個性[超人]   作:2NN

29 / 40
夏休み

 ヴィランたちが接触した日の翌日。緑谷とローレルは学校に呼び出されていた。理由は勿論話を聞くためだ。相澤、根津、そしてオールマイトの三人が並んでいる。先に緑谷の話が始まった。内容はヒーロー殺しとの関係について、そして信念について。

 

 そしてローレルの話が始まるのだが隣に緑谷がいる状況で本当に話してもいいものか悩んでしまう。それを感じ取った相澤が緑谷の体積を命じると少し難色を示したが渋々と言った感じで出て行った。

 

「警察にはもう話してますけどクリプトナイトという物質についてです。あの石が近くに来た時異様に力が抜けるのを感じました。あいつが言うにはクリプトナイトが発する物質が私達の体には非常に害があるものらしくて浴び続けると死ぬと言われました。」

 

 その言葉で三人は驚いた。あらかじめ塚内から聞いていた内容と同じであったがいざ本人の口から聞くのとは全くの別物だった。

 

「体が少しずつ緑色になって死ぬって言ってました。もしかしたら私、ここにいなかったかもしれません。救助してくれた人たちには感謝しなきゃいけませんね。」

 

「もう分かった。帰っていいぞ。」

 

「分かりました。それでは失礼しました。」

 

 相澤に言われてローレルは談話室を出て行った。ローレルが長い間目を覚さなかったという話を聞いて自分たちの無力さを痛感した。だが今回聞いた話は思った以上に危険な状況だった。下手をすればクリプトナイトという物質を使えば簡単に死んでしまうからだ。

 

「彼女は我々が守らねば、守ってやらねば。」

 

「同感です。俺たちはあいつの強さに甘えていたようです、負けることはないと。ですが今回のことでそれはひっくり返る。」

 

「二人ともよろしく頼むよ。僕も出来ることはやるけど二人の方がそばにいてあげられるからね。」

 

 三人の教師であるプロヒーロー達は新たな決意を抱いた。

 

「そういえばだけどケントくんが言っていた体育祭に見たヒーローの件だけどね。白いコスチュームのヒーロー、名前はスノーマン。体育祭の途中から様子がおかしかったらしくてその日に失踪したらしい。」

 

「失踪ですか?」

 

「うん。そのせいで何が目的だったのか、何をしたのかまるでわからない。まさにお手上げ状態なのさ。」

 

 根津が可愛らしく両手を上げて場を和ませようとするが今回ばかりはその空気に触発されるものはいなかった。

 

「始末された、と考えるのが妥当でしょうね。となると背後に誰かいる。」

 

「一体何が目的でケント少女に。」

 

「本当にケントを狙った物なのか、それとも誰でも良かったのか。時すでに遅しってやつですね。」

 

 体育祭の日に決勝の最中に突然ローレルの体から力が抜けてしまったのだ。その様子に相澤も違和感を感じていたが試合中であればそんなこともあるだろうと判断したが、外部からの仕業があると聞いた時には驚きを隠すことができなかった。テレビに中継されるほどのイベントにそんな事をするものなど今までいなかったからだ。一体何が起こっているのかを三人は考えるがそれが事実なのかは誰にもわからない。

 

 

 

 

 

 そして迎えた夏休み。学生達が最も待ちわびると言ってもおかしくない大イベント。雄英高校も例に漏れず生徒達は思い思いに休みを謳歌していた。始まりの言葉は誰だったか、長期の外出ができなくなった事で水着を着るタイミングを逃してしまった。だから学校のプールに行こうということになった。

 

 準備を終わらせて学校の敷地内にあるプールへと足を運べばローレル以外の女子達は集合していた。自分が一番最後だったかと思いごめんと声をかけて合流する。

 

「今日晴れてよかったね〜。」

 

「雨だったら流石にちょっとね。」

 

 更衣室で学校指定の水着へと着替えてプールへと向かう。まずは準備体操だと体をほぐしていると

 

「あれ?飯田くん?」

 

「ってかA組み男子続々と来るじゃん。」

 

「もしかして向こうも集まる約束してたのかな?」

 

「すっごい偶然!」

 

 そんな話をしていると飯田が女子達の方へと向かってきた。

 

「君達も体力強化か?」

 

「体力強化?私たちは普通に遊びに来たんだけど、男子は違うんだ。」

 

「ああ緑谷くんが男子で体力強化をしようというメールが届いてない。」

 

「緑谷くんまっじめー!」

 

 お互いの目的を照らし合わせた後も男子は続々と集合していく。戻って行った飯田は指示を出して準備運動を始める。そこへもうダッシュしながらプールへと向かって来る影が二つ。走ってきた影は飯田を見て驚いているが気を取り直して女子達へと目線を向ける。

 

「何じゃそりゃあ!!」

 

 やってきたのは上鳴と峰田。女子達をの方を見て大きな声をあげるがその意図は女子達には全く分かっていなかった。ちなみに女子は全員学校指定の水着だ。

 

「上鳴くん、峰田くん。学校内で体力強化とは見事な提案だ!感心したよ!さぁ、みんなと一緒に汗を流そうじゃないか!」

 

 そう言って飯田に体を持ち上げられた二人は抵抗する事なく連れて行かれた。

 

「何あれ?」

 

「打算有りってことでしょ。」

 

「飯田くん二人を持ち上げるなんてすごいね。」

 

 準備運動も終わり早速プールへと入る。ローレルはポッドに入っていた経験はあってもプールに入るのは初めてだったためゆっくり足から入ろうとしていたのだが、それを見た芦戸と葉隠は背後からローレルの背中を押しプールへと飛び込ませた。直前に空を飛んで回避できたため落ちることはなかったがそれを見ていた飯田によって二人はをじっくり注意を受けることとなった。

 

 女子達はプールへと入りビーチボールを使って遊んでいる中男子達は真面目に運動していた。激しく動けばプールの水が揺れて危ないため動きを抑えるがそれが意外と難しくローレルとしてもそれなりの遊ぶことが出来ていた。

 

「よし!十五分休憩しよう!俺からの差し入れだ!」

 

 男子達は休憩に入ったが女子達は疲れるどころか動きがさらに洗礼されていく。思った以上にそれが楽しくつい時間を忘れてしまう。

 

「少し休憩にしない?あっちも休んでるみたいだし。」

 

「そうですわね。なら一度プールから上がりましょう。」

 

 女子達も疲れた体を癒すためにプールを上がり男子達の方へと歩いていく。そこで飯田が

 

「みんな!男子全員で誰が五十mを一番早く泳げるか競争しないか?」

 

「面白そうなことしてるわね。」

 

「確かに。私達も休憩に合わせて手伝わない?」

 

「それ良いね!行こう行こう!」

 

 八百万が飯田に声をかけて手伝う事を伝えると爽やかな笑顔でお礼を言われる。

 

 学校内であれば個性の使用は自由なため人や建物に被害が及ばない事が前提として使用可能ということに決定。八百万が個性で増えを作り出し、他の女子達は男子の組み合わせを決めることになった。

 

「爆豪くんと緑谷くんは別々にした方いいよね。」

 

「確かに。爆豪の奴死ねとか言って緑谷のこと攻撃しそうだし。」

 

「というか峰田くんとか個性どうやって使うんだろ。」

 

「私も参加したかったわ。」

 

「梅雨ちゃんはまさに適正だもんね。」

 

 バランスを考慮してながら組み合わせを決めて早速組み合わせを発表する。男子達もその組み合わせがいいように振り分けられており女子達が男子をちゃんと見ている事が伝わる。

 

「泳ぎ方などは個性の使い方も考慮して自由形でいいんじゃない?」

 

「確かに。どの泳ぎ方が一番適してるからわかんないもんね。」

 

「まぁ大体はクロールだと思うけど。」

 

 公平を期すという理由で泳ぎ方に指定はせずに、全員が各々に合った泳ぎ方をするということで決定。

 

「よしではやろう!」

 

 飯田の声で最初の顔ぶれが並ぶ。上鳴、爆豪、口田、常闇、峰田の5人。八百万が笛を加えてスタートの合図をすると全員が一斉にプールへと飛び込む。いや、全員というのは語弊があった。

 

「爆速ターボ!」

 

 爆豪がプールに入る事なく個性を使って向こう岸まで飛んで渡ったのだ。

 

「どーだこのモブども!」

 

「どーだじゃねぇ!」

 

「泳いでねぇじゃねぇか!」

 

「自由形って言ったじゃねぇか!」

 

(((違うそうじゃない。)))

 

 確かに泳ぎ方に指定はしなかったが泳がないとは流石に思わなかった。自由形と言っても泳ぐ上での自由という意味だったのだが前もって言わなかった事でそう思わせてしまったのかもしれない。

 

「爆豪さんが泳いでいませんがこちらにも不手際がありました。なので後の方々も同じで構いません。」

 

 審判である八百万がそう言ったため爆豪は失格にはならずこれからの人たちもそれならと納得した。

 

「あれ良いのかよ!」

 

「泳いだ俺らバカみたーじゃん!」

 

 上鳴と峰田以外は。

 

 続いては切島、砂藤、轟、青山、瀬呂。八百万の合図で全員が一斉飛び出す。切島と砂藤は個性の都合上水に入らざるを得なかったが後の3人は自分の個性を利用して空中を飛んでいく。正確に言えば轟は水面を凍らせているため飛んではいないが。

 

 向こう岸にまで伸ばしたテープを引っ張る事で移動する瀬呂とビームを使って飛ぶ青山。青山は一秒以上ビームを射出してしまったためお腹を壊し隣にいる瀬呂を巻き込んでプールへと着水。結果轟が再び泳ぐ事なく一位になった。

 

「オイラたちはちゃんと泳いだのに。」

 

「こんなことってねぇよな。」

 

 上鳴と峰田が相変わらず騒いでいる中で轟がローレルの元へとやってきて声をかけてきた。

 

「どうしたの?」

 

「少し聞きてぇことがあってな。」

 

「聞きたいこと?」

 

 首を傾げてどんな内容なのか考えてみるもその内容はまるで思いつかない。

 

「お前が保須で救助されたって時、お前の体が緑色だったって聞いたが何でだ?」

 

「!?」

 

 全身が緑色になるなど今まで一度もなかった。だから一体どうしてこうなったのかは全く分からなかった。だがショッピングモールにて接触した自称弟がクリプトナイトの影響だと言っていた。からだが緑色になって最後には死ぬと。

 

「どうした?」

 

 轟は純粋に心配して聞いている。しかし本当の事をそう誰かに言うことができない。じつは死にそうだったなどと誰かに言えるはずがない。

 

(何で今そのこと聞くの?!よりによって話を聞いてから!)

 

 あの事件の日から今日までそこそこの時間があった。にも関わらずこのタイミングで聞いてきたのは何故だと轟の気まぐれさを呪った。せめて聞くならクリプトナイトの話を聞く前が良かったと思って仕方がない。

 

 轟からすれば一週間の遅れを取り戻すことに加えてテストに向けての勉強、そしてトレーニングがあったためなるべく集中させてあげようと言う気遣いだった。だがそれが逆にローレルを困らせている事を知る由はない。

 

「私もわかんない。何で緑色だったんだろう。」

 

「そうか、分かんねぇならいい。」

 

 そう言って轟はローレルの元を離れて行った。

 

(ごめんね轟くん。でもこんなこと誰にも言えないよ。)

 

 轟とローレルが話している間にも最後に障子、尾白、緑谷、飯田の四人のレースが行われた。この面子なら流石に全員泳ぐだろうなと予想していたが開始の合図と同時に飯田はコースロープの上に乗り体が倒れるよりも先に滑って進んでいく。

 

「飯田もかよ!」

 

 それをみて負け時とワン・フォー・オール・フルカウルを使用して高速で泳ぐ緑谷。白熱する二人の戦いはタッチの差で緑谷に軍配が上がった。

 

「緑谷くん早い!」

 

「飯田も惜しい!!」

 

 こうして爆豪、轟、緑谷の3人が勝ち上がり3人で決着をつけることになった。

 

「おい金髪女!テメェも参加しろ!」

 

「えぇ・・・私予選も何もやってないんだけど。というか男子でって最初言ってなかった?」

 

「知るか!ここでてめぇも一緒にぶっ潰す!」

 

 突然参加要請にローレルは困った反応を見せる。一位を目指して競い合った中で突然横から参加などみんなが納得しないと思ったからだ。しかし

 

「やったれローちゃん!」

 

「爆豪に目に物見せてやりなよ。」

 

「オレたちも構わねぇぜ!」

 

「あいつの鼻っぱしへし折ってやれよ。」

 

 女子も男子もそれを許した。そうなれば面倒くさいが参加せざるを得ない。

 

「分かった、皆がいいなら私もやる。でも爆豪くん、泣かないでね。」

 

「あぁん!誰が泣くか死ね!」

 

 こうして4人目の乱入者を含めて決着をつけることになった。

 

「それでは50m自由形の結晶を始める。」

 

 今まで審判をしていた八百万と交代して観戦に回し飯田が受け継ぐ形となった。観戦している男子女子両方が選手たちに声援を送る。

 

「ケントやりすぎんなよ!」

 

 ローレルのみには応援ではない声が聞こえて来るのだが。

 

「位置について、用意・・・」

 

 笛の音と共に四人が一斉に飛び出した。飛んでしまえば一瞬で肩がついてしまうためハンデとして泳ぐことにしたローレルは勢い役水面へと飛び込んで泳ぎ出した。

 

 しかし隣からは力の抜けた間抜けな声が聞こえローレルも釣られて止まる。振り返ってみれば相澤が個性を使って三人の個性を抹消していたようだ。

 

「17時。プールの使用時間はたった今終わった。早く家に帰れ。」

 

 時間きっちりにプールへとやってきた相澤がすぐに家帰れと指示を出す。勿論最後の一番盛り上がるところで止められた生徒たちは不満の声を出すが相澤がそれを人睨みする。

 

「なんか言ったか?」

 

「「「何でもありません!!」」」

 

 教師に勝てない生徒たちだった。不完全燃焼気味だったが時間であれば仕方がないと無理やり納得して帰る準備を始める。

 

「爆豪くんよかったね!あのままだったら私に完全敗北してたよ!」

 

「ああ!?ンなわけねぇだろ寝言言ってんのか!オレが勝つわ!」

 

 ローレルは煽ったわけではなく事実のみを言ったのだが噛み付いて来る爆豪。この反応も予想通りのため特に反応を示さず適当に流した。後ろからは叫び声が聞こえるが気にする様子をローレルは見せない。

 

「爆豪くん早く準備して!」

 

「こ、こいつ・・・」

 

(反応面白!何でこんなに素直なんだろ!)

 

 心の中で爆豪をいじって楽しんでいるローレルだった。

 

 水着から制服へと着替えてプールを出ると全員が集まって話し合っていた。皆の顔に不満はあってもそれよりも楽しかったという感情が上回り全員が笑顔を浮かべている。

 

(こんな時間がずっと続くんだろうなぁ。)

 

 初めての連続でとても楽しい毎日を送っているがこの日もいつもと変わらず楽しい日だった。いつも通り楽しかった、それなのに何故だかみんなが笑顔を浮かべている光景がとても大切に思えてしまう。

 

「プール楽しかったね。」

 

 輪に入らずみんなをぼーっとみていたローレルに声をかけてきたのは麗日。ローレルも笑顔を浮かべてはいたが皆とは違うどこか儚いような笑顔だった、そんな気がしていた。

 

「うん、とっても。」

 

 ローレルの短い返し、いつも通りなのにいつもと違う。そんな矛盾を感じながら麗日はローレルの手を握った。

 

「これからはもっとこんな事をしていくんだよ!」

 

「そうだよね、これからの楽しみがいっぱい増えちゃった。」

 

 そう言ったローレルの顔は普段通りへと戻り先ほど感じていた矛盾もどこか消えて行った。あまりここで長居をしていると相澤先生にまた怒られると言って解散となった。全員が正門へと歩き出す中ローレルのみは相澤のことを待っていた。

 

「ケント、まだいたのか。お前もさっさと帰れ。」

 

「先生。」

 

「ん?」

 

 ローレルは下を向いたまま動かない。合理的な考えをする相澤は黙り込んでいるこの時間が不合理だと感じるが思うだけにとどめたのは目の前の生徒の様子が少しおかしいと思ったからだった。

 

「何だか最近嫌な予感がすごくするんです。近いうちに何かが起こる、そんな気がずっとしてて。詳しくは分からないんですけど。」

 

 夏休みに入ってからというものの何故かは不明だが不安を感じて仕方がない。その原因は不明だが日に日にそれは強くなっていく。

 

「嫌な予感か、お前がそういうなんてよほどのことだな。十分に警戒しておく。何かあれば俺や校長に言え、必ず力になる。」

 

 本当は話すつもりなどなかった、余計な心配をさせてしまうと思ったから。だが相澤はローレルの話をしっかりと聞いてくれたため心が少し軽くなったような気がした。

 

 短く返事をするとローレルはそのまま家へと帰っていった。相澤はその背中を見送った後自分も後者へと戻ってく。

 

(林間合宿、そしてあいつの嫌な予感。偶然だといいが。)

 

 先程の話で一応警戒を少し強めておこうと思った相澤だった。

 

 

 




 誤字、脱字が多いです。申し訳ありません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。