世界が静止する日【第一部?完】   作:ノイラーテム

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 豪華寝台列車で行われるお宝交換会。
その会場である列車ごと奪おうという幻影旅団の前に、今までにない敵が襲い掛かる。

戦いの中で、動力車との連結解除に苦労するシャルナーク。
彼に掛けられた言葉は意外な物であった……。

『手伝ってやろうか? ただし、真っ二つだぞ?』


ステルス・ネットワイヤー作戦

●ステップ・シークエンス

 パチンと澄んだ音が鳴り響いた。

するとどうだろう、閉め切っておいたはずの扉が自動ドアの様に開いていくではないか。

 

「あ、やべっ」

 シャルナークが咄嗟にバックステップを掛けられたのは偶然に等しい。

否! それは偶然などではなかった。その時は知る由はなかったが、ちゃんとした理由によるものである。

 

キン! と音を立てて両断される扉。

さきほど念を込めた拳でもビクともしなかった連結部ごと、列車が切り裂かれていく。

 

「……いやいやいや。これはないでしょ」

 不意に横殴りの風が吹き、自動ドアの次は自動車窓か。

そんな冗談すら考える余裕があったのは、シャルナークは同じような能力を良く知っているからだ。

 

旅団のメンバー同士でも念能力の詳細は教えないが、一緒に行動する時に困る程度のことは知らせ合っている。仲間の一人に、口にしたことを行う『発』を持つ居る男が居るのだ。能力の名前までは知らないが、シャルナークは勝手に『有言実行(コトダマ)』と綽名を付けていた。

 

「ってか、念のコントロールが現実離れしてるし。あいつらもここまでの出力だせるかなぁ」

 目の前の扉を切り裂くのは判るし、仲間の能力で説明できる。

だがそれ以上、具体的に言うと列車の側面すら切り裂くのは異常だった。放出系だとは思うが、同じタイプのフランクリンですらこれほどの威力が出せるだろうか?

 

 

「我々が先に目を付けた物を奪って行こうとは困った子だな。人の物を勝手に持っていってはいけないとお母さんに習わなかったかな?」

「生憎とそんな上等なものはお目に掛かったことはないんだ」

 現れたのは白スーツの伊達男だった。

髪を流したウルフヘアーに、負傷なのか何かの制約なのか、黒目の無い白眼が印象的である。

 

人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべて意味のない最後通牒を口にした。

 

「今ならば見逃がそう。早く立ち去りたまえ」

「さすがにそういう訳にもいかないなあ。もう少しくらい話に付き合ってよ」

 先ほどから感じている殺気はまるで減っていない。

見逃す? ありえない。無策で逃げ出したら背中から切り付けかねない。だいたい、男の背後は血だらけだ。この状況で運転手を殺すような奴が本気で見逃してくれるとは思えない。

 

それに、もう一つ理由があるのだ。

時間を稼げば仲間たちがお宝を奪っている可能性は高い。そして……。

 

「っ!」

「……。フェイタン~」

 会話中に仲間の一人が襲い掛かった。

切り裂かれた天井から侵入し、一足飛びに襲い掛かったのである。シャルナークはそのために、気を引き付けていたともいえるだろう。

 

「……誰ね。この白眼蟹」

「知りたいかね?」

 逆風の中で飛び込んだせいか、運悪く刃が脇に外れるはずだった。

しかし男は必要もないのに刃の先をつまむと、ヒョイっと強引に腕を別方向へ逸らせる。フェイタンが舌打ちしているが、袖口かどこかに暗器でも仕込んでいたのだろう。

 

「BF団が十傑衆の一人。”素晴らしき”ヒィッツカラルド。そう呼ばれているよ」

 男はやれるもならば刺してみろと言わんばかりに胸を逸らせる。

そして後ろ手に腕を組み、ニヤリと不遜な笑いを浮かべた。

 

「自分で自分を素晴らしい、言う。とても滑稽ね。そんなに自分良く見せたいか」

 尊大無比な自己紹介に対するのは嘲笑だ。

フェイタンは剣を一回り短く構え直し、幅広の袖口でリーチを誤魔化しながら嘲笑う。飛び交うのは売り言葉に買い言葉である。

 

「これは忠告だがちゃんと聞いておいた方がいいな、お嬢ちゃん。私の存在自身が素晴らしい、そういう能力なんだよ」

「てめえ……ぶっ殺す!」

 女扱いされた事に激高したのか、剣を振るおうとした腕が肘打ちで止められる。

お互いに肘と肘が合い打って、オーラが弾ける姿はとても絵になった。その姿はまさに余裕綽々で、能力を説明してやったというハンデもまた本当なのだろうか?

 

フェイタンは怒りのあまり、演技を忘れて本来の口調が漏れ出てしまう。

 

「シャルナーク。こいつの言ってることをちゃんと訳せ」

「はいはい。BF団ってのは世界征服を企む悪の組織で、十傑衆ってのはそこで一番強い連中」

 悪党は数居れど、世界征服を企むなどと言う狂人は彼ら以外にはいない。

恐ろしいことに本気で実行しようとしているあたり、他の組織が付いていけないのも当然だろう。

 

「見分けは簡単。覆面なら雑魚で、顔を見せてるやつは強い奴。そして……十傑衆ってのは世界の外に行っても通用するレベルだったかな」

 冗談のようでどこまでも本気。

だからこそシャルナークは呆れているし、フェイタンは沈黙したままだ。

 

「その通り。例えば私のこの指先はね、世界最高なんだ」

「っ! くそが!」

 そしてヒィッツカラルドが指先を前に向けた時、フェイタンは恥も外聞もなく飛びのいていた。

 

パチン!

指先が弾かれ、フィンガースナップが鳴った瞬間。

それまでフェイタンの居た場所は両断されている。その一撃で天井の破れた車両は、完全に切り割かれて動力車と分断されてしまう!

 

「よし、怪我の功名! これで時間が稼げ……てないか。逃げるよ!」

「っ!?」

 ホっと一息つく間もなく、シャルナークが腕をひっつかんで後方に逃げ出す。

フェイタンが離れて行く動力車を見ると……。前傾姿勢を保ったまま走って来る男の姿があった。

 

その上体は微動だにせず下半身の力だけで走って来る。

体術のレベルまで常識をかけ離れており、『今の二人』では勝機がまるで見えない相手だった。

 

「この程度で死ぬなよ。お嬢ちゃん達?」

「いつか、殺すころす、コロス!」

 ヒィッルカラルドの右手が音を鳴らし、続いて左手が鳴る。

車両が切り刻まれ、続いて両手同時に鳴らすと、十文字に切り割かれた。何の冗談か四度目は、片方の腕を背中に回す曲芸のような撃ち方である。明らかな手加減というべきか、これではフェイタンならずとも怒りを覚えよう。

 

「落ち着いてよ。あいつの言葉、たぶんワザとやってるから」

「はっ? どういうことだ!!」

 シャルナークはボリボリと頭をかいた後、その指先を車両の後方へ向けた。

そこには他の仲間が穴から顔を出しており、ヒィッツカラルドに何かしらの攻撃をしたようだ。

 

「見ての通りフランクリンの狙撃に対する牽制。あいつの行動にはちゃんと意味があるんだよ。というか、あれも含めて能力じゃないかな」

「……なんの意味がある。言うか」

 手加減ではなくこちらを援護する仲間への対策だった。

そう聞かされてフェイタンも少しだけ怒りを収める。トーンはまだまだだが、口調はなんとか元の調子を取り戻している。

 

「あいつ自身がヒントだって言ってたろ? きっと能力を説明した方が強く成るタイプなんだよ。あのレベルの能力者がゴロゴロいるとは思えない。あいつクラスじゃないと歯が立たない外来種ってどんだけ強いのさ?」

 ヒィッツカラルドは強過ぎる。

狙撃していた仲間を牽制しているという事は、たった一人で幻影旅団と戦う気なのだ。世界に強い奴はいるだろうが、十傑衆という事はBF団にはあのレベルが他にも居るらしい。

 

「フランクリン以上の放出系で、ノブナガ以上のコントロールで、ウヴォー並みのパワー。常識ありえない」

 しかしこれほど強い人物が、都合よく何人も同じ組織に所属するだろうか?

それを考えればルールによって、劇的な強化を図っているという事だろう。

 

「……制約と誓約ね。頭では理解したよ」

「そっ。仮に今だけなら逃げ回ればいいし、狭いルールを運用してるなら、サイトを通して世界中にばらしてもいいね」

 ヒィッツカラルドが接近する間にも撃ち合いが行われている。

掌底やバックハンドで放たれる広範囲のショック・ウェーブなら、フランクリンの念弾も普通に通用している。だが、あの指先を弾く攻撃にはまるで通用せずに押し負けていた。

 

ここで問題なのは、フランクリンは能力者の限界枠に差し掛かっているという事だ。

人が鍛え上げられるレベルというのは基本的に『幅』が決まっており、屈強の念使いはその幅を飛び越えるための努力をしていると言ってもいい。

 

人間の限界まで来ているフランクリンをアッサリ退けるということは、テクニックなり覚悟で幅を飛び越えたという事だ。

この相手は恐るべき、そして忌まわしい敵であると同時に……。

 

「ははは。あの能力を奪てやるか。それも面白いね。盗賊の戦い方、らしいといえばらしいよ」

 ワザとらしい笑いは、怒りを鎮める為だろう。

その事が理解できるので、下手に茶化さないでおいた。

 

そして動力車を切り離された車両は、いつまでも移動し続けはしない。

動きが止まると同時に、奴がそのうちやって来る。どう戦うか今の内に考えておくべきだろう。

 

「っと。返事が来た。あいつ一人でオレ達を相手にするって言うなら……良いじゃない。全員を相手にしてもらおうよ」

「連絡入れてたか。何処で戦うか?」

 シャルナークはフェイタンの質問に、周囲の地形で大きなカーブになった場所を指さした。

そこは断崖絶壁。一見戦うには不利だが、幻影旅団は戦闘集団ではなく盗賊団である。時に盗み、時に騙し合うのが本文であろう。

 

「あいつの能力はだいたい想像ついているんだ。ステルス・ネットワイヤー作戦開始だよっ」

 果てして、その作戦とはいかに!?

 

迫るは最強十傑衆、迎え撃つは表裏比興の幻影旅団。

戦いの趨勢はいまだ見えないでいた……。

 

●次回予告『盗賊たちの黄昏。勝利の歌声、未だ響かず』

 無残に切り裂かれた豪華寝台列車バシュタール号。

そこに秘められたお宝を奪うために、幻影旅団とBF団の決戦が始まる。

罠を張り巡らせて逆襲に出る旅団メンバー。人界屈指の力を持つはずの彼らを、圧倒的な力で蹂躙すらする十傑衆。勝利の天秤はどちらに傾くとも知れなかった。

 

「今日は特別でね。もう一人来ているんだ」




 という訳で考察会です。
戦闘的には蹂躙してるんですが……。
別に対抗できないからではなく、一度離れて様子見してるだけなのでアッサリ気味です。ま原作の数年前の段階で、ゾディアック家に相当する敵とバランス型が戦ったら蹂躙されても仕方ないとは思いますけどね。

真面目な話、幻影旅団は戦闘メンバーだけではないですし、能力もバランス取れてる人が多いですからね。
純粋に戦闘オンリーの相手と戦えば、そりゃあ不利なのは仕方ない。ウヴォーギンならやってくれるはずですが、此処にはいないので仕方ない。ヨークシンでの陰獣戦とはちょうど逆のポジションとなります。

●能力考察
ノブナガの能力。
 特に書かれていないので
1:指定した行動を自動的に行える
2:オーラの配分を瞬間的、かつ効率よく行える
としています。
念の応用業である『流』をベースに、『硬』をリスクなしで行う感じですかね?
『円』の中に入ったモノを斬るといえば自動で切り、その行動を高速化する。
対象が何であれ切り裂くと言えば、鉄をも切り割く斬鉄剣に成る感じで。

名前は出ていないので、ひとまずシャルナーク視点で勝手に名前を付けた。
言葉に出す必要があるとして、有言実行と言魂を引っ掛けた綽名にしています。
それこそ常在戦場でも敦盛ダンサーでも何でも良いのですが。

●BF団十傑衆”素晴らしき”ヒィッツカラルド
 素晴らしい指先を含めた、その存在自体が凄い人。
今川監督がフィンガースナップで指を鳴らす練習中に、自動ドアが開いたというエピソードから作られたとか。

念系統:放出系
『発』
1:世界最高の指:
 所作で衝撃波を生み出し、焦点を絞れば真空波にすら達する。
オーラを注げば注ぐほど、絞れば絞る強く成る。強化系・変化系もバランスよく必要。

2:アクター・ザ・ヒィッツカラルド
 素晴らしい所作をすればするほど放出するオーラ・コントロールが強化される。
難しい連続動作・巧みな動きであるほどオーラの総量が増えるとか。
上記の『世界最高の指』とのシナジー効果が強く、特に指先を鳴らした時の強さは凄まじい。

フィギア・スケートの羽生結弦の点数が世界最高の力になり……。
マイケル・ジャクソンの動画再生回数が伝説級の力になると思えば楽。
ジャンプ漫画で言うと、ブリーチのオシャレな方が強いのと同じである。
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