オールマイトが雄英の教師に就任したというニュースは全国を驚かせ、連日マスコミが押し寄せる騒ぎになっていた。誰もがそのことを知っている、[誰もが]
それによって雄英の正門には多くのマスコミが立っていた。勿論オールマイトへの取材のためだ。登校してきた生徒たちを呼び止めては取材を繰り返し。よく分からない答えをする者もいればきっちりと返してくれる生徒もおり、述べた言葉は様々だった。
見かねた相澤がその対応として今日はオールマイトが非番だと告げて中へと戻っていく。当然自分達を追い払うための嘘だと思ったマスコミは聞く耳を持たない。
「先生おはようございます。」
「ん?ああケント、おはよう。」
ちょうど校舎へ入ろうとやってきたローレルが同じく校舎へと入ろうとしていた相澤と会った。
「朝から賑やかですね。」
「全くだ。よくもまぁオールマイトさんはこんな中で仕事ができるな。」
そんな話をしていると背後から大きな物音が鳴る。振り返れば正門には壁ができておりバリアのように入り口を塞いでいる。勝手に中に入ろうとしたんだなと察した二人はそれを気にすることなく校舎へと姿を消していった。そしてホームルーム
「昨日の戦闘訓練、お疲れ〜。VTRと成績見させてもらった。爆豪、お前もうガキみたいな真似するな。能力あるんだから。」
「分かってる。」
名指しで呼ばれた爆豪はなぜ呼ばれたかを自覚しているため、目を逸らしながらも返事をする。
「で緑谷は、また腕ぶっ壊して一件落着か。個性の制御、いつまでもできないから仕方ないじゃ通させねぇぞ。俺は同じことを言うのは嫌いだ。それさえクリアすればやれることは多い、焦れよ緑谷。」
「はい!」
名前を呼ばれた緑谷も勿論何を言われているのかを自覚している。俯いて相澤の言葉に備えるが届いたのは先を見据えた言葉。現状さえ打破してしまえば先へと進みやすくなる。相澤なりの鼓舞に緑谷は大きな返事を返した。
「ホームルームの本題だ、急で悪いが今日は君らに」
(((また臨時テスト!?)))
以前も臨時でテストがあったのか全員は相澤の言葉に身構えるが
「学級委員長を決めてもらう。」
(((学校っぽいのきた〜。)))
途端に教室中から自分がやりたいとの声が聞こえて来る。普通の高校であれば実務というイメージがあるかもしれない。だがヒーロー科では集団を導く素地を鍛える事ができる重要なポジションとなる。
「静粛にしたまえ!」
突如飯田が立ち上がりながら大きな声を上げる。
「他を牽引する責任重大の仕事だぞ。やりたいものがやれるものではないだろう。周囲からの信頼あってこそ務まる聖務。民主主義に則り真のリーダーをみんなめ決めると言うのならこれは投票で決めるべき議案。」
飯田の言うことは尤もだった。ただの委員長ならいざ知らず、ここにいるのはいずれヒーローとなる身。まだ学生と言えどこれからの経験は全てヒーローになる道筋となる。そこで前に立てる人物は信頼あってこそ。民主主義に則ると言うのも的を得ている。
「「「腕そびえ立ってるじゃねーか!」」」
だが口ではそんなことを言いつつ飯田も本心では自分がやりたいと思っていたのかその右腕は誰よりも高く天に向かって伸びていた。
「なぜ発案した?」
「日も浅いのに信頼もクソもないわ、飯田ちゃん。」
「そんなんみんな自分に入れらぁ!」
人間関係がいまだに構築しきっていない中での信頼などよっぽどでなければ得ることなどできない。
「だからこそここで複数票取った者こそが真にふさわしい人間ということにならないか?どうでしょうか先生?」
「時間内に決まればなんでもいいよ。」
飯田の問いに答えた相澤はすぐに寝袋へと入ってしまいそのまま横になってしまった。
「ありがとうございます。」
こうして飯田の勢いと相澤の了承で学級委員長を決める方法は投票になった。全員の投票が終わり次に誰に何票入ったかが計算される。その結果一番投票が多かったのは
「僕三票!?」
「なんでデクに!?誰が!?」
緑谷が三票と一番多く投票されていた。その結果に爆豪が異議を唱えるが近くにいた瀬呂にお前に入れるよりはわかると言う発言で、爆豪のヘイトは瀬呂へと向いた。そして発案した飯田といえば
「一票!まさか誰かが入れてくれたとは!ありがたい!一体誰が!」
「他に入れたのね。」
「お前もやりたがってたのに、何がしたかったんだ?飯田。」
あれだけやりたがっていた飯田は真面目にも自分に入れると言うことはせず他人に入れたようだ。そして飯田本人は自分に一票が入っていたことに感動している様子。二番目に票が入っていたのは二票の八百万。
委員長と副委員長が決まった事で二人が前に並び立つが緑谷は緊張のあまり全身がガタガタと震えている。その様子を見て悔しいと小さく漏らした八百万だった。
午前の授業も終わりローレルは食堂へと来ていた。入り口には[LUNCHRUSHのメシ処]と言う看板があり言葉の通りクックヒーローランチラッシュが安価で昼食を作ってくれる。
相変わらず大量の生徒がこの食堂を利用している。雄英にはヒーロー科の他に普通科、サポート科そして経営科があるためたくさんの人だかりとなってしまうのは仕方がない事だ。
空いている席に適当に座りランチラッシュによる料理を堪能する。今日はカレーが食べたいと言う気分だったため迷いなくカレーを選んだ。味、匂い、見た目の全てが最高峰であるランチラッシュの料理はどれも美味しいのだ。するとそこで非常時のベルが鳴り始め校内放送が流れる。
『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外に避難してください。』
セキュリティ3というのはよく分からないがやばそうだと思ったローレルは席から立ちその場から離れようとする。だがそこで入り口は人がごった返しており流石に通れるような状況ではなかった。なのですぐに引き返し、遠回りになるが別の道から食堂を抜けた。
食堂から離れる際に外を透視で見てみるカメラやマイク、メモ帳などを持った人が多くいたためおそらくマスコミが中に入ってきた事のだろうと思った。ローレルの能力の一つに聴覚を鋭敏にさせる事ができる能力がある。
試しに強化された聴覚を使って外の様子を探ると、教師たちがマスコミの対応をしている様子が聞こえてくる。これならすぐに収束するだろうと聴覚の強化を止めようとした時、ローレルの耳にはそれとは別の声が聞こえた。
[ここの教師も馬鹿だな、目先だけ見てるから俺たちみたいな奴らに侵入される。]
という言葉を。それを聞いたローレルはすぐさま音のする場所へと向かっていく。到着した場所は職員室。中を除けば明らかに怪しい二人組がそこにはいた。携帯電話を手に取り相澤へと連絡を取る。マスコミの対応中のため電話に出るのに時間がかかった。
「もしもし相澤先生。今大丈夫ですか?」
『どうしたケント?この騒ぎならマスコミだ、すぐに収まる。』
言外に今は忙しいから後にしろと言われているような気がした。だが直接は言われていないためこのまま話を続ける。
「それならいいんですけど、一ついいですか?実は今職員室の前にいるんですけどなんか中に上下真っ黒の格好をしてて全身に手がくっついてる人と体がモヤに覆われてる人がいてですね。その人達が侵入したみたいな会話をしてたんですけど。」
『なに!?分かったすぐそっちに向かう。ケント、間違っても手を出すなよ。』
「了解。」
明らかに怪しい人物たち校舎の中に紛れ込んでいる事が発覚した相澤はマスコミの対応をプレゼントマイクへと押し付けて急いで職員室へと走った。下手に足音を立てると侵入者たちに気がつかれるかもしれないため足音は最小限に。
職員室の近くには先ほど電話をかけてきたローレルがおり相澤に気がついたことで手招きをしている。
「まだ中にそいつらはいるか?」
「はい、何かを探していたようだったんですがついさっき見つけたみたいです。」
目的を達成されれば逃げられてしまう。そう思った相澤はすぐさま職員室へと突入した。中にはローレルが言っていた通りの特徴をした二人組がおり何かの紙を見ていた。
「お前らここでなにをしてる?」
「うわ、見つかっちゃった。マスコミはなにしてんだよ。そこの教師もサボってないでマスコミの対応しに行けよ。」
「悪いがこっちも俺の仕事の内だ。」
その声とともに相澤は自身の首に巻いている布を手に塗れた男へと飛ばす。男は逃げるどころか逆に布を掴みにかかる。掴まれた布は男の個性によるものか段々と塵になっていく。
それを見た相澤の髪は逆立ち目を見開く。自身の個性である抹消が発動した合図だ。それにより布が塵へとなっていくのは止まった。
「個性が止まった?何をした?」
「素直に答えると思うか?」
「死柄木弔!ここは引きましょう!目的は果たしました!」
「ああ、そうしよう。ヒーローは殺すけど今じゃない。」
すぐ目の前にヒーローがいるというのにこの場から逃亡する話をしている二人。それを相澤が許すはずもなく今度は黒いモヤを纏っている人物に対して目線を向ける。それにより個性が発動できなくなった事で黒いモヤはだんだん消えていく。
「邪魔すんなよ。」
そう言って先ほど死柄木弔と呼ばれた人物は机にあった大量のプリントを相沢へと投げつける。飛び散るプリントにより相澤の視界が隠れた事で黒いモヤが再び現れ二人はその姿を消した。
「ちっ!逃したか。」
ここに来た時二人組は紙を見ていた。先ほどプリントを放り投げた時にその紙も一緒に投げつけておりどの紙を見ていたのかは分からない。
外からはパトカーのサイレンが聞こえてきており、直にマスコミの対処に取り掛かることだろう。
「外のマスコミはこれで治るな。とりあえず教室に戻れ。だがその前にケント、まだ覚悟は決まらないか?」
何がとは聞かないし答えない。
「ヒーロー科に所属してる以上できればお前にもヒーローになってもらいたいと思ってる。お前の力は人を救える、少なくとも俺たちはそう思ってる。よく考えておけ。」
「・・・はい。」
自身の強すぎる力を完全にコントロール出来ていないため逆にヒーローへの道を目指せないでいる。入学してからローレルは誰とも触れ合うことはなかった。仲良くなった人たちが離れていくのが、傷ついてしまうのが恐しかった。それにより友達を作る事はなく不用意に他人の心へ踏み込む事はなかった。
緑谷とはまた違った問題、常に超パワーが振るわれる可能性があるローレル。その危うさにより教師たちの中でも遠巻きにされている。誰よりも優しく誰よりも臆病である彼女は自分からは踏み込むことはない。それを分かっている相澤はどうにかしてやりたいと思っていた。
「取り敢えず今は教室に戻れ。」
「分かりました。」
そう言って教室へと戻っていく。その後ろ姿は寂しく触れれば壊れてしまいそうな危うさがあった。
それから午後になり普通通りに授業が再開した。午前のホームルームでは委員長と副委員長が決まった。午後からは他の委員長を決めることになる。仕切るのは委員長となった緑谷、相変わらず声は震えており緊張している様子が見て取れる。
「けどその前にいいですか?委員長はやっぱり飯田天哉君がいいと思います!」
緑谷は委員長の座を飯田へと受け渡した。食堂でパニックが起こる中生徒を落ち着かせるため身を挺して動いた。その姿は率先して人前に立って先導するリーダーだった。飯田は緑谷から委員長の座を譲り受け全力で果たす事を約束した。
ちなみに緑谷の隣にいた副委員長の八百万は完全に空気だった。
「今回の騒動、マスコミだけで起こされた者とは思えない。何者かの思惑があると確信してる。相澤くん。」
「はい。」
生徒たちが帰宅した後、教師たちは会議室へと集まり今日の出来事について話し合っていた。仕切っているのはネズミのような見た目をしている校長根津だ。個性、ハイスペックにより動物であった身でありながらも人間以上の知能を持った類い稀な個性だ。その根津の声に応えるように相澤が返事をして立ち上がる。
「今日の昼ごろ外でマスコミの対応をしていたら生徒の一人から職員室に侵入者がいると言う知らせを聞き俺がすぐに急行しました。中には黒い服を着ていて全身に手の装飾をした白髪の男、名前は死柄木 弔と呼ばれていました。そして顔がモヤに覆われているもう一人の人物、名前は不明。この二人組と遭遇、戦闘になるも取り逃しました。」
「何か目的は?」
「職員室に入った時に奴らは何かの紙を見ていました。その後逃亡する直前に目的は果たしたと言っているためおそらくその紙を見ると言うのが目的だったかと。」
相澤の説明に教師たち全員が、昼終わりの職員室を思い出す。その惨状は教師全員が見ているのだ。いたる場所へと散らばったプリントを全て回収するのはなかなか骨が折れる。
「奴らはヒーローを狙ってる。相澤くんの話を聞いただけでそれはみんなも分かったと思う。みんなも警戒してほしいのさ。」
「「「はい!」」」
根津の言葉に教師たち全員が返事をして会議は終了となった。これだけで終わるとは思えない、必ず何か仕掛けてくる。根津と相澤はそう感じていた。
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