世界が静止する日【第一部?完】   作:ノイラーテム

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バシュタール号の惨劇

●移動するトレード会場

 寝台列車は道と部屋に区切られているが、会場であるラウンジカーは幅広い。

そこに金持ちが持ち込んだ品の一部が展示されている。

 

「どしてこれを狙たらいけないか。コルトピ居れば問題ないね。それとも偽物か?」

「本物ではあるんだけど……ここにあるのはサンプルだよ。気に成ったら、それぞれの客室に交渉に行くんだ」

 フェイタンの質問にシャルナークが答えたが、展示品はあくまで参考例なのだという。

そして一同は自分たちが持ち込んだ品の前に訪れた。

 

そこには抉り出された目玉が浮かんでいる。

保存用薬液の色合いに負けない、鮮やかな緋色の色彩が随分と印象的だ。

 

「オレたちの場合だと緋の目を置いて、サイレンのオルゴールとかは手持ちで押さえてるだろ?」

「なるほどな。ここに来ればそれぞれが持ち込んだブツの傾向が判る。展示品より優れているかは駆け引きってやつだ」

 出かける前に聴いていた小箱はオルゴールだったらしい。

それにしては音の質が違っていたような気がするが……フランクリンにとってはどうでも良い話だ。三品ほど持ち込んでいるのだが、残る一つが生態パーツなので、誰かの声帯でも使った人間オルゴールなのだろうと思うことにした。

 

この交換会は同好の士を探し、好みの品を融通し合う会場なのだ。

コレクション自慢に訪れた者もいるかもしれないが、多くは展示品と類似の傾向の品を持ち込んでいる。

 

「見せ金に持ち込める品がねえと、交換を理由に潜入することも不可能ってことだな」

「それで『種銭』ね。盗賊が金払うおかしい思たよ」

 一同は持ち込まれている品を丹念に見て回る。

美術品などに興味はないが、命題である『面白い物』であるとか、単純に高価な品がないか。そして……誰の客車に押し入れば、良い品が手に入るかを物色し始めた。

 

「面倒ね。やぱりここの品全部持て行くか?」

「それはダメでしょ。きっとシズクたちは、こいつを持っていくつもりだろうからさ」

 短絡を起こしたフェイタンをシャルナークが慌てて止める。

盗みで勝負している相手チームの目論見に、どうやら見当がついているらしい。興味がそそられたのか、それとも最初から行動する気はなかったのかフェイタンは続きを促した。

 

「こいつてどれ?」

「こいつだよ、足元のこ・い・つ」

 笑って爪先を動かすと床はコツコツと軽快な音を立てる。

どうやるのかはともかくとして、シズク班は寝台列車そのものを強奪する気らしい。なんとも豪快な強盗である。

 

「シズクの能力は無生物の収納なんだ。どれだけ収められるか試してみたくない?」

「なら頭から試して、入らなくなったらどこかでチョン切るつもりだろうな。このラウンジは前側だ。無理に奪い合う必要もないだろう」

 列車強奪など大事であるが、実に楽しそうに語る。

シャルナークもフランクリンも頭脳派だが、生え抜きの旅団メンバーである。盗むことに異論があるはずはない。荒事に忌避観などなく、スマートにいけばラッキーくらいにしか思っていなかった。

 

「場所ごと持て行く。盗賊の鑑ね。ところで私たち何持て行くか? 負けるの性に合わないよ」

「表か裏の勝負で連中は表を選んだ。なら、俺たちは裏で良いんじゃねーか? 無慈悲な盗賊団に狙われた金持ちが、真っ先に持って逃げる奴だ」

 フェイタンとしては負けたと言われることが腹が立つらしい。

そんな彼にフランクリンはのんびりと、自分たちの事を無慈悲だと口にした。何しろ逃げる相手から盗んでしまおうというのだ。これが無慈悲でない筈がないだろう。

 

「陽動を向こうがやってくれるならこっちも楽になるね。勝負にこだわるなら、二番・三番の品をコルトピの力でコピーして入れ替えれば最高だけど……期限は?」

「一日。良くも悪くもそれは変わらない」

 これまで会話に加わっていなかったコルトピが質問に答える。

彼の能力である神の左手悪魔の右手(ギャラリーフェイク)はとても有益で便利な能力だ。当然ながら、多岐に渡る制限が存在した。

 

今回問題になるのは、具現化する期間は一日だから、トレードの際に嘘をついて偽物を掴ませるタイミングが難しい。渡した相手がしゃべらずとも、一度にたくさんの人間と交渉を続けたら嘘くさいだろう。

 

「俺たちは盗賊団であって詐欺師じゃないからな。探知目的で良いだろう」

「それなら暫くは物色だけで済ませて、本命は『最終日』だね」

 コルトピが製作したものは、念の探知技術である()の役割を持つらしい。

詳細までは聞いていないが、円として機能するというだけで使い方を作戦に組み込むことができる。面白い物なり、大量に手に入れたコレクターを追いかけるために利用する算段だ。

 

行動タイミングは、お客が追加される数が最大の町を過ぎてから。

シズクに付いたメンバーは乗車していないので、向こうの性格を考えたら獲物が増えた直後であると思われた。その日が作戦決行日という訳である。

 

●襲撃

 一同は他のお客と無駄話をしながらノンビリしていたわけではない。

自分からトレードを持ちかけたり、断ったりする間に、誰がどんな宝物を持っているか。護衛はどの程度の能力かを測っていたのだ。

 

そして予定通り大勢の客が乗り込んだ時……。

取引に応じると称して、幾つかの『仕込み』を行った。

 

「それではミスター陳。良いお話をありがとうございました。可能な限りの良い旅を」

「こちらこそミスターシャルナーク。これで旦那様に面目を施せます。できうる限りの良い旅を」

 お互いに黒いアタッシュケースを渡してトレードし合う。

陳という男はターバンにサングラスという風情で、どこかの執事という触れ込みだが念能力者だろう。能力者はそれなりの数が居たが、緊張感を伴うのは陳を始めとした数人だけだった。

 

退席した後は油断なく仲間たちの元に合流し、ケースを開けて中身が本物かどうかを確かめる。

 

「どう?」

「本物」

 アタッシュケースに入っていた本にコルトピが無造作に触れ、その場で偽物を作り出した。

否、その場でしか偽物を作り出せず、その期間は僅か一日、しかも念能力で作られたものはコピーできないという性質を持つ。だが、ここではコピーを見破る方法に使えるのでありがたい。

 

丁寧に作られた偽物かもしれないが、今回は団長への土産なので気にはしてない。

自分達を騙し通すほどの本ならば、それなりの土産にはなるだろう(自分たちは愉快ではないが)。

 

「偽物はどうなってる?」

「あっちの客車から動いていないよ」

「疑っていないか、頼まれ物だから最初から興味ないだけの可能性もあるが、まあ予定通りだ」

 幾つもの条件が苦にならぬほどコルトピの複写能力は破格だった。

見分けがつかぬほどの精巧さを誇り、円の役目を兼ねているので相手の位置が特定できる。この様子ならば安心できるだろう。

 

「何を恐れてるか。偽物ごと他のお宝回収すればいね」

「余計なリスクを背負うことなくない? みんな居ないのに無理することはないだろ」

 ストレートに行きたいフェイタンに対し、スマートに行きたいシャルナークとでは土台の意見に差があった。

 

フェイタンとしては出合う者はみな殺し、宝物はみな奪うほうが楽でいい。幾ら考えても同じことは良くあるからだ。

シャルナークとしては、来ていない者も含めて戦闘向きのメンバーが分散した状況で無理に戦う必要は見い出せない。

 

「俺はどっちでもいいぞ、団長は誰の指示に従えとか言ってないしな」

「並行線か。じゃあコインで……」

 フランクリンが仲裁を投げたことで、いよいよ話し合いは決裂する。

団員同士の争いはご法度なので、コイントスで決めようとした時。大きな変化が一同……いや列車を襲った。

 

「時間切れね。出会たらコロスよ」

「あーもう! いきなりかよ~」

 ビリビリとした振動の後、列車が不規則に揺れ始める。

こちらに居ないメンバーが既に襲撃をしたと知って、フェイタンがにやりと笑って飛び出した。ここに至っては説得する時間も必要もない。シャルナークたちも行動を開始した。

 

だけれども、事態は一同の想像を超えていたのだ!

あえていうならば、列車ごとお宝を奪おうとする盗賊団だからこそ、抜け落ちていた考えだというべきか。

 

「あ……~。短気で堪え性がないとか思ってごめん。別口が居たんだね」

「てめえが普段どう思ってるかよーくわかったよっ。見ての通り取り込み中だ」

 外に出て暫くすると、列車の一部が破壊されていた。

そこでは奇妙な大男……まったく同じ顔が数人ほど暴れている。

 

「双子とか三つ子ってわけじゃないよねえ。念獣かな」

「どっちでも構わねえよ。近づけねえのが問題だったが、フランクリンが居るなら問題ねえ」

 仲間たちがソレと相対していたが、遠慮なく降り回される鉄球にヘキヘキとしていた。

相手は体格的にというか膂力的に、列車の屋根であっても微動だにせず、こちらは迂闊に飛ぶと列車から振り落とされかねない。とはいえ列車の中から迎撃に徹していると不利なままだろう。

 

大男が念で作り出された念獣なのか、操られて異常強化されているだけか。

どちらなのかで対処は変わるのだが、操作系であるシャルナークにとってすることは一つだ。

 

「相性悪いしそいつらの相手お願いするね。オレは前の車両に行くから」

「あ、ってめえ! 抜け駆けする気か!」

 操作系はハマると一撃で戦況を決める癖の強い能力系統だ。

だがしかし、同じ操作系に対しては『早い者勝ち』というルールがある。加えて念獣を操作できるタイプの能力ではないので、シャルナークが大男を無視するのは当然だった。

 

加えて言うならば現在は勝負の継続中である。

列車ごと盗むのは面白そうだが、共闘を頼まれても居ないのに、仲間だからという理由で協力する気にはなれない。むしろお宝をいただいてくる方がよほどスマートな盗賊と言うものであろう。

 

「さてと……。目的地に着いちゃうと面倒だし、振り落とされるのを心配するのも面倒だよね。ここは動力車を切り離すとしますか」

 展示室であるラウンジカーを越えて、そこから先の連結を解除すればよい。

それでシズク班の勝利は無くなるし、こちらは最低限の物を回収しているので問題ない。後は逃げだす金持ちからお宝をいただいていけば楽勝だろう。

 

そう思って連結部に来たのだが見たこともない造りになっていて戸惑った。

当然ながら、自分が考えることは他人も考える物だ。とっくに対策済みで、手順も知らずに手動で何とかするのは難しそうだった。

 

「うえ~面倒くさいなあ。爆弾処理でもさせる気かよ。これじゃ不本意だけどぶっ壊した方が早いじゃん」

 ハンターサイトを検索すると類似の機構が表示された。

細部の違いはあれど参考になるはずだが、あまりに面倒過ぎてやる気にはなれない。加えて言うならば彼の能力は携帯を経由するので、画像を見ながら作業するのは緊急時の対応ができないことを意味する。

 

「いよっと! オレじゃあ素のままだと全然歯が立たないや。ウヴォーでも居ればなあ」

 拳にオーラを集めて殴ってみるが塗装が剥がれた程度である。

別の用事があって今回来なかった仲間に頼りたくなるのも仕方があるまい。

 

そんな時の事……。

 

「手伝ってやろうか?」

「へ?」

 掛けられた声に思わず間抜けな声を出してしまった。

それだけタイムリーな言葉だったと言っても良い。とはいえ、一つだけ問題があったのだ。

 

「ただし、真っ二つだぞ?」

 パチンと澄んだ音が鳴り響いたのはその時である……。




 という訳でHxHxGロボの第二回に成ります。

無理やりGロボのネタを入れたのでハンターらしさが無くなり、慌てて修正したら微妙になったでゴザル。
それを調整してGロボ風味に整えると、どこかで齟齬が出るという……ウゴゴ。

なお登場人物ですが……。
コルトピ班:
・コルトピ
・シャルナーク
・フランクリン
・フェイタン

シズク班:
・シズク
・フィンクス
・ノブナガ
・パクノダ

居残り・またはまだ加入していない
・マチ、ヒソカ(オモカゲ)、ボノレフ、ウヴォーギン、団長

アルベルト → ヒィッツカラルド
イワンとミスターQ → ミスター陳
列車ロボ維新竜 → バラン

という感じに挿し替えになっております。

●次回予告『ステルス・ネット・ワイヤー作戦』さながら上海雑技団の様に
 動き続ける列車での死闘。
鳴り響く素晴らしき指先は、全てを切り裂いていく。
絶体絶命のピンチに陥った旅団の元に、この場に居ない仲間からのメッセージが入った。
「ボクの胸に飛びこんできて♥受け止めてあげるよ♦」
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