個性[超人]   作:2NN

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敗北

「Mr.、よけろ。」

 

「ラジャー。」

 

 ヴィランの一人である荼毘がコンプレス事青い炎を放つ。しかしその場にはすでにコンプレスはおらず残ったのは轟と障子のみ。轟は炎を回避できたが障子の左腕は巻き込まれてしまう。

 

「障子!」

 

「死柄木の殺せリストにあった顔だ。その地味な顔はなかったけどな!」

 

 腕にはめた装備からメジャーのような刃を出して轟へと襲い掛かろうとするヴィラン、トゥワイス。全身黒に頭とブーツは白と見た目は地味だが特徴的なのはその喋り方。最初と最後の言葉が必ず矛盾した喋り方をするのだ。

 

「あっつ!」

 

 轟が氷をトゥワイスへと向けるとギリギリのところで回避されてしまう。

 

「やるな!楽勝だぜ!かかってこいよ!いい加減にしろって!」

 

 氷を回避し時には切断をして避け続けるトゥワイス。ステインの時にも同じような動きで回避されてしまうため一度氷での戦い方を考えるべきかもしれないと思案する轟だった。

 

「やれやれ、空中は警戒していたんだがな。まさか別の奴らがくるとは。」

 

「爆豪は?」

 

「勿論ここに。ん?」

 

 コンプレスが見てのポケットに手を入れながら何かを探しているのだがその反応は良かったとは言い難い者だった。

 

「逃げるぞ轟!今のではっきりした。さっき散々見せびらかしてきた右ポケットにしまったこれが、常闇と爆豪だな。」

 

 傷だらけの右手には先程までコンプレスが持っていた玉が握られていた。

 

「あの短時間でよく。さすが六本腕、弄り上手め。」

 

「でかした障子!」

 

 氷による氷壁を作り出しその場から離脱しようとする二人だったが目の前に突然能無が現れる。

 

(こんな奴までいたのか!)

 

 能無を迂回してその場から逃げようとすると突如目の前に黒いモヤが現れる。ヴィラン連合の生命線とまで言える人物、黒霧だった。

 

「合図から5分立ちました。行きますよ荼毘。」

 

 現れたワープゲートに姿を消すヴィラン達。ワープへと消えようとするコンプレスを止める荼毘だが、二人を取り返されても一切動揺のないコンプレスは問題ないと告げる。するとローレルが空中から勢いよく地面に着地する。それにより全員の目が釘付けとなった。

 

「ケント!もう二人は取り返した!今すぐ逃げるぞ!」

 

「違うんだよ轟くん。二人は取り戻せてなんかいない!」

 

 コンプレスへと向かって突進しパンチを繰り出すローレル。しかし当たる直前に拳の前にモヤが現れ腕が飲み込まれ、次の瞬間には自分の腹へと衝撃が走った。黒霧のワープによって自分の攻撃を自分へと向けたのだ。

 

「能無。」

 

 背後に現れていた能無がローレルの元へとやってくると頭を鷲掴みにして地面へと押さえつける。

 

「危なかったよ。ありがとう。さっきのあれは俺からのプレゼントだ。マジックの基本でね、物を見せびらかすって時は物を見せたくない時なんだぜ?」

 

 そう言ってコンプレスは仮面を取り下の上に乗せた二つの玉を見せた。指を鳴らせば障子が持っていたのはここにくる前に轟が放った氷を拝借して作った物だった。

 

 すぐに走り出す障子と轟。ワープで逃げようとしているコンプレスに対しどうやって玉を奪うかを考えながら走っていると当然レーザーがコンプレスの仮面へと直撃する。

 

 レーザーが飛んできた方向を向くと青山が震える体を押さえつけながらもレーザーを放った姿があった。

 

 画面が壊れ口から玉を吐き出した。好機と見た二人は手を伸ばしその玉をつかもうとする。そして障子が一つ、轟が一つ玉を掴むことができた。

 

 コンプレスの体のほとんどはすでにワープへと飲み込まれていた。しかし荼毘のみはその場にいて足元に何かを投げつける。するとその場には緑の煙が現れ始める。

 

「これは・・・」

 

 クリプトナイトを使ったガスだった。これにより能無によって掴まれた頭は動かすことすらできず簡単に持ち上げられてしまう。

 

「Mr.、本命は?」

 

「これだ。」

 

「確認だ、解除しろ。」

 

「一応の成功だな、完璧とは言えないが。」

 

 そう言って指を鳴らすと荼毘の手元には爆豪が現れ首を掴まれていた。障子の取った玉は常闇へと変化し轟の持っていた玉は氷へと変化する。

 

「また偽物か!」

 

「一応二つに分けて隠し持っていたわけだが、お前らはハズレを引いたようだったな。」

 

 そう言って二人はワープへと姿を消した。クリプトナイトによって作られたガスを吸って力を失ったローレルは能無に体を掴まれ逃げることができない。

 

「まずい!ケントまで!」

 

「くっ!」

 

「ダークシャドウ!」

 

「みんな・・・ごめん・・・」

 

 三人の手がローレルへと伸びる。出来る限りの抵抗をしてはいるがそれも虚しく、ローレルはワープゲートへと姿を消してしまった。

 

 嘘であって欲しかった。何かの間違いだと。しかしその場に残ったのは後悔や無念、そして青く燃え上がる炎のみ。誰もその場から動くことができず、ただ炎を見ていることしかできなかった。

 

 ヴィランが去った十五分後には救急や消防が到着した。生徒四十一名の内ヴィランのガスによって意識不明の重体十五名、中軽傷者十一名、無傷で済んだ生徒は十三名。そして行方不明が二名。

 

 プロヒーローは一人が頭を強く打たれ重体、一人が大量の血痕を残し行方不明。ヴィラン側は三名を現行犯逮捕し、それ以外は跡形もなくその姿を消した。

 

 生徒たちが楽しみに来ていた林間合宿は最悪の形で幕を閉じてしまった。完全敗北という形で。

 

 

 

 

 

「お疲れさん!疲れてねぇよ!」

 

「なかなか楽しかったですね。」

 

「二人ともテンション高すぎよぉ。」

 

 ワープによって連れて行かれた場所はバーだった。ヴィラン連合開闢行動隊と名乗った面子三人を除いて全員が集まっていた。死柄木と黒霧を含めて。荼毘によって捕まっている爆豪は体を焼かれたくなければ大人しくしろと脅され抵抗ができないでいる。

 

「こいつを拘束するぞ。口は塞ぐな。」

 

 両手は拘束されて体は椅子へと縛りつけられてしまう。流石に状況が状況のため爆豪も抵抗できないでいた。

 

「お前らよくやった。爆豪だけでなくローレルケントまで捕らえてくるなんてな。今からニュースが楽しみだ。あいつは?」

 

「別室に能無と共にワープさせています。近くにはクリプトナイトを用意しているので逃げ出すことはできないかと。」

 

「あまり近づかせすぎるなよ。」

 

「勿論です。」

 

 会話を聞いていた爆豪は自分と一緒にローレルまで連れてこられていることに驚いた。体育祭の決勝戦では何故か勝ったが、ローレルの耐久力とパワーは認めていた。そのため拘束されていても逃げ出せるんじゃないかと考えていた。

 

(だがくそ共の会話を聞きゃ無理だと断言してやがる。っち!)

 

 

 

(ああもうどうにかならないの?)

 

 ローレルは能無に頭を掴まれている手をどうにか出来ないかと考えていた。あまり負担がかからないように両足が地面につく程度に持ち上げられているためほとんど動くことは叶わない状態だが。

 

(やっぱあれのせいで何もできないか。)

 

 近すぎず遠すぎずの場所にあるクリプトナイト。手を伸ばしても届かないため抜けだす手段がないのだ。

 

 そんなことを考えていると突然目の前に黒いモヤが現れ黒霧がワープしてくる。

 

「ご機嫌麗しゅうケントさん。手荒な歓迎をお許しください。」

 

「自覚してるならもう少し優しくして欲しかったですね。」

 

「何分荒くれ者の集まりですので。とりあえずあなたを拘束させていただきます。」

 

 そう言って動けない体を椅子に縛り付ける黒霧。時折痛くないですか?などと言いながら縛る様子は真の悪人には見えなかった。

 

「本当にヴィランなんですか?」

 

「それは一体どういう意味ですか?」

 

「だって敵に対してこんなに優しくなんてする必要ないじゃないですか。だから本当は根は優しい人なんじゃないかなって思っただけです。」

 

「確かに他より物腰は柔らかいかもしれませんね。それでは私は行きます。」

 

「待って!ひとつだけ、どうして爆豪くんを攫ったの?」

 

 少しでも情報を手に入れるために黒霧へと話しかける。今は考えるための判断材料を少しでも多く得る必要がある。相手の動向を探るのも必要なことだ。

 

「・・・あなたは捕まっていることですしいいでしょう。彼は囚われている。自分の力を満足に使うことを許されず風邪をはめられて苦しんでいるのです。だから我々がその風を取り除き自由にして差し上げる、という事です。」

 

 つまりはヴィラン側への勧誘という事だ。体育祭の時の映像が見れば誰しもが爆豪を怖がってしまうだろう。口癖のように言う死ね、カス、殺すの3セットに顔はいつも怒っていて怖い。だがヴィランたちは思い過ごしをしている。

 

「爆豪くんは絶対にヴィランになんかならないよ。これだけは言える。」

 

「ふふふ、それはどうでしょうね。それでは明日になったら食事を持ってくるので大人しくしていてください。」

 

そう言って黒霧はワープによって姿を消した。部屋には妖しく輝く緑色の石とその光に照らせれるローレルのみだった。

 

(情けない。こんな力を持ってても助けるどころか一緒にさらわれるなんて・・・。本当に・・・情けない・・・)

 

 心のどこかで慢心があったのかもしれない。あらゆる面でハイスペックな能力を持つローレルに対してヴィランが的確に弱点をついてきた。しかしそれは言い訳でしかない。結局のところ何もできなかったのは自分のせいであり連れ去られたのも自分のせい。

 

(今はチャンスを伺うしかない。迷惑ばっかりかけて本当にごめんなさい。)

 

 頭の中で謝罪するローレル。そこにはクラスメイトたちや相澤、オールマイト、そして根津の姿だった。

 

 

 

 

 

 緑谷が目を覚ました場所は合宿所の近くにある病院だった。両腕を痛みと熱にうなされまともに意識が戻ったのは事件から2日後。それまでは教師や警察が来て話をしていたらしいのだが緑谷本人は何の話をしたのか覚えていない。

 

「緑谷!目覚ましてんじゃん!」

 

 扉を開けてそう言ったのは上鳴。それに続いてA組生徒が緑谷の病室へと入ってくる。

 

「緑谷、大丈夫か?」

 

「うん。A組みんなで来てくれたの?」

 

「いや、耳郎くん葉隠くんはガスに寄って未だに意識が戻っていない。そして八百万くんも頭を酷くやられここに入院している。だから、来ているのはそのうち三人を除いてだ。」

 

「爆豪とケントいねぇからな。」

 

「ちょっと轟!」

 

 緑谷はその言葉を聞いて目を見開いた。爆豪とケントがさらわれた。その事実が緑谷へと襲いかかる。

 

「そんな・・・嘘だ・・・嘘だ!」

 

「本当だ!落ち着け緑谷!」

 

 今すぐ動いて問いただしたいところだがどこか冷静な部分も残っておりベッドの上から動くことはなかった。両目からは大量の涙が流れ自分の無力さを呪った。

 

「オールマイトが言ってたんだ・・・手の届かない人たちは助けられないって・・・。1人を助けて木偶の坊、相澤先生の言った通りになっちゃった・・・。洸汰くんを助けるのに精一杯で、僕は動けなかった!」

 

「じゃあ助けるか。」

 

 緑谷の言葉に切島が提案をする。その言葉を聞いて全員が驚きの顔を見せる。実は昨日も病院に来ていた霧島と轟が八百万の病室へと行くと、中からオールマイトと塚内が八百万と話をしていた。その中でヴィランの1人に発信器をつけたという話を聞いていたのだ。

 

「つまりその受信デバイスを八百万くんに作ってもらうと?」

 

「だとしたらどうする?」

 

 飯田は切島が何を言いたいのかを察した。それと同時に以前職場体験の時に言われたヒーローであるマニュアルの言葉を思い出していた。

 

『まぁ、どのみち監督不行届で俺らは責任取らないとだしなな。』

 

『申し訳ありませんでした。』

 

『よし!他人に迷惑かかる、分かったら二度とするなよ。』

 

 自分の暴走のせいで友人のみならず体験先のヒーローにも多大なる迷惑をかけてしまった。そのことを見にしみて分かっている飯田は切島の発言を許すことはできなかった。

 

「オールマイトがおっしゃる通りだ!プロに任せるべき案件だ!俺たちが出ていい舞台ではないんだ!馬鹿者!」

 

「んなもんわかってるよ!でもさ、何もできなかったんだ!何もしなかったんだよ!ここで動けなきゃ俺は!男でもヒーローでもなくなっちゃうんだよ!」

 

 議論はヒートアップしていく。上鳴が切島を止め蛙吹が飯田へと賛同するものの切島は止まらない。

 

「飯田が正しいよ。でも、なぁ緑谷、まだ手は届くんだよ!助けに行けるんだよ!」

 

「ヴィランは俺らを殺害対象と言い、爆豪は殺さず攫った。生かされるだろうが殺されないとも言いきれねぇ。俺と切島は行く。」

 

「ふざけるのも大概にしたまえ!!」

 

 お互いの主張を一歩も譲らない両者。言っていることはどちらも正しい。だからこそのぶつかり合いといえる。間に障子や蛙吹が入り三人を冷静にさせるもの最終的な結論が出ることはなかった。

 

 そうしている内に緑谷の検査の時間がやってきたため生徒たちは出ていくことになった。その間際に切島が緑谷へと近寄り決行ら今日の夜で病院の前で待つと言われる。

 

「俺がこうしてお前に話を持ちかけてんのもお前が二人とも仲良かったからだ。それに何もできずにって所は同じだと思ったからな。」

 

 それだけ言って切島は病室を出ていった。今夜病院の前で待つ、そう言われてしまえば緑谷の導き出す答えは一つだけだった。

 

 

 

 夜の病院前、切島と轟は人を待っていた。八百万に話はしているがその時は少し考えさせてほしいと言われているため正式な返事は聞いていない。どれだけ焦っても発信器を作れる八百万が了承しなければ場所もわからず奪還も不可能なのだから。

 

 だが少し待っているとすぐに病院から八百万が姿を見せる。その背後には緑谷の姿もあった。

 

「八百万、どうだ?」

 

「私は・・・」

 

「待て!」

 

 病院の入り口からは飯田が現れ四人を呼び止める。どうして自分を止めてくれた緑谷と轟が自分と同じ過ちをしようとしているのか理解できなかった。

 

「俺たちは生徒であり大人の保護下にあるんだ。ただでさえ雄英が忙しいこの時期に勝手な行動をして、責任を取るのは一体誰なのかわかっているのか!」

 

「飯田くん!僕たちだってルールを破っていいだなんて思っては!」

 

 緑谷がそう言って前へと出るが飯田は緑谷の顔面を思い切り殴った。

 

「俺だって悔しいさ!心配さ!学級委員長を決める時におれに表が入っていた。あれはケントくんだ!彼女はあの時から俺に信頼を置いてくれていたんだ!心配しないわけがないだろ!爆豪くんだけじゃない、君の怪我を見て床に伏せる兄の姿を重ねた。君たちが暴走したあげく、兄のように取り返しのつかない容態になったら僕の心配はどうでもいいっていうのか。僕の気持ちはどうでもいいっていうのか・・・」

 

 緑谷の方を掴みながら必死な思いで自分の思いを語る飯田。自分と同じ過ちを、兄と同じ重体をクラスメイトには負って欲しくはない。ただその思いで。

 

「俺たちだって正面切って乗り込みに行くわけじゃない。」

 

「ようは隠密活動だ。それが俺たちの出来るルールにぎり触れない戦いかただろ。」

 

「私は轟さんを信頼しています。ですが万が一を考え、私がストッパーとなれるよう同行するつもりで参りました。」

 

「マンダレイのテレパスでかっちゃんだけが狙われてるって言われてたけど、本当はケントさんも狙われてたんだ。でも僕が怪我をしてるから動くのはダメだって言われてそのまま行っちゃった。僕が弱いばっかりに!だから助けないくんだ!!」

 

 思い出すのはオールマイトの言葉。トップヒーローたちの殆どがそれぞれの逸話を残している。その多くはこう残している、考えるより体が先に動いていたと。今の緑谷はそれにとても近いものを感じている。あの時、雄英に入学する前に爆豪がヘドロのヴィランに襲われた時と同じ感覚を。

 

「平行線だな。ならば俺も連れて行け。」

 

 その言葉に全員が驚くがその意図をすぐに理解し同行する事になった。こうして爆豪とローレルを助け出すために五人の少年少女が動き始めた。

 




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