個性[超人]   作:2NN

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合流

「ダークシャドウ、一体何が・・・」

 

「静かに。ダークシャドウのテレパスで俺たちはすぐに警戒態勢を取った。だがその直後に背後からヴィランに襲われた。俺は常闇を庇いすぐに身を隠した。そのときに腕を切られたんだが奴はそれがトリガーとなって抑えていた個性が暴走した。」

 

 障子は自分の切られた腕を見せながら何があったのかを説明する。あるはずの手がそこにはなく、その代わりに今でも血が流れている。

 

「傷は浅くないが失ったわけじゃない。俺の個性は複製腕をさらに複製することが可能だ。切られたのも複製の腕だ、大丈夫だからそんな顔をするか。」

 

 障子の話を聞いていつの間にかローレルは悲しげな顔をしていたが本人はそのことに気がっておらず、障子に言われて初めて気がついた。

 

「確か体育祭の時に闇が深いほど制御が難しいって常闇くんは言ってた。」

 

「そしておそらく奴の義憤や悔恨などの感情が暴走を激化させている。奴も抑えようとしているが動くものや音に反応し無差別に攻撃をしている。」

 

 足元にあった枝を踏んでしまい音が鳴るとダークシャドウはすぐに音を頼りに腕で攻撃をしてくる。二人はすぐにその場から飛び退き回避する。そこで常闇が自分よりも他を助けほど苦しげな声で二人へと声をかけてくる。

 

「ダークシャドウの弱点は光、火事や施設の方へと誘導すれば鎮められるはずだ。」

 

「光が弱点、火事・・・。障子くん、私に考えがある。」

 

「本当か?」

 

 静かにではあるが熱意のこもった言葉でローレルの意見を促す障子。いくつか手段はあるが今考えている内容が最も手早く常闇を助けることができる。

 

「うん。私が木を燃やして火をつける。その光で常闇くんのダークシャドウを抑えよう。」

 

「戦闘訓練の時に使ったビームか、しかしそれでは森に被害が・・・」

 

「それは大丈夫、ダークシャドウにおられた木を集めて火をつけるんだよ。私が動き回って気を引くから障子くんは木をお願い。」

 

「成る程。お前のことだ、それが一番良い配分なんだろう。よしわかった、すぐに動こう。」

 

 作戦も決まり早速ローレルが空を飛んでダークシャドウの背後へと回る。両手を叩き音を鳴らせばダークシャドウは真っ直ぐとローレルへと腕を伸ばす。体をそらして回避をすれば背後の木へと攻撃が当たり簡単に折れた。

 

(威力は結構あるね。でもこれくらいなら!)

 

 自分でも木を殴り付けて数本倒した後空中へと飛び上がる。地上でも空中でも関係なく飛んでくる攻撃を回避しダークシャドウの目の前まで移動する。しかしては出さない。

 

「舐めるなぁ!」

 

 目の前にまで来て全く手を出さないことで相手を挑発する。常闇の個性であるダークシャドウは本人の意志とは違う意志を持った珍しい物である。別々の思考が働いているためダークシャドウにもしっかり挑発は聞くのだ。

 

 縦横無尽に空を飛び伸ばしてくるてを回避する。しかし離れすぎず近すぎずのギリギリの距離を取りながら。しっかりとその動きが見えているため避けること自体は難しくはない。問題は音にも反応するダークシャドウに気づかれず障子が木を集められるのかだ。

 

 時折尻尾が地面に叩きつけられているため下手をすればそれに巻き込まれてしまうということもあり得る。

 

 そう考えているとダークシャドウの方腕が突然ローレルとは違う方へとのビル。その方向にいるのは木を運んでいる障子で、運んでいる際に大きな音が出てしまったのだろう。

 

「せやぁ!」

 

 障子から距離を開けさせるために伸びてきたダークシャドウの腕を掴み思い切り引っ張る。持ち上げられた体は空中へと投げ出され自由に動く事ができなくなり障子へと伸びる腕は届く事はなかった。

 

「いいぞ!」

 

 したから聞こえてきた障子の声を聞いてダークシャドウの腕を掴みながら運ばれた木の元へと向かう。ヒートビジョンを使い木に火をつける。燃えている火は瞬く間に集めた他の木へと燃え移りすぐに強い光を放った。

 

 その光を浴びたダークシャドウは少しずつその大きさが抑えられていき、すぐに常闇の身体へと消えていった。

 

「すまん、助かった。」

 

 荒い息遣いと共に常闇は謝罪をする。怒りに任せてダークシャドウを解き放った事、闇の深さと自身の怒りがそれに拍車をかけた事、その結果障子を傷つけた事。

 

「そういうのは後だ、ってお前なら言うだろ。」

 

「今は出来ることをしよう、ね?」

 

「ああ。」

 

 常闇の顔からは後悔が消え覚悟を決めた顔つきとなった。

 

 

 

 爆豪と轟はムーンフィッシュという全身を拘束具によって拘束されているヴィランと戦っていた。ムーンフィッシュの個性は歯刃、自分の歯を伸縮や分岐、鋭利化させて相手を切り裂くことができる。その驚異的な範囲と手数によって二人は防戦一方となっていた。

 

「くそが!最大火力でぶっ飛ばすか!」

 

「だめだ!」

 

 轟の氷壁によってムーンフィッシュの攻撃を防いでいるが時折貫通してくる歯によって警戒を緩める事はできない状況だった。

 

「火燃えても速攻で氷で覆え!」

 

「爆発はこっちの視界も塞がれる。仕留めきれなかったらどうする!手数も距離も向こうに分があんだぞ!」

 

 手が出せないという現状に苛ついていた爆豪は我慢の限界といった風に自分の個性を使って倒そうとする。しかし轟の正論によって止められた。爆豪も轟が言っていることが正しいと理解しているため出そうとしていた手を引っ込めた。

 

 目の前にはヴィランで背後は毒ガスと完全に退路は絶たれており、こちらの個性では相手と相性が悪いと何から何まで不運が続いている。そんな時に二人はムーンフィッシュへと何かが向かっているのが見えた。

 

「おまえは。」

 

「少しお痛が過ぎるよ。」

 

 常闇を救ったローレルが2人の元へと駆けつけたのだ。ムーンフィッシュへの顎へと一発打ち口を閉じさせ怯んだその隙に口を目掛けて殴りつける。それによりムーンフィッシュの背後はは砕かれ地面へと叩きつけた。

 

「二人とも大丈夫だね?良かった。」

 

 突然現れて自分たちが苦戦していたヴィランをあっさりと倒してしまったローレルを見て二人とも少しの間固まっていた。

 

(少し前まで弱まってたのにどうして?)

 

 頭の中で聞こえる声は再び強くなっていた。つい先日までは特にそんなことなかったにもかかわらずだ。一体どうしてなのかは不明だが今はそれよりも大事なことがあるため今は考えるのをやめる。

 

(俺たちが苦戦した奴をああも簡単に。)

 

 轟はローレルの代わりようにも驚いていた。体育祭があった時、一度も人に直接攻撃をしたことがないと言っていた。しかし今は自分たちが先ほどまで戦っていたヴィランを殴って倒したのだから。

 

「取り敢えず爆豪くん。テレパスで聞いたと思うけど君はヴィラン連合に狙われてるみたい。だからすぐにプロヒーローが二人いる施設に戻ろう。」

 

「そうだな、その話は俺たちも聞いた。どうやって戻ればいいと思う?」

 

「道なりは目立つから最短距離でまっすぐ施設に戻ろう。森の中なら多少は姿を隠せる。少し先に障子くんと常闇くんが休んでるからそこまで行けばより強固な守りになるよ。」

 

「そうか。ならそれで行くぞ、爆豪。おまえ真ん中歩けよ。」

 

「俺を守ろうとするんじゃねぇくそ共!!」

 

 自分を置いて自分を守ろうとする話を聞いて爆豪はいつものように怒鳴るが二人はいつものことだと無視して前を歩き始める。それを文句を言いつつもちゃんとついてくる爆豪だった。

 

 二人と合流し四人で爆豪を囲むようにして進む。爆豪からすればとても不愉快であったのかもしれないが非常時であるため文句を言い続けながら歩いていく。

 

 四人で囲んで周囲を警戒しながら進めば問題ない。そう思っていたローレルだがその瞳は少し先にいる人物たちを捉えてしまった。

 

「ごめんみんな!先に行くね!」

 

「一体どうした?」

 

「麗日さんがヴィランに襲われてる!」

 

 

 

「ガンペットマーシャルアーツ!」

 

 麗日は職場体験先で学んだナイフを使う相手の対処法を使って見事にヴィランを地面に伏せることに成功していた。この時、体験先をガンヘッドにしていて良かったと心から思った。

 

「梅雨ちゃん!ベロで拘束、出来る?痛い?」

 

「もうしこし待って!」

 

「お茶子ちゃん。あなた、私と同じ匂いがする。」

 

 その言葉に麗日は身構えた。ヴィランから自分と同じだと言われれば誰でもそうなってしまうだろう。自分はヒーローを目さわしているのだからと。だが地に伏しているヴィラン、トガヒミコが言いたい事はそうではなかった。

 

「好きな人がいますよね。そしてその人みたくなりたいって思ってますよね。」

 

 その言葉に内心動揺が走る。心当たりがないわけではない。体育祭での爆豪戦では内心緑谷みたいにと思って戦っていたから。

 

「好きな人と同じになりたいよね?同じもの身につけたりとかしちゃうよね?でも満足できなくなっちゃうよね?」

 

 言いようのない気持ち悪さを感じた。誰かを好きになるという点においては同じ。無意識的に自分もそうだったのかと思うところもある。なぜかは知らないがトガの言葉は麗日に耳のよく届き心を揺さぶられる。

 

 麗日が動揺している間にトガは手に持っていた注射器のようなものを麗日の足へと刺し管を通って血を抜き取っていく。拘束を解かなければ注射器を抜く事はできない。だがそれではトガを逃してしまう。どうするべきかと考えていると

 

「麗日さん!」

 

「ローレルちゃん!」

 

 そこへローレルが辿り着いた。麗日の名を呼ぶとトガが麗日を木にするような素振りを一切見せずに起き上がり逃げていった。

 

「あんまり血取れなかったけど人が多いと邪魔されるので、バイバイ。」

 

 そう言ってトガは森の中へと姿を消していった。麗日は追いかけようとするがどんな個性を持っているかが分からない以上深追いは危険だと判断し蛙吹によって止められた。

 

「麗日さん怪我が。それに今のは?」

 

「私は大丈夫。全然動けるし。」

 

「さっきのはヴィランよ、かなりクリイジーな。」

 

 追いかけたいが今は爆豪を安全な場所へと送り届けるのが最優先なため諦めることにする。

 

「二人とも一旦ついてきて。爆豪くんを護衛しつつ施設に向かってるの。人手は多い方がいい。」

 

「わかった。」

 

「勿論よ。」

 

 三人は後ろから向かってくる四人の元へと戻り麗日が無事であることを告げ新たに人数を増やしてより強固な警戒にしようと提案をする。だがそこでおかしいことに気がついてしまった。

 

「爆豪ちゃんはどこなの?」

 

 その声に轟木と障子が振り返ると爆豪の姿が消えていた。爆豪の背後に立ち警戒していた常闇と一緒に。

 

「彼なら俺のマジックでもらっちゃったよ?」

 

 声が聞こえる方向には一人の人物が立っていた。声で判断するならば性別は男性、コートを着て杖を持ち、頭にはシルクハット。そして白い仮面をかぶっている。手袋をつけた手にはビー玉のような球体が握られておりこれみよがしに見せつけている。

 

「こいつはヒーロー側にいるべき人材じゃあねぇ。もっと輝ける舞台に俺たちが連れてくよ。」

 

「返しなさい!」

 

「返せ?妙な話だぜ。爆豪くんは誰のものでもねぇ。彼は彼自身のものだぜ?エゴイストめ。それとも何か?君は彼のことが好きなのか?」

 

「誰のものでもないならあなたが連れて行っていい道理はない。もしかして爆豪くんに了承でも得たの?一体エゴイストはどっち?」

 

「・・・」

 

 自分の言った言葉であるためにブーメランであることを否定できないヴィランの名前はMr.コンプレス。

 

 轟がすぐに氷を使って拘束しようとするものの軽い身のこなしでそれを糸もたやすく回避する。曰く凝り固まった価値観に対し、別の道もあるのだとを示すだけとのこと。価値観によって道が狭まっていると。

 

「わざわざ話しかけてくるたぁ、舐めてんなぁ!」

 

「もともとエンターテイナーでね、悪い癖さ。常闇くんはアドリブで貰っちゃったよ。」

 

 手に持っていたビー玉を一つから二つへと増やし、ここにいるのだと見せつける。それをみて全員の顔が露骨に歪む。すぐに轟が氷を使い最大火力で氷壁を出し拘束しようとするが、

 

「悪いね!俺は逃げ足と欺くことだけが取り柄でよ!ヒーロー候補生なんかと戦ってたまるか。開闢行動隊、目標回収達成だ!短い間だったがこれに目幕引き!予定道理5分以内に回収地帯へ向かえ!」

 

 手を耳へと当てながらローレルたちにではない誰かに向かって話しかけるコンプレス。通信機を持っているのは当然だと考えられるため今はヴィランの仲間と話しているのだろう。しかし問題はそこではない。

 

「幕引き・・・だと・・・?」

 

「だめ!」

 

「おうぞ!」

 

 ローレルは空を飛び木々を飛んでいるコンプレスを追いかける。追いつくこと自体は難しくはないためそのまま捕まえて地面に拘束しようとする。

 

「おっとそれ以上近くのは良くないぜ?何故って?人質がいる!なんちゃって!」

 

「クッ!」

 

 手に持ったビー玉を見せつけられながらそう言われてしまえば手を出すことが出来ない。破壊すれば脱出させられるのか、それとも解除しなければ元に戻らないのかわからない以上無闇に手を出せない。

 

「仕方ないから君にはこっちをあげるぜ。」

 

 そう言ってローレルへと向けるのはここまでによく見た銃。ローラルへと発砲された弾はギリギリ避けて回避したが、触れていなくともガスが漏れ始めローレルの体から力を奪い落下を始める。それをみてコンプレスは合流地点へと急いだ。

 

「こんな時に!」

 

 体が落ちながらも何度も飛ぶように脳に指示を送るがいうことを聞いてくれない。だんだんと近づいてくる地面。あまり吸い込まなかったからかそこまで力が落ちることはなかったが、してやられたようでこのまま落ちたくはなかった。

 

「危な!一瞬しか触れなかったからとかかな・・・?よく分かんないけど助かった。」

 

 地面へと落下するギリギリのところで力が戻り叩きつけられるのは回避することが出来た。もう一度追いついても同じことになってしまう。それならばと木を引き抜いてコンプレス目掛けて投げつけようとする。乱暴だが注意を引きつけつつ運が良ければ倒すことが出来るのだ。

 

 しかし投げつけようとした瞬間に背後から見慣れた人物達が飛んでいった。轟を掴んだ障子だった。高速で飛んでいくその二人はコンプレスの意表をついて体当たりしそのまま地面に落下していった。

 

「私も勢いよく行けば良かったのかな?・・・それだと相手死んじゃうか。」

 

 ローレルはすぐさま先ほど三人が落下した地点へと向かうのだった。

 




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