個性[超人]   作:2NN

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職場体験

 

 

 コスチュームへと着替えて向かった先は保須市。エンデヴァーはヒーロー殺しを捕まえるためにわざわざ少し離れた場所の保須市へと出張して活動をするとのこと。

 

 一日目は事務所についたのが夕方で外に出れば既に日は落ちていた。そのせいか轟とローレルはパトロールとして外を歩いていても声をかけられることはほとんどなかった。しかし2日目は朝から。No.2と一緒に歩いていれば嫌でも目立つ。

 

「あれ?体育祭で準優勝した子じゃね?」

 

「あっちはその子と戦った4位の子よ。」

 

「二人ともエンデヴァー事務所か。頑張れよ!」

 

 すれ違う人からは多くの声を掛けてもらった。それに対して笑顔で手を振り返すローレルに対して轟は無反応。親子共にファンへの愛想は良くはなかった。

 

「轟くんも手振ってあげたら?」

 

「俺もか?」

 

 どうするか悩んでいると目の前を歩いているエンデヴァーが目に入る。事件解決数、社会貢献度、そして支持率。この三つを兼ね合わせてランキングがつけられる。事件の解決数がエンデヴァーは一位だが支持率がそこまで高くなくオールマイトに負けている。なら支持率というものもヒーローには必要になる。

 

 そこまで考えて笑顔は浮かべなくとも軽く手を振った。遠くからは黄色い悲鳴が上がっているがすぐに手をおろした。

 

「焦斗、人気取りなどやめておけ。そんなものヒーローには必要ない。」

 

 エンデヴァーが顔だけむいて注意を促す。反論しようとする轟だったがローレルに口を押さえられて声を出すことはできなかった。

 

「すみません。私が手を振ってあげたらって言ったんです。」

 

「フン、覚えておけ。たとえ国民からの支持が一切無くとも誰かを助ける、それができればそいつは立派なヒーローだ。」

 

 それだけ言って前を向く。轟の口から手を話すとこちらをじっと見て

 

「なんで遮った?俺は俺の判断で手を振ったんだ。」

 

「でも提案したのは私。ごめんね、エンデヴァーさんがそこまでファンに冷たいとは思わなかった。」

 

「オールマイトの人気っぷりに嫉妬してるだけだ。」

 

 これ以上話しているとまた何か言われそうだと思い黙って歩くことにした。時折エンデヴァーに握手を求めるものなども現れるが全て冷たくあしらっており、逆にあしらわれた方は嬉しそうにして帰っていった。

 

(そういうので喜ぶファンがついてる?)

 

 エンデヴァーのファン事情はさておき出会うものは決していいものばかりではない。人が多ければ必然的にトラブルが多くなる。まさに今事件がそこで起きており、ヒーローを呼ぶ声をエンデヴァーの耳はしっかり聞き取っていた。

 

「焦斗、ケントくん行くぞ!」

 

「はい!」

 

「わかった。」

 

 声がが聞こえた場へと走っていく。事件現場は商店街のような場所で多くの人が野次馬をしており非常に混み合っている。

 

「まずは的確に状況を理解しろ。誤った情報や思い込みは現場を混乱に導く。どうした?ここで何があった?」

 

「エンデヴァー!良かった、実は・・・」

 

 近くにいても手が出せないのか見ているだけだったヒーローを捕まえて事情を聞く。一人のヴィランが子供を人質にとって金を要求しているとのこと。ナイフを持っているのは見えていたらしいが個性は不明で手が出しづらい。

 

「人質か、面倒だかやるしかあるまい。ヴィランを側に刺激するのは愚策だ。犯人を捕らえても人質が亡くなればヒーローなど存在する意味はない。二人とも見ていろ。万が一のために個性の使用許可を出す、だが俺がいいというまで使うなよ。」

 

 全てにおいて万全を期すエンデヴァーが轟とローレルの二人に個性使用許可を出す。個性を支えず怪我をさせてしまったでは話にならないため最低限自衛のために使わせることにした。

 

 人混みをどかしながらエンデヴァーが進んでいく。その威圧感から野次馬は避け道を譲る。

 

「おまえの目的はなんだ?金か?」

 

「ああそうさ!こいつが死んでほしくなけりゃ大量の金を持ってこい!」

 

(具体的な金額を提示せず場所もよく目立つ、そこまで練った計画ではないな。)

 

 犯人のナイフを握る手は震えておりどこか怖がっている様子を見せる。これならば隙をついて子供を助けらることができると考えた。

 

「早く持ってこい!」

 

「分かった。だからその子にあまりナイフを突きつけるな。」

 

 そう言って携帯を取り出し連絡を取るフリをする。自分の要求が通ったことに安心したのか言われた通りナイフを子供から遠ざけた。そして犯人が背後の安全を確認するために振り向いた瞬間エンデヴァーは手から炎を糸のように細くして犯人へと飛ばした。

 

 体を強く締め付けられたことで子供の拘束が緩み解放される。その瞬間に炎を噴射して犯人との距離を詰めて体を地面に倒し確保する。

 

「大丈夫か?」

 

「うん!」

 

「なら良かった。」

 

 普段はむすっとした仏頂面だが小さな子供へと見せた顔は柔らかく、それを見たこの場にいる全員が驚いた。特に驚いたのは轟。

 

(あんな顔をもするんだな・・・)

 

 だったらそれを自分たちにも向けろよと口には出さずに訴えた。だが今更それを言っても遅いことなど理解している。

 

 誰もが終息したと安心したが犯人だけはそう思わなかった。ヒーローが自分騙して拘束したとエンデヴァーに訴えるも自業自得だと言われてしまう。犯人にはまだ個性があるためそれを使って一矢報いろうとしたが

 

「やめておけ、それ以上すると手荒になるぞ。」

 

 エンデヴァーの冷たい声が犯人の耳へと届く。自分が個性を発動させる前にやられると感じた犯人は抵抗をやめ大人しくなった。

 

「隙をつければなんでもいい。俺は一人でも可能だがそれが厳しければあたりのヒーローと連携することを忘れるな。」

 

 職場体験2日目にして早速事件が起こり解決した。プロの実力を目の当たりにした二人はエンデヴァーの手際の良さに驚いた。

 

「警察が来るまで少し休んでいろ。どうだ焦斗、プロというものは。」

 

「さすかNo.2ってところだな。」

 

「そうかそうか。」

 

 息子の素直な称賛に嬉しくなったのか若干口元が緩んでいるように見える。褒めたと同時に皮肉も入っているのだがエンデヴァーは気がついていないのか何度もうなずいていた。

 

「こんな世の中だ、世界中では今もどこかで事件は起こっている。俺たちヒーローは犯罪を抑制できるがそれは完璧ではない。現にオールマイトのクソが平和の象徴として言われる今の世でも犯罪は無くなっていないからな。だから俺たちは迅速に現場に向かう必要がある。ヒーローになればまともな休息時間など思わない事だ。」

 

 そう言って警察との話し合いのために二人の元を離れた。口調は厳しかった、だが内容はとても優しいものだった。

 

「つまり休めるときにしっかり休めってことか。」

 

「優しいお父さんじゃん。」

 

「足手まといが出て欲しくないだけだろ。」

 

 エンデヴァー本人がそれを口にしなければ真意はわからない。しかし父親が息子を思う、そんな些細な優しさがなんとなく感じられた気がした。

 

 2日目の職場体験も一日目同様あ事件を何件か解決して回った。。普段はもっと多いようだったが最近は事件数そのものが減ってきているそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 とあるバー、ここは死柄木と黒霧の拠点であり普段は二人の姿しかない。だが今はその二人に加えて新たに二人の姿が見える。一人はヒーロー殺しステイン。今何かと世間を賑わせているヒーロー専門の殺人鬼。もう一人は背の高い黒髪、日本人とは思えない花の高さや堀の深さに加えて膨らんだ筋肉を持ちながら体型はスマートな男。

 

「お前達が雄英襲撃犯、でその一段に俺も加われと?そう言うことだな?」

 

 保須市にて活動していたステインに接触した黒霧はワープゲートを繋げてバーへと招待した。話というのも戦力アップのためにヴィラン連合に加わって欲しいというもの。

 

「頼むよ悪党の大先輩。」

 

「目的は何だ?」

 

「取り敢えずオールマイトは殺す。気に入らない物も全てだ。」

 

 死柄木が緑谷やローレルの写真をステインに見せながら話をするとステインの目が細くなり死柄木を睨みつける。

 

「興味を持った俺が浅はかだった。お前は俺が最も嫌悪する人種だ。」

 

「は?」

 

 死柄木はステインが何を言っているのか一瞬わからなかった。ステインはヒーローが気に入らないから殺している。自分もオールマイトが気に入らないから殺す。そこに何の違いもない、そう思っていたからだ。

 

 しまっていた武器を手に取りいつでも死柄木に斬りかかれるように姿勢を低くするステイン。黒霧はモニター越しにいる先生に声をかけるが死柄木に全て任せると言うだけだった。一発触発の中ついに両者がぶつかり合った。

 

 結果体に言えばステインの圧勝。ステインにより傷を負わされた死柄木は床に倒れ止めに入ろうとした黒霧はステインの個性によって動きを封じられてしまう。唯一いた男は一切動こうとせずにただ座って見ているだけだった。粛清すると言って死柄木の顔についている手にナイフを近づけようとすると死柄木は素手でナイフを鷲掴みにしてナイフをボロボロにした。

 

「口数が多いなぁ。信念?ンな仰々しいものないね。強いて言うならオールマイトだ。あんなゴミが祭り上げられてるこの社会をめちゃくちゃに破壊したいとは思ってるよ。」

 

 そう言ってステインへと手を伸ばすが後ろへと引いて距離を開けることで回避する。マスクの隙間から見えた死柄木の目が一瞬でもステインを怯ませたのだ。

 

「せっかく前の傷が言えてきたところなのにさぁ。こちとら回復キャラいないんだよ。責任とってくれんのか?」

 

 自身のイラつきを鎮めるようにボリボリと首をかきつずける死柄木。

 

「お前と俺の目的は対極にあるが、今を壊す。この一点においては俺たちは共通してる。」

 

「ざけんな帰れ死ね。最も嫌悪する人種なんだろ。」

 

「真意を試した。人は追い詰められた時本性を表すからな。異質だが重い。歪な信念の芽がお前には宿っている。お前がどう芽吹いていくのか、始末するのはそれを見届けてからでも遅くはないかもな。」

 

 始末すると言う言葉で結局始末すんのかよと小さく声にする。黒霧が死柄木にステインをヴィラン連合に引き入れるメリットを言うと渋々と言った様子で納得した。

 

「話は終わったか?お前らは難しく考えすぎなんだよ。」

 

「お前もこいつらの仲間なんだろう?こいつがやられそうになった時に何故動かなかった?」

 

 唐突に男が声を出したことで全員の視線を集めた。男の顔には面倒くさいと書かれているのが誰にでも分かるほど腑抜けた顔をしていた。

 

「別に仲間じゃない。ギブアンドテイクだな。」

 

「ほう?ならお前の目的は?」

 

「俺の存在価値を証明すること。」

 

 ヒーローであったならばステインは迷うことなく失格と判断している言葉。ヴィランとしてもそこまで大層な目的だとは思えない。しかしその男の目が先ほどよりも鋭く、睨み付けられたステインは妙な息苦しさと圧迫感を感じた。それほどのプレッシャーと信念が感じ取れた。

 

(こいつにとってはそれほどのことだと言うことか。)

 

「そうか。お前は中々だな。」

 

「あっそ。」

 

 お前に認められても嬉しくないと言った様子で席へと再びつく。その様子を見てステインもここでの用事は全て終わったと察した。

 

「俺を保須へ戻せ。あそこにはまだやるべきことがある。」

 

 

 

 

 

 3日目の職場体験。今日も朝から街中を歩いていたが昨日とは違い事件はほとんど起こらなかった。事件が起こらない平和な時間を感じながら午後もパトロールをしていた。しかし日が傾き辺りはすでに暗くなり始めた頃、突然ヴィランが暴れ出したのだ。それを感じ取ったエンデヴァーは事件現場へと向かう。

 

「焦斗、ケントくん!事件だついて来い!」

 

 だがそこで二人の携帯が同時に震えた。携帯を開いてみれば送ったのは緑谷、内容は位置情報が載った画像のみ。

 

「焦斗!携帯じゃない、俺を見ろ!」

 

 これだけでは全く内容がわからないが緑谷は意味もなくこんなことをするような性格ではない。となれば何かしらの事件に巻き込まれている可能性がある。そう考えて轟は位置情報の元へと走り出した。

 

「どこへ行くんだ焦斗!」

 

「行き先をあんたにも送っとく。そっちが済むか手の空いたプロがいたら頼む。そっちの事件は任せた、おまえならすぐ解決できんだろ。友達がピンチかもしれねぇ。」

 

 走り去る轟の背中、息子から言われた信頼と友達を心配する言葉にエンデヴァーは言葉を返せなかった。

 

「エンデヴァーさん、個性の使用許可をお願いします。このまま轟くんを行かせたら後で怒られちゃいます。」

 

「そうだな。では、エンデヴァーの名において轟、およびケントの個性使用を許可する。その事を焦斗に伝えに行け!」

 

「はい!」

 

 そう返事をしてローレルは体を浮かせる。写真の場所へと先に向かった轟の姿はすでになく完全においていかれたため急いで追いつこうとする。

 

「残念だけどそれはダメだ。」

 

「え・・・うわ!」

 

 突如空から現れた男によって殴られその勢いのまま体を地面に打ち付けられた。予想外の事に若干の混乱をしながらも今自分の目の前に立っている男を見る。

 

 黒い髪の外国人で鍛えられた体は細マッチョと言われる部類、身長は190と高い。

 

「あなたは誰?」

 

「俺はお前だ。」

 

「あなたは私???」

 

 言っている意味がわからず頭に疑問符が並ぶ。

 

「全く同じってわけじゃない。元が同じって事だ。」

 

「元って・・・まさか!」

 

「ああ、始めまして姉さん。出来損ないがお前を殺しにきた。」

 

 そこまで聞かされれば分かってしまった。ローレルは過去の人間を再現して作られた成功体。元が同じということは同じ人物のDNAから再現されたということ。

 

 自分の他にも同じような人物がいたのかと驚きでそれ以上の言葉が出ない。

 

「俺はお前を殺す。そして俺が出来損ないじゃない事を証明する。」

 

 そう言ってローレルの顔をサッカーボールのように蹴りつける。蹴られたローレルはその体を空中へと飛ばされてしまう。まともに食らえば並みの人間なら首がなくなってしまうほどの威力。それを喰らって生きているのはローレルが同じだから。

 

 空中で静止して男が来るのを待つ。思った以上の蹴りの強さに頬を抑えながら涙目となる。近くにやってきた男はその姿を見ても一切の油断を見せない。

 

「さっきのは不意打ちだ。こんなので通用したとは思わない。最初から全力だ。」

 

 そうして高速で近づきローレルを殴り飛ばす。またしても飛んでいく体に静止が追いつかない。男はそれに容易に追いつき頭を鷲掴みにすると地面へと向かって空中から一気に叩きつけた。

 

 先ほどの場所から吹き飛ばされたのは大通りで多くの人たちが逃げている。そんな中に空中から勢いよく二人の人間が落下してくれば全員がそれに目を向けてしまう。

 

「早く逃げてください!危険で・・・げほっ・・・」

 

 二人を見て動きが止まっている人たちにすぐに逃げるように声をかけるが脇腹を蹴られむせてしまう。急いで立ち上がり反撃しようと近づくも逆に捕まり殴られる。

 

 周りの人たちはその二人の戦いをまともに見ることができないでいた。動きが早く気がつけば捕まり、気がつけば地面に倒れているのだ。頭の中でそれらを理解できずパンク状態となり誰一人として動けない。

 

 このままでは巻き込んでしまうためどうしようかと考えていると、大勢の人たちが逃げてきた方向からUSJで見かけたヴィランである能無が向かってきた。大きな爆発音で全員の頭が再起動しすぐに逃げ出す。

 

 今まさに逃げ遅れた一般人に拳が振り下ろされようとしているところを見て急いで間に入り攻撃を防ぎ、逆に殴り返す。能無はそこそこ力を込めて殴ってもびくともしないためセーブする必要がない。殴られた能無は大きく吹き飛び地面を抉って転がっていく。

 

「余裕じゃないか。流石はヒーローだな。」

 

 背後から聞こえる声に振り向き拳を振り抜く。しかし拳は受け止められ握られることで腕を引くことができなくなった。男は反対の手をローレルに伸ばすが今度はローレルが腕を掴んで離さない。

 

 先ほど能無が飛んで行った方向から大きな炎が上がり辺りを照らすのが見えた。炎を使うヒーローといえばエンデヴァーなため能無と戦っているんだろうと考えて意識を男へと戻す。

 

 手を話す様子はないためお互いにじっと動かないでいるが大きく頭を振ると頭突きで攻撃をしてくる。当たった鼻がかなり痛いがお返しとばかりにローレルも頭突きを返す。

 

 思わず離してしまったのかローレルの掴まれていた手が離れたためすぐに男を殴って空中へと飛ばす。空を飛んでその場を離れたと思えばビルの隙間へと入り姿を隠した。それを追ってローレルも隙間へと入るが姿が見えない。何処にいるのか見回して探していると突如背後のビルが壊れて男が現れた。

 

 その勢いのままいくつものビルにローレルの体を打ち付けていく。この時幸いな事に中に人がいなかったため人的被害はなかった。このままいいようにされては面白くないとローレルは男を蹴り体を離させる。

 

「お前、まともに鍛えてないだろ。お前の下位互換の俺とこんな戦いしてるなんて恥もいいとこだぞ?」

 

「なんのことかさっぱり。」

 

「ならそのまま死ね!」

 

 その言葉で男の目が赤く光出す。自分も使ったことがあるため次に何がくるのかよく分かってしまった。すぐに男の目線から外れると先ほどまでいた場所には赤い熱線、ヒートビジョンが通過した。

 

 ヒートビジョンはそのままビルを横切り消えたが、そのビルはきれいに両断され崩れ始める。それだけならまだ目の前の男に集中できたがローレルの耳にはビルの近くから悲鳴が聞こえた。切断されたビルからは今にも鉄骨や瓦礫が大量に降り注がれようとしていた。このままでは潰されてしまうと思いすぐにそのビルの元へと向かう。

 

 ビルの近くから先ほど聞こえた悲鳴と同じ声が聞こえ、逃げ遅れた数人の姿を確認する。その数はとても多く既に瓦礫落ち始めている中で今から全員を救出するのは不可能だった。

 

(瓦礫も鉄骨も殴れば飛ばせるけど周りには人がいる。当たる可能性があるから無闇に飛ばせない。)

 

 落ちてくる瓦礫をなるべく掴み下にいる人たちに当たらないように受け止める。瓦礫が増えれば増えるほど速度は出せなくなるが少しでも多くの人を助けるためにこうするしかなかった。

 

「健気だな。そんな事をしても意味はないというのに。」

 

 男はビルの上を見ながらそう呟いた。瓦礫を持ちながらでは見づらいがどうにか上を向けば先ほどヒートビジョンによって切断されたビルが落下してきていた。落ちてきたビルを受け止めることは難しくはないがそれで下にいる人が無事かどうかは別問題。

 

「全員急いで逃げて!」

 

 逃げ遅れた人たちに声をかけながら落ちてきたビルを受け止める。パニックになって動けない人も、いち早く冷静になった人が説得し少しずつビルの隙間から逃げていく。

 

 半分ほど逃げた時、残りが十人程となりもう少しで全員が逃げられると思っていた。

 

「プレゼントをやるよ。」

 

 男がローレルへと向かって何かを投げる。テンポ良くなる機械音がだんだんと早くなると外装が崩れ始めた。中からは緑色に輝く石が現れ途端に全身から力が抜ける。力が抜けたことでビルを支えることができなくなりガラガラと音を立てて崩れはじめた。

 

「たいした事なかったな。」

 

 ビルの下敷きになった程度で死ぬはずがない事をわかっている男はとどめを刺すべく瞳が赤くなっていく。しかしヒートビジョンを使おうとした所で男の耳についている通信機中が鳴り動きが止まる。

 

「何のようだ。」

 

『君のやりたかったことは知っている。でもそれは決裂した時だと言ったはずだ。』

 

 聞こえてくるのは渋い男の声。

 

「・・・」

 

『今日は戻っておいで。そろそろ事件は終息してヒーローが集まってくる。殺すのは次の機会だ。』

 

 通信機が切れるとビルを人睨みして男は飛んで何処かへと言ってしまった。

 

 

 

 

 

 ビルが崩れ下敷きになる中、奇跡的に潰されて死亡する者はいなかった。しかしビルによって四方八方が塞がれて誰が声を出しても返答はない。瓦礫が落ちてきたことで緑色の石はローレルの体から離れた。それにより少しだけなら力を出すことができる。

 

(たしかこういう時は何かを叩いて音で連絡を取るのがいいって言ってたっけ。それができれば苦労しないんだけどね。)

 

 だがそれでも身動きが取れないでいた。崩れた瓦礫がローレルにのしかかり動くことができない。どうにか抜け出そうと少しずつおろしてみる。すると何処からか瓦礫が崩れるような音が聞こえた。

 

 自分が動かしたから何処かが崩れた、そう思ってしまった。確証など全くないが今はあらゆる可能性を捨てることができない。そのため動かずに静かにして待つ事にした。

 

(多分力が出ないのはあの石のせい。あと一人でもいれば抜けられるのに・・・ってなんか、頭がぼーっとしてたような・・・)

 

 

 




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