EPⅧ「事情説明ともう一人の眷属」
Side一誠
「ニャー\( 'ω')/」
「あー!野良猫さんそれ私のご飯~!盗らないでえー」
「…」
コカビエルら戦争再開派を討伐した翌日、俺はルナとリアクトし力を行使した時の事を説明する為に皆を集めた。
「改めてよろしく頼む」
「はあ…」
何故か教会に帰った筈のゼノヴィアが何時の間にか眷属になっていたがその理由を聞いて納得はした。
がますます教会陣営に嫌悪感が募る事になったのは言うまでもない。
そういやイリナは知らないままなんだよな…。
「それで一体彼女達は何者なのか説明してくれるのよね?」
「ええ…それについてはまず俺がとある異世界に迷い込んだ事に始まります…」
「「異世界!?」」
俺は皆に迷い込んだ向こうの世界での出来事を可能な限りな範囲で話した。
「核石〈エレメンタルジェレイド>」を生まれ持ち人との共鳴によって武器となれる存在であるルナ達エディルレイドの事、異世界で途方に暮れていた俺が拾われ所属していた空賊「赤猫団」の事、戦いの出来事を。
無論ルナとリンが伝説の血統を持つ存在である「七煌宝珠」である事とあの事については伏せておいて。
「エディルレイドを巡る戦いは激化していきました…一度目は表面上の勝手な考えを押し付け、一方は種を守る為に人間とエディルレイド間の全面戦争の引金を引きかけたとある男によって、そして二度目の永遠を求め過ぎた者達によって…一度目の戦争こそは拡大する前に俺が尊敬する人物達の活躍によって終息しました。
ですが…問題はその後だった…」
「どういう事ですか?」
「ああ、その全面戦争の引金を引こうとした男はアークエイルの元トップの男だったんだ」
「アークエイルってそのエディルレイドさん達を保護をしている組織の?どうしてそんな方が?…」
「奴は保護こそうたっていたもの奴自身はエディルレイドを表面上だけでしか見ていなかった。
そう、争いの道具として、兵器としての側面だけでしか奴はエディルレイドという種族を見ようとしていなかった…そんな凝り固まった考えと偏見で彼女達に真の理解を示そうとはせずに挙句無かった事にしようとしたんです…」
「それって!?…」
俺のその言葉に部長達は驚く。
俺は一生あの男、ファルク元アークエイル総監の仕出かした所業を忘れる事はないだろう。
俺やアニキを雇った暗殺者に襲わせ、離れ離れにし拘束していたレンさんやルナを強引に眠らせて二度と目覚めさせないようにしようとし、エディルレイドという種を守ろうと戦った「カオスクワイア」との戦争を拡大させようとした事は到底許せる事ではなかった。
そして、責任の追及を受けてアークエイルを更迭されて以降行方不明となっていたが何時の間にかエディルガーデンへと潜み、二度目の「オルガナイト」との戦いをも裏で操りキースさんの思い描いていた理想を悪い方向へと唆して彼とパートナーでありまたレンさんやルナとも友達だったシアを苦しめ続けていた事も…。
まあ、同レベルで他にも許せない存在がいるがそれはまた今度にしよう。
「それで君は教会に対してあれ程までの嫌悪感を持っていた訳か…今思い返せば確かに可笑しいと思える点がいくつもあるな…」
そうゼノヴィアが反応を示す。
この世界の教会もあの男が統括していた頃のアークエイルとまるで同じのように感じた。
信仰心と発展の為なら多少の犠牲もやむなしとの考えは非常に危険であり尚それが何を引き起こすのかをほとんど理解出来ていない節があるのには流石にどうかしていると思った。
「そういえばイッセー先輩、ルナさん達を拘束されただけでなく先輩も襲われたって話ですけどどうしてそこまで?」
子猫ちゃんが疑問をぶつけてくる。
「それはエディルレイド側にのみ決して覆せないルールがあるからだ。
そう、個のエディルレイドは一人の人間としか同契出来ないっていうね…それも死ぬまで…だから既にリアクトを結んでいるエディルレイドを手に入れる為にはパートナーを始末するしかなかった…今思えばルナ達を利用しようとした不穏分子が他にも紛れ込んでいたのかもしれないな…」
「そうですか…」
子猫ちゃんは納得したようだが何か似た様な思い当たる様な事があるかのような表情をしていたが一体?…
「話は分かったわ…おいそれと話せる内容ではないようだし私も魔王様方にはこの件は伏せておきましょう」
「そういう事でお願いします」
「それはそうと漸く私のもう一人の眷属に施していた封印を解く許しが出たの!」
「ああ、僧侶の…」
「その子はとても人見知りするんだけど…まあ会ってみれば分かると思うわ」
そう部長に言われて案内された厳重にKEEPOUTな部屋の中に居たのは…
「へぐ!?…な、何事ですかー!?」
「貴方の封印解除許可が出たからお迎えに来たのよ」
「嫌です~僕は棺桶の中が良いんだ~!」
おかっぱヘアーの可愛らしい子だった。
「ねえ?なんでこの子男の子なのに女の子の服着てるの?」
リンの何気ない一言ですぐに一瞬でも可愛いと思った俺を殴ってくれと思った。
「だって可愛いんだもん!」
「女装趣味持ちかい!」
「というか貴方達誰なんですかー!?」
「あ、コラ!ギャスパー…もう!…」
ギャスパーと呼ばれた女装男子は俺やアーシア、ルナ達に警戒したのか目の色が変わる。
「ン?…これは」
「?あれ黒髪のお姉さんと子猫ちゃんの動きが止まってるような…」
俺達は何故か朱乃さんと子猫ちゃんの動きが全く動いていない事に気が付く。
成程…これはもしかして
「お前の神器の力だな?ギャスパー」
「ひえ!?な、なんで動けてるんですかー!?」
ギャスパーの神器が人や物の動きを止めさせる力だと思い至った俺は話をする。
「その様子だと上手く制御出来てはいないみたいだな…まずはそのひきこもりなのを修正しないとな」
「へ?」
「はいはーい!その子の面倒は私が見るー!」
リンがギャスパーの性格補正を買って出る。
成程相性はこの中でマシかもな。
だがアホっ娘なリンですら手を焼く筋金入りの問題児で一向に治らなかったのは予想出来なかったが…まあ彼の生まれからしたらこれが普通かもしれない。
後は時間が解決してくれる筈だろう。
この作品の設定ではエレジェ側がアニメ版紅が第一部扱いで、原作版紅が第二部扱いになっております。
…ギャスパーはあんま変わらんかも