爆豪vs.切島の戦いは爆豪の勝利で幕を閉じた。全身を硬化するためにはずっと力んでなければいけないためその点を突かれてしまったのだ。爆破の連打によって休む間を与えてくれなかったことで硬化が解けてしまい意識を刈り取られた。
そして迎えた第三試合。轟vs.ケント、常闇vs.爆豪の四人が出場となった。
『準決勝第一試合!お互いの実力はトップクラスの最強対決だ!ヒーロー科ローレルケント!vs.ヒーロー科轟焦凍!』
(あいつは飯田のレシプロ並みに早いと考えて間違いはねぇ。間合いを詰めるれちまえば一瞬でやられる!)
頭の中でローレルに対する考えを纏めながら開始の合図を待つ。
『スタート!!!』
開始早々に氷を使いローレルの体を包んでいく。瀬呂の時ほどの大きさではないにしろ氷の山ができて体を拘束する。
『おーっと!ケント!轟の速攻に捕まり体が拘束されてしまったぞ!これは瀬呂みたいにドンマイコールか?』
ミッドナイトが中断を入れようとリングへと上がろうとすると氷からピシリという音と共がしたかと思えば大きな音を立てて氷が崩れ出した。
「今のでわかったと思うけど、私に氷は効かないよ。」
「チッ!」
再び氷を飛ばして攻撃をするも両腕によって砕かれダメージを負わせることができない。先ほどの戦いで使っていた炎を使う様子が轟には見られなかった。別に炎を使わないからと言って思うところは特にない。本人が使わないと決めたのならそれでいい、ローレルも空を飛ぶことに関しては最低限に留めるつもりでいるからだ。
氷は飛ばしては粉砕の攻防が続いておりそれを見た観客たちは大いに歓声を上げている。しかし当の本人である轟は焦っていた。氷による高速は効かなかった。氷による攻撃も防がれる。だが炎はまだ使うことに躊躇ってしまう。
「さっきの試合では炎も使ってたけど轟くんの基本戦術って氷だよね。」
「ああ、そうだな。それがどうした?」
今まで散々氷を見せてきたためここで否定する意味もないため肯定する。今更そんな質問をしてどうしたのかと聞くとローレルは不敵な笑みを浮かべて答えた。
「氷を使えるのは君だけじゃないって知ってた?」
大きく息を吸って息を吐き出す。その息はとても冷たくローレルも氷を使っていることが分かった。だが分かってからの対応では遅く轟の体は凍りついてしまった?
『おいおいおい!ケントお前氷まで吐き出せるのかヨォ!!本当にあいつなんでもできんなぁ!!』
『ありゃ俺も知らなかったぞ。』
『担任のお前でもかよ!』
「何なんだよあいつの個性は!」
「もう驚かないって決めてたんだけどなぁ・・・」
「個性びっくり箱だね。」
「透視能力と目からビーム、空も飛べて移動も早くてさらにはパワーもある。そこに加えて凍りつく息まで吐けるなんて本当にケントさんの個性はどうなってるんだ。それでも個性は身体機能の一部だからどこかで必ず限度がくるはず。そう考えるとデメリットは何なんだろう。そういえば個性の名前を聞いたことなかったな。今度聞いてみてその時に一緒にどんなことができるのかも聞いてみよう。他にはいったい何ができるんだろう・・・」
周りからは様々な反応が見られた。クラスメイトにも教師にも一度として見せたことのなかったものだ。吸い込んだ空気を吐いで圧縮することで液体窒素を作り出しそれを吐いているのだ。
動けなくなった轟。普段自分はこれを相手に使っていたのかと思い瀬呂に申し訳なくなった。
このままでは動くことができない。しかし炎は使うべきかどうか分からないため無闇には使えないでいた。
先ほどまで炎を使っている姿を見ていたミッドナイトは氷を溶かして再び戦いが始まるだろうと思っていた。ミッドナイトだけではなく観客全員がそう思っていたのだが炎はいつまでたっても使わない。
「炎、使わないならこのまま外に出すけどいいの?」
「・・・どうすればいいのか分からねぇ。」
「そっか。」
姿勢を低くして拳を強く握り腕を引く。直接殴らなければ制御ができなくても関係ないと考えてとあるヒーローから技を借りることにした。腕を引きその技を使おうとする。
「でもこれだけは言っておく。ヴィランと戦って同じように負けたら諦めるの?」
「!!」
エンデヴァーの道具になりたくないという思いを一心にここまで来たがその思いも緑谷によって砕かれた。だから今ここで固まって動けないでいる。
「轟くんがどうして炎を使おうとしないのかは知らないけどなりふり構ってる余裕・・・あるの?」
その声に答えるように轟の左側から炎が吹き出した。自分も昔オールマイトを見てその背中に憧れた。オールマイトを超えると豪語していながらこんなところでいまだに力を出し惜しみしてていいはずがないとそう思った。
このまま氷を溶かして立ち上がると誰もが思った。その想いに応えるように炎の勢いはさらに上がりその目には迷いがなくなっていた。
「悪い、ちょっと色々考えてた。」
「いいよ。緑谷くんも君に何か言ったんでしょ?」
「聞こえてたのか?」
「ちょっとね。」
引いた拳をさらに強く握りしめる。轟の炎もその勢いを使って周りの氷を溶かしていく。緑谷の時にも同じことをしていたのと同じ現象を起こすつもりだ。
「強めのいくぞ!!」
(オールマイト、技借ります!)
「Texas Smash!!」
膨張による爆発とローレルの拳による風圧がぶつかり合う。オールマイトの技を本人の許可なく勝手に使ってしまっているが気を悪くしたかも知れないから後で謝っておこうと内心思った。
『スマッシュだってよ!かっこいいじゃねえがチクショウ!こいつも緑谷も憧れ強すぎだろぉ!!』
『あいつもまた緑谷とは違う意味で力の制御がうまくできてない。だからこそ編み出した今できる最大の力だ。いい手本が近くにいるからな。』
『そして相変わらずの煙で何も見えないぞ!この展開はさっきも見たやつだ!ミッドナイト!頼んだ!』
煙を払いながら二人を探すミッドナイト。リングに立っていたのはローレル。轟は壁際まで吹き飛ばされ先ほどの緑谷と同じようになっていた。
「轟くん場外!勝者ケントさん!」
こうしてローレルは決勝へと駒を進めた。No.2の息子を破ったという事実はとても大きな衝撃で今までにない歓声がスタジアムへと響く。倒れている轟の元へと近寄るとその体を横抱きにして持ち上げる。
「このまま私が保健室まで運びます。轟くんに無理やり個性をつかわせたのは私のせいですので。」
「それは別にいいんだけど・・・この子大丈夫かしら?」
「それを今から連れて行って確認するんですよ。」
「そうじゃなくて・・はぁ・・・いいわ行ってきなさい。それと、おめでとう。」
最後のおめでとうという言葉はマイクを切ってローレルにのみ聞こえるように言った。事情を知っているために大きな変化が見られたことに気がついてはいたが、主審のためここから離れられない。なので今こっそりと伝えた。その言葉がうれしくなり大きな返事を返した。
そうしてローレルはリングを後にした。轟を横抱きにして抱えたまま。ちなみにミッドナイトが轟を心配していた理由は
『轟気を失って倒れたのは仕方ないが女の子にお姫様抱っこはどうなんだ?!これ全国放送だぜ!』
『触れるな。そっとしといてやれ。』
ということだった。そんなことを全く意識していないローレルは急いで、しかし轟に負担がかからないようにリカバリーガールの元へと向かう。
「・・・ケント?」
途中で目が覚めたのか轟が声をかけてくる。目が覚めたばかりで眠いのか今の状況には気がついていない。
「今から出張保健室に運ぶからもう少し我慢ね。それと緑谷くんとの戦いで一つだけ思ったことあるんだけど言っていい?」
「なんだ?」
「両親は大事にしてあげてね。勿論お父さんも。嫌いかもしれないけど会えなくなってからじゃ遅いんだよ?」
二人の試合中の会話はローレルには全て聞こえていた。話を聞いて事情が分かったとはいえないが内容から轟は親のことを嫌っていることが分かった。ならばそんな悲しいことは言わずに今いる親と仲良くしてほしい。自分とは違い肉親がいるのだから。
「それはどういう・・・」
「着いたよ。」
轟の声を遮り出張保健室へと入室すしてベッドへと寝かせる。ちゃんとしたベッドに寝かせたことで疲れが再び出てきたのかすぐに轟は眠ってしまった。
「この子のことは私に任せな。あんたはまだ試合だろう。怪我もして無いようだししっかり休みな。」
「はい、轟くんをよろしくお願いします。」
そう言って保健室を出てA組の席へと戻っていった。次に戦う相手は爆豪か常闇。どちらも強力な個性を使いこなしているため油断はできない。だがどちらが上がってきても勝てるという自信はあった。
「あ、ケント!あんたあれどうやったの!」
「口から凍らせる勢いなんてできること多すぎてずるいよ!」
「決勝おめでとう!」
「ケントさん個性の詳細教えて!」
みんなが同時に質問やら称賛やらを送ってくるためどれに返せばいいのか疑問に思う。
「私の個性は[超人]かな?」
「超人?」
「そ、超人。詳しいことは私もわかんないけど。」
『爆豪のラッシュがとまらねぇ!!』
そんなことをしているうちにプレゼントマイクの実況が聞こえてきた。爆豪と常闇の試合が始まってしまったため全員が席につき試合を見始める。
(仲良しかこのクラス。)
ダークシャドウによる攻撃を爆破を使用して防ぐ爆豪。ダークシャドウは光に弱いため爆豪の爆破と同時に出る光によってどんどん弱体化してしまう。空中から飛び込みながらダークシャドへと爆破を使い怯ませる。爆豪をつかもうとした手を爆破で回避しそのまま背後へと着地し、瞬間でもダークシャドウが迫る。
「スタングレネード!!」
両手を合わせた状態からの爆破をつかいスタングレネードで大きな音と強い光で突発的に目の眩み、難聴、耳鳴りを起こさせる。
爆破により必然的に煙が上がってしまうのは仕方がないが今回の体育祭では煙によってリングがかけれてしまうことが多いためプレゼントマイクが愚痴をこぼした。
煙が晴れると爆豪によって地面に押さえつけられた常闇の姿。顔を片手で押さえられ反対の手では連続的に小さな爆発が起こっており動けばいつでも攻撃できると見せている。
「ダークシャドウの弱点、知っていたのか。」
「数打って暴いたんだばぁか。まぁ相性が悪かったな同情するぜ。」
「・・・降参だ。」
「常闇くん降参!勝者爆豪くん!」
こうして決勝に進む二人が残った。ひたすら攻撃をしてダークシャドウの弱点を暴いた爆豪。戦闘におけるセンスが抜群にいい爆豪だからこそ暴けたようなものだ。
A組の席へと見上げる爆豪。目線の先にはローレルがおりお互いの目線がぶつかる。観戦していたヒーローたちも決勝でぶつかる二人の戦いが楽しみで仕方ないようだ。今からドラフトの話をしているものたちまでいる。
「あの二人の戦い、どうなるんだろう。」
「しっかり見てリベンジだな。」
「飯田くん。」
A組の席へと戻ってきた飯田が緑谷と麗日にそう言うと優しく微笑んだ。その姿を見て次こそはと気合を入れた二人もうなずく。突如飯田の体が上下に小さく揺れ出す。その姿を見て声を揃えて驚く二人。
「電話だ。」
そういう飯田の声も心なしか揺れていたような気がする。飯田の携帯に表示されていたのは母親の名前。二人にこだわりを入れて一度静かな場所へと移動して電話に出る。
「もしもし、負けてしまいました母さん。不甲斐ないです。」
「違うの、その事じゃなくて。ごめんなさいね。天哉、落ち着いて聞いて。天晴が、兄さんがヴィランに!」
その先を聞きたくはなかった。だが聞こえてしまうその内容に飯田は唖然とした。すぐに相澤へと連絡、仲の良い緑谷と麗日にこのことを告げて早退し兄であるインゲニウムの元へと向かうのだった。
試合のために控え室で待機していたローレル。頭の中では今日のことを考えていた。最初の障害物競走、次の騎馬戦、最後の個人戦で二試合をやってきたが最初の二つは少し違うが後半の二つは自分が直接戦闘を行なってきた。
(全く・・・というわけじゃ無いけど・・・声はいつもより小さかった。)
戦闘になれば必ず頭に響く声も今日は小さく弱かった。おかげで戦うことに支障がほとんどでることはなかった。その理由を考えていると突然扉が乱暴に開かれ爆豪が姿を見せる。
「あ?・・・あれなんでテメェがここに?控え室・・・ここ2の方かクソが。」
普段は見せないようなその姿を見てついくすりと笑ってしまった。そのことに苛立ったのか爆轟の額に青筋が浮かぶ。
「部屋間違えたのは俺だけどよぉ・・・テメェクソ金髪何笑ってんだ!」
「ごめんごめん・・・クスッ」
「それやめろつってんだろうが!」
「いや言ってないじゃん!」
言動は悪いが爆豪は頭もよく思考の回転が速い。戦闘では生まれつきのセンスが輝きしっかりしているためそのギャップがツボに入ってしまった。
「まぁそれよりビク豪くん。」
「誰がビク豪だコラ!爆豪だ!!」
「いや知ってるから。何当たり前のこと言ってんの?」
「テメェ・・・本当に潰されてぇようだな・・・」
ローレルにいじられたことでさらに苛つき両手から小さな爆発が起こる。だがこれから試合があるため無闇矢鱈に攻撃する事はできない。
「お互い頑張ろうね。」
そう言って左手を前に出す。その手をじっと見た後に爆豪は手を払う。
「はいはいごめんごめん。」
そう言って今度は右手を出すがそれも払われる。爆豪は決勝前に相手と馴れ合うつもりは一切なく握手などもっての他だった。
「俺はお前を完膚なきまでに叩き潰す。本気でこい!」
「・・・分かってる。」
「ならいい。」
本気という部分で返事に戸惑ったが、返事をしなければそれはそれで面倒くさそうだったためそれっぽく返事をしておく。控え室を出て隣へと移動していく爆豪。扉を閉めていなくなった後先ほどの驚いた表情を思い出し
「クスッ。」
「テメェまた笑いやがったな!!!」
「ごめんって!」
爆豪は地獄耳のようだ。
誤字、脱字が多いです。申し訳ありません。