赤き朝空へ   作:アンジョロ

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どうかお付き合い下さい。


第一章 日出る国でも日は落ちる
プロローグ 死せる孔明


正に恥でありました、軍全体の運営を一手に任されておきながらこのような結果になってしまったのは。

ですが私にも意地というものがあります。

これから私が行いますのは五丈原(ごじょうげん)の再現でございます。

深海棲艦が出現してこの方、たった一度の白星すら飾ることができなかった私が諸葛亮(しょかつりょう)を名乗るなど恐れ多いにも程がありますが。

全く、勝てないならまだしも押しに押されて遂には我らが国民の生活を直接、物理的にかつ大いに脅かすまでにしてしまうとは…戦術家の名が大声を上げて泣き喚いているでしょう。

わたしの最後の足掻きでございます。

対馬に打って出た大艦隊は壊滅し、戦闘能力のある船の殆どを失い艦娘の海上指揮を取る事はもはや叶わないでしょう。

恐らく沖縄周辺の制海権を取り、対馬を抑えた奴らは次に津軽海峡、もしくは宗谷海峡の封鎖にかかるでしょう。

 

是非、まだ私の上奏がかなうのであれば津軽海峡、宗谷海峡は捨て置いてください。

宗谷海峡に関しては何ら実用性はありませんし、津軽海峡には青函トンネルが有ります、北海道ともある程度の連絡は可能です。

ただ平舘(たいらだて)海峡、陸奥(むつ)湾に関しては死守せねばなりません、青森県民の生活が掛かっています。

が、そこについては前々より多数の陸戦砲(りくせんほう)を配備して来たところですので、それら陸上戦力と少数の艦娘で防衛が可能でしょう。

平舘海峡防衛の詳しい戦術は乙舳(おっとも)君に全面的にお任せします。

ではそれらを捨て置いて温存した戦力はどこに置くのか。

 

瀬戸内海です。

 

北方の海を抑えた奴らは必ず我が国の息の根を止めにきます。

そうなれば瀬戸内海への侵攻は必須事項でしょう。

シーパワーを主とする我が国にとって全ての海域の制海権を失う事は死を意味します。

たとえ運良く生き残りどこか他の国が深海棲艦を世界から駆逐してもランドパワーに飲み込まれるのがオチです。

そうならない為にも瀬戸内海の防衛は我が国の戦力、いや国力の全てを捧げて遂行せねばなりません。

幸い艦娘と言う新戦力はまだ発展途上で多くの可能性を秘めております。

彼女らをうまく運用できるものさえいれば戦局をひっくり返す事も夢ではありません。

では、瀬戸内海をどの様に防衛すれば守り切ることが出来るのか、司馬懿しばいを走らせることが出来るのか。

どうか、どうか未来ある諸君の手でこの史上最大の国難を退けてください。

その戦略を以下に示します。

 

先ず新たに基地を三つ建設してください。

場所は山口県下関市(しものせきし)、徳島県阿南市(あなんし)、愛媛県宇和島市(うわじまし)の三つです。

大規模な工事は必要ありません、護衛艦等が接岸できさえすれば十分です。

これらの基地は艦娘のためにあります、彼女達が快適に過ごす事ができ、艤装の修理ができ、訓練ができ、出撃ができ、そして人間生活をきちんと営む事ができれば結構です。

これで瀬戸内海の入り口の補強になります。

戦力は大都市が近い下関、阿南に集中させてください、特に下関は敵の拠点になるであろうと考えられる対馬が近いので気をつけてください。

恐らく佐世保基地は私と共に使い物にならなくなっている事が想定されます、津軽、宗谷が抜かれた後は瀬戸内に全てを捧げる為に以上3つの基地に戦力、主に艦娘を配備させてください。

この3つの基地こそが我らの死戦であり、絶対防衛戦線であり、背水の陣となります。

その後の戦略に関しては同封する封筒を参照ください。

瀬戸内の防衛が失敗した場合と成功した場合の二つに分岐しています。

瀬戸内を防衛出来た場合その双方を開封してください。

万が一にも力叶わず瀬戸内が敵の手に落ちた場合青色の封筒のみを開封してください。

以上、よろしくお願い致します。

 

そして誠おこがましい事ではございますが、我が弟子を気遣う事をお許し下さい。

彼の戦術、戦略に懸ける力は本物です、しかしまだ経験が不足する点が否めません。

ですので何卒、彼は宇和島の基地に配備しそこで参謀の末席に加えて頂きたく思います。

 

最後にこの戦に挑む艦娘諸君。

これは生存競争です。

勝って得られるのは生きるというごくごく当たり前の権利。

負けて失うものも生きるというごくごく当たり前の権利。

史上最も辛い戦争になるでしょう、いかんせ人類は生存競争で軍を動かしたことがありません。

ああ、この虚しき戦を戦う艦娘諸君、決して孤独を感じその虚しさに打ち負けないでください。

今回は今回ばかりはどうしたって全人類があなたの味方です、誰がなんと言おうと全人類があなたの味方です。

以上ゆめゆめお忘れなきよう。

 

貴方達が出る海の果てに広がる赤空は夕焼けでしょうか、それとも。

 

佐世保地方総監部 対馬防衛艦隊 参謀長 館岡 純希(たておか じゅんき)




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