個性[超人]   作:2NN

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全は一、一は全

 

『まさに悪魔のような光景!上野区が一瞬にして半壊滅状態となってしまいました!現在オールマイト氏が元凶と思わしきヴィランド交戦中です!信じられませんヴィランはたったの一人!街を壊し平和の象徴と互角に渡り合っています。』

 

 そのニュースは世界中を大いに振るわせた。平和の象徴と互角に渡り合うたった一人のヴィラン。それだけでも異常性が伺うことができる。しかし世界中の見方はそうではなかった。ヒーローに対する辛辣な思いが多くを占めていた。それは信頼してか、それとも慣れか、答えは誰にもわからない。

 

「君には可能な限り醜く惨たらしい死を迎えて欲しいんだ!」

 

 そう言ってオール・フォー・ワンの腕が膨らんでいく。先ほどから使っていく空気砲が飛んでくる予兆だ。

 

「デケェのがくるぞ!避けろ!」

 

「避けて良いのかい?」

 

 攻撃を避けるのは当然のこと。しかしオール・フォー・ワンは無駄なことは言わない。背後の瓦礫に埋れている人がいることにすぐさま気がついたオールマイトには避けるという選択肢はなかった。

 

「君が守ってきたものを奪う!」

 

 てから放たれる空気砲がオールマイトを襲う。いち早く空中へと回避行動をとったグラントリノ。しかしオールマイトの背後に人がいるのを発見し戻ろうとしたが抵抗する術なく吹き飛ばされる。

 

 大きな爆発が起こり煙が立ち込めるがそれもすぐに晴れ、トゥルーフォームへと戻ったオールマイトが立っていた。左手が血塗れというおまけ付きで。

 

 上野区での戦いはテレビによって全世界に中継されている。勿論この姿も現在進行形でテレビに収められている。オールマイトの真の姿を民衆に暴露し心を折る、それがオール・フォー・ワンの狙いだった。

 

 すでに活動限界を迎えていたオールマイトだったが先ほどの一撃で残りを全て使ってしまっていた。戦っている中でそれは分かっていたのだが今ここで引くわけにはいかなかった。

 

「頬は痩せこけ目は窪み、貧相なトップヒーローだ。恥じるなよ?それがトゥルーフォーム、本当の君なんだろう?」

 

 オール・フォー・ワンによる話術での追撃で心を降りに来る。しかしオールマイトの瞳に揺らぎは一切なかった。

 

「体が朽ち衰えようと、私の心は依然平和の象徴。一欠片とて奪えるものじゃない。」

 

 オールマイトには強い意志がある。六年前にも同じように心を折りにいこうとしたが通用しなかった。六年前のことなためオール・フォー・ワンもすっかり忘れていた。

 

「じゃあこれならどうだ?死柄木弔は志村菜奈の孫だよ!」

 

 その言葉で辺りの空気が固まった。オールマイトの嫌がることをずっと考えていたが導き出したのは師匠の孫が敵になるというシナリオだった。USJでは何も知らないオールマイトが死柄木を降した。

 

「楽しいな。ひとかけらでも奪えただろうか。」

 

「私何ということを・・・」

 

 オール・フォー・ワンが口にした事実がオールマイトへと突き刺さる。様々な想いがオールマイトを駆け巡る。自責によって潰されてしまいそうだった。

 

 そんな時、空から猛スピードで何かが落下してきた。おちてきたそれは轟音を出すとともに小さなクレーターを作った。

 

「いっ・・た・・・」

 

「ケント少女!」

 

 空から落ちてきたのはローレルだった。頭から血を流し地面に倒れる姿を見れば自らの意思で戻ってきたとは思い難い。オールマイトが駆け寄ろうとするもオール・フォー・ワンが指先を伸ばしてそれを止める。

 

「どうして戻ってきたのかは知らないけど好都合だ。もう一度聞くよ、弔よ仲間になる気はないかい?」

 

「誰が・・・」

 

 痛む頭を抑えながらもオール・フォー・ワンの勧誘を跳ね除ける。一度その手口を知っていれば簡単に心の掌握などはされない。そう思っていた。

 

「こう何度も振られてしまうと悲しいなぁ。でもね、少し前にも言ったけど君のいるべき場所はそっちじゃないと言ったのは本当のことさ。なぜなら君は本当の意味で化け物だからさ。」

 

「本当の意味で?」

 

 あまりに強力な個性故に化け物と言われる事、それは分かっている。だが本当の意味でというのが分からない。

 

「まともに聞いてはダメだ!ケント少女!」

 

「おかしいと思わないかい?クリプトナイト、君が弱体化してしまう物質だ。地球上に本来はない物質がなぜピンポイントで君を弱らせるのか。答えは簡単だ、君の力は個性じゃない。種が持つ本来の力、宇宙人だからさ。」

 

「宇宙・・・人・・・?」

 

「君は僕たち地球人とは体の構造が何もかも違う存在、化け物さ。そんな君がどうしてヒーローになれる?なぜ雄英にいる?」

 

 突然そんなことを言われても驚くだけでよく頭に入ってこない。鼓動が早まり汗は流れ目の前はぐらぐらと歪む。

 

「耳を澄ましてご覧?世界中の人たちが何て言っているか聞こえるだろう?」

 

 その声になぜか逆らうことができず自然と聞き耳を立ててしまった。オールマイトがローレルへと向かって何かを言っているがそのことはば耳に入らない。

 

——宇宙人だって

 

——でもあの子体育祭ですごかった子でしょ?私ちょっと気味が悪かったのよね

 

——そんなのが平然と歩いてるなんて怖すぎ

 

——解剖したい

 

——個性じゃないとか本当に化け物だな

 

——雄英知ってたのか?

 

——てか雄英襲撃の手引きもあいつなんじゃね?

 

——化け物!

 

 心ない声がローレルの耳へと届く。人の醜い部分をあまりみてこなかったローレルはどこかで自分を信じくれる人がいると思っていた。だが現実はそう甘くはない。頭を抱えてその場に蹲み込んでしまう。

 

 ローレルは詳しい素性を隠しながら今まで生活を送ってきた。助けたヒーロー達もそれがベストだと話し合って。だがローレルを作ったと自称するヴィランが今の話をしたことで、雄英の今までの襲撃が全てローレルの手によるものだと世間は思ってしまった。

 

 オールマイトとオール・フォー・ワンは遠くの音を拾えることはできないため世界中が今何と言っているのかは分からない。しかし蹲み込んだ姿を見れば世界が今何を思っているのかなど一目瞭然だった。

 

「ケント少女は優しい子だ。私のこの体の秘密を知っていても誰にも話さないと約束し、友が苦しんでいれば助け、ダメなことがあれば叱り、そして共に笑う。確かに世間は今彼女に冷たい言葉を浴びせているのかもしれない。だがそれでも彼女のことを知っているもの達は皆、見捨てる事など絶対にありはしない!!」

 

 オールマイトの言葉通り今この映像を見ているA組生徒達、関わりのあるもの達、その全員が皆同じ思いを抱いた。

 

「だから心配ない、何故って?」

 

 だから皆が口を揃えて言ったのは必然だった。

 

   「私達がいる!」

(((私/俺/僕達がいる!)))

 

 気がつけば涙が流れていた。拭っても拭っても溢れる涙は決壊したダムのように止まらない。まともに喋ることができない中それでも言葉にできたのは一言

 

「ありがとう。」

 

 涙を流しながらそれでも立ち上がる。もう瞳に揺らぎはなく、まっすぐとオール・フォー・ワンを捉えている。

 

「君は楽観視しすぎている。少し頭を殴らないと現実が見れないか?」

 

「貴様こそ悪いことしか考えられないネガティブは変えたほうがいいんじゃないか?」

 

「僕ほどポジティブな人間はいないと断言するよ。全く、ヒーローと相物は窮屈だな。」

 

 空中へと浮いたオール・フォー・ワンはオールマイトへを手を向け再び腕が膨らみ始める。

 

「そうさ・・・守るものがとても多い・・・しかし、だからこそ負けないんだよ!」

 

 右腕の身にワン・フォー・オールを使い肥大化させる。全身は細いが腕だけは筋肉質という歪な姿になりながら、それでもなお戦い続けるその姿はまさしくヒーローだった。

 

「今僕は確信してる、それが最後の一振りだとね。でも二、三振りは見といたほうがいいな。」

 

 とどめを刺す前に最後の力を使わせて余力が残っていない状態のオールマイトを確実に殺す。そう考えて空気砲をオールマイトへと向けて放とうとするが

 

「グオオオオオオ!!!」

 

 上から落ちてきて何かが獣のような叫び声が辺り一体を震わせた。叫び声の元には2mを超える大きな体にオールマイト以上に筋肉質の体。肌は灰色で身体中からはトゲのようなものが生えている。

 

「あれは一体・・・」

 

「ようやく来たか。オールマイト、これも君を確実に殺すためにこれを作ったんだ。でも言うことを聞いてくれなくてね。これの名前はドゥームズデイ、審判の日だ。」

 

「グオオオオオオォォォォ!!!」

 

 再び叫び声を上げてオールマイトへと走ってくる。巨体に似合わず俊敏な動きに合わせて手負いのオールマイト。とうに限界は超えており振るえる拳は一撃のみ。覚悟を決めてドゥームズデイへと向けて拳を振るおうとするが、ドゥームズデイの真横へと現れたローレルの蹴りによってその巨体は吹き飛ばされていく。

 

「あれは私がやります。オールマイトはあっちをやってください。」

 

「ダメだ!プロに任せなさい、すぐに応援が来る!」

 

「・・・ダメなんです。オール・フォー・ワンは作ったって言ってました。今蹴った感じだで確信したんです。私と同じ、なら戦えるのは私しかいません。」

 

 勿論オールマイトは賛成しない。いくら強くともまだ学生の身、守るべき対象なのだ。それを進んで戦わせるわけにはいかない。

 

 しかし飛んで行ったドゥームズデイが再びこちらへと向かってくる。今度はオールマイトではなくローレルへと敵意を向けて。悠長に説得している時間がないことも全盛期の自分ですらローレルに敵わないことも分かっている。分かってはいるがそれを許せるかどうかは別の話だ。

 

「後でお叱りは受けます。あれはみんなが生きていく世界にいちゃダメなんです。」

 

「君は・・・」

 

 そう言ってローレルはドゥームズデイへと向かっていく。残されたオールマイトの言葉も耳には届いておらずドゥームズデイを殴り飛ばし何処かへと行ってしまった。

 

「正直に言えば彼女の相手となったら勝つのは難しかった。その点今の君なら十分勝てる。とは言ってもタイムリミットが迫っているけどね。」

 

「それはどういう・・・」

 

 ドゥームズデイが現れて止めてしまったが改めてオールマイトへと空気砲を放とうとする。しかし今度は別の方向から炎が飛んできてオール・フォー・ワンを襲う。鬱陶しさをかんじながらもそれを焦ることなく空気砲で相殺した。

 

「何だ貴様・・・その姿は何だオールマイト!」

 

 そこに現れたのはエンデヴァー。ヴィラン連合のアジトを強襲した際に同じ場所にいたが、先程まで突如現れた能無の対処を行なっていた。それら全てを無力化し先行したオールマイトへと追いついてきたのだ。

 

「応援に来ただけなら、観客らしくおとなしくしててくれ。」

 

「抜かせ犯罪者!俺たちは助けにきたんだ!」

 

 そう言って今度はエンデヴァーへと狙いを定めて空気砲を放とうとする。しかしそれをエッジショットが攻撃して止めさせる。紙肢という個性を用いて体を細く伸ばすことが出来、その速さは音超えるほど。

 

「それが我らの仕事。」

 

 今度はシンリンカムイが現れ、オール・フォー・ワンによって倒されたヒーロー達を伸ばした枝で体を掴み回収する。

 

「オールマイト、我々にはこれくらいしかできぬ。あなたの背負っているものを少しでも。」

 

 オールマイトが守った一般市民の体に腕を巻きつけて助け出すのはプッシーキャッツのメンバー、個性である軟体で体を柔らかくすることができる虎。

 

 誰しもがオールイトの勝利を願っている。例え本当の姿が晒され、弱い姿を見せていようと皆んなのNo. 1ヒーローは変わることはない。それが虎の思いだった。

 

「煩わしい。」

 

 エンデヴァー、エッジショットが連携してオール・フォー・ワンへと攻撃を続けるもダメージを与えられることはなく、逆に地面へと空気砲を放つことで吹き飛ばされてしまう。

 

「精神の話はやめて現実の話をしよう。筋骨バネ化、瞬発力×4、膂力増強×3、増殖、肥大化、鋲、エアウォーク、槍骨。今までの衝撃はでは体力を削るだけで確実性がない。確実に殺すために今の僕が掛け合わせられる最高最適な個性で、君を殴る!」

 

 複数の個性を重ね合わせたオール・フォー・ワンの右腕は大きく膨れ上がり、もはや人の腕とは見えないほどの変質を見せた。醜いだけならどれだけ良かったか、そう思わせるほどの力強さも感じさせる。

 

 腰を下ろし腕を引いていつでも殴れる態勢へと入るオールマイト。それを見てオール・フォー・ワンも同じく腕を引いていつでも殴れる準備をする。

 

 オールマイトの中にはもうワン・フォー・オールはほとんどない。個性を譲渡したことで残った残り火のみ、それをオール・フォー・ワンは確信していた。

 

「君の譲渡先は緑谷出久だろう?全く制御できてないじゃないか。存分に悔いて死ぬといいよ。先生としても、君の負けだ!!」

 

 衝突する拳、強い力がぶつかり合い大きな衝撃を生み出した。だがそこでオール・フォー・ワンは衝撃反転という個性を用いてオールマイトのパンチをそのまま相手へと返した。

 

 これにより全ての衝撃が腕へと帰り凄まじい痛みがオールマイトを襲う。腕は血を吹き出し自身の顔を汚していく。腕のみのパワーでは踏ん張る力が足りず大きく押されてしまう。

 

「そうだよ、私が叱ってやらねばならんのだよ。私が!」

 

「醜い!」

 

 その力強い攻撃でさらに血が吹き出し吐血してしまう。オールマイトの体はすでに倒れる寸前まで追い詰められてしまった。

 

(もう・・・ダメなのか・・・)

 

——限界だって感じたら、思い出せ。

 

「象徴としてだけではない。お師匠が私にしてくれたように、私も彼を育てるまでは、それまでは・・・まだ・・・死ねんのだ!!!」

 

 最後の力を振り絞り足に力を込めて下がる体を止める。右手に使っていたワン・フォー・オールを解除して左手へ移しオール・フォー・ワンの頬を思い切り殴りつけた。片手一本分しかないため右腕を囮にしたのだ。

 

「らしくない小細工じゃないか、誰かの影響かな?浅い!!」

 

 右腕とは別に左腕にはささついさっきまで使っていた空気砲に必要な個性をより倍率をかけて掛け合わせようとするオール・フォー・ワン。しかしオールマイトの右手が縮んでいく姿を見て虚を疲れる。

 

「そりゃあ、腰が入ってなかったからな!!」

 

——何人もの人がその力を次へと託してきたんだよ。みんなのためになりますようにと。一つの希望になりますようにと。次はお前の番だ。頑張ろうな、俊典。

 

 オールマイトの耳にはそんな師匠の声が聞こえた気がした。振り上げた右腕が大きく膨らみ力っよく握りしめる。オール・フォー・ワンの左腕から飛ぶ空気砲を姿勢を低くして回避し最後の一撃、地面を力強く踏みしめ腰を回転させた全身全霊を込めた全力の拳がオール・フォー・ワンの顔を捉える。

 

「UNITED!」

 

 その拳は守るべき人たちのために

 

「STATES OF!」

 

 その拳は悪を倒すために

 

「SMASH!!!」

 

 地面へと叩きつけられたオール・フォー・ワン、地面には巨大なクレーターが残り二人を中心に発生する大きな竜巻。それほどの凄まじい威力を後にワン・フォー・オールの残り火は消え去った。

 

 そのばにあるのは倒れるオール・フォー・ワンと片手を上げて勝利のスタンディングをするオールマイトだった。それをみた世界中がオールマイトの勝利を喜び、涙を流した。

 

 

 

 




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