個性[超人]   作:2NN

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審判の日

 オールマイト達が戦っていた場所からドゥームズデイを遠ざけその後を追うローレル。いくら平和の象徴とは言えあのような状態のオールマイトが戦えるとは思えなかった。そうでなくとも辛い相手なのだ。

 

 地面へと乱暴に着地したドゥームズデイとは少し距離を置いて着地する。幸いなことに避難勧告が出ており上野区のオールマイトがいた場所の近くであればほとんどの人は逃げている。

 

 大声で威嚇をしながら路上の車を投げ飛ばしてくるドゥームズデイ。それらの車を避けながら距離を詰め思い切りを鳩尾を殴りつける。しかし怯む様子を見せないドゥームズデイが上から思い切り殴り地面に叩きつけられてしまう。倒れた体を蹴りを入れて追撃し仰向けへと倒れた。

 

「くっ!」

 

 フラフラと立ち上がりながらもドゥームズデイの拳をなんとか避け体に蹴りを打ち込む。まともに食らったその巨体は近くのビルへとぶつかるがやはり怯む様子は見せず再び向かってくる。

 

「効いてない?」

 

 その耐久力に呆れながらも攻撃は回避しカウンターで脇腹を殴りさらに顎へと一発入れる。生き物の弱点は大体体の中心にある。顎は衝撃を与えると脳が揺れて脳震盪が起こるのだが

 

「うっ!」

 

 顔面を鷲掴みにされることでそんな事はないことがわかった。

 

「グオオォォォォ!!」

 

「ぐっ!がっ!げほっ!」

 

 頭を掴まれたまま反対の手で腹を何度も殴られる。数発殴られてからは内臓にダメージが入り吐血してしまう。

 

「いい加減に・・・しろ!」

 

 ヒートビジョンを使いドゥームズデイの体を吹き飛ばす。その際にでは離れローレルの体は自由になった。しかし地面に吸い寄せられているのかと勘違いしてしまうほど体が重い。

 

(でも倒れてるなら今がチャンス!)

 

 倒れるドゥームズデイに追撃を仕掛けるため飛びかかるがその巨大な脚によって蹴り飛ばされる。

 

(車の持ち主の人ごめんなさい!)

 

 近くの車を持ちドゥームズデイへと投げる。難なく腕で弾かれるがその後の隙をついてローレルの拳がドゥームズデイの体を捉え地面に倒す。片手で起き上がる体を抑え反対の手で顔の中心に拳をぶつける。

 

(攻撃痛いし相手は硬いしで本当に最悪。早く倒れて欲しいんだけど!)

 

 そう思いながらも攻撃の手は止めないがドゥームズデイは無理に起き上がるのをやめ自分の上に乗っているローレルの体を掴むと適当な方向へと投げてどかす。投げられたローレルは転がりながらも立ち上がる。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

 

「グオオオオオオ!!!」

 

「くっ!」

 

 先ほどよりも早く動くドゥームズデイ。その動きに合わせてローレルはカウンターを放つ。だがあと少しという所でドゥームズデイの顔へと向かう拳が避けられる。その動きに驚愕するが、驚いたその短い時間にドゥームズデイの拳は軌道を変え頬を捉える。

 

(読まれた!?いや・・・もしかして学習した?)

 

 転がりながらもそんなことを考えているローレル。ようやく止まった所で上からドゥームズデイが迫ってくる。

 

(やばっ!避けられない!)

 

 巨体により体重を乗せたのしかかりは地面をたやすく陥没させるほどの威力を見せた。

 

「こんなところでやられるな。」

 

「よかった無事だったんだね!?」

 

「こっちのセリフだ。」

 

 だがドゥームズデイの足元にローレルはおらず、その直前で自称弟がローレルを助けていた。全身の所々から血が流れてはいるが軽傷であることはわかった。

 

「今はあいつをどうするかだ。」

 

「でもオール・フォーワンに逆らったら・・・」

 

「逆らってない。俺も襲われるから対処するだけだ。それにあいつは倒されるんだろう?」

 

 不敵な笑みを浮かべながらそうローレルへと返す。オールマイトを信じているわけではない。オールマイトを信じているローレルを信じていた。

 

「そうだね。二人ならいけるかも。」

 

「だといいんだがな。」

 

 ローレルを持ちなが飛んでいるがその背後からはドゥームズデイが追いかけてくる。巨体が背後から迫ってくると言う恐ろしい光景だった。ヒートビジョンを使いドゥームズデイを怯ませその間にローレルを降す。

 

「私が抑えるよ。」

 

「なら俺がその隙を突く。」

 

「深追いはダメだからね。」

 

「分かってる。」

 

 怯んだドゥームズデイに近づき足払いをしてその巨体を地面へと倒す。そこへ空中から高速で落下し轟音をその巨体に着地する。ドゥームズデイの腕が男へと向かうがそれを空中に飛んで回避し入れ替わるようにして今度はローレルが現れヒートビジョンを放つ。

 

 腕で体へと当たる部分を隠しながらなんとか耐えていると言う状態のドゥームズデイ。

 

「離れろ!」

 

 その声とともに背後からタンクローリーが現れドゥームズデイへと落下する。衝撃で中に入っていたガスが爆発しドゥームズデイを飲み込んだ。燃え上がる炎による熱と爆風が二人を襲うが二人にとってはこの程度ならば大した問題ではなかった。

 

「グオオオオオオ!!!」

 

 それは直撃をした向こうも同じことで叫び声を上げてタンクローリーを破壊して外へと出てくる。その際炎の中でパキリという音がなっていることに二人は気がついた。

 

「・・・あれ何?」

 

「・・・俺に聞くな。」

 

 ドゥームズデイの体の表面が少しずつ崩れ始めていた。先ほどよりもさらに少し体が大きくなったように見えるが一番変わった点といえば身体中から生えていたトゲがさらに大きくなっており、生えていなかった場所にまで新たに生えていた。

 

 ドゥームズデイはローレル達もよく知る目から放つ赤い熱線、ヒートビジョンを空中へと放ちながら大きく吠えた。

 

「・・・ほんと最高。」

 

 こちらを睨みつけるドゥームズデイ。大きくジャンプして二人の元へと迫ってくる。ローレルもドゥームズデイの動きに合わせてタイミングを見計らい攻撃しようとする。しかし反応速度まで強化されているのか簡単に体を拘束されそのまま地面へと叩きつけられる。

 

 首を掴まれ動けないためヒートビジョンを放とうとするがその瞬間に頭を鷲掴みにされ掌で遮断されてしまう。後ろからその背中を攻撃しようとしていた男へと向かってローレルの体は投げられ二人の体がぶつかりそのまま地面へと倒れる。

 

「おお・・・」

 

 痛みに耐えながらも立ち上がりドゥームズデイへと向き直る。既に近くにいたドゥームズデイの腕をしゃがんで回避し反対の腕による攻撃も股下を潜って回避する。そのまま首へと手を回し呼吸ができないように締め付ける。

 

 背中へと回した手により体を掴まれ引き剥がそうとされるが全力で抵抗を続けるローレル。

 

「ああああああ!!」

 

 ドゥームズデイの指が体へとめり込み強烈な痛みに襲われるがそうして時間を稼ぐ。そこを自称弟が現れドゥームズデイに思い切り拳骨を放ち地面へと体を沈める。一緒に埋まらないように手を離しており巻き込まれることはなかった。それもギリギリだったが。

 

「私も一緒に埋まるかと思った。」

 

「そんなことはないだ・・・ろ!」

 

 追撃とばかりに地面から出た頭を殴りさらに地面へと埋める。逆に地面が耐えられず大きな音を鳴らして穴を開けてしまう。その穴にドゥームズデイは飲み込まれいく。身動き取れなくさせるために地面へと埋めたようだが最後の一撃によって逆に自由にしてしまったようだ。

 

 仕方なく二人もその穴へと降りていく。穴の下は地下道になっておりとても狭いものだった。そんな狭い中で隣にいた弟は背後にいたドゥームズデイに殴られ体を壁に叩きつけられる。

 

 急いで振り返りドゥームズデイの拳を受け止める。反対の手で殴ってくるのも受け止め動きを封じるが、今度は力比べのようにして圧をかけられる。しかし体格の差が凄まじく上から体重をかけられてしまい押し返すことができない。

 

 右手の甲から伸びたドゥームズデイのトゲがローレルの顔へと近づく。じわりじわりと迫ってくるそのトゲは、力を抜けばすぐにでも貫いてきそうだった。そこへ先ほど壁へと叩きつけられた自称弟が戻ってきて片方の腕を掴む。

 

「体格を考えろ。」

 

「私も同じこと考えてた。」

 

 空いた手で二人が同時にドゥームズデイを殴り地上へと吹き飛ばす。地上へと放り出されたドゥームズデイを追って二人も一緒に外へと出る。外から先ほどの場所を見ると大きな穴が空いてしまっており申し訳ないと思ってしまうがすぐに頭を振って目の前の問題へと向き直る。

 

 頭から流れる血を無視してドゥームズデイへと向かう。口からも血が流れ相当なダメージを負っているがそんなことは言っていられないのだ。

 

『ご覧ください!突如現れたあの怪物を!これもヴィラン連合による差し金なのでしょうか?』

 

 上空を飛ぶ報道ヘリの明かりに照らされるドゥームズデイ。眩しそうに光を遮りながらも威嚇するその姿がカメラに収められ全世界へと発信される。苛立たしく思ったのか近くにあった瓦礫を持つとヘリへと向かって投げつける。

 

『避けて!』

 

 リポーターが操縦者へと叫び、すぐにヘリは回避しようと動く。しかし迫る瓦礫の方が動きが早くヘリの動きは遅いため間に合なかった。

 

 咄嗟に目を瞑り衝撃に備える報道陣。しかしいつまで経ってもその時がやってくることはなかった。恐る恐る目を開けるとそこには小さくも大きい一人の少女の背中。

 

「ここは危険なので早く逃げてください。」

 

「でも我々にはこのことを世間に伝える義務が!」

 

「それは命があってこそです。世間に伝えるのも大事かもしれませんが今は自分の命を最優先に考えてください。」

 

 この場を離れるように言ってドゥームズデイと戦っている自称弟の元へと降りる。しかし報道ヘリが去ることはなくその光景をカメラに移し続けていた。そんな報道陣に少し嫌気が差す。

 

「がああああああああぁぁぁ!!!」

 

 叫び声が空気を震わせビリビリと威圧感を与える。それでも怯むことなくローレルはドゥームズデイへと向かっていく。ドゥームズデイの拳を潜るようにして回避し懐へと入る。無防備となった顎へと飛び上がる勢いを利用してアッパーを放ち、浮いた体のままドゥームズデイの喉を蹴り体を吹き飛ばす。

 

 勢いよく吹き飛んでいく体へとのり顔に向かって何度も拳を振るう。しかしドゥームズデイも簡単にやられることはなく、ローレルの腕を掴むと今度はローレルの体を何度も地面へと叩きつける。近くにいた自称弟もローレルの体をバットのようにしてぶつけられ吹き飛ばされてしまう。

 

 世界がグルグルと回る中で訳も分からないまま襲いかかる痛みに耐え続ける。それが治まったのは数度目が十数度目か、振り回すのをやめビルに向かって投げられたことでようやく終わった。

 

 何棟ものビルを崩しながら飛んでいくローレルの体はもはや血を流している場所は頭だけではなく腕や胴体、足にまで至っていた。立ち上がろうと体に力を込めるがうまく力が入らない。少しずつ歩み寄ってくる姿に慌てるローレルだが、ドゥームズデイは途中で止まり近くの倒壊したビルを向く。

 

「ひっ!!」

 

 その方向からは小さな悲鳴が聞こえた。倒壊したビルの下には逃げ遅れた人がいたのだ。戦闘に集中していて全く気がつけなかったローレルはすぐに助けに行こうとする。立ち上がることができないため空を飛んでその場へといくと瓦礫に半身が埋もれた男の子がいた。視線はドゥームズデイの方を見ており大量の涙を流している。恐怖の声を上げないのはその恐怖が強すぎて逆に声すら出せなかったのだろう。

 

 瓦礫から助け出して回避では間に合わない、そう察してしまった。うまく力を込められない状況では確実に間に合うことはない。ならばと男の子を庇うようにしてドゥームズデイへと立ち塞がる。左の拳を振り上げて真っ直ぐとローレルへと放つ。自分は絶対に屈しないという思いで目を瞑ることはなく、逆にドゥームズデイを睨みつける。

 

「馬鹿が。」

 

 そう聞こえた後に目の前に弟が現れドゥームズデイの拳を体で受け止める。衝撃を背後へと流すことなく体一つで受け止める。一歩踏み出し今度はドゥームズデイに拳を浴びせて殴り飛ばす。

 

「大丈夫?!」

 

「平気だ・・・とにかくお前はそいつを安全な場所に送ってやれ。」

 

「でもそれじゃ!」

 

 ローレルの言葉を無視して瓦礫を持ち上げて子供を外へと出す。涙を流しながらもその顔にはあるのは絶望ではなく助かるという安心感だった。

 

「ありがとうお兄ちゃん!」

 

「・・・礼ならそっちのお姉ちゃんに言ってやれ。」

 

「うん!お姉ちゃんもありがとう!」

 

 純粋な感謝を向けられるがローレルは実際の所何もできておらず感謝の言葉は自分にはもったいないのではと思っていた。

 

「とにかくその子を連れて行け。俺は平気だ。」

 

「・・・分かった。すぐに戻ってくるから。」

 

 男の子を背負いすぐに空を飛んでいくローレル。その姿を見届けてドゥームズデイが飛んで行った方向へと向き直る。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

 二人の姿が見えなくなったことで胸を押さえてその場へと蹲る。今までは体が吹き飛ばされることで衝撃をある程度緩和できているのだが一歩も引くことなくその衝撃を体に受けたことでとてつもないダメージを負ってしまった。よろよろと歩きながらドゥームズデイの姿を探す。

 

(折れたか?だとすればもう・・・)

 

 そこまで考えて遠くでドゥームズデイの吠える声が聞こえた。まともに呼吸ができない中で動くことなど出来ないがそれでもゆっくりとした動作でも無理やり立ち上がる。動くたびに襲われる痛みと息苦しさ、そして少しずつ弱くなっていく鼓動。

 

 空から降りてくるドゥームズデイの姿。目の前に着地しこちらをじっと見つめた後に拳を振り上げる。俊敏な動きはもう出来ない。受け止める力も残ってない。振り抜いた拳が向かってくるが既に立つのも辛く目を開けることさえ難しかった。

(ありがとう・・・か・・・悪くないな。)

 

 飛んでいく体、不思議なことに痛みは無かった。目の前がゆっくりになる。明るくなり始めている空をじっと見つめて、ゆっくりと瞼を閉じ最後には心臓の鼓動が鳴り止んだ。

 

 

 

 

 

 オール・フォー・ワンを討ち取り決戦場になっていた市街地にはヒーローが集まり救出作業、報道陣がその様子を放送してきた。オールマイトの戦いを見ていた人たちは熱に浮かされ余韻に浸り近くの人たちとその想いを語り合っていた。

 

『次は・・・君だ。』

 

 カメラに向かって指を刺し放った一言。多くの人はその姿を見て折れない象徴だと、まだ見ぬヴィランたちへの布告であると思った。誰しもがそのオールマイトの姿を見て歓声を上げた。

 

 しかしその中に歓声を上げず周りとは違う様子を見せる少年、緑谷がいた。オールマイトの個性についての秘密を知っている彼だからこそ今の言葉は自分に向けての言葉。自分はもう出し切った、だから次は君なのだとそう聞こえた。

 

 思わず涙を流してしまう。拭っても拭っても涙は止まるどころか溢れるばかり。そんな様子を隣にいた爆豪はただじっと見ているだけだった。そんな時、

 

「この子の保護をお願いします。」

 

「君血だらけじゃないか!大丈夫か!」

 

 そんな物騒な話が聞こえた。気になった緑谷たちはその声のする方角を見ると頭や体から血を流しながら男の子を背負って飛んでいるローレルだった。その姿を見て人々は慌てているが騒がせている張本人は至って冷静に警察に背負っている子供を受け渡す。

 

「君も病院に連れていくからついてきなさい!」

 

「ごめんなさい。私にはまだやることがあるから。」

 

 警察が止めるが聞く耳を持たずすぐに体が宙へと浮く。

 

「ケントさん!」

 

 緑谷が周りの声にかき消されないほどの大きさでローレルのことを呼ぶ。その声により周りは全員黙り緑谷へと注目する。ローレルも例に漏れず緑谷へと向き、その近くには殴り飛ばされた切島を含めて先ほどまで一緒にいた四人も確認できた。

 

 緑谷の呼びかけに応えるようにして柔らかい笑みを浮かべてそのまま空へと飛んでいった。残った四人はローレルを追いかけるがそれとも警察に向かうか悩んでいた。

 

「追いかけよう。」

 

 緑谷の一声が嫌に耳に響いた。

 

「だが彼女は大丈夫だと・・・」

 

「大丈夫じゃなくてもそう言うのは飯田くんが一番知ってるでしょ?僕はいくよ。」

 

 そう言って緑谷は人混みをかき分けながらローレルが飛んでいった方向へと向かっていった。残された三人も緑谷の後を追う。それは触発されたからではない。全員がヒーローの心を持っていたからだった。




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