幻想庭園を歩く   作:平熱クラブ

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八雲紫は、冬になると長い眠りにつく。
しかし、彼女が眠る時間は1年経つごとに少しずつ長くなり始めていた。


第1話 八雲藍〜従者の想い〜

 

 

 

 

『月が綺麗ですね、なんて馬鹿馬鹿しいわね。綺麗なのは、想いを寄せる相手のはずなのに』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深く沈んでいた意識が、しっかりとした形を持って浮かび上がってくる。それに併せて、久しく忘れていた身体の感覚が戻っていく。

 全身の血流が充実し始め、体温となって身体の末端まで広がり始める。

 そして、瞼が自然にゆっくり開いていった。

 

「…………」

 

 ぼやけた視界に映るのは、見慣れた天井。

 そして、そこからブラブラと揺れ下がる腕。

 

 ──腕………? 

 

 天井からぶら下がっている腕をよく見ると、親指の位置からして右腕であることが分かる。何となく自身の目を右肩の方に向けると、其処に右腕は無かった。

 いや、正確には別の言い方で表すべきか。

 右腕の肘から先が、空間の裂け目のようなものの中に入って途切れている。透明な空気中に、パックリと裂けたような楕円形の暗闇が口を開けていた。

 その裂け目の暗闇の中には、大きく見開いた大量の赤い目が浮いている。

 もう一度天井を見上げてみると、そこから垂れ下がる腕の根元にも同様の裂け目が見られた。

 

「あぁ、そうだったわね……」

 

 八雲(やくも)(ゆかり)は目を覚まし、その光景にあることを思い出した。

 

「よいしょっ………」

 

 上体を起こし、右腕を" 隙間(スキマ) "から引っ張り出す。すると、天井から垂れ下がっていた腕が消えた。

 

「コレでよし……と」

 

 八雲紫は、『境界を操る程度の能力』を持つ。

 物の存在は、境界が存在することで成り立っている。水面が無ければ、湖は存在しない。地平線が存在しなければ、空と大地が分離することもない。

 

 紫は、そういったあらゆる境界を操ることが出来るのだ。

 

 また、その力を駆使して空間に裂け目を創り出すことも出来る。その裂け目から何処にでも移動することが出来、身体の一部だけを別の場所に移すことも可能だ。

 どうやら、紫は寝る前にその力を使っていたらしい。照明を消す為に、天井の電源に隙間経由で右腕を移動させたところ、そのまま眠ってしまったようだ。

 

 実は、以前にもこんな失敗をしたことがある。

 

 いつだったか、その経験談を博麗神社で行われた『百物語』で怪談として披露したことがある。怖くもなんともない話が続く中、天井から腕がぶら下がっていたというこの話だけが聴衆を大いに震え上がらせた。

 それが紫の密かな自慢だ。

 そのことを思い出し、紫が自然と口元を綻ばせていると、襖の奥から声が聴こえてきた。

 

「紫様、失礼します」

 

 その声と共に、襖が静かに開かれた。

 そこから姿を見せたのは、紫の従者にして式神である八雲(やくも)(らん)

 金のショートボブに、同色の瞳。青い前掛けに、袖が広い中華風の白い服。二本の尖りが付いた帽子と、9本の狐の大きな尾が存在感を醸し出す。

 両手には、(むらさき)色の前掛けと白いドレスのような道士服が畳まれた状態で抱え込まれている。彼女は、寝間着姿の(ゆかり)の為に着替えを持ってきたのだ。

 

「ありがとう、藍」

 

 先ずは礼を述べる。

 そして、目を覚ましてからずっと気になっていたことを問い質す。

 

「私はどれくらい、寝ていたかしら?」

 

 紫は1年の終わりが近づくと、冬眠に入る。

 目覚める時期は大体1、2ヶ月くらい経ってからなのだが、そのタイミングは徐々にズレてきているのだ。

 今回はどれだけ眠っていたのか、紫は分からなかった。

 

「いまは、卯月(うづき)に差し掛かる頃でございます……」

「そう………もう、そんなに経ってたのね……」

 

 紫はそう答えると、突然口元を押さえて咳き込んだ。

 

「ッ……!」

 

 一度ならず、連続して二度、三度と………

 呼吸をする間も無く身体が震え続ける。

 1つ1つの咳が出る度に、紫は苦しそうな表情を浮かべていた。

 

「紫様……?」

 

 藍が心配そうに駆け寄ろうとするが、紫は咳が収まらないうちにそれを手で制した。

 

「大丈夫よ。それより、縁側にお茶を持って行ってくれるかしら? 着替えたら、すぐに向かうわ」

「お茶ですか……? 分かりました」

「頼んだわよ」

 

 紫が腰を下ろしている布団の側に、持って来た着替えをソッと置く。そこから流れるように部屋から姿を消し、その場には紫だけが残った。

 藍が閉じた襖をしばらく眺めていたが、その表情には険しさが色濃く現れる。

 

「そろそろ、あの子に話さないといけないかしら………」

 

 紫の独り言は、沈黙の中に虚しく響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □

 

 

 

 

 

 

 

 

 寝間着として使っていた白の和服を仕舞い、紫は自室を出て縁側に向かった。

 外に面した廊下は日に晒される為か、季節の変化の影響を受けやすい。

 春はやんわりとした温もりが床に広がり、夏は力強い熱が溜まる。秋は肌寒さを感じさせる冷涼感が床を包み、冬は凍てつくような冷たさが床に張り付く。

 

 そうした季節の変化を足の裏で感じ取ることが、紫のささやかな楽しみでもあった。

 

 紫が縁側に腰掛けていると、背後の障子が開かれた。

 

「お待たせしました。今度は………お気に召して頂けるかと」

「そう……それじゃあ、早速」

 

 藍が隣に置いたお盆から湯呑みを取り、口元まで運ぶ。軽く息を吹きかけると、ホカホカとした湯気が昇り立つ茶をゆっくりと喉に流していく。

 紫の隣に座りながら、藍はその様子を緊張を浮かべた表情で見守っていた。

 

「…………」

 

 ふた口ほど茶を飲み、紫は静かに息をついて目を瞑る。その動作に、藍は唾をゴクリと呑んで一筋の汗を流した。

 

「……ぬるいわね」

「ダメですか……」

 

 藍はガッカリしたように、或いは緊張が解けたかのように溜息をついた。

 

「煎れたてなら、お気に召して頂けるかと思ったのですが……」

「そうねぇ………確かに煎れ立てなら美味しいのは間違いないわ。けど、私の求めてる味じゃない」

 

 紫はそう言いながら、再び湯呑みに口を付ける。

 その傍ら、藍は困惑した表情を浮かべていた。その様子に気付いた紫は、藍に一言注意を付け加える。

 

「もちろん、『ぬるい』というのはそのままの意味じゃないわよ」

「お言葉ですが、紫様………紫様は一体、どんな味をお求めになるのですか?」

「それを考えるのが貴女の課題だったんだけどね………まあ、いいわ。ヒントくらいは出してあげる」

 

 紫は一通り茶を飲み干すと、湯呑みをお盆に置き、コホンと咳き込んだ。

 

「私は貴女にしか作れない味が欲しいのよ」

「は、はぁ………」

 

 紫はヒントを示したが、結局藍の表情は謎が解けずに困惑するばかりだった。藍のその様子に、今度は紫が小さく溜息をついた。

 

「私の式神なら、早く気付いて欲しいわね……」

 

 紫の式神である藍は、計算能力に長けた頭脳の持ち主だ。何か知りたいことがあれば、すぐに答えを出してくれる。

『外の世界』でいう、コンピュータに近い存在だ。天文学的数字の計算も瞬時にやってのけてしまう。その頭脳を活かし、これまで紫の命令に従い続け、その力を余すことなく発揮してきた。

 その点においては、紫自身も高く評価しているところだ。

 

 しかし、藍には欠点がある。

 

 既存のモノを計算で求めることには優れているが、創造性に欠けるのだ。同時に文章処理能力も計算能力ほど高くはなく、紫の思惑に思慮が及ばないことは多々あった。

 紫の下す命令に、自身の想像力を働かせてその真意を掴むという力が藍には足りていない。

 紫はそれを見抜いており、自分で考える力を身につけて欲しいという思いを抱いていた。

 

 そこで紫が取った方法は、『藍独自の茶を作らせる』というものだった。

 

 自身の創造性を鍛えるには、初歩的だが効果的な鍛錬方法だろう。これまでに紫が味わったことのない茶を作ることが、合格の条件となる。

 早い話、茶に泥でも混ぜて差し出せば、それは紫が味わったことのない茶の味となる為、この課題はクリアとなるのだ。

 尤も、そんなものを差し出せば、後でこっ(ぴど)くお灸を据えられるのは間違いないだろうが。

 

「でも、今度のお茶は中々美味しかったわよ」

「あ、ありがとうございます………」

 

 少し照れた表情を浮かべる藍だが、不合格なのは変わらない。紫が「ぬるい」と言えば、それは紫が求めていた味ではないからだ。または、紫が覚えのある味だからだ。

 創造性に長けていなければ、既存の茶の味と異なった独自の茶を生み出すことは出来ないだろう。

 

 ──いつになったら、藍はクリア出来るのかしら

 

 少し頼りなく思う紫だったが、同時に期待を寄せていた。

 

 

 

『貴女なら、出来るはずよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □

 

 

 

 

 

 

 

 ──幻想郷

 

 

 それは、存在を忘れ去られた者達が最後に行き着く楽園。科学が発展した『外の世界』とは巨大な結界によって隔てられ、閉鎖的な空間の中で様々な(あやかし)跋扈(ばっこ)している。

 

 しかし、幻想郷の創始者の一人である八雲紫は違う形で否定する。

 

 曰く、物理的には閉鎖的であっても文化的にはグローバルな世界であると。人妖問わず、『外からの来訪者』が幻想郷に新たな影響をもたらすことは決して少なくない。

 それにより、良い意味でも悪い意味でも幻想郷は様々な変革を経て、その姿を変えてきた。

 そのことについて、彼女はこう語る。

 

 

『幻想郷は全てを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ』

 

 

 紫ほど幻想郷を愛し、理解する者は他にはいない。彼女にとって、幻想郷は自らが築き上げた箱庭のような世界でもあるのだ。

 紫の住居は、幻想郷と外の世界の境目の丘に存在する。

 その棲家の縁側からは幻想の世界を一望でき、紫はこの光景を愛していた。

 目を穏やかに覚まさせる豊かな緑に青い空。降り注ぐ温かな日の光、天高くそびえる広大な山、霧がかかった森、虹の架かる湖…………

 眼前に広がるこの風景こそが、彼女の愛した幻想郷の姿だった。

 

「いつ見ても、良い眺めね」

「そうですね、紫様」

 

 紫は従者と共にこの光景を眺めながら、語り掛けた。

 

「ねぇ、藍? 貴女は幻想郷が好きかしら?」

「……えぇと、それはどういう……」

「好きか嫌いか。それだけ聞いてるのよ」

 

 また困惑気味な表情を浮かべる藍に、有無を言わさず紫は質問を繰り返す。その様子に、藍は渋々紫の質問に答えることにした。

 

「……勿論、好きですよ。そうでなければ、私はこうして紫様にお仕えすることはありません」

「ふふっ、そうね」

「……ちょっ!! 紫様!?」

 

 紫が藍の肩に腕を回したかと思うと、そのまま力づくで引き倒した。咄嗟のことで抵抗出来なかった藍は、紫の膝元に頭を置く形となる。

 自分の格好に気が付いた藍は、すぐさま身体を起き上がらせようとするが、それは叶わなかった。

 

「相変わらず、綺麗な髪ね」

「………もう、こんなとこを(ちぇん)に見られたら……」

「あら、あの子は" 山 "の方にいるのでしょ? 心配しなくとも大丈夫よ」

 

 紫は膝に乗せた藍の髪を静かに撫でる。

 当の本人は、恥じらう様子を見せつつも何処か満更でもない表情だ。その証拠に、僅かにだが尻尾が揺れていた。

 

「それに知ってるのよ? 橙にいつもこうやってるの」

「そ、それは……! 橙が『どうしても』というから、仕方なく………」

「『どうしても』と言いながら、膝枕をさせているのは貴女の方でしょ?」

「う………」

「主に嘘をつくなんて、いけない従者ね。罰として、しばらくこのままでいなさい」

「はい………」

 

 藍は顔を赤くしながら答えるが、紫が更に追い討ちをかける。

 

「良かったわね、貴女がして欲しかったことの口実を得られて。罰なら、私の言われた通りにするしかないでしょ?」

「〜〜〜!!」

 

 プルプルと震え始める藍だが、これは主から下された罰である為に逆らうことは出来ない。

 藍が密かに抱いていた願望を叶えてやれたことに、紫はクスクスと笑みを隠せずにいた。

 

「いいのよ、そういうのは遠慮なく言いなさい。貴女が普段は頑張ってることくらい、私も知ってるから」

「紫様……」

 

 藍は既に抵抗する気は無いらしく、自らの体重を紫の膝に預けていた。

 その様子に、再び紫の口元が緩む。

 彼女も、藍の献身ぶりには感謝しているのだ。

 本来は自分がやるべき結界の管理や調整を、藍は卒なくこなしてくれている。そして、自分の与えた難題に頭を悩ませながらも決して妥協することなく、全力で取り組む彼女の姿が紫の心を打っていた。

 

「さっき、貴女は幻想郷が好きだと言ったわね。でも、いまの生活はどうかしら?」

「いまの生活ですか……? 私は満足していますよ」

「そう………でも、最初の頃はそんな感じではなかったわよね」

 

 紫は何処か、寂しさのこもった表情を浮かべ始める。藍からはその表情は見えないが、声音が少し暗くなっていることに気が付いていた。

 

「最初の頃………確かに、紫様と出会った頃は今のように従う感じではなかったと思います……」

「そうね。だから私、考えたのよ。貴女に自由を与えるべきかって」

「………はい?」

 

 疑問の声を上げる藍に、紫の表情は一際険しくなる。

 こればっかりは、決して抽象的な言葉ではなく有りのままに伝えようと決めていた。紫は覚悟を決めたように、口を開いた。

 

「藍、貴女は私の式から離れて自由に暮らすのよ」

「な………!!」

 

 藍は驚きのあまり声を上げたが、固まったまま動けなかった。それを知ってか知らずか、紫は藍の頭を撫でながら話を続ける。

 

「貴女は私にずっと尽くしてくれた。でも、それは私が貴女に式術を施していたからに過ぎない。本当の貴女の気持ちを確認したわけでもない」

 

 紫の声はいつもと変わらない何処か冷淡な声音だったが、藍はそう感じてはいなかった。

 僅かに声が震えていることに、本人は気付いていないのかもしれない。

 

 

「つまり、私は貴女から自由を奪っていた」

「…………」

「ごめんなさい………」

「何でですか………どうして……」

 

 紫の謝罪の声に、今度は藍の声が震え始める。

 声だけではない。肩も震え始め、その振動が紫にも伝わっていた。

 しばらく、その場に沈黙が漂い始めていた。お互いに、何も声を発しない。無言のまま、紫は藍の髪を撫で続け、藍は肩を震わせ続ける。

 だが、その沈黙は凄まじい剣幕で破られた。

 

「勝手なことを言わないでください!!」

 

 急に上体を起こしたかと思えば、藍は紫を怒鳴りつけた。紫は表情こそ変えはしなかったが、その顔の険しさはより濃くなっていた。

 

「私は確かに、最初の頃はただ義務的に命令をこなしていたかもしれません………今でも紫様のご期待に添えずに己の未熟さを克服出来ないでいますが──」

「………」

「紫様をお慕い申し上げるこの気持ちは、(まこと)のものです。力不足ながらも、これからもお仕え申し上げたい………それが、私の偽らざる本心です……」

「藍……」

 

 語尾が近づくにつれて声音が弱々しくなっていったが、紫は藍の意志の強さを感じ取っていた。

 

「式神と言えど、心は失くせません。私は私の意思で、紫様にお仕えしているつもりです。それに、私はまだ恩を返せていませんから………」

「恩……?」

 

 珍しく、紫は疑問の声を上げた。

 藍に何か恩を売った覚えがなかったからだ。しかし、その答えはすぐに明かされた。

 

「さっき、言ったじゃないですか。私はこの幻想郷が好きだと。紫様が創り上げたこの楽園を見せて貰ったことが、私にとっては大きな恩なのです。勿論、他にもまだまだお返し出来てないことはありますが………」

「………」

「ですから、どうか………私を紫様の式でいさせてください」

 

 藍は、紫に頭を下げた。

 それはもう、額が床にくっ付くほどに。丁寧に膝をつき、両手も綺麗に添えている。

 

「お願いします」

 

 その様子に、紫は驚きを隠せずにいた。

 

 まさか、ここまで自分に仕えようとしていたとは………

 

 紫はしばらく固まったままでいたが、小さく息を吐いた。

 緊張が解けたのか、安堵を覚えたのか。

 そのどちらかは分からないが、その顔には先程までの険しさは無く、穏やかな表情が戻っていた。

 

 

「顔を上げなさい、藍」

 

 

 

 

 

 

 

 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □

 

 

 

 

 

 

 

「もう、行かれるのですね」

「ええ。長い間寝ていたものだから、ちょっと恋しくなっちゃってね」

 

 藍は、主の出発を玄関まで見送りに来ていた。

 

「紫様なら心配は無いと思いますが、どうかお気をつけて」

「大丈夫よ。私の留守を預かってくれる頼もしい従者もいることだし」

 

 藍が頭を下げたあの日、紫は結局藍を式から外すことはしなかった。彼女の本心を確かめられた以上、紫はもう何も言うことはなかったのだ。

 

「結界の管理はいつも通り、お任せください。何かあったら、すぐに連絡します」

 

 従者の頼もしい返事に、紫は静かに頷く。

 長い冬眠から目覚めた紫は、幻想郷( 自らの箱庭)を歩いて回る旅に出ようと決めていた。

 藍のことが気掛かりで旅を取り止めようと考えていたが、藍が本心を告げてくれたお陰で足を踏み出すことが出来たのだ。

 

 

 コレで、何も思い残すことはなくなった。

 

 

「私が帰ってくるまでに、お茶を作れるようになっておくのよ?」

「………善処します」

 

 藍の気不味そうな返事に、紫はクスリと笑う。

 未だに未熟さが残るところではあるが、逆にそれが紫を安心させる。

 春の陽気を含んだ日に向かって、傘を差した紫は藍の方向を振り返った。

 

 

 

 

 

「藍、ちょっと散歩に行ってくるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




冒頭辺りで出てきた紫の怪談ですが、鈴奈庵6巻を見て頂ければ分かる通り、誰も大してビビってません()
本文の内容については、本人がそう思い込んでいるということで………
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