個性[超人]   作:2NN

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交戦

「必ず助けるか、さすがヒーローの卵だな。お前のことは写真で見た、緑谷だろう?お前のことは優先して排除しろって言われてんだ!!」

 

 その声とともに緑谷へと肉薄するマスキュラー。背後には洸汰と倒れたローレルがおりその場から逃げることができない。迫る拳を腕でガードするも踏ん張りが足りず岩壁へと叩きつけられる。

 

「そういや爆豪ってガキはどこにいる?教えてくれねぇか?」

 

(!?どうしてヴィラン連合がかっちゃんのことを!もしかして狙いはかっちゃんなのか?!なんで?!)

 

「一応仕事はしなきゃな!!」

 

 再び迫るマスキュラーの拳。緑谷はその場を飛んで横に回避するが先ほど拳を防いだ左腕はひしゃげておりもう使い物にならなくなっている。

 

「知らない、でいいか?いや、いいな!」

 

 

「緑谷くん・・・!」

 

 いまだに空中におり動くことができないでいる緑谷目掛けてジャンプして蹴りを入れるマスキュラー。その蹴りがまともに入り再び岸壁へと叩きつけられてしまう。地面へと倒れた緑谷の頭からは血が流れておりすでに体はボロボロだった。

 

 その地を見てテンションが上がったのか突然口数が増えたマスキュラー。頭の中で相手の個性についていろいろ考えながらも立ち上がり近寄ってきたマスキュラーを今度は緑谷が殴る。しかしそれは防がれ逆に吹き飛ばされてしまう。

 

「俺の個性は筋肉増強。皮下に収まらねえ程の筋繊維で底上げされた速さ、力!」

 

 自分の個性を緑谷へと話し自慢だと言い放つ。お前の個性は自分の完全な劣等型だと。しかしそうやって豪語するだけあり力も速さもかなりあるため緑谷や攻撃することも逃げることもできないでいた。

 

「そうやって・・・ウォーターホースを、パパもママもそうやっていたぶって、殺したのか!」

 

「あ?マジか、ヒーローの子供かよ。運命的じゃねぇの。あいつらはこの目を義眼にした二人だ。」

 

 突然マスキュラーへと石を投げる洸汰。それにつられてか緑谷から意識が外れて洸汰へと向き合う。今までの自分の思いを口にする洸汰だがマスキュラーは責任転嫁はやめろと効く耳を持たない。

 

「俺は別にこの目のことなんざ恨んでないんだぜ?俺は人を殺したかっただけであの二人はそれを止めたかった。お互いやりてぇことやった結果さ!」

 

「洸汰くん!」

 

 洸汰へ攻撃しようと腕を振りかぶるマスキュラー。動かない体に鞭を打って無理矢理立ち上がったローレルが洸汰を抱えて自分の体を盾にする。背中を思い切り殴られたことで肺の空気が押し出されてしまい、呼吸もままならない状態で体は地面を転がる。

 

「もう時間切れか?・・・いや、お前弱体化してもなお動いたってわけか。ヒーローしてるじゃないか。その状態だとまともに動けないって聞いてたんだけどなぁ。」

 

 体に傷がつくが抱えた洸汰を潰さないように最大限気を張りながらマスキュラーを睨む。肺に空気を取り込もうと荒い呼吸になるが今はそんな心配をしている余裕はない。

 

「だがな、あの二人もそうやって出来もしないことをやって死んだのさ!!」

 

「なんと言おうと悪いのはお前じゃないか!」

 

 緑谷の動きを予想して振り向くマスキュラー。背後から飛んだ緑谷が筋繊維の間に使えなくなった左腕を挟んで動きを封じ、反対の手に力を込める。

 

「力不足のその腕で殴ってみるか?」

 

「出来る出来ないじゃないんだ!ヒーローは、命をかけて綺麗事を実践するお仕事だ!!」

 

 辺りには大きな音と凄まじい衝撃が襲う。100%の力を込めてマスキュラーへと攻撃したことで洸汰の小さな体は吹き飛ばされてしまう。それにより地面から離れた体は真っ逆さまに崖下へ落ちようとしていた。

 

「危ない!」

 

 そこをローレルが洸汰へと手を伸ばし腕を掴むことができた。だが未だに力が戻らないローレルの腕には普通の少女並みの力しかなく、子供一人を腕力だけで持ち上げることはでないでいた。このままでは二人とも下へと落ちてしまう。

 

「せめて・・・洸汰くんだけでも!」

 

 自分の体を軸にして回転し洸汰を引き上げた。しかしその代わりか反動でローレルの体が空中へと投げ出される。

 

(洸汰くんが少しだけ届いてない、やばいどうしよう!)

 

 自分の心配など二の次で洸汰を心配したローレルだったがすぐに緑谷が現れ洸汰の服を口でキャッチする。先ほどの100%によって腕は使い物にならなくなってしまったため口でキャッチしたのだ。

 

(洸汰くん・・・無事で良かった。)

 

 しかし洸汰一人で手一杯な緑谷はローレルへと手を伸ばすことが出来ない。ローレルが森の中へと消えていく所を二人は見ていることしか出来なかった。

 

「ケントさん!!」

 

「姉ちゃん!!」

 

 自分のせいで洸汰を危ない目に合わせ、それを庇ってクラスメイトの一人が崖から落ちてしまった。助けるはずが別の人をそこへと落としてしまったことで自分はヒーロー失格だと猛省する。

 

「・・・洸汰くん、行こう!すぐにケントさんを探しに!」

 

「わ、わかった!」

 

 左腕と右腕の両方がダメになってしまっており、その姿を見た洸汰はどうしてそこまでするのか理解できなかった。だがこれから崖から落ちたローレルの元へと向かうことには賛成だった。そのため緑谷がその場にしゃがみ洸汰を背負おうとするが、

 

「ったく、あいつも捕獲対象だってのに崖下に落とすなんて酷いことするじゃないか、なぁ緑谷?」

 

(嘘だ・・・100%だぞ!)

 

 だがそこにいたのはオールマイトの100%を出したにも関わらず起き上がるマスキュラーの姿だった。

 

 

 

「いったたた・・・」

 

 崖下へと落ちていたローレルは落ちる直前に力が戻り始めていた。体が地面に衝突する寸前には完全とは言えないものの耐えられるほどには戻ったため大きな怪我を負うことはなかった。それでも少しの間意識は失っていたが。

 

「って寝てる場合じゃない!緑谷くんと洸汰くんは?!」

 

 体を起こして崖の上を見れば先程までいた場所とは思えないほど崩れていた。激しい攻撃があったことは簡単に予想できるが音が全く聞こえてこない。すぐに先程までいた場所へと飛ぶと上半身裸の緑谷とそこに駆け寄る洸汰、そしてそのそばにはマスキュラーが倒れていた。

 

「緑谷くん!」

 

 マスキュラーによって左腕はおられていたがその時は右腕は無事だった。だが今は赤く腫れ上がっていてまたキャパを超えた攻撃をしたことは明白だった。

 

(私があんなだったから緑谷くんが・・・)

 

 逃げることは叶わないと強敵に立ち向かい、そして勝つために自分の体をボロボロにする。今回は自分にも火がある為以前とは違って何もいうことはできなかった。

 

「ケントさん、良かった。無事だったんだね。」

 

「私は大丈夫、それより緑谷くんが。」

 

「僕の事はいいんだ。まずは施設に行こう、洸汰くんを送り届けなきゃ。」

 

「それには賛成。私が二人をおぶって飛ぶ、捕まって。」

 

 そう言い背中には洸汰をしがみつかせ、両腕の折れた緑谷は腕に負担がかからないように優しく持ち上げる。速度を出せば体に響く為速度を抑えつつも急ぎ目で施設へと向かう。

 

「マンダレイに洸汰くんが無事なことを伝えなきゃ。」

 

「お、俺?」

 

「洸汰くん、君が考えている以上にマンダレイは君のことを思ってるんだよ。ね、緑谷くん。」

 

「うん、君の話を聞いた時だってマンダレイは悲しそうな顔をしてた。だから早く君が安全だってことを知らせなきゃ。」

 

 施設へは後少しの所まで来てローレルが森の中を走っている一人の人物を見つけた。二人に許可を取り一旦その人物の元へと降りる。

 

「相澤先生!」

 

「!お前ら、無事だった・・・」

 

 走っていた人物は相澤、生徒たちを助けるために森の中を走っていたのだ。空から降りてきたローレルたちを見て無事だったかと安心したが抱えられている緑谷の様子を見て言葉が止まる。

 

「先生、大変なんです。伝えなきゃいけないことがたくさんあるんです。でもとりあえず僕マンダレイに伝えなきゃいけないことがあって、洸汰くんをよろしくお願いします。」

 

 責任感が強い緑谷は全員を助けるために自分が動かなければと考えていた。先ほどの戦闘によってアドレナリンが大量に分泌されており興奮状態になっていた。冷静にものを考えることが出来ておらず今にも飛び出しそうな勢いで相澤へと話しかける。

 

「緑谷、お前またやりやがったな。保須でのこと忘れたか。」

 

 そう言われて思い出すのは面構に言われた、管理者の許可なく個性で人を傷つけることは規則違反であるという事。勿論緊急事態であったため仕方がなかったのだがそれが許される社会ではない。

 

「先生、緑谷くんと洸汰くんをお願いします。マンダレイの元には私が行きます。」

 

 自分の意見は緑谷には聞き入れられないかもしれない。しかし相澤がいれば緑谷もそれを無視するわけにはいかない。そう考えて代わりに自分が行く事を提案した。

 

「ケントさん!ダメだよだって・・・」

 

「今の緑谷くんを行かせるよりは全然いい。その怪我は私にも責任があるけどこれ以上動くのはダメ。その腕でなお動き続けると本当に使えなくなる。君は安全な場所で傷を癒すことが最優先!いいね。」

 

 こういった場合は言った者勝ちのようなことが多いためいうだけ言って空を飛ぶローレル。緑谷はそれでも何か言おうとしているが

 

「待て!」

 

 それよりも先に相澤がローレルを止めた。

 

「マンダレイにこう伝えろ。」

 

 相澤が伝えた言葉は本当は絶対にあり得ない事だった。大人として、ヒーローとして完全に失格であり批判されてしまうのは目に見えている。だが緑谷がすでに戦っているため、生徒たちが自分の身を守るためには必要だと判断した。

 

 それを聞いたローレルは黙って頷きマンダレイの元へと飛んでいく。その場に残った緑谷はローレルが飛んでいった方向をただじっと見ていた。

 

「緑谷、急いで戻るぞ。洸汰くんは俺が抱える。」

 

「先生・・・ダメなんです・・・さっきヴィランに何かされて一時的ですけどケントさんの個性が消えたんです!」

 

「何?!」

 

 相澤の個性を消す個性でもローレルは弱体化する事はなかった。にも関わらず襲ってきたヴィランによってローレルは力を一時的とは言え使うことが出来なくなった。それを聞いて相澤は一つだけ思い至るものがあった。

 

(クリプトナイトか・・・まずいな・・・)

 

「だから僕も行ってケントさんを助けないと!」

 

「それはダメだ。今のお前ではお荷物になる。今は黙って施設に行くぞ。・・・あいつの心配をちゃんと聞いてやれ。」

 

 緑谷は自分が戦えないことに、自分に力がないことを呪った。こんな時に安全な場所で全員が無事なのを祈る事しかできない自分を。

 

「分かり・・・ました・・・」

 

 緑谷は相澤に連れられて施設へと向かった。誰かを助ける最高のヒーローになると言っておきながら大した事はできておらず今も怪我をしてまともに動くことが出来ない。そんな自分を責めながら。

 

 

 

 相澤の元を離れてマンダレイがいる場所を目指して飛んでいるローレル。先ほどいた場所でいまだに戦っているのが見えているためそこへ向かうと、マンダレイがスピナーに斬られそうになっているところだった。

 

「マンダレイ!」

 

 マンダレイの背後から現れたローレルはスピナーが持っている武器の寄せ集めのような塊を殴り破壊する。突然現れて武器が破壊されたことにスピナーは驚きを隠せない。

 

「マンダレイ、洸汰くんは無事です!あと相澤先生の伝言を預かっています!プロヒーロー、イレイザーヘッドの名においてA組、B組総員、戦闘を許可するとテレパスで伝えてください!」

 

 それを聞いたマンダレイはすぐにテレパスで同じことを伝えた。こんな指示を送れば後でどうなるかなどすぐに分かる。それでも出したという事は相澤も覚悟を決めているということに変わりない。

 

「後一つ!ヴィランの目的の中におそらくA組の爆豪くんが入ってます!これもお願いします!」

 

 そう言ってローレルは爆豪を探しにその場から跳ぼうとするが、少し離れて虎と戦っていたヴィランであるマグネがローレルへと迫っていた。その手にはマスキュラーが持っていたものと同じ銃。

 

「あなたケントちゃんね。あなたもきてくれると嬉しいわ。」

 

「残念だけどそのお願いは聞けそうないよ。」

 

「勿論わかってるわ。だからこれを使うのよ。」

 

 そう言って自身の手をポケットへと入れて何かを取り出す。その手には鞘に収まっているナイフだった。今更そんな物を持ってどうするのかを考えていたが、鞘から抜いたナイフを見た瞬間にその意図が伝わった。

 

 ナイフの刃が緑色に輝いており、クリプトナイトと同じ光を発していた。それにより全身から力が抜けその場に膝をつくローレル。なんとか倒れないように持ち堪えるもじりじりと近づいてくるクリプトナイトにますます力が抜けていく。

 

「本当に動けなくなっちゃうのねぇ。ならこれでおしまいグボっ!」

 

「それを我がさせると思うか?」

 

 近づいてくるマグネに対して虎が頭を殴り意識を刈り取った。正直に言えばローレルはとても助かったと言える。

 

「大丈夫か?一体どうしたのだ?」

 

「ナイフ・・・私から・・・遠くに・・・」

 

 その言葉を聞いてマグネが握っているナイフを虎が遠くへ放り投げる。クリプトナイトが離れたことにより力が戻りすぐに立ち上がる。

 

「ありがとうございます。」

 

「問題ない、我はマンダレイの助太刀に行く。貴様も早く避難することだ。」

 

 そう言って虎はマンダレイの手助けへと向かった。だがローレルは未だに避難することなど考えていなかった。同じクラスの爆豪が狙われている、緑谷であれば必ず助けに行くところだ。自分がその代わりにここにいるのならば代わりに自分が動かなければ、その思いでローレルは爆豪の元へと向かおうとする。

 

 場所を調べるために透視を行おうとするが少し離れた場所で大きな音が聞こえてくる。その音が聞こえてきた場所にはローレルもよく知る特徴的な個性が見えた。

 

「あれは?!」

 

 急いでその場へといけば近くには障子がおり触手からは血が流れていた。

 

「障子くん、大丈夫!?血が!」

 

「これくらいなら問題はない。ヴィランに奇襲をかけられ俺が庇った。だがそれが、奴が必死に抑えていた個性のトリガーとなってしまった。」

 

 そう言って障子が向いた先では普段からは考えられない見た目をしており禍々しくそして獰猛さを感じさせるダークシャドウが暴れていた。

 

 

 

 




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