世界が静止する日【第一部?完】   作:ノイラーテム

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 人界において傍若無人を誇ったはずの幻影旅団。
その彼らをして圧倒的な力の前に蹂躙されていく。

彼らは盗賊、世界征服を企むBF団の前に苦戦するのは仕方ないのかもしれない。
だがしかし、忘れることなかれ! そう……彼らは盗賊。時に巧みに騙しきり、時に暴力において解決する存在なのだ。

秘かに進行する作戦によって、十傑と呼ばれるほどの秘密。そして勝利をも盗み取ろうとしていた!



盗賊たちの黄昏。勝利の歌声、未だ響かず

●ダンス・マカブル

 背後から撃ち込んだはずの念弾へ、振り向きざまにバックハンドで(あお)がれた。

ただそれだけで衝撃波の壁が発生し念弾を叩き落とされたが、問題なのはそこからである。

 

容易く相殺されたことに舌打ちし、牽制を続行するためにもう一発。

だがピッピッと甲高い音がした瞬間、こちらの第二射を切り裂いて真空波が飛来する!

 

「フランクリン!」

「問題ねえ。てめえも自分の持ち場を守ってろ」

 フランクリンは大きな手で顔を抑え、傷口周辺を念で焼き止血に変えた。

チャージをイメージして撃ってはいないが、連射タイプの攻撃で切り裂かれた事実はあまりにもショッキング。隔絶した念能力の差にむしろ笑いしか出てこない。

 

「さて。どうしたもんかね。暫く時間を稼げとは言われちゃいるが……」

 自分たちが蹂躙されているというのにフランクリンは笑った。

威力の天井と言うか……壁にぶちあたって以来、自分はどこか覚めた目で見ていた。これが放出系の限界だと。

 

若くして放出系を極めたと言われたこともあるが、まるで楽しくなかった。

自分は普通車が精々だが、強化系の仲間は馬鹿げた威力で装甲車も一撃でスクラップ。それなのに誇れるものか。今だって自分を切り裂いた真空波を、正面で相対しているチョンマゲ頭が簡単に迎撃しているのが見えるじゃないか。

 

だが、逆に言えばそこまで能力を絞った強化系に対し、同じ放出系のあの男は互角の威力を叩き出しているとも言える。

同じことが自分にできないと何故言えるのか? 幻影旅団を蹂躙する相手だ、互角に戦うどころか、テクニックを奪えばさぞ爽快に違いあるまい。そう思って昔の様に獰猛に笑う。

 

「ほう。器用だね。何発耐えられるかな?」

「何発でも叩きおとしてやるよ! 能書きはいいから掛かって来いってんだ!」

 踊るようなステップで放たれる強烈な真空波。

それを刀が迎撃し、背中越しに放たれた判り難い一撃も無造作に切り捨てる。『口にした事しか実行できない』が、『口にしたことだけは確実に実行できる』能力だからだ。

 

最初は『どうしてモロバレな能力にしたんだ?』とほぼタイマン専用の能力に首を傾げた。

しかし今だからこそ判る。このチョンマゲ頭は自分と同じような壁にぶちあたって、状況を限定することでアッサリ克服したのだ。旅団に強化系は何人か居るが、『判っている事態』に対して、ここまでの対応力を持つ男は他に居ない。

 

「なにやってるんだか。こっちからも行くぞ。構えな!」

「ハハハ。やってみたえ」

 まともにやって勝てないので連射をイメージして指を鉄砲の様に構える。

こうやった方がコントロールし易いと思ったからだが、まだ何か足りない気がする。特にこの男を前にしてから特にそうだ。

 

軽やかなステップを刻んでパチン。

二歩目は空中で僅かに足を留め、そこから踏み出すようにまた一歩。大胆にも背中を見せてパチンパチン。踊るようなリズムに合わせて指を弾く音が聞こえ……。フランクリンの体には無数の斬撃が刻まれた。

 

「ったく。こいつを足止めしろとか、シャルのやつ無茶言ってくれるぜ」

 敵は正面組を相手にしつつ、牽制しているはずのこちらをズタボロに変えた。

だが切り刻まれながらフランクリンは手応えを感じる。この傷は経験値なんだと思えば、ヘでもない。

 

ヒィッツカラルドは強過ぎる。

同じ放出系のフランクリンが威力の天井にぶちあたっているのに、だ。そのことがフランクリンに能力の正体を教えてくれていた。

 

バックハンドや掌で仰ぐ範囲攻撃だと、こちらと同じ威力。

余裕こそ見えるがソレは攻め手であり『補助能力』の結果なのだとしたら、威力の天井はこの男にも言えるのではないだろうか? つまりあのフィンガースナップだけが特別なのだ。

 

「あと少し、あと少し時間を稼げば洗いざらい持っていける。踏ん張れよ!」

「まあ無理だがね?」

 仲間の攻撃に合わせ、足元に集中的に打ち込むことで態勢を崩す。

それに対して男はスっと足を留め、優美な動きで腕を持ちあげた。そしてフランクリンを見下した目で嘲笑うのが見えた。

 

パチン!

澄んだ音が聞こえた瞬間、ただそれだけでフランクリンの人差し指が半ばから切り落とされたのだ。これでもう、指鉄砲のポーズでコントロールするのは難しいだろう。

 

「覚悟。覚悟の差か……判っちゃ居たんだよ。……なあクロロ」

 フランクリンはこの場に居ない男の事を思い出していた。

寝台列車ごと盗むと聞いて面白がり、今頃はこちらに向かっているらしい。だが、思い出されるのはかつての日々である。

 

気楽に生きていたはずのあの青年は、ある日から突如として豹変した。相手の能力を奪うという、恐るべき念能力を備え幻影旅団を結成する。

 

今思えば、旅団を作ってナニカしろと命令……いや使命のような物を流星街の長老たちから託されたのではないだろうか?

流星街には他にも旅団が存在したが、どうして結成されるのか? そしてその役目が何かは良く判っていない。

 

『人は犠牲なしには幸せになれないのか?』

 ある時、団長はとある本の言葉からそう引用していた。

あの時、なんとなくそうじゃねえかと流星街の現状を見て思っただけだ。ゴミ以外に何もない町で生き残るには犠牲無くして生き残れないだろう。

 

だが今ならば何となく判る気がする。

旅団とはその長を鍛えるための犠牲として、コミュニティそのものを人質に取ったのではないだろうか? そして旅団の長……場合によっては入れ替わった団長たちの間で次代の長老が決められる。

 

迂闊な事をすれば旅団……友人たちごと皆殺しにされるとあっては奮起せざるを得まい。

それだけではない、他の旅団と殺し合えと注文されたらどうだろう? そいつらが友人ではないとどうして言えるだろうか? その決定を覆すには勝つ以上に強大な力が必要なのである。

 

自分の命を、トモの命を、町の命を救うには犠牲無くしては進めないかもしれない。

だが欲しいモノがトモであるならば、その犠牲が出る状況を乗り越えなければならないのだ。その覚悟こそがクロロをして、あの能力に目覚めさせたのだろう。思えば長老の爆破能力も、命を資源化することで有効だと思わせる能力じゃないか。

 

「ああ。判っちゃいたんだ。勝手に天井を作ってるのは自分だと。限界を作ってもう何もしなくていいと言い訳を作っているのは自分だってな!」

 止血の為に握り締めた指を、ことさらに握り締めてフランクリンは吠える!

否! 必要以上に力を込めて引きちぎったのだ!!

 

「そんな自分に腹が立つ!」

 力を籠め過ぎて、興奮し過ぎて血が溢れ出る。

筋肉が締まって血を止めるが、そんなことも忘れるくらいに力と決意が溢れて来た。

 

「おい。やめとけって。後で縫ってもらえば……」

「いいんだよ。いや、これがいいんだよ! きっと、この方がいいに違いねえ!」

 フランクリンは仲間の言葉も無視して先の千切れた指を敵に向ける。

そして血が漏れるのも気にせず、オーラをそこに充填した。千切れた指先を銃口に見立ててこれまで以上のオーラを注ぎ込む!

 

「足りねえぞ! 俺を倒したかったら三倍盛ってこい!」

「ク……フハハハ。何とも素敵な強がりだ。もう少し遊んであげよう」

 最初に出た強烈な一発は、指を千切った覚悟への祝砲だろうか。

それだけならばマグレという事もあるが、続けて放たれる念弾は明らかに今まで以上の威力だ。皮肉にもヒィッツカラルドが回避を始めたことでそれが証明された。

 

明らかに自分に匹敵する威力を出されたことに驚きもせず、むしろ口笛さえ吹きながらヒィッツカラルドは踊り始める。怒涛のごとく放たれる念弾と真空波が、相殺どころか周囲を消し飛ばしながら銃撃戦を始めてしまった。

 

「あーもう無茶ばかりするんだから! 時間稼げって言ったけど、無茶し過ぎ! コルトピ! 第一段階発動だよ!」

「もうやってる」

 ここで行われるのは目眩ましだ。

流れ弾どころか余波を浴び、ラウジンジカーがグラリと軋む。それでなくとも先ほどまで念獣の大男が暴れていたのだ、長くは保つまい。

 

念弾で守り切れず、車両の天井が真っ二つになった時。シャルナークの指示で無数のアタッシュケースが出現。本物も偽物も周囲にバラまいておいた。今となっては御目当てはこんなものではない。

 

「あんたらもこのお宝が欲しくてやって来たんだろ?」

「ん? 荷物をばらまいたにしては多いね。……なかなか佳い悪足掻きだ」

 シャルナークとしてはお宝を守りつつ自分達への手立てを邪魔する。

そんな作戦……だと思わせておいた。本命は別に居るが、今は時間を稼ぎながら『凝』を誤魔化す材料に成ればいい。

 

そんな中で、ヒィッツカラルドは暫し動きを止めた。そして片手を挙げるポーズを見せる。

 

「まさか休戦ってわけじゃないよね? それとも十傑衆ともあろうものが怖気づいた?」

「いやいや。役立たずの念獣(バラン)を下げるように伝えただけさ」

 話がつながらない。

自分が戦闘を止め、念獣の大男も下げるという事は自然と休戦にならないのだろうか?

 

それともこちらと同じように時間稼ぎを?

そう思った時、ヒィッツカラルドがサディスティックな笑みを浮かべるのが見えた。

 

「十傑衆と言えば……今日は特別でね。実はもう一人来ているんだ」

「っ!?」

 ヒィッツカラルドただ一人で旅団の半数を圧倒している。

それなのに、まだ居るというのか!?

 

その答えは彼方から伸びてくる長い鞭。

そして無数のアタッシュケースの中から、一つを奪い去る巧みな鞭捌きである。

 

「残念ですねえシャルナークさん。私は君が割と好きだったのですが」

「まさか陳さん!? コルトピ、あれは?」

「……駄目。持っていかれた」

 それを実行したのは交渉していた陳というターバンの男だった。

鞄を開けた時に見えたのはよりにも寄って本物の緋の目。どうやって見破ったと言うのだろうか?

 

「ある時はオイルダラー。ある時は万能執事ミスター陳。その正体はBF団十傑衆が一人、”眩惑”あるいは”幻惑”のセルバンテスと申します」

 

ここに来て二人目の十傑衆が現れるという衝撃の展開。

戦いはいまだ途中、双方の思惑が秘かに進行しているのであった。

 

●次回予告『真実の世界へ向け、バシュタール号で明かされるGR計画!』

 現れた二人目の十傑衆。

その眼力は無数のダミーをものともせず、容易く緋の眼を奪い去った。

では以前に渡した偽物も見抜かれているのか? そして怨念渦巻く品を次々に奪い去ろうとする、その目的とはいかに!?




 という訳で蹂躙vs策略回です。

旅団メンバーが蹂躙されるとかねーわ。と思われる方はプラウザバックの前に、数年前。
まだまだ彼らが強く成る前だと思ってください。
フランクリンで言うと顔に傷がなく、指もまだ切り離してない時期。
強くはあるけど当たり前の強さ(上限まであがっておいて当たり前とはいったい)。
これから原作の強さを手に入れていく、発展前の時期という感じになります。

●ホースと水の関係
 大量の水がオーラの総量として、出力はホースの直径の大きさ。
でも瞬間的な威力は小さくした方が、勢いを増します。それが誓約と制約の効果の一部。
ヒィッツカラルドは難しい条件をクリアして放っており、フランクリンはまだでした。
それが原作と同じ、切り離した指先から放つことで、劇的に威力を高めるという展開。

●旅団の目的?
 あくまで考察の一つであり、Gロボの『犠牲無くして……』に絡めて選んだもの。
次の長老を決めるための試練であり、失敗したらコミュニティごと始末される。
だから最初に選ばれた団長は絶対だけど、旅団そのものも重要。という考えですね。
旅団を運営して凄い組織になれるならば、街の運営に関わっても問題ないレベルまで成長。
旅団同士で争って上に立てる強さならば言う事は無いし……。
相手の旅団を降伏させ、周囲にも傘下に入れる利益を提示できれば、双方ともに活かせる。
でもその強さは単に強いだけではなく、圧倒的強さと能力を求められると捏造『考察』しています。

しかし、そう考えれば納得できることがあります。
能力を奪う条件に『生きている事』があることで、相手を降伏させて生かす意味が出る。
長老の人間爆弾化も、住人に街への愛着を抱かせる必要があるので……。
人間がゴミではなく、有効な資源に変わるという訳ですね。

●”眩惑”あるいは”幻惑”のセルバンテス
 十傑衆の二人目。
ミスター陳というのは、Gロボの元ネタであるバビル二世に登場した時の名前。
せっかくなので偽名の一つとして利用してみました。
Qボスとオロシャのイワンを兼ねているので、まあこんなものかなと。
能力は『PK-MT』あるいは『確率操作能力』

念系統:操作系または変化系との混合

発:
舞台演劇(サイコドライバー)
 状況あるいは相手の思考を歪ませ、特定方向に誘導する。
熱量を集めるだけでも炎を生み出せるが、その真価は行動や思考のを誘導。
人の心を操ることで、緋の眼ほかお宝を囮に使う事を決断させた。
本物を見つけ出したのも隠す心理から見抜いたこと、そして確率そのものも操れる為。

なお他人を操作することにおいて圧倒的ながら、戦闘能力はそれほど強くない。
あの長い鞭はそのための物なのであろうか?
まあGロボの展開をある程度真似てるので、予想は可能だと思いますけどね。
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