックされ相澤の名が語られたため病室へと招き入れる。扉が開くと全身に包帯を巻いた相澤、オールマイ、そして根津の三人が入ってきた。最初に相澤を見た瞬間は誰だと疑問に思ったが服装や髪は相澤と同じだったため判別することができた。オールマイトもよく見るコスチュームなどではなく落ち着いた色合いのスーツを着ており根津はいつも通りのスーツ姿。

 

「目が覚めてよかった。まずは謝罪だ。俺たちが不甲斐ないせいでお前には大変な思いをさせたな、すまなかった。そしてありがとう、生きていてくれて。」

 

「聞いた話では私が戦っていた以上の強さを持った脳無と戦っていたそうじゃないか。本当は私たちが戦わなければいけなかったのに。ケント少女、申し訳ない。」

 

「私よりクラスのみんなは無事なんですか?」

 

「安心してくれ、君と緑谷という少年以外はみんな無事なのさ。だから彼らの謝罪を聞いてあげてほしい。」

 

 相澤とオールマイトが頭を下げて謝罪をしてくる。プロヒーロー二人、片方は平和の象徴と呼ばれるナンバーワンヒーローに頭を下げられてローレルは逆に困惑した。気まずくなってAクラスの話題を振るのだが根津によって阻止されてしまう。

 

「私がこうなったのは弱かったから。なので先生たちが謝ることなんて何もないですよ。相澤先生はみんなを守るために前に出て戦ったし、オールマイト先生もちゃんと来て助けてくれたですよね?ごめんなさい、心配をかけて。」」

 

 誤っていたはずがいつのまにか自分たちが謝られた。そのことに驚き目を見開く。いくら彼女が強くともまだ16歳の子供だ。怒りをぶつけられることも批判されることも覚悟していたのだが目の前の少女はそれを一切せず自分のせいだと背負い逆に謝られているというのがとても悔しかった。

 

「ローレルくん、子供であり生徒でもある君がそうやって背負ってしまうのは大人として、教師として失格なんだ。だからここは彼らには違う言葉を送ってあげてくれないかな?」

 

「えー・・・それじゃあ、みんなを助けてくれてありがとうございます。」

 

 ローレルは本当に二人のことを怒ってはいない。ヴィランに攻められてしまったのはどうかと思うが13号を含めてヒーローたちが身を挺して戦ったことで人的被害がなかったのだ。どこにも二人を責める要素などないとローレルは純粋に思っていた。

 

「あ、一つあるとすればオールマイト先生が遅れたことですかね。」

 

「うぐぐ・・・」

 

 唯一教師たちに言いたいことがあるとすればどうしてオールマイトが遅刻してきたのかだった。それがなければ相澤や13号も怪我を追わずにすんだ可能性だってある。そう言った意味ではオールマイトに全面的に非があるためそのことに関しても素直に謝罪した。USJ当日に同じような話をした根津はおもわず吹き出しそうになっており、相澤もオールマイトを冷ややかな視線を向ける。平和の象徴は大きな体を縮めて居心地を悪そうにしていた。

 

 二人の謝罪も済みこれから雄英体育祭についての詳細などの説明が始まった。オールマイトは少し用があると言って病室を出て行った。帰り際に一度戻ってくるらしいため特に止める理由もなかったため見送った。本当は用事などではなく活動限界なのだがローレルはそのことを知らない。

 

 ローレルは二人に対して何かを言おうとしてその口を開くがすぐに閉じてしまう。その表情には迷いが見られるため二人は急かすことはせずにゆっくりとレーレルの準備が整うまで待った。

 

「先生、根津さん。あの・・・私も・・・私もヒーローになれるでしょうか?」

 

 口から小さく溢れた言葉は二人がずっと聞きたかった言葉だった。有り余るパワーが逆に危険を呼ぶためヒーロー目指すという最初の一歩、その一歩を踏み出せないでいたのだ。

 

「USJの時に13号先生が言ってたんです。個性は人を簡単に殺せるって。実際13号先生の個性はブラックホールでとても危険だと思いました。でも13号先生はそれを使いこなして多くの人を救うヒーローになっています。私も自分の力を扱えるようになれば傷つけるだけじゃなくて誰かを助けられるようなヒーローになれるでしょうか?」

 

「勿論さ!君は最高のヒーローになれるって僕が保証するよ!」

 

「俺も賛成だ。なによりお前が自ら決めてくれたんだ。これから本気でヒーローを目指すなら俺たち教師は全力でお前をサポートすることを約束する。」

 

 相澤と根津は内心とても喜んでいた。今まで前に進むことができていなかった少女がようやく自分の意思で前に歩き出したことに。一人の生徒にここまで肩入れするのは相澤としては公平性に欠けると思っていたのだがこの時だけはそうは思うことはなかった。

 

「ありがとうございます。」

 

 頭を下げて礼を言うローレル。ここまで少し話しすぎてしまったためそろそろ退出しようということになった。そこでローレルがオールマイトと少しだけ話がしたいと言ったため二人は退出しオールマイトが病室に入ってきた。

 

「私に話があると呼ばれてきた!それでどうしたんだい?もしかして遅刻の件?」

 

「もうその話は終わってますよ。先生がその話をしたいなら話は別ですけど。」

 

「いや、やめておこう。まずは君の話に耳を傾けなきゃね。」

 

 本題に入る前の先ほどの内容だった話を冗談めかしてオールマイトがする。それを聞いたローレルは本当にそのまま話をしてしまいそうだったためすぐに話を切り替えた。

 

「聞きたいことがあるんです。先生は怖くないんですか?」

 

「怖くないとは一体何がだい?」

 

「すいません抽象的でしたね。先生の個性はその凄いパワーじゃないですか。それを人に向けて振るうのが怖くはないかってことです。」

 

「恐怖か・・・勿論怖いさ。人っていうのはとても脆い生き物だ。何かの軽いはずみで人が死んでしまうなんてことは珍しい話じゃない。私は最初からこの力を制御できてたから君の苦労はわからない。それでも最初は人に使うのが怖かったよ。制御できてると分かっていても緊張したものさ。」

 

 最初から制御できていたオールマイトとは違い少しずつ訓練を重ねて自分の力を自在に使えるようになるようになるためら空いている時間を見つけるようにはしている。だがそれでも大した進歩は見られてはいない。

 

「私がいつも笑っているのはどうしてだと思う?」

 

「敵を威圧するためですか?」

 

「うーん!最初にその考えが出てくるのは私心配だよ!答えは自分に嘘をつくためさ。」

 

「嘘?」

 

 オールマイトは基本的に嘘はつかない人物であるため嘘をつくと言われてもイメージが湧かない。ましてや自分につく嘘とはなんなのか全くわからない。

 

「内なる恐怖を欺くために私は笑っているんだ。元論人々に安心してもらうためっていうのもあるけどね。君は少し焦ってるんじゃないか?それじゃあ得られる結果も得られない。まずは笑って乗り越えてみたらどうだい?」

 

「笑って・・・?」

 

 恐怖は人々に安心を与えるが威圧する意味も込められている。両方の性質を捉えながらもさらに自分の恐怖に打ち勝つために笑っていたのだ。オールマイトが恐怖を感じているなど全く思っていなかったため意外といえば意外だった。

 

「ここに来る前に相澤くんから君が真の意味でヒーローを目指す事にしたのは聞いたよ。全力でサポートすることもね。教師としては新米な私でも私なりにアドバイスできることがあると思うから学校に来たら私のところにおいでよ。力になろう。」

 

 自分には力の使い方を教えてくれる師匠がいたが彼女にはそれがない。ならば教師としてそれを教えてあげる必要があるのではないかと考えたオールマイトは自分が教えることを提案した。それを聞いたローレルは素直に頭を下げて感謝した。

 

「それじゃあ私はこの辺で。それではケント少女、お大事に!」

 

 そう言ってオールマイトも病室を出て行き部屋にはローレル一人が残った。

 

 

 

 

 

 

 二日ほど病院で過ごしローレルは学校へと登校した。そこまで休んでいたわけでもないのに教室の大きな扉に懐かしさを感じた。扉を開けるとその音に釣られて全員がこちらを向く。

 

「ケントくん!もう大丈夫なんだな!」

 

「ローちゃんおはよう!元気そうでよかったよ!」

 

「ケント、あんたもう来て大丈夫なの?」

 

「よぉケント!退院おめでとう!」

 

 教室へと入るとクラス全員がローレルへとかけより声をかける。一度に全員から声をかけられて返せるはずもなく戦闘訓練の時オールマイトはこんな気持ちだったんだなと内心思った。

 

 左腕にはまだ包帯が巻かれているがすでに怪我は治っている。リカバリーガールに登校するときは念のため必ず巻くように言われているため頑張って巻いてきた。それについても説明すればみんな安心した顔を見せた。

 

「飯田くん、私がいなかったってわかって最初に探そうって言ってくれたって聞いた。上鳴くんは閉じてるゲートを開けてくれた。八百万さんは私を探せる道具を作ってくれた。障子くんは私を見つけてくれた。クラスのみんなも私を助けてくれてありがとう。」

 

「「「当然!」」」

 

 ヒーローならば人を助けるのは当たり前。クラス全員がヒーローを目指しているならばその心構えが出来上がっているのは当然だった。予鈴がなったため全員が席につくと教室に相澤が入ってきてホームルームが始まる。

 

「お前たち全員が体育祭へと向けて訓練をしているのは分かる。努力するのはいいが無理はするな。体育祭に出られなくなって一番困るのはお前らだ。」

 

「「「はい!」」」

 

(みんなは訓練をもう始めてるんだ。なら私も頑張らないと。)

 

 各々が既に体育祭に向けて準備を進めている。自分がなりたいヒーローを目指して少ないチャンスをモノにしようと頑張っているのだ。人よりも圧倒的に遅いスタートではあるがローレルのヒーローとしての道がようやくここにスタートした。

 

 

 

 

 

 授業が終わり早速訓練をするために演習場へとやってきた。オールマイトにここに呼び出されたため何をするのかなどは一切聞いていない。

 

「お、きたね。それじゃあ早速始めよう。」

 

「お願いします。で私は何をするんですか?」

 

「それはね、これだよ!」

 

 そう言って指差した方向に四角いブロックが置いてあった。

 

「このブロックを君は攻撃するんだ。ある程度の衝撃を与えると砕けるようになってるからこれが壊れないように力を押さえるんだ。まずはお手本を見せよう。」

 

 ブロックの一つを運びオールマイトの拳がブロックに衝撃を与えた。するとブロックは少しずつ音を鳴らして全体にひびがはいる。

 

「目安としてはこれぐらいだよ。ちなみにこれを用意してくれたのはセメントス先生だよ。また欲しければセメントス先生に言うようにね。」

 

 ブロックを触ってみるとコンクリートのようだった。コンクリートの強度を操ることができるため自由に形を変えて再び固めることができるのだ。

 

「結構古典的なんですね。」

 

「まあね。私達のようなパワー系の個性は感覚でものを覚える必要があるから仕方ないさ。おっとこれから少し用事があるから一旦学校に戻るよ。また後で見に来るから頑張ってね!」

 

 と言い残してオールマイトは走り去ってしまった。ちなみにこの訓練方法を考えたのは相澤なのだが走り去りながらもローレルがこの訓練で力を使いこなせるようになれば緑谷にも同じ訓練ができるのでは?と考えていた。

 

 オールマイトがいてもいなくてもやることは変わらないため早速ブロックの一つを並べて殴ってみる。その瞬間ブロックは吹き飛び跡形も無くなってしまった。思っていたよりも簡単にブロックがなくなってしまった事にとても驚いた。

 

(こ、こんな力で能無と戦ってたんだ。じゃああの能無どんだけ硬かったの?)

 

 疑問に思いながらも別のブロックを用意して先ほどよりも力を抜いて再び殴りつける。今度は割れることはなかったがひびがはいっていなかったため弱すぎたようだ。難度も何度も繰り返し行うが強めれば壊してしまい弱めればひびがはいらない。

 

 同じ結果の繰り返しをしているといつのまにかかなり時間が経っていたようでオールマイトが戻ってきてしまった。そろそろ下校時間になるからとこの日はこれで終了してしまった。

 

 翌日にも同じ訓練をするもあまり進みはよくない。すこしでも許容範囲を超えると簡単に砕けてしまうようになっているためすぐに壊れてしまう。焦っていると言われたため適度に休憩を挟んで特訓するもこの日も特に進歩もなく終わってしまった。そしてこんな訓練を続けているうちについに雄英体育祭の当日を迎える事になってしまった。

 

 

 




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