世界が静止する日【第一部?完】   作:ノイラーテム

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 とある筋の大立者は、最新のメモ書きを見て旅行を中断した。
内容が不吉だったのと、欲しい物は『地元』でも手に入るからだ。エージェントは派遣しておくとして、無理だったとしても時間を掛ければそのうちなんとかなるだろう。
メモ書きは中途半端に途切れており、その前の文章にはこう記載されていた。


『車輪の兄弟たちが行うプレゼントの交換会。

団体客の誘いに乗って二階の踊り場に向かうのも良いだろう。

顔を伏せた月たちが後学のためにダンスを見せてくれる。

だけれど気を付けなさい。歯車は回り始めたばかりなのだから……』


GR計画編
黒いアタッシュケース


●盗賊たちのラプソディ

 薄暗い雨の中、オンボロなビルの一室で男が瀟洒な小箱を開けた。

乾いた音を立てて小箱はリズムを奏で始めるが、生憎と外は雷雨。ガラガラと雷が唸り声をあげるのだが、周囲にいる聴衆は最初から音楽など気にもかけない。

 

いや、その混濁こそが良いのだと男は思ったのかもしれない。

もし尋ねられたならば、今日のプライベート・コンサートは雷鳴によって完成するのだと口にしただろう。

 

「団長。そんなに気に入ったなら取っておけばいいのに」

「いつも言ってるだろ? 手放すのが惜しいくらいが売り時だよ」

 大事にしまっていても失われる時には失われてしまう。

だからオレ達にはこちらの方が大事なのだと、壁に描かれた薄汚い落書きこそを団長と呼ばれた男は愛おしく思った。

 

コンクリートの落書きはやりたいことで一杯だ。

仲間たちが暇を持て余して描いた他愛ない我儘。それはきっと鞄や金庫の中の何よりも大切な事だろう。

 

「それに欲しく成ったらまた盗って来ればいいさ」

「それもそうだね」

 このやりとりが一同を端的に表していた。

何よりも、『盗って来る』というありようが彼らの本分だ。盗賊団であり、刹那的な愉しみの為に……。

 

いいや、違うか。

彼らは別に刹那的でも、厭世的でも、世間が言うようにサイコパスでもなんでもない。ただ流星街出身の彼らは、自分たちの命が明日もあるとか、社会的なモラルや約束事が大切だとは欠片も信じてないだけだ。

例え長年の友人との約束でも、必要ならば平然と破る程度に。

 

「これを含めて幾つかの『種銭』を用意した。一番面白い物を持ってきたチームの勝ちだ」

「高額とかじゃなくて面白い?」

 男は小箱を頑丈なアタッシュケースに入れる。

そして似たようなアタッシュケースの上に置いて仲間たちの方へ話を振った。

 

「新しく補充した仲間を含めて、お互いがどんな風に考えてどんな行動を採るかを見るだけだからな。別に利益が出る必要もないし、できるなら大儲けしてくれても構わない」

「おーけー。楽しければそれでいいってことだな」

「かといって、ツマラナイ物もて来たらコロスよ」

 団長と呼ばれた男の説明に、今まで口を挟まなかった聴衆が笑った。

稲光にチラリと顔が映り、見慣れぬターバン姿や盗賊には似合いな黒いマスクが映る。

 

「で、どっちに付くよ?」

「コラコラ。新人の能力や相性を見るんだから、勝手に選ぶなよ。選ぶとしたらシズクやコルトピの方からだろ」

 勝手にメンバーを振り分けようとしたターバンに、最初に口を挟んだ青年が抗議を入れた。

 

「関係ないね。その時つるんでるメンツで仕事する。それが流儀」

「違げーねえ。そっちの二人が嫌だってんなら、コインで決めても良いぜ」

 マスクとターバンは青年の抗議に耳も傾けず、ニヤリと笑って話に出た新人の方を眺めた。

彼らからみれば新人研修じみた事件(やま)を熟さずとも、こういったやりとりの応酬でも良いのだ。どうせ役に立たねば死ぬだけである。

 

「あ、私どっちでもいいです。面倒くさいんで」

「……同じく」

 話を振られた新人たち……シズクとコルトピはもめ事をスルーした。

団員同士のもめ事はご法度だからではなく、ともに自己主張や序列などというものはどうでも良いと思う性質(たち)だったからだ。

 

これにはターバン達も苦笑い。

肝が太いのだか無関心なだけだか知らないが、二人の思考パターンはまだ見えない。これで面倒な新人研修に出掛けるのは決まりだろう。

 

「じゃあオレはシズクでフェイタンがコルトピな。他のメンツも同じようにいま立ってる場所で分れりゃいいだろ」

「勝手に決めるとコロスよ」

 ターバンの言葉にフェイタンと呼ばれたマスクは不満を口にしつつも……。

こだわりなど最初からないのだろう。その場に居た数名と同じく、メンバー別けに同意した。

 

「ってことはオレもフランクリンもコルトピ側? 本当に大丈夫かなあ」

「あいつらが良いならそれで構わないだろう。潜入に失敗したらしたらで、面白い物が見れるさ」

 どうやらシズク側には脳筋が中心で、コルトピ側に頭脳労働派が揃っているらしい。

シズクに期待するしかない状況だが、盗んで来る予定の物まで吹き飛んでしまわないか今から不安である。

 

「それでシャル。今回は何処に潜り込むんだ? こんな御大層なケースまで用意して」

「寝台列車を会場に行われるトレード会だよ。一定ランク以上のブツを出品してさ……」

 フランクリンと呼ばれた大男の質問に、シャル……シャルナークという青年はパンフレットを取り出して説明を始めた。

パンフレットには今話題の豪華寝台列車バシュタール号が描かれており、ちょっとした観光も愉しめそうだった。もしかしたら、シャルナークも新人研修なんかする気はなくて、自分が楽しむためにこのコースを選んだのかもしれない。

 

ここに幻影旅団が動き出したのである。

 

●次回予告『バシュタール号の惨劇』

 豪華寝台列車に幻影旅団が乗り込んでいく。

まだ若い彼らがそこで出逢ったのは、世界征服を企む悪の秘密結社BF団。

 

盗みを働こうとする幻影旅団の前に立ち塞がるのは、十傑衆の一人。

 

『手伝ってやろうか? ただし……真っ二つだぞ?』




 という訳でHxHの世界に十傑衆を出すという微妙なネタクロスを始めてみます。
書きたいから書くだけなので、面白くなかったら勘弁してください。

あと登場する旅団メンバーは諸般の関係上、バランス型ばかりとなりました。
数話で終わる予定なこともあり、名前の出てないメンバーは出てきません。
その影響で、名前が出ていますがシズクちゃんも今後出ないのでご容赦ください。

え? ムサイ男ばかりだって?
クロスしてるジャイアント・ロボがそうなんだから仕方ないじゃないですか!
出ても青い肌だったり、唯一のヒロインも最後にはアレですからね……。
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