仮面ライダーディケイド2〜平成二期の世界〜   作:らいしん

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「王の意思は絶対だ」

これまでの仮面ライダーディケイド2は……

「私たちは、奴らに抵抗するためにここにいる」
「世界中の人のためなら、俺は強くなれるし、戦える」
「人は誰しも、人生の大切な時間を共に過ごす仲間が必要なんだ」
「やっと、青空になったよ」
「ああ!」



第10話「探せ果実 鎧武の森」

 

 時は深夜。ユグドラシルタワーの電気は消えない。研究開発部門のモニターには上下に振れる信号と森の映像が表示される。研究員たちは慌ただしく部屋の中を行ったり来たりする。

 

「第三区の反応ありません! 破壊されたものと思われます」

「ヘルヘイムの環境、不安定です」

「インベス複数確認! 主任、よろしくお願いします」

 

 主任と呼ばれた男は近くの機械の上に置いてあったドライバーと、果実を模した錠前を手に取る。

 

「クラック準備!」

 

 そう指示するとともにドライバーを腰に巻き、錠前を開ける。

 

《メロン》

 

 巨大な装置の前に立つと、左右からエネルギーが放出され、ジッパーのようなものが空中に浮かび上がる。クラックがジイッと音をたてて開くと、その先にはモニターに映っていた景色が広がっている。

 

「変身」

 

《メロンアームズ 天・下・御・免》

 

 武者のような格好をしたライダーに変身した彼は目の前に開かれたクラックに入っていく。研究員たちはその間も森に異変がないか、クラックに不具合が起きないかなどをチェックしている。

 忙しそうな彼らを見下ろし、研究室の上に設置された通路で会話をする男たちがいた。

 

「ヘルヘイムの育ち具合はいかがです? 明日のイベントが楽しみでしょう」

「うーん、すごいね! 氷雨くんを現地調査組に加えてよかったよ。いったい何をやったんだい?」

「また資料にまとめてお渡ししますよ」

「それはいいんだけどさ、安全なんだろうね? 最近インベスの出現も多いような気がするんだが。私たちがなんのために、この街をまるまる管理しているのか──」

「このまま順調にいけば問題ありませんよ。引き続き全て任せてくださいよ、プロフェッサーセンゴク」

 

 彼らの手にもまた、錠前が握りしめられていた。

 

 

 

 

第10話「探せ果実 鎧武の森」

 

 

 

 

 夏海はスイーツ店に来ていた。盛りに盛られたパフェを美味しそうに食す。スイーツと聞いてついてきたキバーラは、彼女の隣でケーキを食べている。

 ユウスケは眼魔世界の空気の影響により、派手に動けない状態だった。そのため今回は写真館で留守番。そして士はというと……

 

「そんなに食ったら太りますよ、お客様」

 

 店員になっていた。これが彼の、この世界での格好だ。彼が働くことになったカフェは高級志向ではなく、雰囲気もリッチなものではない。店の壁にストリート風の張り紙があったりやや時代を感じるラジオが置かれていたりしてどこかうるさい。

 いつもの調子で煽る士を、夏海は親指を立てた例の構えをしながら睨みつける。彼は首元を隠し、彼女の席からそそくさと離れる。

 

「おい新人! サボってないで働けよぉ!」

 

 メガネをかけた店員が士を怒鳴る。が、そんな彼も店長に大声を出すなと叱られる。

 

「キャッハハ。怒られた~」

 

 キバーラの馬鹿にしたような笑いにイラついたのか、彼女に出したケーキをフォークでズンと刺し、そのまま一口で食べてしまった。「あたしのケーキになにすんのよぉ」と周りを飛ぶが、士は持ったフォークで彼女を弾き飛ばす。

 

「コラッ! フォークをそんなことに使うなッ!」

 

 店長は、今度は士を叱りつけた。はいはいと適当に返事する。

 店のドアのベルが鳴る。士と夏海がそちらを見ると、男二人に女一人の三人グループの若者が新たな客としてやって来たところだった。

 

「いらっしゃい。三名ですか。こちらにどうぞ」

 

 士は三人を席に通す。

 

「ご注文は?」

「極パフェ!」

 

 女は即答だった。

 

「え~……」

「またですか」

「なによコウタ! それにミッチまで! 文句あるわけ?」

「いや、別に」

「ないです……」

 

 そして男は二人ともコーヒーを注文した。店に来た理由は彼女にあり、男たちは単なる付き添いだと推測できる。オーダーを調理場に持っていく。店長とメガネの店員はそれを見てテキパキと準備する。流石プロだ。

 ふとラジオからこんな宣伝が流れてきた。

 

『大森林、それは自然が生んだダンジョン! 黄金の果実を探せ! 君もヘルヘイムに挑戦だ! ユグドラシルの提供でお送りします』

 

 直前のラジオ番組とはあまりにもテンションが違っていたため、耳を傾けてしまう。

 

「黄金の……果実?」

「ヘルヘイムやユグドラシルって……なんなんでしょう」

「な~んか不気味な響きよね~」

 

 どれも聞き慣れない単語だった。再びラジオの声を聞くが、既にコマーシャルは別のものに変わっている。

 

「あれ? 店員さん知らないんですか」

 

 夏海と顔を見合わす士に、コーヒーを頼んだ男が声をかけた。

 

「ユグドラシルはこの街を支える大企業ですよ」

 

 彼は自分の鞄やスマホケース、手帳にまでついたユグドラシルのロゴを見せる。

 

「黄金の果実は幻の果実です。ユグドラシル公認のアーマードライダーが探索してるんですが、未だに見つかってないんですよね」

「この世界には企業公認のライダーがいるのか……」

「士くん、これ見てください」

 

 夏海が士の袖を引っ張る。彼女が指さした先には、アーマードライダーランキングなるものが貼られていた。どうやら街の人たちの人気などによってランクづけされているらしい。

 和風、洋風、中華風。様々なモチーフの甲冑を身に纏ったライダーが並んでいる。

 

「こいつらがアーマードライダーか……派手なやつらだ」

 

 そう言いつつ、士は一枚のライダーカードを取り出した。ランキングの中にもいる、仮面ライダー鎧武のブランクカードだ。

 

「ヘルヘイムを探索できるのは公認アーマードライダーだけなんですけど、今回は一般から多くの参加者を募るみたいですよ。興味があるなら参加してみてはどうでしょう」

「俺は、やめたほうがいいと思うけどね」

 

 コーヒーカップを置き、もう一人の男が話に割って入る。

 

「コウタさん……」

「ほう、それはどういうことだ?」

「ヘルヘイムは素人が簡単に立ち入っていい場所じゃないってことだ。それに、ユグドラシルの言うことを信じすぎるのはやめたほうがいい。この街に来たばかりなんだろ? ミッチ、兄貴のプロジェクトを応援するのはいいが人を巻き込みすぎるな。俺は先に行ってるぞ」

 

 コウタと呼ばれた男はそのまま店を出て行った。

 

「あーっ!」

「ど、どうしたんですかマイさん!?」

「お金……。コウタのやつ、私たちにコーヒー代奢らせる気じゃん!」

「まったくあの人は……」

 

 テーブルは騒然となった。

 

「士くん」

 

 厨房に行こうとした士を夏海が呼び止める。

 

「士くんはどうするんですか」

「決まってんだろ。ヘルヘイムとやらに行ってみる」

 

 士は制服を脱いだ。

 店の張り紙の一つ、開店時間を書いたチラシには、この日の閉店時刻が書かれていた。通常は夜まで開いているはずだが、この日に限って昼までと注意書きがされていた。

 

 

 

 

 士たちは先程の客、ミツザネとマイと一緒にユグドラシルタワーの下の広場に来た。イベントは成功のようで、既に人だかりができていた。

 

「ヒアウィゴ! 盛り上がってるかい! チキチキ! 黄金の果実争奪! ヘルヘイムサバイバルゥー! さあ、現在ロックシードは順調に集まってるぞ! まだまだヘルヘイムに飛び込むチャレンジャーを募集中だーっ!」

 

 イベントの司会がマイクを持って実況をしている。

 サバイバルなんて、なんともキャッチーな名前だ。受付ブースの上には巨大なモニターがあり、ヘルヘイムの森を映している。映像の中では参加者の黒影トルーパーが森の果実を採取している様子が見られる。果実は茎からちぎられた途端に形を変えた。

 

「あれがロックシード。実はあれもアーマードライダーランキングのポイントに関係するんですよ。今回でロックシードをたくさん集めたり、ギャラリーから人気が出たりしたら公認になれるかもしれませんね」

「ミツザネくん、物知りですね」

「お前、詳しいな」

「ええ、まあ」

「そりゃそうですよ! だってミッチは――」

「結局来たんだな」

 

 マイが得意げになって話そうとしたところで、コウタが彼らに近づいてきた。士は彼に向かって上から目線で言う。

 

「当然だ。アーマードライダーだかなんだか知らないが、俺がそいつらよりも先に黄金の果実とやらを見つけてやる」

「大した自信だな。言っとくが、これはゲームじゃない。参加者の安全を保障するルールなんてものはなく、危険と隣り合わせた。あんたの思い通りに動かせるなんて思わないことだな」

「ほう」

 

 二人の間に火花が散る。

 

「ちょ、ちょっとコウタさん! やめてくださいよ」

「そうだよ! ここで争わないで!」

「士くん! あなたもです!」

 

 士はその場を去り、受付へと。夏海はコウタたちにお辞儀し、士を追う。

 

「ご参加希望の方ですか! どうぞどうぞ!」

 

 受付係はシートを差し出す。

 

「妨害行為も許されていますので、怪我に気をつけてくださいね」

「えっ、ライダー同士の戦いがあるんですか?」

「ふん、かえって好都合だ。つまり邪魔者は潰していいってわけだろ? 俺は参加するぜ」

 

 士は受付の同意書の氏名記入欄に名前を書いた。そしてすぐ隣にもう一つ同意書が用意されていることに気づく。

 

「……これはなんだ?」

「ヘルヘイムは安全対策をしており警備係のアーマードライダーも巡回していますが、万が一のためにお一人では中に入ることをお断りさせていただいてまーす。つまり、二人一組がルールとなりまーす」

「なに?」

「受付の言う通り、出場には二人必要なんです。僕はコウタさんと一緒に出ます。ユグドラシルがドライバーとロックシードを貸し出してますから、こちらを使うといいですよ」

 

 隣にひょっこりやってきたミツザネが示した方に、戦極ドライバーとロックシードをレンタルするブースがある。ミツザネはそこから持ってきたドライバーとロックシードをセットにして士に渡そうとする。だが士は、そんなの必要ない、とディケイドライバーを持って見せた。

 士に渡されたセットは、夏海に押し付けられた。返してこい、ということだろう。

 

「へえ。士さんの、見たことないドライバーですね」

「そんなことより、お前らこそ借りに行かなくていいのか? 参加するんだろ?」

「はい。でも僕らは……」

「おいミッチ、行くぞ。そいつらに構ってる暇はねえ」

「あ、待ってくださいよ」

 

 二人は開かれたクラックの前に立ち、ドライバーを腰に巻く。

 

「おっと! ここで次の参加者だ! 現在森にいるのは十四組! 十五組目のチームは彼らだ! おおっと、彼らはまさか~~?」

 

《オレンジ》

《ブドウ》

 

「なに!?」

 

 士は驚く。観客も同時に驚き、そしてわっと沸いた。

 彼らが使ったのはレンタルのマツボックリのロックシードではない。空中に二つのクラックが開き、オレンジとブドウの形をしたアーマーが姿を表す。今までモニターを見ていた観客たちもそちらに釘付けになり、声援を送りはじめた。

 

「変身」

「変身ッ!」

 

《オレンジアームズ 花道・オンステージ!》

《ブドウアームズ 龍・砲! ハッハッハッ!》

 

 変身と同時に果汁が飛ぶ。

 二人はアーマードライダー、鎧武と龍玄に変身した。

 

「頑張れー! コウター! ミッチー!」

「あいつら……!」

「ライダーだったんですね!」

 

 鎧武コールと龍玄コールに包まれながら、二人はクラックの中に入っていった。モニターに二人の姿が映し出される。

 

「遅れをとった! 行くぞナツミカン!」

「ええ!? わ、私ですか!?」

「丁度キバーラもいるからな」

「あたしも!?」

 

 士は夏海の名前を勝手に書いていた。読めるかギリギリの字の汚さだ。夏の字の上部分が百になってしまっている。

 二人もクラックの前に立ち、士はカードを、夏海はキバーラを持つ。

 

「どんどん現れる挑戦者ーっ! お、お、おーっとこれは!?」

 

「変身」

「へ、変身っ」

「変身♡」

 

《カメンライド ディケイド》

 

 更に現れた二人のライダー、ディケイドとキバーラの存在に観客は盛り上がる。

 

「行くぜ、ナツミカン」

「はいっ」

 

 二人はクラックの中に飛び込んだ。

 

 

 

 

 ヘルヘイムに入ってしばらく経つ。ディケイドとキバーラ、二人は森を進んでいた。

 今大会の安全対策の一環か日々のアーマードライダーたちの活動によるものかは分からないが、草丈が低い場所が順路のようになっている。皆ここを通るため、先に来た参加者たちによってこの辺りの果実は採り尽くされている。

 左右に道が続いているが、ディケイドはそれを無視してその中央を行き、森の中に入っていった。キバーラは嫌がったが、ディケイドは気にせず突き進む。なにせ、森全体がステージなのだから。

 

「ほら、早速あったぜ」

 

 木から果実をもぎ取り、後ろのキバーラに向かってそれを見せた。

 だが、毒々しい果実は姿を変えない。モニターで見た時はすぐにロックシードになっていたはずだ。ディケイドは果実を上下左右からじっくり眺める。

 

「士くん! 後ろ!」

「あ? ……ぐわっ!」

 

 不意打ちをくらい、ディケイドはキバーラの方へ転がる。

 ディケイドを攻撃したのはハンマーを持った木の実のライダー、グリドン。強そうには見えないが、一応公認ライダーの一人だ。

 キバーラが大丈夫ですかと駆け寄るが、ディケイドは目の前のライダーに夢中だ。ライドブッカーからカードを取り出す。

 

「丁度いい。新しい力を試してやるか」

 

《カメンライド ゴースト》

 

 ドライバーからパーカーゴーストが飛び出し、ディケイドはゴーストへと姿を変える。

 

「変わった!? しかもアームズチェンジじゃない!?」

 

 知らないフォームチェンジ方法にグリドンは慌てる。武器を握りしめ、こちらに向かってきた。ディケイドゴーストはふわりふわりと幽霊よろしく不気味な動きでドンカチを避ける。

 ハンマー系武器は重くて威力は高いが、重い分素早さが足りない。対照的にディケイドゴーストの動きはまるで空気のように軽く、グリドンの攻撃をひらりひらりと避ける。

 

「ほらほらどうした。バテてきてんじゃないか?」

「う……うるさいなぁっ!!」

 

 ディケイドゴーストは空に浮かび上がり、グリドンにキックを繰り出そうとする。

 が、突如現れたトゲトゲの剣によってそれは阻まれた。ディケイドはそれを間一髪で避ける。

 新たに現れたのは全身トゲだらけのライダー、ブラーボ。彼がグリドンの相方だ。

 

「大声を出すなといつも言ってるでしょう」

「てっ、店長!」

 

 そのやりとりを聞いてディケイドは思い当たることがあった。

 

「お前ら、まさか……」

「そうよ。また会ったわね」

「はっはっは! 店長は変身すると口調が変わるんだ! でもめちゃくちゃ強いからなー! 覚悟しろ!」

 

 彼らは士が働いていたスイーツ店の店長と店員だった。二人もまたユグドラシル公認アーマードライダーだったのだ。

 

「その果実を渡しなさい。私たちのポイントにさせてもらうわ」

「お断りだ」

「なら、バトルよ!」

 

 ブラーボはディケイドと、グリドンはキバーラと戦うことになった。

 ブラーボの武器は二刀一組の剣、ドリノコ。ドンカチほど重くない上に、ブラーボ自体がグリドンよりも戦い慣れているためこれまでのように避けられない。

 剣先がディケイドゴーストのパーカーをかすめ、破れた。

 

「どう? そろそろ限界でしょ?」

「そうでもないぜ」

 

《フォームライド ゴースト ムサシ》

 

 赤いパーカーゴーストが宙を舞う。ブラーボは不意打ちの飛び道具だと判断し、距離を取る。ディケイドゴーストは、ムサシ魂にフォームチェンジした。ライドブッカーとガンガンセイバーを持つ。

 

「刀の錆にしてやる」

「望むところよッ!!」

 

 二刀流対決が始まった。合計四本の剣がぶつかり合い、火花を散らす。こちらが打てば相手は防御し、相手が打てばこちらも防御する。一進一退の戦いが続く。

 

《ドリアン オーレ》

《ファイナル アタックライド ゴゴゴゴースト》

 

 ついに必殺技がぶつかり合う。

 強大なエネルギーがぶつかり合い、辺りに衝撃波が広がる。木々がざわめき落ち葉が舞う。

 

 バン!

 

 ふと二人の方に弾丸が飛ぶ。

 飛んできた方を見ると、そこには龍玄が銃を構えて立っていた。

 ブラーボは武器を下ろし、腹立たしそうに言う。

 

「勝負に水を差したわね……。今日はこのくらいにしてやるわ! 覚えてなさい!」

「あっ! 置いてかないでください~!」

 

 グリドンはリーチの長いキバーラに勝てなかったらしく、途中から逃げに徹していた。去るブラーボの後ろをよろめきながらついていく。

 彼らが去ったのを見届けると、龍玄と鎧武が近づいてきた。

 

「いやあ、お強いですね。ランク上位常連のブラーボと引き分けるなんて」

「おい、どういうつもりだ? お前らも俺たちと戦おうってわけか?」

「違います違います。戦いませんよ。僕らも戦って逃げての繰り返しでして、休みたかったんです」

 

 そう言って笑う龍玄のアーマーには傷がついている。彼いわく、公認ライダーを倒すのもポイントになるらしい。なるほど、ずいぶんたくさんのライダーと戦ったようだ。

 

「グギギギギ……」

 

 なにやら変な声がする。次のライダーかと、ディケイドは身構えた。しかし、現れたのはライダーではなく怪人だった。そしてその怪人は一体だけではなかった。森の奥から更に二、三体の個体がよちよちついてくる。

 

「なんだあれ?」

「さあ……? 今までヘルヘイムでこんな奴ら見たことないですよ」

 

 

《スターエナジー シャーベット》

 

 

 突然機械音が鳴り、怪人たちは一瞬のうちに氷漬けにされた。そして次の瞬間爆発する。辺りには氷の粒が舞う。

 

「なんだなんだ!?」

「あっ!」

 

 キバーラが指した方向には別のライダーが。その場から一瞬のうちに消え、ディケイドたちのもとへ飛んでくる。

 

「危ないところでしたね、ミツザネくん」

「その声……氷雨さん!?」

 

 そのライダーは戦極ドライバーとは違う別のドライバー、ゲネシスドライバーを装着していた。星型を思わせるアーマーになっているのはスターフルーツのロックシードを使っているからだろう。ライダーの名前はニヴルというらしい。

 龍玄はディケイドたちに「ユグドラシルの社員さんです。このイベントの警備係の方ですよ」と説明した。どうやら知り合いらしい。

 

「ミツザネくん、黄金の果実は見つかりましたか?」

「いえ。手がかりすら全く掴めていません。なにせヘルヘイムは広いですからね……」

「君たちの力なら、順調にいけばロックシードのポイントだけで良い結果が得られるはずだ。頑張ってくださいね」

 

 ニヴルはそうアドバイスする。ディケイドは彼の肩を掴み、引き寄せた。

 

「おい、さっきのバケモンはなんだ。公認ライダーのこいつらも知らなかったみたいだが?」

「あれはインベスと言います。最近確認された生物でしてね。まだ皆さんに情報伝達ができていませんでした」

「報連相は社会人の基本だぞ」

「そうですね。申し訳ない」

 

 ニヴルは言葉の文面とは裏腹に、反省していない口調。そしてこう続けた。

 

「あまりクラックから遠くに行ってしまうと襲われる恐れがあるので、こうして私たちが見回りをしているんです。ヘルヘイムに入るのにドライバーが必要な理由が分かったでしょう。人間はか弱い生物ですからね」

「……そうだな」

「あ、そうだ。よろしければ一度ユグドラシルにお越しください。あなたはかなり強そうですし、そのドライバーにも興味がある。うちの開発者に見せてやりたいのでね」

 

 そう言ってニヴルは士に名刺を渡す。そして森の中に去っていった。

 

「なにが頑張ってくださいだ、白々しい……」

 

 ずっと黙っていた鎧武がポツリと呟く。

 

「やっぱりユグドラシルの掌の上だったんだ。インベスとかいう奴らの存在を隠していた。そもそも俺はこんなイベントおかしいと思ってたんだ。あいつらは言わばこの街の支配者だ。このイベントだってあいつらが何か企んでるに違いない」

「それは違いますよ! 兄さんはこの街のためだと言ってました――」

「ユグドラシルのことなんて信じられるか! 俺も公認アーマードライダーなんてやってるが、結局はあいつらに手綱握られてるだけだ。きっと俺たちを何かに利用してるんだ」

「何かって、なんですか?」

「それは……分からない」

 

「反抗したくなるのは若者の性かな。でももう少し大人になりたまえよ」

 

「んだと!?」

 

 一同が振り返る。そこには木の上から見下ろす海東の姿があった。

 

「海東さん!」

「やはりお前も来てたか……」

「黄金の果実。すごいお宝じゃないか」

「だからそんなのないんだって。全部ユグドラシルのプロモーションのための嘘だ」

「いいや」

 

 海東は木から降り、鎧武に顔を近づける。

 

「黄金の果実はきっとある」

「なぜそう言い切れる」

「ロマンだ。お宝が僕を呼んでいるのさ」

「……なんだそれ」

 

 鎧武が呆れてため息をつく。

 突如近くの木が爆発する。そしてソニックアローを構えたマリカが現れた。侵入者である海東を追ってきたのだ。

 

「参加登録をしていない者が勝手に森に入るのは違反です! しかも生身なんてもってのほか!」

「まったく。あんたもしつこいなー。お仕事熱心だね?」

 

 海東はドライバーを構え、マリカに向かってトリガーを引く。マリカは顔を隠し、木の裏に逃げる。そして海東は、その隙にドライバーにカードを装填した。

 

「変身」

 

《カメンライド ディエンド》

 

「桃には、モモだ」

《カメンライド デンオウ》

 

 召喚された電王はマリカに背を向けて登場する。そしてくるりと振り返り見栄を切る。

 

「ヘへッ! 久しぶりにィ! 俺、参じ――」

「はあっ!」

 

 マリカはお構いなしに矢を撃つ。電王に直撃し、彼はアーマーから火花を散らしながらその場で派手にずっこけた。

 

「痛てーーーッ! まだ俺のセリフの途中だろうが! なに考えてんだ!」

「キャッ!?」

 

 電王の怒鳴り声に驚き、マリカは矢を乱射する。電王はそれを必死で避ける。

 

「うおい!? 遠距離攻撃なんて卑怯だぞ!」

「あとは任せたよ」

《アタックライド インビジブル》

 

 その隙にディエンドは逃げる。

 

「あっ! コラ! てめー! 呼び出して早々逃げやがって! ……たあー! しょうがねえ! 行くぜ行くぜ行くぜー!」

 

 やけくそになって突っ込んでいく電王だったが、やはり剣と弓矢では相性が悪い。数秒後に「んぎゃあああああ!!」と悲鳴を上げることになった。

 

 

 

 

 それから数時間後、ヘルヘイムサバイバルの一日目が終了していた。

 一同はヘルヘイムを後にし、写真館に戻って戦果報告をしていた。士と夏海とユウスケ、そしてミツザネがテーブルを囲む。

 次の日になると森の別の場所に繋がるクラックが開かれるらしい。すでに狩り尽くされた場所をいつまでも探すよりも効率がいいという理由だ。

 

「みんなのこと中継で見てたぞ。お疲れ様。夏海ちゃんも大変だったな」

「ねぇユウスケ~。あたしは~?」

「キバーラもお疲れ」

 

 キバーラはご褒美にとユウスケの血をねだるが、彼はそれを断る。夏海がユウスケの体の調子を尋ねると「いい感じだよ」と返事した。

 

「また明日頑張りましょう。今日だけでも相当参加者がいたみたいですけど、黄金の果実は発見できなかったみたいですからね」

「黄金の果実……ほんとにあるんでしょうか」

「な、夏海さんまで……」

 

 ミツザネは悲しそうな声を出し、頭をわしわしとかきむしる。

 

「……コウタさんの言ってたことも正しいんですけどね。この街の産業はほぼ全てユグドラシルが関わってますし、そうなるように手を回してきたのも事実です」

「コウタがユグドラシルを嫌いになったのは、両親のことだと思う」

 

 栄次郎に写真を撮ってもらっていたマイは撮影が終わり、士たちの会話に混ざる。ユウスケが立ちあがり、椅子を彼女に譲った。

 

「ユグドラシルが事業拡大をして、街の店は軒並みユグドラシルに買われていったの。コウタの両親がやってた店もその一つ。なんの説明もなく交渉を持ち掛けるユグドラシル相手に最後まで頑張ってたけど、ある日過労で倒れた。生活のためのお金稼ぎのためにすぐに公認アーマードライダーになったコウタは、親を裏切るのかと周りからひどくバッシングを受けていたわ……」

「確かコウタさん、お姉さんがいましたよね。その方もユグドラシルに入社していたような……」

「だいたい分かった」

 

 士はおもむろに立ち上がり、歩き出す。

 

「とりあえず、明日俺はこっちに行ってみる」

 

 士は氷雨から受け取った名刺を見せる。

 

「その怪しい中身をじっくり見せてもらおう」

「ユグドラシルが悪い企業だと決まったわけではありませんよ!」

「分かってる。だから行くんだろ。俺が直接確かめてやる」

 

 声を荒げるミツザネに、士は冷静に返答する。

 

「じゃあ明日は俺が士の代わりにヘルヘイムに行くよ。確か二人で行かなきゃいけない……だったよな」

「無理しないでくださいね」

「おうっ」

 

 ユウスケは元気であることを示すように、親指を立てて笑顔を返した。

 

 

 

 

 ヘルヘイムの森では、まだ探索を続けるアーマードライダーたちがいた。

 終了の報告は彼らに届いていなかったのだ。そして、彼らのヘルヘイムへの出入りの記録もいつの間にか書き換えられていた。

 

「こっちだ! こっちにいいものがあるってさっき社員から聞いたぜ!」

「でかした!」

 

 二人の黒影トルーパーは草をかき分け、森の奥へ奥へと入ってゆく。より多くのロックシードを集めたいと夢中になっていた彼らは、我を忘れていた。

 ふと、何かが足にぶつかった。それがなんなのかは分からない。黒影トルーパーの一人は立ち止まり、草の中に手を突っ込んでみた。掴んだそれを見てみると、ロックシードだった。それも一つではなく、二、三個の錠前が固まって落ちていた。

 どうしてこんなところに。

 そう思っていると悲鳴が聞こえてきた。顔を上げると目の前にはすでに巨大なツタに絡みつかれた相棒の姿があった。

 

「う……うわ……!」

 

 思わず腰を抜かす。

 

「逃げろっ! これは……罠だああ!」

 

 それが相棒の最後の言葉だった。ツタが縮み、茂みの奥へと吸い込まれていった。

 逃げようにも、手足が動かない。そうこうしているうちに再びツタが現れ、もう一人の黒影トルーパーは足をとられてしまった。植物は彼を容赦なく引きずっていく。

 その様子を遠方から見て笑う影が一つ。

 

「順調順調……。これだけの餌があれば……フフフ……」

 

 彼の背後には数百体のインベスがずらりと並んでいた。




次回 仮面ライダーディケイド2

「人類は今日滅びるんだ」
「俺……ライダーやめるわ」
「それがあなたが決めた道だから」
「自分の生き方を探し、強くなり、進化していく」
「ここからは俺たちのステージだ!」

第11話「大合戦!放て大橙砲!」

全てを破壊し、全てを繋げ!
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