個性[超人]   作:2NN

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水難ゾーン

「13号にイレイザーヘッドですか。先日いただいた教師側のカリキュラムではオールマイトがここにいるはずなのですが。」

 

「どこだよ、せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさぁ。オールマイト、平和の象徴がいないなんて。子供を殺せば来るのかな?」

 

 黒いモヤから次々と現れるヴィランたち。何の目的で雄英に攻めてきたのかは不明。だが次から次へと現れるヴィランの数はあまりにも多すぎる。何もないわけがない。

 

「先日侵入したくそ共だ。」

 

 そう言ってマスクをかけたイレイザー。首に巻いた布を大きく広げる。

 

「ヴィラン!?馬鹿だろ!ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」

 

「先生侵入者用センサーは?」

 

「あるにはありますが・・・」

 

 USJの製作者である13号の言葉でセンサーが正常に作動していないとたどり着く。

 

「現れたのはここだけか、学校全体か。なんにせよセンサーが反応しねぇなら、向こうにそう言うことができる奴がいるってことだ。校舎と離れた隔離空間、そこにクラスが入る時間割、馬鹿だがアホじゃねぇ。これはなんらかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ。」

 

 轟はこの短い時間と少ない情報から現状についてまとめた。その言葉で全員に緊張が入る。用意周到であるならば向こうはこちらの対策をしている可能性がある。注意しなければならない。

 

「13号、避難開始。学校に電話倒せ。センサーの対策も頭にあるヴィランだ。電波系のやつが妨害している可能性がある。上鳴、お前も個性で連絡試せ。」

 

「ウス。」

 

 こちらへとゆっくりと近づいてくるヴィラン達。13号に避難を促し生徒の安全を確保させる。だがこれには一つだけ問題がある。全員がまとまって逃げるとなると敵は必ず追ってくる。だから誰かが殿にならなければならない。

 

「先生は!?一人で戦うんですか?あの数じゃいくら個性を消すと言っても、イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛だ。正面戦闘は・・・」

 

 この問題に気がついた緑谷はいち早くイレイザーの心配をする。戦闘スタイルが正面からの真っ向勝負ではないためそうなるのも仕方がない。

 

「一芸だけじゃヒーローは務まらん。任せた、13号。」

 

 そう言って首に巻いた布を掴み階段を勢いよく飛び降りる。階段の近くには三人のヴィランが迎え撃つために前に出てくる。ヴィランのうちの一人が迎撃隊と言っていることからある程度チームとしては動いているようだ。

 

 イレイザーが走り寄ってくるところへ大間抜けと言いながら個性による遠距離攻撃を使おうとする。だが個性を使おうとしたのにもかかわらずなぜか三人とも使えず全員イレイザーの捕縛武器によって拘束され空中に投げ出される。そのまま三人それぞれの頭を同時にぶつけて気絶させられた。

 

 それを見た周りのヴィランたちがイレイザーの名前と個性を叫ぶことで全員に情報を共有する。異形型の一人が突っ込んでくるがイレイザーの個性では異形型の個性は消せない。だがその対策として近接戦闘と捕縛武器を巧みに使い異形型を投げ飛ばし、ヴィランたちにぶつけることで一度に数人ほど気絶させた。

 

 ゴーグルで視線を隠すことで集団戦において視線の先を読まれないようにする。これにより誰の個性が消えておるのかがわからず連携が遅れる。なおかつ近接戦闘にも長けているため下手に数で押すという策も通用しない。

 

 上では13号による生徒たちの避難がすでに始まっていた。緑谷はイレイザーのことが気になり最後まで残って見ていたのだが多対一こそ得意分野だったのかと分析を行なっていた。すぐに飯田によって声をかけられ緑谷は避難を開始する。

 

(雄英に侵入してきた奴らだった。あの時見ていた紙は今日のこの授業を知るためか。あの時介入してればよかった。)

 

 ローレルはイレイザーにあの時手を出すなと言われていたもののこのように責められるのだったら言いつけを破ってでも紙を見つける前に職員室へと入るべきだったと後悔した。

 

 生徒たちがUSJの入り口へと走っていく中突如目の前に黒いモヤが現れる。イレイザーは一瞬の瞬きの隙をついてワープという異動系の個性を持っている相手を逃してしまった。すぐに生徒たちの元へと戻ろうとするがヴィランによってそれは叶わない。

 

「はじめまして、我々はヴィラン連合。僭越ながらこの度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせて頂いたのは、平和の象徴オールマイトに息絶えていただきたいと思ってのことでして。」

 

 生徒たち全員に嫌な汗が流れる。オールマイトに息絶えてもらう、それ即ち死んでもらうということ。あの平和の象徴を簡単に殺せるわけがないと思いつつもわざわざ敵陣に来ている時点でその可能性がないとは限らない。

 

「本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるはず。ですが何か変更があったのでしょうか?まぁそれとは関係なく私の役目はこれ。」

 

 モヤは大きくなり何か仕掛けてくると踏んだ13号は指先を外し自身の個性であるブラックホールを発動しようとした。だが十三号の前に爆豪と切島が出てきて黒霧へと飛び込んでしまったため個性を使うことはできなかった。爆豪の爆破により辺りには黒い煙が立ち込める。

 

「その前に俺たちにやられることは考えなかったか!」

 

「危ない危ない。そう、生徒といえど優秀な金の卵。」

 

「ダメだ、どきなさい二人とも!」

 

 爆風によって消えたモヤが再び集まりはじめ再び同じ形へと戻った。黄色い目は細くなる。それを見た13号が先ほどは遮られたが再び何かしてくると感じたためすぐに二人に声をかける。

 

「私の役目はあなたたちを散らして、なぶり殺す!」

 

 すぐに生徒たち全員の体を半球体の形で覆われる。中では風が吹き荒れ一人、また一人とモヤへと吸い込まれていく。ローレルや障子は生徒を飛ばされないように自分の体を使って抑え飯田はエンジンを使ってすぐにその場から離れた。

 

「みんなああああああ!!!」

 

 

 

 

 モヤによって飲み込まれた後、緑谷は水難ゾーンへと飛ばされていた。上空から水の中に落とされヴィランに襲われそうになっていたところを蛙吹によって救出された。他には峰田のみがいたため水難ゾーンに飛ばされたのは三人だけだったようだ。安全確保のため水難ゾーンに一隻だけある船へと向かった。

 

「ありがとう蛙吹さん。」

 

「梅雨ちゃんと呼んで。」

 

 緑谷は蛙吹がいなければヴィランにやられていたかもしれない。蛙吹は命の恩人だった。相変わらず名前のちゃん呼びをお願いしてくる蛙吹。バスの中と同じようなやりとりをしていいた。

 

「あいつらはおそらく雄英のカリキュラムを知ってた。」

 

 この流れから考えて先日のマスコミの騒ぎはヴィランたちによるもので雄英高校が混乱している間に情報を得ていたと考えられる。

 

「でもよでもよ、オールマイトを殺すなんでできっこねぇさ!オールマイトがきたらあんな奴らけちょんけちょんだぜ!」

 

 両腕を交互に突き出しパンチを繰り出す峰田。オールマイトなら絶対に負けないと信じていた。

 

「峰田ちゃん、殺せる殺せないはともかくその算段が整ったから連中こんな無茶してるんじゃないの?そこまでできる連中に私たち嬲り殺すって言われたのよ。オールマイトが来るまで持ち堪えられるのかしら。オールマイトが来たとして無事で済むのかしら。」

 

 その言葉を聞いて峰田の顔はだんだんと絶望の色へと変わっていく。最後には涙目になりながら緑谷になんだあいつと助けを求めてくる。そんな話をしていたからかタイミングよく水中から多くのヴィランたちの姿が現れる。それを見てまた絶叫し涙を流す峰田。

 

(奴らにはオールマイトを倒す算段がある。多分その通りだ、それ以外考えられない。なんで殺したいんだ?ヴィラン、悪への抑止力となった人だから?一人で平和の象徴と呼ばれる人だから?)

 

 必死にヴィランたちの思考を考えなぜこんなことをしようとしているのか考える。思い出されるのはオールマイトと過ごしてきた日々。

 

(いや、今は理由なんて関係ない!)

 

「奴らにオールマイトを倒す術があるんなら僕らが在すべきことは、その企みを阻止すること。戦って勝つこと!」

 

 

 

 

 

「障子くん!みんなはいるか?確認できるか?」

 

「散り散りにはなっているがこの施設内にいる。」

 

 障子が触手から耳や目を伸ばしUSJ内の生徒を探している。ローレルも目と耳を使って生徒の安否を確認するが全員無事のようだった。周りにいる残った生徒はそれを聞いて安堵の息を吐いく。

 

「ローレル ケント、あなたにはこちらが用意した特別なステージへと招待します。盛大に歓迎しますよ。」

 

「「「な!?」」」

 

 ローレルへの名指しに全員が驚いた。ここまで生徒の名前を呼ぶことはなく、呼んだのは教師たちの名前のみ。ここでは生徒の一人の名前を読んだことで目的の一つにローレルが入っている可能性がある。

 

「今すぐにでも連れて行くことも考えたのですが向こうで暴れられてはかないませんのでデータを取るついでにあなたの意識を奪わせていただきます。」

 

「断ったら?」

 

「簡単です。オールマイトを殺すと先ほど言ったでしょう?その手札を今ここで切ります。」

 

 オールマイトを殺すための手段を今ここで使用する。ここまで自信満々に言うのだからよっぽどなのだろう。

 

「それははったり?」

 

「そう思うのでしたらどうぞご自由に。ですが無視するとなれば散らばった生徒が生き残ることはないでしょう。」

 

 表情が読めないためそれが嘘か本当なのかが分からない。ここにきている時点ですでにオールマイトを殺す気でいるのだろう。ならば本当にその手段を使われてしまえば全員ここで死ぬ可能性がある。

 

「従えば本当にそれを切らないでくれる?」

 

「勿論です。こちらとしてもあまり情報を与えたくはない。」

 

「わかった。なら連れてって。」

 

「ケントさん!ダメです!ヴィラン連合は貴方を連れ去るつもりです!」

 

「すいません13号先生。そうだとしても仮に本当にオールマイトを殺せる手段だったとしたらおそらく誰も太刀打ちができなくてみんな死んでしまう。それなら少しでもみんなが安全になる手段を取ったほうがいい。」

 

 教師として生徒を危険な目に合わせられるはずがないため13号はもちろん止めた。だがローレルはそれを聞かなかった。反抗してオールマイトを殺せる手段を投入されてしまえばみんな死んでしまうかもしれない。何をされるかわからないが自分のせいでみんなが傷つくことを許容は出来ない。

 

「というわけでさっきみたいに連れてって。出来ればショートケーキに紅茶でもあれば最高。」

 

「ふっふっふ。茶菓子の用意はできませんがもっと良いものを用意していますよ。」

 

「それは楽しみだよ。」

 

 その言葉を最後に体は黒霧に包まれ、モヤが晴れればそこにはローレルはいなくなっていた。13号は教え子に負担をかけさせてしまったことに責任を感じながらもこの状況を打破する方法を考えた。

 

「委員長、君に託します。学校まで走ってこのことを伝えてください。警報が鳴らず、電話も圏外になっていました。センサーは赤外線式。先輩、いやイレイザーヘッドが下で個性を消し回っているにもかかわらず無作動なのはおそらくそれらを妨害可能な個性がいて即座に隠したのでしょう。とするとそれを見つけ出すより君が走ったほうが早い。一番早い人はいなくなってしまいました、なので君が頼りです。」

 

 ローレルが飛べば校舎へとすぐにたどり着くだろう。しかし本人は先ほどいなくなってしまった。すぐ目の前にヴィランがいるため相談の内容が丸聞こえとなっているがどうせやることは変わらないため聞かれても構わなかった。

 

「しかしクラスのみんなを置いていくなんて委員長の風上にも」

 

「行けって非常口、外に出ればセンサーがある。だからこいつらはこの中だけで事を起こしてんだろ。」

 

 この場に残っていた砂藤と瀬呂、そして障子が13号に並ぶようにして前に立つ。この場にいる誰もが飯田の足を信用していた。

 

「救うために、個性を使ってください!」

 

 ヴィランたちが現れる前に13号が言っていた、君たちの力は助けるためにあるという言葉を思い出した。さらに普段から仲の良い麗日からもお願いと言われ飯田は決心がついた。

 

「手段がないとはいえ、敵前で策を語るアホがいますか!」

 

 いつでも走り出せる準備をしている飯田に対して黒霧は襲い掛かる。

 

「バレても問題ないから語ったんでしょうが!ブラックホール!」

 

 13号の指先に黒霧のモヤが吸い込まれていく。人やものだけではなく空気や光までも吸い込むブラックホールの前に黒霧のモヤはただ吸い込まれるだけだった。

 

 

 

 

 

「何が戦うだよバカかよ!オールマイトぶっ殺せるかもしれない奴らなんだろ!矛盾が生じてんぞ緑谷!雄英ヒーローが助けに来てくれるまで大人しく待ってるのが得策に決まってらぁ!」

 

 小さい子供のように泣きながら地団駄を踏み訴えかける峰田。だが緑谷はそれを無視して敵への考察を述べる。敵は明らかに水中戦を想定して人員を配置している。USJ内の情報法をしっかり手にしておきながらも緑谷には気になる点があった。それは蛙吹が水難ゾーンにいるということだった。

 

 個性がカエルだとわかっていれば火災ゾーンなどにでも適当に放り込むはず。それをしないということは向こうがこちらの個性を把握していない可能性がある。そう考えるならば緑谷たちに勝機があるとすれば個性が不明な点だろう。

 

 今この面子で何ができるかを模索するためにお互いの個性について話し合うことになった。蛙吹はかえるであり跳躍と壁に張り付けること、そして舌を20mほど。胃袋を出して洗ったり弱めだが毒性の粘液を分泌することができる。

 

 峰田の個性はもぎもぎ。頭からもぎった髪は何にでもくっつき体調によっては一日ずっと。だがもぎりすぎると流血してしまう。峰田自身にはくっつかず逆に跳ねる。

 

 峰田の説明が終わり数瞬の沈黙が流れた。その沈黙に耐えられなかった峰田は涙を流し自分の個性は先頭に不向きだと訴えかける。緑谷がどうにかフォローしようとしたところで水中にいたヴィランによって船を真っ二つに破壊され揺れが三人を襲う。

 

 そこで動揺した峰田が自分の個性であるもぎもぎを水面に向かって投げつけてしまう。情報によるアドバンテージをみすみす相手に渡してしまうと思ったがよく見ればヴィランたちは警戒して触れることはなかった。

 

 蛙吹に本当にヒーロー科志望なのかと問われれば峰田は猛反論。ついこの間まで中学生だった、入学してすぐ襲われるなど誰が想像しているのかと。ついでに最後に八百万の胸に触っておけばと余計なことまで言っていた。冷静を装っているが彼らはまだ高校生になったばかりなのだ。怖がってしまうのも無理はない。

 

「敵が勝利を確信したときが大きなチャンス。昔情熱大陸でオールマイトが言ってたよ。勝つにはこれしかない。」

 

 峰田は緑谷の震える手を見た。緑谷も怖くないはずがないのだ。だがそれでも恐怖に打ち勝ち、諦めることはせずこの状況を打破することを考え続けていた。

 

 船が沈むまで外でのんびり会話しているヴィラン達。水中ではこちらが絶対的に有利だと信じて疑う様子はなかった。そこへ緑谷が大きな叫び声と死ねという掛け声とともに大きく飛び出す。所詮はガキだと決めつけ個性を使おうとしたその時

 

「Delaware SMASH!」

 

 デコピンの容量でワン・フォー・オールを発動し水面に強い衝撃を与える。それにより水は一度外へと広がり、今度は逆に衝撃を与えた地点へと渦を巻いて戻っていく。

 

「梅雨ちゃん!峰田くん!」

 

 その声とともに船にいた蛙吹が峰田を抱えて跳躍する。SMASHを放ったことで緑谷の体は空中へと浮かび蛙吹の下で緑谷の体をキャッチする。

 

(ちくしょー緑谷、かっこいいことばっかしやがって。)

 

 飛び出す直前、緑谷自身も怖いはずなのに率先して自分が一番危ない立ち回りを行った。背中はとてもかっこよく、それを見た峰田の心に勇気が宿った。

 

「オイラだって!オイラだってー!」

 

 水面に多くのもぎもぎを投げつける。中心へと向かって流れるためヴィランと一緒に当然もぎもぎも流れていく。流されている中で数多くの模擬模擬に触れないというのはほぼ不可能でヴィランたちの体へとくっついていく。そして今度はもぎもぎを通して人の体がくっついていき大きな塊となっていく。これにより水中にいたヴィランたち全滅させた。

 

「とりあえず第一関門突破ってところね。すごいわ二人とも。」

 

 緑谷は親指と中指が負傷、峰田は頭から血を流している。それ以外は他に被害らしい被害もなく三人は水難ゾーンを突破することができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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