自分の能力である『
しかし、この力にはあまりにも大きすぎるデメリットがあった。まず一つ目に、出てくる能力は全て劣化品であるという事。
例えば、時を操る能力を持つ『刻々帝』は全部で12の技があるらしいが自分のは加速と減速の二つしか使えない。それでも便利ではあるがオリジナルと比べるのも烏滸がましいレベルだ。この様に全てが劣化品か能力の一部しか使えない不完全品、マシな物でもオリジナルの7割程の出力が限界であるという始末。
「一番相性が良いので7割ですか…不完全な再現が4つ、出力が5割未満なのが4つ。そして7割程出るのが2つですか…。合成品とは言ってましたがここまで酷いとは聞いてませんでした。これでは他の精霊と戦っても勝つのは難しいですね。」
二つ目の問題点は先ほども言ったが出力が足らない、という事だ。この問題は私の霊力に対して出した天使の方が対応しきれていない事に起因する。要は燃料は充分だがエンジンの方が燃料の性能に追いつけていないという状態だ。
これにより起こる現象が、出力上使えない技がある、もしくは使うのに条件がいるなどといった事だ。
「高火力系はやはりダメみたいですね。やはりチマチマと戦うしかないようです。」
そんな訳でASTの装備が使えないかと思ったのだが…
「使えそうなのはブレードくらいですね。他は使えそうにないですし。ブレードにしても霊力を込めて手榴弾みたいに投擲するしか使えそうにはありません…。やっぱり働き損でしたかぁ…」
溜息が漏れる。やはり逃げておくべきだった。精霊のスペックが知りたいとはいえパルクールなんてやっていたから同族と遭遇するのだ。精霊に命令が効かないのにも驚いた。
これでは私の強みがないではないか。残っているのは劣化コピーの能力と腰に差してある細い直剣だけ。AST程度ならば命令すれば良いだけだが、同じ精霊に対しては対策を練らなければならない。
「あぁ、また髪を染めなくてはいけませんね。こうも染める回数が増えると染料代もバカになりません。どうにかなりませんかねぇ。」
能力の使用で金髪になってしまった髪をいじりながら溜息をついた。
能力を使うたびに髪を染めなくてはいけない。これだけは面倒だ。力を使うたびに髪の色が変わるのは勘弁してほしい。
「今日の夕飯はどうするかな。」
昨日は魚だったので今日は肉料理にしたいがうまい事アイデアが浮かばない。今日は休日なのでおそらくみんなで揃って夕飯を食べるはずだ。
「そうだ。今日はオレ○ジページの発売日じゃないか!何か参考になるかもしれない。」
そうして本屋に足を向ける事にした。
「あっ、五河君じゃないですか。久しぶりですね。」
白石先輩がいた。
「あっ、お久しぶりです先輩。」
「よかったです。覚えていてくれて。今年に入ってからあまり図書室に来ないので忘れられたのかと思いましたよ。」
「先輩の事、忘れるわけないじゃないですか。一年間も同じ委員会だったんですよ。」
「そうですね。それで、五河君は今日は何を買いに来たんですか?」
「俺はオレ○ジページを。今日の夕飯の参考にしようと思って。」
「それはいいですね。私もレパートリーを増やす為に買っておきましょうかね。」
「ところで先輩は何を買いに来たんですか?」
「私は、ちょっと実用書とパルクールの本を…」
チョイスが独特だ。実用書の方にはやたらと堅苦しいタイトルが書いてあるし、パルクールとは。
「先輩、パルクールとかやるんですか?意外でした。」
「最近始めたんです。意外と楽しいですよ。」
あの図書室でずっと本を読んでいた先輩がまさか運動をそれもパルクールなんてものを始めていたとは。半年という時間の長さを思い知った。
「私は既に進路も決まっているので何か始めるにはいい機会だったんです。」
「なるほど…だからパルクールを。」
「じゃあ並びながらお話しでもしましょうか。」
「やっぱり、耶俱矢と夕弦に何か教えてたのは先輩だったんですか。」
「はい。二人には五河君に手を出さない証拠としていくつか情報を渡しています。」
だからいきなり昼食に誘ってきたのか。合点がいった。
「すみません。二人が迷惑をかけて。」
「五河君があやまる事ないですよ。それにあの程度の事迷惑とは思っていませんから。」
それは良かった。しかしそうなると困る事がいくつかある。
「先輩、変な事教えてないですよね。」
「ええ、五河君がたまに変なセリフを大声で叫んでいた事や、厨二向けのライトノベルを借りていた事は秘密にしてありますよ。確か…瞬閃轟爆破でしたっけ?」
「先輩…黒歴史をほじくり返すのはやめてください…」
やはり人に見せるものじゃない。恥ずかしすぎる。
「ふふっ。あれにはびっくりしました。まさか図書室の隅であんな事をする人がいたなんて。」
「あれは、その、若気の至りというかなんというか…すみません、忘れてください。」
「はいはい。忘れますよ。」
一頻り笑った後先輩はそう言ってくれた。
これで黒歴史は守られた。
「それにしたって全然列が進みませんね。」
「そうですね。何かあったんでしょうか?」
「私が様子を見てきます。少し並んでてもらっていていいですか?」
「はい、気をつけてくださいね。」
五河君と離れてからすぐに私は天使を発動させていた。髪は金髪になり目の色は青くなった。あれから姿が変わるのはどうにかならないかと考えた結果、刻々帝で染髪を速める事にした。これで三分程で染める事ができるようになった。目はどうしようもない。カラコンを入れて誤魔化すしかない。というか力をもらってから戻っていないのだ。ずっとカラコンで誤魔化してきたが天使を使えばカラコンもどこかへ消えてしまう。だから私の鞄にはカラコンと染料がずっと入っている。
「さすがにあれだけ待ってもいっさい進まないのでは周りの迷惑になりますからね。これは必要な事です。」
彼には少し待ってもらうが仕方ない。
レジの先頭では老人が店員に対して烈火の如く怒っていた。何か問題があったのだろうが既に老人の話は全く関係ない事に飛躍していた。
「はぁ、これは『命令』ではダメですね。」
『命令』には効果時間がある。およそ三十分。それを超えると途端に強制力を失ってしまう。
『
『指令』は強制力が命令よりも弱いが効果時間がない能力だ。これであの老人も落ち着くだろう。
「さて、急いで髪を染めますか。」
私はトイレに駆け込んだ。
「霊力波感知!この反応は…パラディンのものです!」
「AST緊急出動!やっと尻尾を出したわね。ここで倒すわよ!」
「「了解!!」」
「司令!パラディンの霊力波を感知しました!」
「士道を向かわせて頂戴!」
「その必要はない。既にシンはパラディンの近くにいる。」
「何でそんな所にいるのよアイツ!?でも好都合だわ。士道に連絡して頂戴。」
「士道!アンタの近くに金髪の女はいない!?」
「琴里?何でそんなに焦ってるんだ?」
「パラディンがでたのよ!今、士道の近くにいるのよ!早くして!今見逃したら次はいつになるか分からないわ!」
「分かった!」
急いで辺りを見渡す。すると駆け足で移動する金髪の少女を見つけた。しかし…その少女は先程分かれた先輩と同じ格好をしていた。
「何で先輩と同じ格好なんだ?…まさか…先輩がパラディンなのか!?」