「一学期を終えて諸君らは夏休みを満喫しているところだと思う。だが、ヒーローを目指すものに安息は訪れない。この林間合宿でさらなる高みへ、Plus Urtlaを目指してもらう。」
「「「はい!!」」」
挨拶もそこそこに相澤の指示で各自荷物をバスへと載せ始める。一週間と言うだけあってやはり荷物は多くなってしまった。
合宿が始まると思うと楽しいことが大好きな学生達のテンションはうなぎ上りになる。途中B組の物真が余計なちょっかいをかけてきたがすぐに拳藤による制裁が入る。
バスへと乗り込み合宿先へと出発した。移動中のバスも合宿の醍醐味、隣や前の席と楽しそうに話をしている。
「合宿すごい楽しみだね。」
「私なんて楽しみすぎて眠れなかったよ。」
ローレルは一番後ろの責任葉隠と芦戸と座っており両者とも笑顔を浮かべている。特に芦戸は自分がいけないと思っていたところからのどんでん返しで他のメンツよりも楽しみの上限値は高い。
「私も今まで合宿なんて行ったことなかったから楽しみ。」
「へ〜そうなんだ!そういえばローちゃんでどこの中学校だったの?」
「あ、私も気になる。そういえばあんまりそう言う話ししたことないよね。」
中学になど行っていないローレルは前もってこう言った質問をされても返せるように色々考えていたのだ。
「えっと、東北の方だよ。田舎だから行ってもわかんないと思うけどね。」
嘘をつくと言うのはとても申し訳ないと思うため早くこの流れをどこかで断ち切りたいと思ったローレル。
「じゃあさ、部活とかは?」
だがそれを芦戸と葉隠が許してはくれない。ボロが出る前に話を変えたいが気がつけば周りの生徒達もこちらの様子を伺っている。
「そういえば今まで何や感やあって聞きそびれたけど、ケントオメェ弟いたんだな!」
(今その話はちょっと!)
弟というのはもちろんあの自称弟のことだ。切島と爆豪とはその時接触してしまっているため顔も知られてしまっている。今まで聞いてこなかったため忘れてるかなと期待していた。実際切島もテスト勉強や訓練に明け暮れてそれどころではなかった。
(やめてお願い聞かないで!)
「お前ら。1時間後に一回バスを停車させる。その後しばらく止まる場所ないからな。あと他人の話は自分から話すのを待ってやれ、それが思いやりだ。」
「「「はい!」」
相澤による助け舟によってローレルの視線は消えていった。すでに相澤は前を向いてしまっているがローレルは心の中で感謝の念を送った。
再び騒がしくなるバスの中にいれば1時間などすぐに経ってしまった。全員がバスを降りて外の空気を吸う中ある違和感を覚える。
「バス止まったけどパーキングじゃなくね?」
「ここで休むのか?」
「トイレはどこだ!」
バスが停車した場所は道路の途中にあるちょっとした駐車スペース。建物など一切なくただただ見晴らしがいいだけの場所だった。
「何の目的もなくでは意味が薄いからな。」
その声に続くように止まっていた車から赤と青の似たデザインのコスチュームを着た二人の女性、そしてふたつのつのがついた赤い帽子をかぶった少年が降りてきた。
「煌めく眼でロックオン!」
「キュートにキャットにスティンガー!」
「「ワイルド ワイルド プッシーキャッツ!!」」
「今回お世話になるプロヒーロー、プッシーキャッツの皆さんだ。」
プロヒーローと聞いて黙っていないのが緑谷。誰も聞いていないのに勝手に説明を進めていく姿を見てクラスメイトたちはまたかと思った。
「キャリアは今年で十二年にもなる・・・」
と言った瞬間に青いコスチュームを着た一人が緑谷に一瞬で近づきガンマは面を鷲掴みにする。
「心は十八!!・・・心は?」
「十八!!」
赤いコスチュームを着ているのはマンダレイ、プッシーキャッツの司令塔を担っており、今緑谷の頭を鷲掴みにしているのはピクシーボプ。相澤の挨拶をしろという声で全員が声を合わせて挨拶をする。
「ここら一帯は私らの所有地なんだけどね、あんたらの宿泊する施設はあの山の麓ね。」
そう言って指差す場所はとんでもなく遠かった。目を枯らしてみてもギリギリ見えるかどうかの場所にありどうしてこんな場所に降ろしたのか誰もが疑問を抱いた。
「今は午前9時30分。早ければ〜12時前後かしら?」
しかしのこの言葉を聞いた全員はこれから何をされるのかを察してしまい全員に声をかけながら急いでバスへと戻ろうとする。
「悪いな諸君、合宿はもう始まってる。」
生徒たちの前に回り込んだピクシーボブが地面に手を当てると、突然地面が盛り上がり生徒を飲み込んで崖下へと落下していく。全員は抵抗虚しくそのまま落下していった、一人以外。
「ケント、お前も行け。」
ローレルは盛り上がった地面を空を飛ぶことで回避していた。助けに行くべきかと思ったが教師側が流石に生徒たちを殺すことはないだろうと考えて手を出すのはやめた。事実生徒たちを飲み込んだ地面は落下先でクッションとなり誰一人として怪我を負っていなかった。
「おーい!私有地につき個性の使用は自由だよ!今から3時間、自分の足で施設までおいでませ。この魔獣の森を抜けて!」
マンダレイが崖に落ちた生徒たちに向かって大きな声をかける。それを聞いた生徒たちの反応は様々だが、この中である意味一番衝撃的だったのは峰田だった。
今までトイレを我慢していたため茂みに隠れて用を出そうとしたところで目の前に巨大なまさに[魔獣]がいた。そのあまりの恐怖によって峰田は我慢するのをやめてしまった。それが一体どういうことなのかは不明。
「よけたら免除とかは・・・」
「ない。いいから行け。あとお前は空を飛ぶの禁止だ。戦うのも最小限にしろ。」
「あいさー・・・」
「はいだ。」
「はい。行ってきます。」
返事を終えてローレルも崖から降りる。魔獣の前で固まっていた峰田は緑谷に救出され潰されることはなかった。しかし魔獣のインパクトが強すぎたのか別の方向から来ている魔獣に誰も気がついていなかった。
(戦闘は最小限、禁止とは言われてない!)
魔獣の頭をパンチして体の全てを吹き飛ばす。まともに攻撃を喰らった魔獣は体がボロボロと崩れ最後には土の塊となった。
緑谷たちの方でも轟が魔獣の足を凍らせ飯田が蹴り、爆豪が爆破で魔獣の腕を破壊する。そして最後に緑谷が頭を殴って魔獣を破壊しそのまま土の山となった。それを見て全員が先ほど見たピクシーボブの個性だと理解した。
「すげぇなケント相変わらず一撃かよ。」
「奇襲だからね。一撃でやらないと意味ないよ。」
「爆豪!おめぇもやったな!」
「まだだ!」
森の先にいる魔獣がその場から飛び木々を飛び回って自分たちに襲い掛かろうとしているのを爆豪は見ていた。そこら中から聞こえる魔獣の声に全員が警戒を強める。
「昼までに来れなきゃお昼抜きだからね!」
上から聞こえたマンダレイの声により全員のやる気がますます強まる。
「ここを突破して最短ルートで施設を目指しましょう。」
「ああ!行くぞA組み!」
「「「おお〜!!」」」
飯田の声によりA組全体の士気が上がる。役割ごとに分担しそれぞれの役目を全うするべく動き出す。
「前方から三匹、左右に二匹ずつ。」
「総数七、来るよ!」
索敵が行える障子、耳郎が魔獣の数と場所、タイミングを全体へと伝える。その声に従い生徒たちは連携をとって魔獣を撃破していく。
「正面からさらに敵!上も注意して!」
ローレルは相澤に戦闘は最小限にしろと言われているため索敵に徹していた。あらかじめ空も飛ぶのを禁止されていることを含めて話している。最初はあてにされていたがそういうことなら仕方ないと理解してもらった。
「あぶない!」
基本的に連携して戦っていれば倒せない相手ではない。だが気が緩んだ好きに奇襲される事もたまにありその都度ローレルが間に入り一撃で対処していく。
ヒートビジョンを使えば簡単に倒すことができるが全員が動き回る中で使うのは危険なため上空にのみ使用し、地上は素手で倒す。しかし常に索敵は行い続けるという並行的な思考をするのに少し手間取ってしまう。
それでも何とかやっていけているのはお互いがお互いをフォローして回っているから。当然ローレルの周りでも障子と耳郎がフォローしているためA組はなかなかの速さで前へと進むことができていた。
こうして森の中を進んでいくとようやく施設が見え始めてきた。時刻は4時50分、出発してから大体五時間が経過していた。次々に姿を表す生徒たちは満身創痍という言葉がよく似合うほどにボロボロだった。
「三時間って一体何だったんだ・・・」
「あっはは!ごめんね、あれは私たちならってことだったの。」
「実力差自慢するためかよ。そりゃないぜ。」
膝に手をついていたり地面に座り込んだりなど全員が疲労を隠せていない中ローレルののみは息が切れておらず疲れている様子も見られなかった。
「おめぇ化け物だよほんと・・・」
「あはは・・・」
(化け物・・・か・・・)
体は傷ついていなくとも隣にいた峰田に言われた言葉で地味に心が傷ついていた。
「ねこねこねこねこねこ。でも正直もっとかかると思ってた。君らいいよ〜特にそこの五人!今のうちに唾つけとこー!」
ピクシーボブが独特の笑い方をして指差すのは轟、爆豪、飯田、緑谷そしてローレルの五人。突然ローレルを除いた男子四人にピクシーボブが唾を飛ばし始めた。
「あの人あんなんでしたっけ?」
「彼女焦ってるのよ。適齢期的なあれで。」
誰もが確実に唾をつけるの意味を間違えている気がした。
「あずっと気になってたんですけどあの子はどなたの子なんですか?」
そう言って指差すのは先ほど5時間前に崖に落とされた時にもいた帽子の少年。
「違う違う、この子は私の従兄弟の子供だよ。洸汰、ほら挨拶しな。一週間一緒に過ごすんだから。」
「僕雄英高校ヒーロー科の緑谷、よろしくね。」
自己紹介とともに手を出して握手しようとするも少年、出水洸汰の手は緑谷の手ではなく股間へと伸びてクリティカルヒットを叩き出した。我慢できずに身体中真っ白にしてその場に蹲る緑谷。それを支えるながら飯田が何故だと聞くと
「ヒーローになりたいなんて連中とつるむ気なんかねぇよ。」
「つるむ?!いくつだ君は?!」
緑谷たちを嫌悪するかのような眼差しで見ておりその表情はとても小さな子供だとは思えない。
「マセガキ。」
「お前みたいだな。」
「同感。」
「ア”ア”!?」
轟の言葉に思わず納得したローレルは爆豪によって一緒に怒鳴られた。
「茶番はいい、バスから荷物を降ろせ。部屋に荷物を運んだら食堂にて夕食。その後入浴で就寝だ。本格的なスタートは明日から、さぁ早くしろ。」
相澤の指示に従い全員がバスから自分の荷物を運んで施設へと入っていく。疲れてはいるがそれをすればご飯が食べられると全員が力を振り絞った。唯一それができていないのが先ほどダメージを負った緑谷だけだった。
「いただきます。」
それぞれが荷物を運び食堂へと移動し適当に席について夕食を食べ始める。昼を抜いてまで動き回っていたせいで全員の箸は止まることを知らない。
「すっごい!何でこんなに胃に入るんだろう!」
「全くね。お昼食べなかっただけでここまで食欲が湧くなんて。」
女性であろうとヒーローを目指している者たちは毎日の運動量も凄いため食事もしっかりとっている。ダイエットのために食事制限などしていればたちまちエネルギーが切れてしまい動けなくなってしまうのだ。
(これから天気悪いとやばいかも。食べる量気をつけなきゃ。)
ローレルは天気が悪い日に運動しようと思うととんでもなく食事量が増える。その原因は不明だが天気の悪い日に食堂へといけばフードファイター顔負けの皿が積み重なり食事をし続けるローレルの姿を見ることができる。
「いろいろ世話を焼くのは今日だけだから食べれるだけ食べな!」
「「あざっす!!」」
食事も終わり各自部屋へと戻っていく。女子は人数が少ないため全員が一部屋に寝泊まりとなる。
「ご飯いっぱい食べちゃったよ!お金の心配もないし。」
「この日にケントの大食いモード入ってたら一日で食材なくなってたんじゃない?」
「あり得る。」
「否定しないんだ・・・」
布団の場所を決めて荷物を整理していく。そろそろ入浴時間になるため必要なものを手に取り浴場へと足を運んだ。
脱いだ服をカゴへと入れて扉を抜ければそこにあったのは露天風呂。大きな壁を仕切にしているだけなため音は普通に聞こえてくる。
「温泉だよ温泉!」
「とっとと体洗って入ろう!」
すぐにでも湯船に浸かりたいため身体中を丁寧に洗い温泉へと入る。今日一日の疲れが吹き飛んで癒されていく、そんな感覚を全身で感じる。
「気持ち良いね〜。」
「温泉入れるなんて最高だよな。」
その気持ちよさを全員が堪能していると不意に隣の壁から声が聞こえてきた。
「峰田くん!やめたまえ!君のしていることは己れも女性陣も貶める、恥ずべき行為だ!」
「また峰田か。」
「まさか流石にそんなことしないでしょ。だって本当にやったら犯罪だよ?」
相変わらずの峰田に呆れる女性陣だが本当に覗くなんてことはしないだろうと思っていた。
「壁とは越えるべきためにある!Plus Urtlaaa!!」
だが峰田の声は止まることを知らず明らかに覗こうという意思を感じる。
「まさか本当に?」
「皆さんせめてお湯に入って体を隠しましょう!」
「ケント!あんたもさっさとお湯に入れ!」
峰田に見られないように急いで体を隠そうとする女性陣たち。ケントも次郎の声に従い何処かに隠れようとした時、一人の少年、洸汰が仕切に立っていた。
「ヒーロー以前に人のあれこれから学び直せ。」
そう言って峰田の手を弾くとそのまま地面へと落下していった。
「洸汰くんありがとう!」
誰が言ったかは不明だが洸汰へと感謝の言葉を送った。その声で振り返ってしまった洸汰は女子たちの裸を見てしまった。特にローレルは何も隠していなかったためその体をダイレクトに見てしまう。それにより洸汰は鼻血を出して悲鳴を上げながら男風呂へと落下していく。
「危ない!」
ケントがすぐに飛び出していこうとするも
「ダメダメダメダメ!!それ以上はダメ!」
「せめて体隠しなよ!」
と全員に止められてそれ以上進むことはなかった。それでも洸汰の身が心配なため体にタオルを巻いて仕切りの向こう側を除く。そこには緑谷に抱えられている洸汰の姿があったためローレルは安心してすぐに着地した。
「取り敢えず洸汰くんは無事だったよ。良かった。」
「良くないわ!何飛び出そうとしてんの!」
「その通りですわ!女性の体はそう簡単にさらして良いものではありません!」
この後たっぷり説教された。
男風呂では
「なぁ・・・今ケントいたよな?」
「ああ見たぜ・・・大きかったな・・・何がとは言わないが・・・」
「あいつあれが素かよ。末恐ろしいな。」
温泉による熱のせいか、はたまた別の要因か、ほとんどの生徒は熱に浮かされていた。
誤字、脱字が多いです。申し訳ありません。