世界が静止する日【第一部?完】   作:ノイラーテム

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大団円-満ち足りしは、幻の蜘蛛

 流れ出る血潮とオーラが無数の針となって射出される。

針による殺戮の宴。もはやここが断崖絶壁の峡谷だったとは思えない。

 

「……いた。居やがった。……生きていやがった!!」

 フェイタンが憤怒の表情を浮かべたのは一瞬。

一転してウットリとした笑顔に切り替わった。

 

「ククク。アハハハあ……あァァー~。十傑衆ともあろうものが情けない姿ね」

 捕虜にして連れ帰り、秘密を洗いざらい吐かせれば多大な利益になる。

旅団にとってもそうだし、フェイタンは仲間から一目置かれるようになるだろう。自分たちをたった一人で蹂躙したヒィッツカラルドを仕留めたという事は、それだけの功績なのだ。

 

だがしかし、そんなことを考えたのは僅かな間でしかない。彼の理性は蒸発し、かつてないほどの欲求が鼓動と彼自身をエレクトさせる。

 

年頃の少女が抱く恋心の様にドキドキと。

 

その辺りに落ちていたガラスの破片を握り締め、ヒィッツカラルドの腹に突き刺した!

 

「グゥ……。おの……れ……」

「生き恥を晒したくないだろう? 助けてあげるね」

 フェイタンの早鐘の様に打つ心臓はまるで乙女の様ではないか。

ズブリと肉を割く手応えに自然と笑みが零れてくる。後ちょっと、後ちょっとくらい突き刺しても死なないだろう。もう少しくらいは深く突き刺しても構わないか?

 

耳元で舌なめずりしそうな程に息を荒げ、興奮し、ガラスの破片を強く握り過ぎてヒィッツカラルドのものか自分の血なのかすら分からないほど滲んでいた。

 

ああ、いけないいけない。

このままでは簡単に殺してしまう。もっと屈辱を味合わせなければ。

虫けらの様に追い回されたのは屈辱の極みだった。それが勝利によって逆転する。この時の為だったと思えば全てが許せる。楽しい、愉しい、たまらなくタノシイ。

 

「誰かに獲物盗られない内に済ませてしまう良いね。あぁ、でも、もし生きてたら情報もらうよ」

 普段のフェイタンは好悪の感情を我慢しない。

その場で垂れ流すし誰とでもサッパリした付き合いをする。信用できないと口にし嫌いだと口にし、腕前を見ればそれなりの評価をする。昨日まで殺し合った連中と酒を飲み、昨日までの知り合いと簡単に殺し合える。入れ替わった新人に遠慮ない口出しするのも平気でやっている。

 

だから彼は憎しみも恨みも持続させない。

ヒッィツカラルドに対する恨みはここで思う存分済ませてしまおう。思い切りズブリとやって死んだらそれまで。生きていたら仲間の元に持ち返って情報を洗いざらい抜き出せばよい。そう思って一気にガラス片を突き出した。

 

「直ぐに殺してくれ言うようになるね。ワタシこれでも凌遅刑、得意中のとく……」

 肉が割ける感触や苦悶の声を聴くのは何より楽しい。

どうやら咄嗟に防御したので死んでないようだが、ここで切り刻めば死ぬだろう。そう考え思い切り腹を抉っていくと、途中で軽い手応えがした。

 

そしてフェイタンは奇妙なモノを見つけたのである。

 

 

 やがて細い糸が谷底へ降りてくる、無数の針が突き立つ中に三人ほど。

見渡すところ針ばかりで、かつて生物だったモノはみな貫かれて針山と化している。

 

「針による絨毯……まさしく絨毯爆撃ってやつですね」

「シズクって意外とオヤジギャグ好きだよね」

「つまらねー冗談言ってんじゃねえよ。邪魔っけな針をどうにかしな」

 シズク・ムラサキは無表情のまま掃除機を出現させた。

そして『血や体液で作られた針を吸って』と口にした途端、目の前にある針山が消滅したのだ。そこには元の峡谷と列車であった物の一部が転がっている。

 

「フェイタンのやつ生きてんのか?」

「どうだろうね。今回戦ったヒィッツカラルドと『ペインパッカー』の相性は良いから、勝ったとは思うけど相打ちの可能性はゼロじゃないとは思うよ」

 刀使いの質問にシャルナークは曖昧な言葉で返した。

ペインパッカーは大規模カウンター能力だ。サディストらしきヒィッツカラルドがフェイタンを追い詰めれば追い詰める程に大ダメージを発生させるが、それは仲間の生存に直結しない。

 

「誰がそんなマヌケか。生きてるね」

「おっ。無事だった」

「ズタボロじゃねえか。上にみんな居るから、さっさと縫ってもらいな」

 やって来るフェイタンは足を引きずり、千切れかけた片腕を縛って止血していた。

体中に切り傷があるが、オーラで防御してなお相当に攻撃を食らっていたのだろう。顔色も悪く今にも倒れそうだ。

 

「そうさせてもらうね。あとコレ、ヨロシク」

「戦利品か?」

「ていうか人だよね。……誰?」

 フェイタンが無事な方の腕で抱えていたナニカを転がした。

縄代わりにカーテンか何かで縛られているが、そいつは見たこともない男だ。

 

頭部がスキンヘッドの黒人だが……。

何より奇妙なのは体のあちこちに穴を空けている事だ。それも昨日・今日になって空けたものではなく、当然ながらフェイタンの放った針で傷ついたものではない。

 

「戦利品と言えば戦利品ね。良く判らないから団長に考えてもらうがいいね」

 なんにでもイラつく代わりに後に感情を引きずらないフェイタンが、珍しくブスっとした表情を見せている。

戦いに勝利したはずなのに、まるで勝ち逃げでもされたかのようだ。もっともヒィッツカラルドが生きているのならば、もっと悔しそうな顔をしているか、さもなければ警戒しているだろうが。

 

「なんだ? どういうことかサッパリ判らねえ。おいフェイタン、ちったあ説明をだな……」

「あ、この人生きてますね」

「聞こえる? 君って誰だい? 何をしてたの?」

 何も答えないフェイタンに刀使いが問い詰めるがまるで反応がない。

代わりに簀巻きにされた黒人男にシズクとシャルナークが反応を示した。こうなれば刀使いの方も仕方なく、男を担いで二人の方へ顔を向けてやる。

 

「お、おれ、オレはボノ……レノフ。世界で……もっとも、美しくたた……かう一族……。おれが、オレこそが……」

 その名前は聞いたことのない名前であり、知らない顔に対して謎は深まるばかりだった。

一体、この谷底で何が起きたのだろうか?

 

●その名は……

 薄暗い部屋の中で本が開かれる。

黒い豹の描かれたページに指を挟み、オーラを流し込むとグニャリと絵が動き出した。そいつは地面に降り立った後で、ドロドロと粘液状に形を変えて倒れている男を後ろ手に拘束する。

 

そのまま部屋の天井に吊り下げれば踏みしめる大地もなく何もできなくなるだろう。

消費オーラも少ないので長時間拘束にはピッタリの能力なのだが、捕縛目的の能力ゆえ強制的に眠らせるしまうために尋問できないのが残念なところだ。

 

「十傑衆。倒したと思たらコイツになたね」

「本当かよ? 身長とかはともかく肌の色とか全然違うじゃねえか」

 謎の男を連れ帰ったフェイタンの言葉に仲間たちは疑問の声を上げる。

とはいえ戦利品の質を高めるために、抗議をしているわけではない。謎を解くために現実に起こったことを淡々と告げているだけだ。

 

「……だ、そうだが。シャル、お前の見解は?」

「うーんそうだねえ。まずコイツはヒィッツカラルドの部下で、お互いの位置を入れ替えたとか、姿ごと能力を借り受けた。……ってのが考えられるかな」

 転移能力は極めて希少だが、狙って取得できない訳でもない。

強力な放出系が前提になるが、キーがヒィッツカラルドならば十分だ。その上で重要な部下を犠牲にすることを前提に、もう幾つか条件を付ければ可能だろう。

 

もう少し簡単な方法は、外見と能力をレンタルすることだ。

旅団の長であるクロロがそういった能力を持っている。例えば今使っている粘液に変化する黒豹は、その能力で取得したものだ。転移に関する仮定と同じように難しい条件を付ければ可能と思われた。

 

「だがお前は違うと考えている。事態はもう少し深刻だと?」

「うん。だってそこまで大げさなことをして、目標が『死後の念』を持つアイテムだなんて釣り合わないよ。仮に団長がその能力を奪ったとしても、オレ達の誰かを犠牲にしてウヴォーやフランクリンを呼ぶとかありえないでしょ?」

 復讐だとかメンツが関係すれば別なのだろうが、普通はコストというものを考える。

倒されなければ犠牲は出ないにしても、他にも幾つかの条件はあるだろう。大したことのない獲物の為に犠牲を考慮しては割りに合わないのだ。

 

「団長やパクを守る為なら許容範囲だが、俺らじゃあ割りに合わんな」

「そういうこと。もう大前提がおかしくなっちゃうんだよ。もっと大掛かりな目標の一環だとか、コイツもまたGR計画とやらの実験ならまだ判るけどね」

 もちろんクロロを始めとするレアな能力者を守る為なら仕方ないという場合もあるだろう。

しかしヒィッツカラルドに相当する旅団メンバーはフランクリン辺りになる。鉄砲玉を守るのに鉄砲玉を犠牲にしていたのでは、作戦にしても組織運営にしても成り立つはずがない。

 

「実験。実験ねぇ……何をやってんだか」

「むう。どういう事だか、まったく判らねえぞ」

「念獣の話じゃ外世界に進出する為とか言ってた気もするけど、コイツと何か関係してるのか今のところ判んないね」

 結局のところ情報が少な過ぎる。

そう結論付けようとしたところで、クスクスと笑い声がした。

 

一同が顔を向けるとそこにはメンバーの一人、ピエロにも似た男が座っている。

 

「本当に気が付かないのかな? ヒントはとっくに出てると思うんだけどね♦」

「あん? んなの何処にあったよ」

「判たならささと言うね。コイツの代わりに痛い目あいたいか」

 ピエロの言葉にイラッと来て答えを強要するが、どうしようかな~とはぐらかす。

答える気がないのであれば最初から口にすまい。からかっているだけなのだろう。

 

「彼らが自分たちで言ってるじゃない。ビッグファイアの為♥だってさ。本物が居るなら偽物で我慢する必要なんかないよね♠」

 ピエロは最初に自分たちを指さし、次に団長であるクロロを指さした。

 

先ほどの例とちょうど逆だ。

鉄砲玉どころではなく限りなくレアな能力者が十全に動けるための手段であれば、その辺りの能力者を犠牲にしても問題はない。負けなければ死なないのであれば言う事もないだろう。

 

「奴らの首領をか!? そりゃあどうせコピーするなら強い方だが……」

「いや。ヒソカの言う事も判る。盲点だったな……確かに連中の頭は目撃例がない」

 ピエロ……ヒソカと呼ばれた男の言葉をクロロが認めた。

最初は半信半疑だったメンバーも、団長のいう事ならばと荒げた声を潜める。それにBF団の首領が目撃されていないのであれば、考え得る状況が幾つかあるのだ。

 

「十傑衆ほどアクの強い連中が首領が不調なのに従うはずがないと思っていた。だが本当に不調で動けないのに、それでもなお従わざるを得ないほどの実力者であるとしたら?」

 重傷であるとか、昏睡状態であるとか。

もしそんな理由で動けないが、凄まじい特殊能力があるならばどうだろう? BF団の首領ビッグファイアが自由に動くことが目的になっても何の不思議もないだろう。

 

「それってハンター協会のネテロ会長とか、ゾディアック家の長老とかクラス。最悪それ以上ってことだよ?」

「だからじゃない? その二人って確かに外世界に行ったって話だよね」

「詳しいじゃねえか」

 例に挙げられた人物は念能力者の中で金字塔と言える人物だ。

半ば伝説と化しているが、もしそんな人物級ならどうだろうか。それ以上の強さ……はありえないにしても、そのクラスの能力者でレアな特質系ならば辻褄が合う。

 

そして、その人物が外世界に行ったことがあるとしたら意味が通る話も出てきてしまう。

最初に出て来たバランという念獣は量産タイプとしては高性能なのに強さが足りない。その後に出て来たGR-Ⅱでもまだまだ。と言っていた。

 

果たして、どの基準は何処からきたのか? 実際に戦ったからだ。

そして、コントロール奪取の警戒も含めて『死後の念』を求める理由が判るのだ。何しろ外世界に行った連中は、同士討ちや洗脳を含めてアッサリ全滅したとのことである。

 

「……シズク。体内にある薬品を指定して抜き出せるか? 複数ある内の一つをだ」

「どんな薬なのかさえ判れば可能ですよ。一番新しいとか、一番最初に使われたとかでもいいですけれど」

 クロロは何事かを悟ると、これまでにない難しい顔をしてシズクに尋ねた。

キョトンとした顔で返す彼女の言葉を、クロロはずっと吟味している。

 

「その昔、V5に連なるお抱えの研究所で噂になったことがある。外世界から持ち返った標本の第一級資料。そこから取り出した成果物の第一とでも言うべき貴重な薬品があると」

「まさか団長!?」

「知ってるのかシャル?」

 クロロとシャルナークは顔を見合わせ、仲間たちは邪魔をしないように黙った。

その様子を楽しそうにヒソカは眺め、どんな楽しい話になるのかと興味を示している。

 

「普通、研究素材とか成果物の番号って発見順なんだよ。でも、ソレに関しては有用過ぎて機密指定の順番が入れ替わってる」

「そうだ。指定番号1の1。世界最重要機密……その名は超人薬ワン・ゼロワン」

 V5が所有する標本とは外世界の汚染に耐えきった被験者。

その成果物とは汚染を再利用して作られた、誰もが超人に成れる薬であるという!

 

そしてボノレノフと呼ばれた黒人より、名前指定で吸い出されたことでその薬の存在が確定された。

 

「奴らの首領は世界政府に捕まってるってことか?」

「決まったな。連中が奪い返しに行くなら横からかっさらっちまおうぜ」

「推論だから本当かどうかも判らないけどね。まあ今は情報待ちかな」

 こうして幻影旅団の目的に一つの遊びが加わった。

BF団とV5の抗争に首を突っ込み、奪えるモノを奪うという事だ。

そこに同情などなく、あえていうならば自分たちに喧嘩を打ってきたBF団に逆襲してやろうというくらいだ。

 

彼らの行く末がどうなるかは分からない。

だが世界が続く以上は物語もまた進んでいく。

機会があれば『白昼の残月』そして『ドミノ作戦』について語られることもあるだろう。

 

今は幻影旅団がお宝を奪い、見事にBF団の目的を見抜いたことで大団円としよう。




 という訳で第一部完というか、クロスを思い付いた範囲を終わります。
ここまで読んでくださった方には感謝を。

このシリーズはアニメのジャイアントロボ地球が静止する日と
ハンターxハンターをクロスして、特に十傑衆を登場・戦闘させてみようという物でした。
なので基本的にはジャイアントロボのストーリーを下敷きに再現した感じ。

それなりに再現度は高めたつもりですが……。
欠点としては再現度と整合性を気にするあまり、ダイナミックな戦闘・陰謀に欠けた事が残念な結果になりました。
これならヒィッツカラルドの能力を参考にしたオリ主が無双する話の方が面白かったかもしれませんね。Gロボみたいならアニメ見た方が良いわけですし。

●今回のパロディというかネタ
 追魂奪命剣から「生き恥を晒して苦しいだろう?」に繋ぎ
アキレスの牢と十傑衆裁判、そしてサニー・ザ・マジシャンとビッグファイアの覚醒。という感じに進んでおります。
初期に名前を出したメンバーにフェイタンが居るのは、レッドと十常寺との兼役。
最期はGロボではなく、元ネタのバビル二世の続編「その名は101より。
なお「ナルトの後半みたいだなって思っちゃいました」「思うだけでやめとけ」という原作のメタ会話を入れようかと思いましたが、止めておきました。

●この世界のGR計画
第一段階:強い念獣を生み出すために材料、死後の念アイテムゲット
第二段階:外世界に通じる戦闘力と、汚染対策を確保
第三段階:能力の奪取は流行ってるけど、その逆をやって、能力者コピー

究極的には外世界に行ったり、戻ってからV5によって問題の生じたビッグファイアを、無事な状態のデータを元に覚醒させる。ということです。
外世界の汚染や政府に人体実験に対して、BF様は御心を閉ざして防御されているので、目覚めさせてあげよう。と説明を受けています。

ちなみに元ネタのバビル二世は1万3000年前に現れたエイリアン。
似た伝承のある鞍馬尊天魔王尊(サナトクラマ)は650万年前に金星からやって来た少年とか。
こんな人を蘇らせて世界が無事に済むかは判りません。


●ボノレノフ・ンドンゴ
 超人薬を打たれ、セルバンテスの『舞台演劇』で洗脳されていた可哀そうな念能力者。
彼が音楽を奏でると強力な念を発するので、ヒィッツカラルドの再現に使われたらしい。良く似ているとはいえ具現化系なのに放出系の真似をさせられたことで、これでも最大火力は落ちているのだとか。(平均アベレージは上がったが)
今回の件で団長に助けられた形になり、恩を感じて旅団に加わる設定になる。
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