個性[超人]   作:2NN

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騎馬戦

 

 

「上に行くものにはさらには受難を。雄英に在籍する以上何度でも聞かされるよ!」

 

 全員の視線がローレルへと向けられる。その目は獲物を狙う獣のように鋭く重しとなってのしかかってくる。今はただの仮初の一位だがその重圧は軽いものではなかった。一位になるということはそれだけ大変なのだ。

 

 早速騎馬戦のルールについて詳しく説明が始まる。制限時間は十五分。振り当てられたポイントの合計が騎馬のポイントとなり騎手はそのポイントが記されたハチマキを装着する。制限時間一杯使ってハチマキを奪い合いポイントの合計を競う。取ったハチマキは必ず首から上につけなければならない。

 

 さらにはポイントが0になっても騎手が崩れても脱落にはならず態勢を立て直せば再び復帰してもいいことになる。つまりフィールドには最初から最後まで同じ数の騎馬が居続けることになる。

 

「競技中は個性発動ありの残虐ファイト。でも、あくまで騎馬戦。悪質な崩し目的での攻撃などはレッドカード。一発退場とします。それではこれから十五分。チーム決めの交渉スタートよ。」

 

(私のポイントは1000万。間違いなく全員から狙われることになる。そうなると私と組めば必然的に狙われる機会が増えて負担がかかる。そう考えれば奪うほうが精神的にも体力的にも圧倒的に楽。)

 

 頭の中で牙についての考えをぐるぐるとめぐらせる。最低人数が二人のため最悪二人でも問題はない。相澤からは最初の予選のみ飛行禁止令が出ていたためここでは飛んで逃げ回ることができる。そうなれば後は誰が組んでくれるかだ。

 

「あの・・・ケントさん!」

 

 突然後ろから声をかけられた。振り返ると緑がかったもっさりした髪の少年、緑谷が立っていた。その隣には麗日と常闇がいる。

 

「ん?どうしたの?もしかして私と組んでくれる?」

 

「え?!よ、よく分かったね?!」

 

 この状況で声をかけて来るなどそれくらいしかないだろうと思いながらも嬉しく思った。下手をすれば余りで組まされることになるかもしれない。組む相手が知らない相手ならば連携には遅れが出る。

 

「僕達と組んで欲しいんだ。1000万を持ってる君と組むのはなんだか利用してるように感じるかもしれないけどそれでも良かったら・・・」

 

「いいよ。」

 

「そうだよねやっぱりダメだよ・・・いいの!?」

 

「いいってば。なんで声かけといて驚いてんの?」

 

 断られると思っていたからか頭をかきながら恥ずかしそうにしている緑谷。隣では麗日がたははと笑っていた。

 

「その人数で私に声をかけてきたってことは何か考えがあるんでしょ?ならそれで行こう。このままだと余りものだったからね。でも一番狙われるよ、いいの?」

 

「覚悟の上だよ。」

 

「ガン逃げすれば勝てるもん!」

 

「お前の力を見れば多勢に無勢とは思わないからな。」

 

 全員が賛成の言葉を述べたことでローレルの所属する騎馬が決定した。

 

 チーム決め交渉の時間が終了したことを知らせるブザーがなる。これよりチームメイトを変更することはできなくなった。

 

「それじゃあいよいよ始めるわよ!」

 

『十五分のチーム決め兼作戦タイムを経て、フィールドに12組の騎馬が並び立った!』

 

『ほう、なかなか面白い組が揃ったな。』

 

「麗日さん。」

 

「はい!」

 

「常闇くん。」

 

「ああ。」

 

「ケントさん。」

 

「うん。」

 

「よろしく!」

 

 麗日が左、常闇が右、正面にはローレルで騎馬を組み騎手には緑谷となった。プレゼントマイクによるカウントダウンが始まる。

 

『Three!』

 

「狙いは。」

 

『Two!』

 

「一つ。」

 

『One!』

 

「スタート!」

 

 ミッドナイトの開始の合図によりそこかしこから騎馬がこちらへと向かって来る。最初から狙われることは想定していたが流石に全員さが開始と同時に攻めて来るとは思わなかった。

 

「実質1000万の奪い合いだ!」

 

「はっはっは!緑谷くん、いただくよ!」

 

「いきなり襲来とはな。追わし者の運命。選択しろ緑谷。」

 

「勿論、逃げの一手!」

 

 真正面から戦うのは利口とは言えない。緑谷達を除く10のチームから十五分間狙われ続ければチーム内の消耗は激しくなりいずれやられてしまう。この場から離脱し距離を取るために動こうとすると突然地面がぬかるみ始めた。

 

「なにこれ?!」

 

「沈んでる。」

 

「三人ともしっかり捕まって!一度飛ぶよ!」

 

 正面に立つローレルが緑谷を背負って空へと飛ぶ。後ろについた常闇と麗日ががっちりとくっつくと四人の体は空へと浮いた。

 

「飛んだ!どいつの個性だ!」

 

「耳郎ちゃん!」

 

「分かってる!」

 

 葉隠のチームにいる耳郎が耳のプラグを空中にいる四人へと向ける。

 

 麗日を支えていた手を離したダークシャドウが飛んできたプラグを弾き飛ばす。

 

「いいぞダークシャドウ。このまま俺たちの死角を見張れ。」

 

「あいよ。」

 

 常闇がいなけれこのチームに足りなかった防御手段。それを補って有り余る全方位を見張りながらも中距離での防御を緑谷は素直に称賛した。

 

「そろそろ着地だよ、麗日さん。」

 

「分かったローちゃん。」

 

 麗日は常闇と緑谷を浮かせることでローレルに負担なく飛ぶようにサポートしている。また、飛行をする際の慣性も取り除けるためおまさはそうでもないがそういった点で助かる部分がある。

 

「機動性もバッチリ!すごいやケントさん!」

 

「麗日さんが浮かせてるからだよ。」

 

「そ、そんな〜えへへ〜。」

 

 緑谷へと迫っていた葉隠達も再び追いかけようとするが気がつけば自分たちのハチマキが奪われていた。一つのことに固執したが故に視界が狭まり横から掠め取られてしまったのだ。

 

『さぁーまだ開始から二分と立ってねぇか早くも混戦!混戦!各所でハチマキ奪い合い!1000万を狙わず2位から4位狙いってのも悪くねぇ。』

 

「うわーっはっはっは!奪い合い?違うぜこれは、一方的な虐殺よぉ!」

 

 峰田の声がした方向である背後からは障子一人が走ってきていた。騎馬戦なのに背中には誰も乗せていない。正面からは鉄哲チームがはしってきているため挟まれてしまっている。

 

「一旦距離を取るぞ!とにかく複数を相手に立ち止まってはいかん!」

 

 再び空へと飛ぼうとしたところでローレルの足に何かがくっついているのがわかる。よく見れば峰田のもぎもぎが地面にありローレルは気がつかないうちに踏んでしまっていた。

 

「うわ、取れないよ。」

 

「それは峰田くんの?!いったいどこから!」

 

「ここだよぉ〜緑谷〜。」

 

 障子の複数の腕に囲われた中に峰田は潜んでいた。空はありなのかと叫べばミッドナイトからありだとの返事が帰って来る。峰田が一度触手の中へと引っ込むと今度はピンク舌が飛んでくる。なんとか避けることができた緑谷にはそれに見覚えがあった。

 

「さすがね緑谷ちゃん。」

 

「蛙吹さんもか、すごいな障子くん!」

 

 二人とも触手でできた暗闇の中に身をひそめるともぎもぎと舌の猛攻がやってくる。ギリギリで交わし続けるが上半身だけで避けるには無理がある。三人が一緒となんで動いているのとは違い向こうは障子が一人で走っている。これにより他と動きを合わせる必要がない分機動力が高い。

 

「ケント!一度ここから離れろ!」

 

「分かってる!」

 

 足についたもぎもぎを無視してその場から飛び立つ。なんとか飛び立つことができたがもぎもぎは靴から離れてくれておらず、地面ごとひっぺがしまった。

 

「ケントさん靴すごいことになってるけど大丈夫?!」

 

「多分平気、それにこれはこれで使えるかも。」

 

 直後地上で大きな爆発が起こる。爆発源は勿論爆豪。空へと逃れた緑谷達を追って単身で追いかけてきた。

 

「調子乗ってんじゃねぇぞ!くそがぁぁぁ!!」

 

「させないよ!」

 

 空中で体を反転させローレルが爆豪の正面へと回る。先ほど地面ごとくっついてきた足を突き出し爆豪の爆破を防いだ。正面に向かって爆破を使ったことで勢いが減少した爆豪は下にいるゼロのテープで体を巻きつかれ騎馬の上へと着地した。

 

『あああああ!!!騎馬から離れたぞ!いいのかあれ!』

 

「テクニカルだからOKよ!地面についてたらダメだったけど。」

 

 空中から地上に降りてすぐに移動を開始する。ずっと空を飛んでいれば今よりも格段に勝ち残るのは楽になるだろう。だがそれでは意味がない。ここにいる全員と競い合い勝たなければ本当に勝ち取ったとは言えない。これはローレルがチームを組む上で提案したことだった。逃げるだけではなく勝ちに行きたかったから。

 

『さぁ!各チームのポイントはどうなっているのか!スクリーンに表示するぜ!』

 

 プレゼントマイクの声でスタジアムに設置されているスクリーンに騎馬名とポイントが表示される。だがそれを見た観客とプレゼントマイクは困惑の声を上げた。

 

『ちょっと待てよこれ。A組緑谷以外ぱっとしてねぇー・・・ていうか爆豪!あれ?』

 

 爆豪の額に巻かれていた665と書かれたハチマキがいつの間にか奪われていた。流石の爆豪もトップを狙うことに集中していたことで周りへの意識が疎かになっていたのだ。

 

「単純なんだよA組。」

 

 そう言って爆豪からハチマキを奪ったのは隣のクラスの生徒だった。

 

「んだてめぇこら!返せ殺すぞ!」

 

「ミッドナイトが第一種目と言った時点で予選段階から極端に数を減らすとは考えにくいとは思わない?おおよその目安を40位以内と仮定し、その順位以下にならないように予選を走ってさ、後方からライバルになる者達の個性や性格を観察させてもらった。その場限りの有利に執着したって仕方ないだろう?」

 

「・・・クラスぐるみか。」

 

 上位にB組が余りいなかったのは力を温存し敵の情報を集めていたから、そう目の前の生徒は語った。それはつまりクラス全体でA組に勝ちに来ているということ。

 

「まぁ全員の相違って訳じゃないけどいい案だろ?人参ぶら下げた馬みたいに仮初の頂点を狙うよりさ。あ、後ついでに君有名人だよね。ヘドロ事件の被害者。今度参考に聞かせてよ、年に一度ヴィランに襲われる気持ちってのをさ。」

 

 B組男子が爆豪を小馬鹿にして煽る。徐々に爆豪の顔の筋肉に力が入り最後には誰が見てもヴィランのように恐ろしい顔つきになっていた。

 

「切島・・・予定変更だ。」

 

「ん?うわ!」

 

 爆脳に呼ばれて振り向いた切島が小さく悲鳴を上げた。その姿は怒りのオーラを幻視してしまうほどの凄みがあったのだ。

 

「デクの前に、こいつら全員殺そう!」

 

 移動しながらその様子を見ていた緑谷はB組の作戦は長期における勝利を見ているためトップに対する固執はしていない、無理に狙われることは少なくなる。そう思ってみんなへと伝えようとした瞬間突然騎馬がブレーキをかける。落ちないようにバランスをたもちながらなぜ止まったかの原因を見ると、正面には轟チームがいた。

 

「どうやらそう簡単じゃないみたいだよ。」

 

「そうみたいだね。」

 

『さぁ残り時間半分を切ったぞ!いよいよ騎馬戦は後半戦に突入!予想だにしないB組優勢の中1000万ポイントは誰の手に渡るのか!!』

 

「もう少々終盤で相対すると思っていたが、随分買われたな緑谷。」

 

 轟の声により飯田のエンジンで騎馬が迫ってくる。またその周りからもこちらへと向かってきていた。

 

「無差別放電、130万ボルト!」

 

 轟達が絶縁体の布を被り八百万が避雷針を立てて上鳴が電気を放つ。流石にローレルでは後ろのチームメンバーを守ることはできない。

 

「常闇くん!お願い!」

 

 ローレルの前にダークシャドウがでて上鳴の放電を受け止める。周りの生徒達は防ぐことができないでいるのかもろにくらっている。上鳴の放電が収まると地面に刺していた避雷針を伝って地面を凍らせて他のチームの足を止める。

 

『群がる騎馬を轟一瞬!』

 

『上鳴の放電で確実に動きを止めてから凍らせた。流石というか障害物競走で結構泣かずに避けられたのを省みてるな。』

 

 動きを止められた生徒達からハチマキを奪いつつ後方に氷の壁を作り追ってこられないようにする。自分たちだけが1000万を奪えるように。

 

「これ以上早く動くとみんなに負担がかかる!追いつかれるよ!」

 

「牽制する!」

 

 常闇からダークシャドウが現れ轟の騎馬へとせまる。轟は八百万の名を呼びながら自分の腕で額のハチマキを押さえる。そして呼ばれた八百万は腕から鉄板を出してダークシャドウの手を受け止めた。

 

「八百万さんの創造、厄介すぎる。」

 

「いや、それ以上に上鳴だ。あの程度の装甲、太陽光のみならダークシャドウで破れていた。」

 

 常闇の声で開始前のチーム決めの際にお互いの個性について話していたことを思い出した。常闇のダークシャドウは暗闇では力が増すが獰猛にコードロールが難しくなる。逆に光の中ではコントロールできるようになるもパワーが落ちてしまう。先ほどの放電によりダークシャドウのパワーが一時的に落ちているのだ。

 

「暴力反対・・・」

 

『あーっと!緑谷チームもう後がなーい!』

 

 気がつけばフィールドの恥へと追いやられてしまった。轟の氷に囲まれている中ではもう逃げる場所はほとんどない。

 

 

 

 

 





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