個性[超人]   作:2NN

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21人目の戦闘訓練

 

(大丈夫、これは戦いじゃない。大丈夫、大丈夫。)

 

『START!』

 

 No. 1ヒーローオールマイトの開始の掛け声とブザーによって訓練が開始した。建物の見取り図を頭にたたき込んだローレルは外からビルをじっと見つめる。その様子をモニタールームから見ている生徒たちは彼女がいでたい何をしているのか分からない。

 

「あれ何してんだ?」

 

「じっと見つめているだけよね?」

 

「オイラもあんな視線で見つめられたい!」

 

 やがてビルから視線を外し入り口から中へと入る。一戦目の二人の行動を見ていることから、障子が音を頼りに自分を索敵していることは分かっている。なので音を立てないように宙に浮きゆっくりと進む。早く進めば風で服がなびく音が聞こえてしまう可能性があるからだ。

 

 4階に核を設置しそれを守る轟チーム。障子は早速耳を複製しローレルが発する音を聞き取ろうとする。

 

「悪い轟、何も聞こえない。動いていないのかそれとも音を殺して動いているのかどちらもわからない。」

 

「いや、いい。お前はそのまま続けてくれ、下手すると一瞬で勝負をつけられる可能性がある。それにあいつは体力テストの時に飛んでた。原理は知らないがそれに関係しているかもしれねぇ。そうなると俺の氷じゃ倒せるか怪しい。」

 

 50m走の圧倒的な速さや持久走の飛んでいる姿を見ているため考えすぎて困ることはないだろう。音を聞き取ることも叶わず何をしてくるのかもわからない相手に二人はただ警戒を強めるだけだった。唯一対策できたことといえば窓のない部屋にした事ぐらいだ。窓から核を確認されて一気に突入、そのまま回収で敗北になってしまう。そのため四方が壁に囲まれていて入り口が一つしかない部屋になった。

 

 訓練が開始してから八分ほどが経った。障子の索敵はすぐに身を結んだ。下で扉を開ける音が鳴り続けているのだ。一部屋一部屋確認するように扉は開かれ、その部屋に核がなければ次の部屋という風に。

 

 自分達の今いる四階のすぐ下である三階までは全ての部屋が開かれた。次はついに四階が来ると確信した二人は扉を警戒する。開いた瞬間には氷漬けにする勢いで轟はの時を待ち、障子は音を絶対に聞き漏らさないように意識を集中させる。目の前の扉に集中していたことで後ろが疎かになってしまっていた。

 

 最初に気がついたのは音による索敵を行なっていた障子だった。背後から何かが焼ける音が聞こえたため振り返ってみれば核の周りを赤い光が円を描くように回っていた。一体何が起こっているのか分からなかったため少しの間動きが止まってしまった障子だったが、すぐにこの状況ならローレルが何かしているということに思い至り轟に声をかけて核へと走り寄る。その声に轟も反応し個性を使って地面を凍らせる。

 

 だがそれもすでに遅く、核が置かれている床が円形にすっぽりと抜け落ち下の階へと落ちていった。穴を除けば下でローレルが核を両手で持っている姿を確認した所でヒーローチームの勝利が告げられた。

 

「すまない轟、俺がもっとしっかりしてれば。」

 

「いや、お前は悪くねぇ。」

 

 障子は自分のせいだと謝り轟はそうではないと言う。自分よりも上の存在がいることが気に入らないわけではないが今回はまんまとしてやられた。だからこれは二人の責任だと轟はそう思っていた。

 

 モニター室ではあっさりと終わってしまった訓練の様子をただじっと見ていた。三人が戻ってきたことで講評が始まる。

 

「ケント少女、見事だったな。空に飛んでゆっくり移動するのも障子少年に見つからないためだったんだな。でもどうして核の場所が分かったんだい?」

 

 その場にいた全員が頷きながら興味津々に答えを求めてきている。ローレルとしても別段隠すことでもないため答えることにした。

 

「私には透視能力があるのでビルに入る前に核の場所を見てたので場所はすぐに分かりました。」

 

(((本当に何でもありか!)))

 

「透視能力!透視能力!」

 

 全員が心の中でツッコミを入れる中1人だけ透視という部分にやけに反応する生徒がいた。名前は峰田実。人よりも小さな性格にぶどうののような頭をしている。その性格は性欲を具現化したかのような存在で基本的に欲望に忠実。

 

「透視能力って言っても服とかを透視するんじゃなくて肉を通り過ぎて骨とか内臓が見えるようになるだけだから君が考えてるようなことにはならないよ?」

 

「チクショォォォォ!!!」

 

「・・・最低。」

 

 透視能力の実態を知って峯田はガチ泣きした。男の夢が詰まってるなんて嘘だったんだぁ!と叫びながら。

 

「もしかして障子少年が個性で音を頼りに索敵しているのをさっきの訓練を見てちゃんと覚えてたのかい?」

 

「はい。音でバレるとなると真下の部屋に入っただけだとドアでバレると思ったので探してるフリをして扉を全部開けた後に静かに真下に入りました。」

 

 戦うことを恐れているローレルはどうにか戦わなくて済む方法を考えた。このやり方を実行したのは成功すれば一気に決着がつくから。そして相手を傷つける必要がないから。核が落ちてくる前に相手に捕まってしまえば戦闘になってしまうため他にも手はあったとは思っているが建物に無駄な被害を出さずに戦うことも避けるならばあの方法が早かったと思っている。

 

「目からビームとかお前の個性は小学生が考えた最強個性かよ!」

 

 またしても全員が同時に頷く。核を床ごと下に落としたのはヒートビジョンというもので高熱なビームを放つ事ができる。これにより簡単に回収する事ができた。どんどん新たな能力が出てくるびっくり箱のようなローレルにもはや全員何があっても驚かなくなってしまいそうだ。

 

「核の扱いが雑に感じてしまうがおそらく君だからできたことだ。戦わずに核を回収するのは簡単なことじゃない。ビルに穴は開いてしまったが最初の訓練としては及第点だな。」

 

 みんながローレルに対する講評を熱心に聞いている中、爆豪が一歩引いて聞いていた。モニターから見た今の訓練は自分との差を思い知らされるには十分だった。

 

「お疲れさん!緑谷少年以外は大きな怪我もなし、しかし真剣に取り組んだ!初めての訓練にしちゃみんな、上出来だったぜ!」

 

 笛の音とともに全員の訓練も終わり再びグラウンドβへと集合したA組、そこにサムズアップしながら全員を褒めるオールマイト。生徒の一人であるカエルっぽい見た目の少女蛙吹 梅雨、個性はカエル。カエルっぽいことならなんでも出来る蛙吹が手を上げて相澤との授業を知っているため拍子抜けだったと述べる。みんなも同じことを思っていたのか頷いている。

 

「真っ当な授業もまた、私たちの自由さ!それじゃあ私は緑谷少年に講評を聞かせねば。着替えて教室に、お戻りー!!」

 

 という言葉を残して猛スピードでその場から走り去るオールマイト。遠くなっていく生徒たち、中でも爆豪を見て後でしっかりカウンセリングしようと思いながら見えなくなっていく。

 

 遠くなるオールマイトの背を見送りA組は先ほどの訓練の感想や反省などを話しながら戻っていった。

 

 

 

 

「ん・・・」

 

 目が覚めたら白い部屋、訓練が終わった直後に倒れたことを思い出し今自分が保健室にいることを察した緑谷。ふと時計を見ると四時ちょっと前、すでに夕方になっているのがわかる。

 

「目が覚めたのかい?」

 

 突然視界に現れたおばあさんに驚いた緑谷。保健室にいるならこの人がいるのは当然だと思いすぐに冷静になる。リカバリーガール、個性は癒し。対象者の治癒力を促進して怪我を治す。ただし治癒には体力が必要なため怪我の大きさによって必要な体力は大きく変わり、最悪死ぬ可能性がある。

 

「少し怪我しすぎだよ。」

 

 そう言って緑屋に向かって口を伸ばし治癒力を活性化させていく。基本的に怪我などはすぐに治るのだがリカバリーガールは怪我が全回復する前に治癒をやめてしまった。

 

「体力が足りないね。昨日も治した上に訓練後だから仕方ないか。今日の治療はここまで。明日も来るんだよ、いいね?」

 

「・・・はい。」

 

 そう言って緑谷は保健室を出た。服装は訓練時のコスチュームなためアームホルダーを右腕に装着して固定しているせいで着替えるのが大変そうだ。しかしそれよりよ午後の授業をすっぽかした事を気にしていた。相澤先生の何を言われるのかたまった物ではない、ため息が漏れるのは仕方がないだろう。

 

「おお!緑谷きた!お疲れ!」

 

 教室に入ると赤い髪の男子がそう声をかけてきた。それに伴い他の生徒も続々とやってくる。

 

「いや〜何喋ってっか分かんなかったけど、暑かったぜおめぇ!」

 

「入試一位の爆豪と互角に渡り合うなんてなぁ!」

 

「よく避けたよ!」

 

「一戦目であんなのやられたから俺らも力入っちまったぜ!」

 

「エレガントには程遠い「よく避けたよ!」」

 

「え?え、ええ!?」

 

 訳がわからず反応する事が出来ていない緑谷。すると一番前にいた赤い髪の男子が自分を指差しながら自己紹介を始める。

 

「俺は切島 鋭児郎、今みんなで訓練の反省会してたんだ!」

 

「俺、瀬呂 範田。」

 

「僕は青山「私!芦戸三奈!よく避けたよぉ〜!」

 

「蛙吹 梅雨よ、梅雨ちゃんと呼んで。」

 

「俺、砂藤。」

 

「オイラは峰田!」

 

 たくさんの生徒が一斉に自己紹介をしているため緑谷はどう返せば良いのか困っていた。そこにノートを持った麗日も教室へと戻ってきた。緑谷は教室を見渡した事で爆豪がいないことに気がついた。事情を聞くと先に帰っていったとのこと。

 

『なぁおい、俺を騙してたんだろ。』

 

 訓練中に爆豪に言われたコトを思い出し緑谷は教室を出て爆豪を追いかけた。

 

(あれ?確か緑谷だっけ?起きたんだ。)

 

 途中で反省会もそこそこに帰ろうとしていたローレルの横を通り過ぎる緑谷、爆豪を追いかけることに必死になっていたのか全く気がつくことはなかった。玄関を抜けると爆豪が帰っていく背中が見えた。

 

「かっちゃん!」

 

「あぁ?」

 

 駆け寄りながら声をかけると不機嫌そうな声と顔でこちらへと振り返る。ワン・フォー・オールを受け継いでからかなり遅かったが個性が発現したことを母に説明した。だが爆豪にはそれを伝えることはしておらず入学するまでずっと言えていなかった。それ故の騙していたという発言。緑谷は爆豪に弁解をしたかった。自分の母親にすらは言ってはいない秘密だが真面目な緑谷は伝えなければと思ってしまった。

 

「これだけは君には言わなきゃいけないと思って。僕の個性は人から授かった物なんだ。誰かからは絶対言えない、言わない。コミックみたいな話だけど本当で。おまけにまだろくに扱えもしなくて、まだ全然物にできてない状態の借り物で、だから使わず君に勝とうとした。」

 

 爆豪は緑谷の要領を得ない会話にイラついていた。目は細くなり体は怒りで震え今にも爆発しそうな雰囲気を纏っている。緑谷は下を向いたまま喋っているためそれに気がつくことはなかった。

 

「けど結局勝てなくてそれに頼った。僕はまだまだで、だから、だから・・・いつか、この個性をちゃんと自分のものにして僕の力で君を超えるよ。」

 

 爆豪をしっかりと見据えて緑谷は自分の思いを語った。だが語り切った後に緑谷はハッとした。

 

(騙してたんじゃないって言いにきたのに、何を僕は。)

 

「なんだそりゃ?借り物?分け話間ねぇこと言って、これ以上コケにしてどうするつもりだ。あぁ?だからなんだ、今日俺はてめぇに負けた。そんだけだろうが、そんだけ!」

 

 その体と声は先ほどとは別の意味で震えていた。今まで自分よりもすごい相手などいなかったために膨れ上がった自尊心。それが雄英に来てボロボロに崩れ去った。

 

「氷の奴見て敵わねぇんじゃって思っちまった。くそ!ポニーテールの奴の言うことに納得しちまった!金髪の個性がすげぇって思っちまった!くそ!くそくそ!なぁテメェもだデク!こっからだ!おれはこっから、いいか!おれはここで一番になってやる!」

 

 目には涙を浮かべていた。初めての敗北により傷ついたプライドだったがその敗北を糧にして爆豪はすでに前を向いていた。涙を袖で拭きながら爆豪は背を向けて歩き出す。

 

「俺に勝つなんて二度とねぇからな、くそが!」

 

 張り詰めた空気で息が止まりそうになっていた緑谷はそこで力が抜けた。そこに背後からいた〜!と言う声とともに猛スピードでオールマイトが通り過ぎていった。

 

「爆!豪!少年!言っとくけど、自尊心ってのは大事なもんだ。君は間違い無くプロになれる能力を持ってる。君はまだまだこれから」

 

「離してくれオールマイト歩けねぇ。言われなくても俺はあんたをも超えるヒーローになる。」

 

(あれ?立ち直ってた。教師って難しい。)

 

 帰路へとつく爆豪とその背中を見つめ続ける緑谷。一度勝利した程度で超えたとは思わない。これからも変わらず背中を追うだけだと、自分はまだ追う側だとしっかりと理解していた。

 

「緑谷少年、爆豪少年と何を離していたんだい?」

 

 その言葉で自分が人から個性を授かったと言うことを話してしまったことを思い出した緑谷は言葉に詰まってしまった。オールマイトとしても重大な秘密であるが故にしっかりと話をしておくべきだと思っている。

 

「ん〜気になるねぇ。詳しく聞かせてもらおうか。」

 

「あ、あの!じ、実は・・・」

 

「オールマイト先生さよなら。」

 

「ああ、さようならだ!」

 

 その横を通り過ぎていくローレル。オールマイトも普通に挨拶を返したが少しして凄まじいスピードで振り返る。

 

(ケント少女!もしかしてさっきの会話聞いてた!?)

 

 急いで走り寄り方に手を置くオールマイト。ローレルが振り返ると顔からたらりと汗を流したNo. 1ヒーローがいた。

 

「ケント少女!もしかして緑谷少年と爆豪少年の会話聞いてた?」

 

「?聞いてました。正しくは聞こえちゃったですけど。」

 

「何か気になる点とかあった?」

 

「気になる点?うーん特にないですけど何かあったんですか?」

 

 頭をひねりながら先ほどの会話を思い出していたローレルだが不審な点などは特になかったのか素直に答える。

 

「そうか、ならいいんだ!気をつけて帰りなさい!それじゃ!」

 

「はい、それじゃ。」

 

 緑谷へと戻っていくオールマイト。その背中をなんだったんだろうと思いながらも自分の家へと向かって歩みを進める。その背後では重要な部分は聞かれていなかったのだなと胸を撫でながら一安心するオールマイト。

 

(にしても他人に渡せる個性があったなんて知らなかった。まだまだわからない事がいっぱいだね。)

 

 実際個性を受け渡しする個性などほとんどないに等しいのだが、個性に関する知識が明らかに欠けているローレルはその点に不信感を抱くことはなかった。

 

 

 

 

 それから数日後、オールマイトの言っていた真に賢しいヴィランの恐怖を知ることとなる。

 

「見たかこれ、教師だってさ。」

 

 とあるバーにて、オールマイトが雄英に教師として務める事が記載されている新聞を読んでいる全身黒服の男。顔には手の形をしマスクを被っており頭や肩にも白い手の装飾をついている。カウンター越しには白いワイシャツに黒のベストを着た頭が靄に覆われているバーテンダー。そして他の席には黒い肌に覆われた盛り上がった筋肉、ギョロリと開いた瞳に爬虫類のようなクチバシ。そして何より目につくのがむき出しになった脳。

 

「なぁ、どうなると思う?平和の象徴が、ヴィランに殺されたら。」

 

 悪意の芽が生まれようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 




 誤字、脱字が多いと思います。申し訳ありません。
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