オールマイト共にゲートを通過したことで試験が終了した。膝と手をついて落ち込んでいるオールマイト。意外と早く終わってしまったことにNo.1としての面子が崩れかけているようだ。
「先生戻らなくていいんですか?」
「あ、ああ・・・そうだね。」
そんなことを言いながら頼りない足取りで歩き出す。そんな姿を見たローレルは
(落ち込んでるオールマイト、なんかかわいい。)
という感想を抱いた。コスチュームは学校で着替えているため演習試験会場を姿はそのままで外へと出ると見知った顔ぶれがあった。A組の生徒達が勢揃いしていた。
「みんなどうしてここに?」
「みんなローちゃんの試験が気になって見に来たんだよ!」
制服が宙に浮いている。葉隠が全員を代表して答えた。
「・・・暇なんだね。」
「ひっどーい!」
「冗談冗談。」
学校からここまでかなり距離があるため一人の試験を見るためだけに全員がわざわざここに来たのかと思えば何だか申し訳なくなった。A組の生徒の前では初めてコスチュームを見せることになるが肉眼で見ても全員の目からはシンプルだという感想が出る。
「まぁ私は自分の力があればあんまりコスチュームに頼る必要ないしね。」
「だとしても何もなさすぎよ。もう少し何かあったほうがいいと思うわ。」
「そっか。梅雨ちゃんがそういうなら今度相談してみようかな。」
「ケロケロ。」
帰りのバスの中で全員が試験についての話をする。芦戸と上鳴、切島と砂藤はその話題になると見るからに顔から元気がなくなっていく。その様子を見れば試験がダメだったんだろうなと容易に想像することができた。
「今回の試験は多分生徒一人一人に対する課題があったと思うんだ。ケントさんはどうな課題だったかわかる?」
「ん〜前々からの課題がそのまま続いてるなら多分それかな。」
「ケントさんにも課題なんてあったんだね。」
「あるある、大有りだよ。」
力の調整、人に向けても大丈夫なようにしっかりと使えるようにならなければならない。いつまでもできないじゃ通させないと相澤も言っていた。
学校へと到着しコスチュームから制服へと着替えてその日は解散となった。そして数日後、全員が教室へ集まりホームルームが始まるのを待っていた。
「合宿の土産話・・・楽しみに・・・」
試験でダメだった組が暗い顔をしながら並んでいる。緑谷は慰めようと何とか言葉をかけるがその言葉でより一層暗くなる。峰田のおかげでクリアできた瀬呂、試験中にミッドナイトに眠らされてほぼ何もしていないため合格しているかわからない。確実に落ちた組はそれでも希望がある瀬呂を羨み涙を流す。
「予鈴がなったら席につけ。」
そんな話をしていれば教室に相澤が入ってくる。訓練されたA組の生徒はその瞬間いつの間にか席についていた。
「おはよう。今回の期末テストだが、残念ながら赤点が出た。従って林間合宿は・・・」
上鳴、芦戸、砂藤、切島の四人はその言葉に絶望し真っ白になっている。
「全員行きます。」
「「「どんでん返し来たー!!!」」」
「行っていいんすか俺ら?!」
「ああ。赤点者だが筆記の方はゼロ。実技で切島、上鳴、芦戸、砂藤あと瀬呂が赤点だ。」
瀬呂やっぱりかと言った感じで頭を抱えた。クリアしたら合格とは言っていなかったなと思い出しながら。
今回の試験はヴィラン側である教師達は生徒に勝ち筋を残しつつどのように課題に向き合うかを見るものだった。そうでなければ合格するものはほとんど現れないだろう。
「本気で叩き潰すとおっしゃっていたのは?」
「追い込むためさ。そもそも林間合宿は強化合宿、合理的虚偽ってやつさ。」
「「「合理的虚偽!!!」」」
ワイワイ騒ぎながら喜びを全身で表す5人。しかし赤点は赤点、5人には別に補修時間を設けることになっている。林間合宿に行かなければ良かったと思うほど辛い補修をするとのこと。それを聞いて再び真っ白になった5人だった。
午後の授業も終わり全員が帰る準備をしながら林間合宿についての話をしていた。
「一週間の強化合宿か。」
「結構な大荷物になるね。」
しおりを見れば空き時間などほとんどない予定の詰まった日程が記されていた。
(水泳?水着?)
プールや海など行ったことがないローレルは学校指定の水着しか持っていない。水着についてなどは特に書いていないためそれでいいやと思っていた。
「あ!じゃあさ!明日休みだし、テスト明けだしってことでA組みんなで買い物行こうよ!」
「おお!いい!何気にそういうの初じゃね?」
何人かで集まることはあってもクラス全員で集まることなど今までなかった。それなら楽しみになるのも当然と言える。
「おい爆豪、おめぇも来い!」
「いってたまるか、かったりぃ。」
「爆豪くんいかないの?」
「行かねぇわクソが!」
切島とローレルが爆豪を誘うが一向に誘いに乗らない。だがローレルには爆豪がいきそうな言葉が思い浮かんでいる。
「そっか〜行かないのか〜。まぁ仕方ないよね、小学生でもできる集団行動が爆豪くんできないもんね。」
「ああ!?出来るわ!死ね殺すぞ!」
「じゃあ決定!!」
煽れば反発して来る。これまで過ごして来ればその程度のことは容易にわかる。切島はローレルに向かってガッツポーズをしローラルも小さく親指を立ててサムズアップをする。全員が驚きの目を向けながらも口元を押さえて笑いを堪えていた。
(((単純・・・)))
買い物に行く予定ができたため根津にその事を報告すると、
「楽しんでおいで。」
と言われた。誰かと買い物に行くことなどなかったため心なしか足取りが軽い。ショッピングモールへと到着して集合場所へと行けばほとんどのメンバーが集まっていた。
「おはよう!ってその格好!」
「何で制服?」
ローレルがきているのは制服。普段と全く変わらない格好に全員が首を傾げる。
「外にきていく服これしか持ってなくて。別に不便じゃないし良くない?」
「「「良くない!!」」」
「えぇ・・・」
怒られた、主に女子から。女子はそれぞれ買うものは別だがローレルの服を見に行こうということになった。だがそれで本人達の時間が割かれるの良くないということで、まずは自分たちが見たかったところを見てから一緒に行くということで話は落ち着いた。
「じゃあ三時にここ集合だ!」
「「「異議なーし!!」」」
そう言って各々がばらけて歩いていった。乗り気でなかった爆豪も切島に連れられて歩いていく。
(轟くんも本当は来て欲しかったけどお見舞いに行くなら仕方ないよね。)
体育祭が終わってから轟は入院している母親に会うために毎週病院へと脚を運んでいる。今日もその日だったため予定が合わずに来ることができないでいた。
全員が歩き出しその場に残ったのは緑谷、麗日、ローレルの3人。緑谷が麗日に話しかけると顔を真っ赤にして走り去ってしまった。
「せっかくみんな出来たのに・・・」
「じゃあ緑谷くん、私もいくよ。」
「で、でもケントさんにも予定とかあるんじゃない?」
「残念ながらないんだよね。」
A組出来た買い物のはずなのにいざ集まれば一人での行動。楽しみにしていたのにほとんどの人が何処かへ行ってしまったことに寂しさを覚えた緑谷。だからそこにローレルが声をかけた。寂しそうな顔をする緑谷を少しだけ気遣ったのだ。
「おお!雄英の人だすげぇ!サインくれよ!」
緑谷は突然声をかけられたことに驚いた。体育祭でテレビに出ていたこともあり顔は広く知られている。声をかけてきた男は緑谷と肩を組みながら話している。
(雄英生ってすごい、職場体験の時も思ったけどいっぱい声かけられる。)
その様子を見ているローレルはファンが現れたのかと思い邪魔しないようにしていた。しかしその様子はだんだんとおかしくなっていく。男の手は緑谷の首を握り緑谷は男の顔を見ると驚きと恐れが浮かんでいる。そして口から聞こえたのは死柄木弔という名前。
「緑谷くんから離れて。」
「別にこっちにきてもいいけど、手出したらわかってるよな?」
止めさせようと声をかけたが死柄木はあたりの人々を見渡しながら脅しをかけてくる。それ以上近づけば周りの人間がただじゃ済まないぞとそう言っている。手は出せない、そう判断して握っていた手から力を抜く。
「賢明だな。俺はこいつと話がしたい、それだけさ。少しでもおかしな挙動をするなよ。そこの金髪、お前にはそっちがお似合いだ。」
そう言って死柄木はローレルの背後を指差すと近くのベンチに緑谷と共に座った。その様子を見てから背後を確認すると190cmの男が立っていた。その顔は忘れもしない職場体験の時に襲ってきた男だった。
「騒ぐなよ。ここにきたのはあいつの護衛と監視だ。大勢の前で暴れるのはこっちの本意じゃないしお前もここで人が死ぬのは困るだろ?」
「・・・分かった。」
「お利口だな。」
そう言って歩き出した。少し歩いて振り返りこちらをじっと見て来る。その瞳にはついて来いと言っているような気がしたため男の後を追う。
「ねぇ。」
「なんだ?」
「名前、聞いてなかった。」
歩きながらなるべく情報を得られるように話しかける。以前あったときは名前を名乗っていなかったことを思い出した。
「俺に名前なんてない。」
「・・・そう。」
再び惨になる二人、雄英高校の制服を着ていることから周りからはとても注目を浴びている。そして目の前を歩いている男もまた外国人であるため良く目立っており二人は周りからジロジロと見られていた。
「おおケント!おめぇもこっち来たのか!」
(どうしてこんな時に誰かと会うかな。本当に最悪。)
そう声をかけてきたのは切島。近くには爆豪がおりローレルを殺さんとばかりに睨んでいる。知り合いと会うことで弟を自称する男がどう動くか予想できない以上誰にも会いたくはなかった。
「そいつは誰だ?知り合いか?」
「二人は姉さんの友達か?仲良くしてくれてありがとう。」
「いやちょっと何言っちゃってんの?!」
今までの様子とは全く違う丁寧な話し方に爽やかな笑み。その様子をローレルは見て頭を抱えたくなった。
「姉さん?!おめぇ弟いたのか。」
「えーいやーまぁーそのー・・・うん、実は弟いました。」
「なんで急に敬語?」
なんと答えればいいのかわからないローレルは言葉を探しているが最終的にはそれを認めた。その際に突然敬語になってしまったのに理由はない。
「これからも姉さんをよろしくお願いします。それじゃあ行こう。」
「ちょっと!二人ともごめんね。」
手を握られ引っ張られる形で無理やり連れ去られていくローレル。その姿を見て仲良いんだなぁと呑気なことを考えていた。しかし爆豪は弟と呼ばれる人物の後ろ姿をじっと見ていた。
(どっかで見たか?ダメだ思い出せねぇ。)
「どうかしたのか爆豪?」
「なんでもねぇわ!」
二人のいつものようなやりとりが背後から聞こえた。少し距離が開けば手を離しペースを落とす。
「勝手なこと言うのやめてよ。」
「弟というのはあながち間違ってない。もしかして同じ人間ですなんて言えばよかったか?」
「言っても信じないと思うけど絶対に言わないでね。」
見た目は何もかも違うためおそらく誰も信じないだろう。姉弟と言われても本当かと疑われても仕方ないほど二人は似ていない。男は適当にベンチへと腰を下ろし、その隣にローレルも座った。
「死ぬことはないと思っていたがちゃんと出られたんだな。」
「あのときは大変だったんだから。あの時に投げた緑色のあれ、何なの?」
「教えてほしいか?あれはクリプトナイト、俺たちの最大の弱点だ。」
「クリプトナイト?聞いたことないけど。」
「当たり前だ。地球にはない物質だからな。周期表にも載ってない。」
地球にはない物質、なぜそれが自分の弱点になるのか。そしてなぜそれを隣に座る男が持っているのか。頭の中で考えるが答えは出ない。
「クリプトナイトが放つ物質を浴びれば俺たちは力を失う。そして少しずつ体が緑に染まって最後には死ぬ。」
その言葉でローレルは身震いした。力が抜けていったのも意識が遠のいていったのも予想通り緑色に発光する石が原因だった。だがまさか自分がで死にそうになっていたなどとは思わなかった。
「本当は今すぐにでも殺したい所だがそれが出来ない。もどかしいよ。」
「私としてはもうきて欲しくないんだけど。」
「残念ながらそれは無理だ。」
どうしてここまで自分を狙うのかがわからない。それを口にしようとした瞬間
「おい、帰るぞ。」
突然死柄木が現れた。
「そうか。話は終わったんだな。」
「ああ。」
男は立ち上がり死柄木と共に歩いていく。ここに死柄木がいるならば緑谷はどうなったのか、そう考えたローレルは死柄木を呼び止めて緑谷はどうしたのかと聞いた。
「今は何もしない、今はな。追って来るなよ。」
そう言ってその場を離れていく二人。急いで緑谷へと連絡をすれば大丈夫という返信が来た。それに安堵したローレルはすぐに警察と学校に連絡をした。
ローレルと麗日の通報によりショッピングモールは一時的に封鎖することとなった。警察が来てモール内をくままなく捜索するものの死柄木と男の姿はなかった。
警察にヴィランと遭遇した事を説明した緑谷とローレルは警察署へと連れられ、ヴィラン連合を追う塚内に詳しい話をした。ローレルは追加でクリプトナイトについての話をすると塚内は驚きながらも納得したような顔をする。終わって外へと出ればすでに暗くなっていた。
外には根津が迎えに来ており車に乗せられて雄英へと戻っていく。
「無事でよかったよ。本当にごめんね。」
「何がですか?」
「今まで誰かと買い物に行くなんて事なかったでしょ?だから今回はいい思い出になると思ってたのさ。でもヴィランのせいでそれも台無し、ヒーローとして謝るよ。」
隣に座る根津が、頭を下げて再び謝罪をする。ヴィランが暴れてもヒーローが謝る通りなどない。それでも根津はローレルに楽しむ機会を与えられない無力さを責めていたのだ。
「ところで何で制服着てるんだい?」
「他に着る服がないからですけど。」
「・・・今度買い物に行っておいで。」
「別に困っては」
「行っておいで。」
「・・・はい。」
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