世界が静止する日【第一部?完】   作:ノイラーテム

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 たった一人によって蹂躙され追い詰められた幻影旅団。
強者との実戦によって急激に成長する彼らだが、無慈悲な宣告が告げられる。

『今日は特別でね。実は、もう一人居るんだ』

一人で旅団の半数を圧倒する十傑衆がもう一人。
仲間の全員が揃っていない以上は全滅もあり得る絶望的なこの状況。果たして覆すことはできるのだろうか?


真実の世界へ向け、バシュタール号で明かされるGR計画!

●向かうべきベクトルと、存在強度

 沈み始めた太陽の代わりに緋の眼が燦然と輝いている。

アタッシュケースから取り出されたソレは、いまや復讐者となって旅団(はんにん)を見つめているかのようだ。

 

「素晴らしい。この威容、この澄んだ殺意。もしや貴方がたが手づから収穫されたのですかな?」

(……殺意だって?)

 その言葉にシャルナークは違和感を求めた。

いかにも蒐集家が美術品を愛好しているような姿だが、とてもそうは見えない。言葉でそう言っているだけでなく……まるで武装を値踏みしているような気がするのだ。それこそフェイタンが銃のバレルや残弾を確認するかのように。

 

(どうやってこれだけのコピーの中から見つけ出した? オーラで? コピーもまた念だ)

 ただの美術品とならばオーラで区別できる。

団長が言っていたような気もするが、素晴らしい作品や料理にはオーラが篭り『格』が違うのだという。

 

だから凝でお宝を見分けてみることも偶にやるのだが、それだってコルトピがコピーした際にオーラだらけのはずだ。本命の作戦実行に当たってオーラを隠し易くするため、コピーだらけにしたのだから。

 

(でも殺意? 品に籠った殺気と言うならアレは確かに相応しい。あいつらなら死後の念にでも成り……死後の念?)

 セルバンテスが言うように殺害犯は旅団なのだが、その時のことを色々と思い出していた。

目を赤く輝かせると強く成り、しかも死んですらこちらを睨み続けるあの眼。彼らが念能力者に近い存在であれば、思い当たるフシが存在したのだ。

 

「死後強まる念……ね。呪いでも掛ける気かな」

「素晴らしい! 半分ほどではありますが正解です。だから私は君が好きなのですよ」

 この連中は秘密結社ではない。

顔を晒すことが一流の条件であり、能力を知られても問題ない程の腕前が精鋭の条件。ならば独特の制約と誓約でもあるのかもしれないと、あえて聞いてみた。

 

知られることが、説明することが条件の一部ではないか?

言われてみれば知られても問題ない程の強さで蹂躙すればよいのだから、知られて困ることなどないのだろう。だとすればあえて聞くことで説明してくれるのではないだろうか?

 

自分達はスタコラ逃げるつもりなので強化されても構うまい。ゆえにシャルナークは無責任に聞いてみた。

 

「先ほどの念獣はバランと申すのですが、あれには二つ足りないものがあります。一つは言うまでもなく実力。貴方がたならば他愛もなく倒せるでしょう?」

「違いないね。よくできたガラクタだよ、アレ」

 何となく言わんことは理解できた。

大男の形をした念獣は厄介ではあったが対処は難しくない。百体・二百体と居るなら別にして、増援のない状況なら戦闘の苦手なシャルナークですら一人一殺は確約できるし、数人で班を組んで対処すれば瞬殺すら可能である。また操作系独特の問題ゆえに直接関与できる念は持ってないが、念獣専用の攪乱術でも覚えていたら、同士討ちも可能かもしれない。

 

要するに中途半端であり切り札には到底成り得ない性能なのだ。

知られても困らないことが連中の基準であるならば、物足りないどころではあるまい。精々が警備兵として使い捨ての駒にするぐらいだ。

 

「ですので稼働するだけでオーラを食らう念獣を用意してみたのですよ。死後強まる念ならば怨念増殖炉になりそうでしょう?」

「イカレてるよあんたら。何の為に、何と戦う気だい?」

 あの大男でも弱いので他者のオーラを食らって強化する力を与える。

おそらくはセルバンテスの能力でも強化し始めたのだろう。彼方にオーラを感じるのだが……会話を続け、質問を続けるたびにドンドンとオーラが強く成るのを感じた。

 

凝もそのうち不要になりそうだ。そんな存在を何に使うのだろうか?

 

「もちろん我らがボス、ビッグファイア様の為に! 外世界を征服する為のGR計画ですぞ!」

「じーあーる……計画?」

 セルバンテスは瀟洒なスーツの腕をまくり上げ、妙に厳めしい腕時計を見せた。

カチリと押せばアンテナが飛び出すギミックは、なんとなく格好良いと思う辺りシャルナークも男の子である。そしてその仕草に自分と通じるモノを感じて嫌な予感がする。

 

あれは自分と同じ操作系ではないだろうか?

そしてセルバンテスがシャルナークと似たようなことをできるとして、使い捨ての相手や念獣専用の強化能力(ドーピング)があるのだとしたら?

 

「さあ来い、GRⅡ!」

「うわっ!?」

 ズン、ズン、ズン。

一歩一歩と踏み出すたびに、溢れるオーラがまき散らされる。きっとまだ未完成なのだろう……垂れ流されるオーラが放出系の攻撃の様にすら感じられてしまう。

 

そこに現れたのは鋼の巨人だった。

空洞からはオーラが溢れ、試験運用としても3mか4mありそうな巨体を容易く動かしている。

 

「このデカブツ。フランクリンよりでけーじゃねえか。コイツも奪って帰りゃあいいのか?」

「甲冑? むかし戦争で使てた大鎧か何かね。コロスの骨が折れそうよ」

「ちょっと黙ってて。もう少し聞きたいことが……って。あーもう、色々と台無しだよ!」

 本命の作戦の為に時間稼ぎしながら、可能な限り情報を奪っておきたかった。

今回はお宝奪って逃げるのが趣旨になったので、相手の強化と引き換えに情報を聞き出していたのだ。

 

しかしシャルナークとセルバンテスによる言葉のキャッチボールは中断され、駆け引き無しに戦闘になりそうである。

 

とはいえここまで来ればすることは一つだ。

 

「叩け、GRⅡ!」

『マ゛ッ!!』

「速っ……?」

 さながら水辺のピポポタマスであるかのようだった。

サイズに合わない身軽な機動と、サイズに見合った膂力と移動力。アッサリと接近されて直撃でもされたのか、誰かが一撃で吹っ飛ばされる。

 

ピポポタマス……カバの突進の前には獅子や虎が瞬殺されるように、ただの一撃で倒されたのだ。

体は既に停止した車体にめり込み無残な最期を……。

 

「……クソっが!!」

「あ、生きてる。オメデトー」

「ちゃんと死んでおくね。迷うのよくない」

 騙されたならとかく、油断して死ぬ方が悪い。

淡々としていた仲間たちは運の良い仲間の無事を喜んで見せた。

 

さて、運が良いとかご都合主義はありえない。なにが原因なのだろうかと頭の方はフル回転している。

 

「咄嗟に『堅』で防御したんだよ! ちゃんと回避もな!」

「篭手、浮遊してるね。きっとそれで間合いを誤魔化したね」

「それよりも伝達速度と判断速度がヤバイね。指示受けてから、ちょっ(ぱや)じゃん」

 フェイタンが見抜いたのは、大鎧の腕が射出されたことだ。

間合いが長くなって回避機動を捉えたが、代わりに威力が落ちたのだろう。そしてシャルナークが見抜いたように指示を受けてからの動きも速いが、避けられると判断して射出攻撃への切り替えも異様に速い。

 

「ですが思ったよりも威力が出てませんね。サイズ不足か、それとも燃料にしているオーラが思ったよりも弱かったのか。まあ貴方がたの売り物です。巡る因果でしょうか」

「そいつぁどうも。自業自得じゃねえか」

(ということはコルトピのコピー? ……なら、もしかして)

 血反吐を吐きながら立ち上がる仲間を無視し、シャルナークは冷静に思考を巡らせていた。

ワザワザ自分たちを悔しがらせるために、自分たちが売った物を選んだとは思えない。単純に基準値に達する物がなく、売りつけたコピーが当て嵌ったに過ぎない。

 

「コルトピ。念の為に尋ねるけど、あとどのくらい保つ?」

「あと半日」

 デスヨネー。

苦笑しながら情報を整理していく。

 

出力が足りてなのは、死後強まる念ではないからだ。これは良い面。

本来ならば瞬時に食いつぶされるのだろうが、コルトピの能力は一日と期間が決まっている。これが悪い面に当たるだろう。

 

「十傑衆が二人にバカみたいな性能の念獣か。こりゃあ骨が折れるなあ」

「ではどうするかね? 私もそろそろ暇を持て余して来たのだがね」

 ニタニタと嘲笑うヒィッツカラルド。

手を出していなかったのは余裕もあるだろうが、適度なところで絶望を味合わせうつもりだったのだろう。本当にコイツ性格が悪いな。きっと十傑衆の中でも一番の小物に違いないと、心の中で舌を出しておいた。

 

「そりゃあ盗賊団だからね。お宝奪って逃げるに決まってるさ」

「ハハハ! それは傑作だ。できるものならばやってみたまえ。ただね……一歩でも動いたら命の保障はしないよ?」

 よほど傑作だったのだろう。腹を抱えてねじる様に笑う。

なにせ戦いはゲームのように『お互いのターン』など存在しない。同時進行で思考するし、片方が対策を考えるならば相手もソレを事前に潰せるのだ。

 

旅団側が何か対策をするとして、ここまで有利なBF団側がソレを見逃すだろうか?

否! 何もできないように次々に攻撃を撃ちつつ、新たな奇策ごと叩き潰せる実力と経験を持っているに違いない。

 

まさに窮地、まさにピンチ。

千日手ですら命を長らえさせるに過ぎない! このままではこの場に居る『八名』全員が殺されてしまうだろう。

 

「じゃあ、少しだけ悪足掻きをしちゃおうかな」

 そんな時、シャルナークは不敵に笑って携帯電話に向かって呟いた。

彼が念能力を使うためには、そんなことをしたらいけないのに。

 

否、否否否!!

発を使って他人を操るのが難しいと決まった時点で、彼は最初からここには居ない仲間へ連絡を送っていたのである!

 

ゆえに一言、こう叫ぶだけでいい!

 

「叩け、ウヴォー! ビックバン・インパクト!」

『う、おおお、おおおおお!!』

 先ほどのセルバンテスの真似をして見せた。

その瞬間に断崖絶壁が『足元から』不自然に盛り上がる!!

 

猛烈なオーラが弾け一同が戦っていた戦場を吹き飛ばしたのであった!!

 

●次回『世界を導く北辰 全てはビックファイアのために』

 断崖絶壁での死闘は、最初から旅団の仕掛けた罠だった。

崩れ行く大地に紛れ、BF団と幻影旅団は殺意と狂気を交わし合う。

 

『求め続ける事にこそ価値がある』




 という訳で解説と逆転回です。理屈と説明多すぎて面白くない?
「パンチだ、ウヴォー!」CV:山口勝平
全てはこれがしたかったに尽きます。

シャルナーク:時間稼ぎ

セルバンテス:説明すればするほど、状況を望む方向に変動させられる

というお互いの目的の為に呑気な会話をしていました。
シャルナークはこっちに向かってるはずのウヴォーギンに対し
「あの辺一帯をぶっ壊して」と連絡して、その間にお宝にマチの糸を括りつける予定。
そもそも最初から来てないので、間に合うかどうか怪しいために
自分たちが脱出する可能性を含めて断崖絶壁までおびき寄せた感じですね。

逆にセルバンテスはGR計画の最初の段階を達成するため
オーラを食らう怨念増殖炉を稼働。その暴走がBF団の要求する方向に向かうよう
彼の能力で補強する必要があるのですが、相手に喋らせる必要があるので会話。

念獣:大鎧『GR』
 かつての戦争・威圧用に使われた戦闘用重甲冑をベースに、色々と改造したもの。
基本的に念で動かす絡繰りであり、強化外骨格のイメージ。
いまではオーラを消費して動くタイプの念獣になっており、『死後強まる念』を使い
ちょっとやそっとでは消費されず、その強度も大きなものにしていた模様。

用途に従い『百勝』『双鞭』『天目』『豪天雷』という四機が製造される予定。

●GR系計画
 本筋とそしてはまだ不明。
しかし第二段階では外世界進出を行うため、二つの能力が必要になった。
一つ目は外来種の強度に匹敵し、なおかつ高速演算可能な戦闘力。
二つ目は洗脳・ハッキングが当然と考えられるので、ソレを跳ねのける強固さ。

要するにこの二つを兼ね備える素材が、『死後強まる念』での強化である。
真の計画はその延長上にあるとされるが、いまだ知るものはいない。
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