仮面ライダーディケイド2〜平成二期の世界〜   作:らいしん

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「黄金の果実は幻の果実です」

これまでの仮面ライダーディケイド2は……

「あれはインベスと言います」
「ヘルヘイムに入るのにドライバーが必要な理由が分かったでしょう」
「変身!」
「あいつら……!」
「ライダーだったんですね!」
「コウタがユグドラシルを嫌いになったのは、両親のことだと思う」


第11話「大合戦!放て大橙砲!」

 公認アーマードライダーになってから早数年。コウタは自室でオレンジロックシードを片手にベッドに横たわっていた。

 設定されたランキングは、ユグドラシルが提供するエンターテイメントの一つだ。公認ライダーはヘルヘイムでロックシードを回収することで報酬を得る。ライダー同士でのバトルもまた好評で、たまにその様子が中継される。その時の視聴者からの人気によって報酬が上乗せされることもある。

 視聴者側からはその様子がどうにも楽しそうに見え、中にはそれが気に食わない者もいる。昨日のヘルヘイムでも、一般参加者から公認アーマードライダーに対して攻撃があった。

 コウタが受けた攻撃は特に激しかった。ミツザネに庇われながら、ロックシードをおとり代わりにいくつか投げ、なんとか逃げた。

 コウタはロックシードを握りしめた。体を起こし、枕に投げつける。いてもたってもいられなくなり、自室を飛び出した。丁度彼の姉が仕事に出るところだった。

 

「コウタ。どうしたの?」

 

 嫌なところを見られてしまった。

 両親がいなくなってからもずっと一緒に住んでいるが、まともに会話したことはあまりなかった。

 

「姉ちゃん……あ、あのさ。俺……ライダーやめるわ」

 

 弱っていたところに更に動揺したことで、思わず変なことを口走ってしまった。口を押さえて顔を背ける弟を、姉はじっと見つめる。

 

「って言ったらどうする?」

 

 無理やり笑顔を作ってそう付け加えた。しかし目の前の姉は表情を変えない。

 

「どうもしないかな」

 

 ふっ、と柔らかい笑顔になった。その真意が見えない。

 

「……え?」

「コウタがそう思ってるなら、いいんじゃない?」

「でも……!」

「じゃあ私、これから仕事だから。行ってきます」

「い、行ってらっしゃい……」

 

 ドアを開けて仕事に行ってしまった。

 姉は、なにを考えているのか。コウタは訳が分からぬまま、身支度を始めた。今日は大会二日目。ヘルヘイムに赴く予定があったのだ。

 

 

 

 

第11話「大合戦!放て大橙砲!」

 

 

 

 

 士はユグドラシルタワー内部の研究室に通されていた。モニターにはあのイベント会場と同じように巨大なモニターが設置されている。ライダーの姿は見えず、そこにはヘルヘイムの森しかない。

 士の隣には円柱型の水槽に入ったヘルヘイムの果実が。成分抽出でもしているのか、果実には管や電極が繋がれ、コンピュータに接続されている。

 

「ほー。これは面白いドライバーだ! 中身を見てみたい!」

 

 機械音だけが聞こえていた研究室に、興奮の声が満ちる。ユグドラシルの対ヘルヘイム用装備の開発を担当するセンゴクは、白いドライバーを高く持ち上げた。

 

「やめろ」

 

 カメラでそこらを撮っていた士はそれを取りあげる。撮影の許可は得ていないが、センゴクはディケイドライバーに夢中でそれを気にしていなかった。

 

「いやあ惜しいな。これに私が開発した戦極ドライバーの機能をつければ完璧になるのに」

「必要ないな」

「そんなことない。昨日ライブカメラで見ていたよ! 君が果実をもぎ取った時、ロックシードにならなかっただろう」

「……」

 

 確かに彼の言う通りだった。士がモニターで見た時、黒影トルーパーはもぎ取った果実をロックシードに変えていた。だが、昨日の自分はそうではなかった。

 センゴクはホワイトボードを引っ張ってきて、そこに図を書いて説明する。しかし士ははなから聞く気がない。

 

「戦極ドライバーはヘルヘイムの果実をロックシードに変換する! そしてドライバーにロックシードを装填することでエネルギーを抽出する! つまり食事を取らずとも活動が可能になる! 分かるかい? アーマードライダーは人類の一つの進化の形なのだッ! そして今、良質なロックシードが取れるように森を肥やす活動をしていてね――」

「おしゃべりはその辺りに。プロフェッサーセンゴク」

 

 研究室の出入り口が開き、氷雨がやってきた。彼の隣にはタカトラとその部下である百崎が。

 彼らがユグドラシルの要人だろうか。士はそれとなく探りを入れる。

 

「どうした、勢揃いで。ヘルヘイムの見回りってやつはどうしたんだ? 職務怠慢か?」

「現在、()()()()()()ようにしていますよ。表向きには一時的なトラブルの発生ということにしています」

「今から何かするのか?」

「警察から連絡があった。昨日から行方不明者が複数人出ている。ヘルヘイムで事故があったという知らせはないが、念のためだ。ユグドラシルの名にかけて、事故は許されない。今から行方不明者の捜索をする。場合によってはイベントの中止も考えなくてはいけない」

 

 タカトラは士の質問に返答しつつ、眉間に皺をよせる。ここまで謎で、大規模な事故が起こることは彼にとっても不測の事態だった。

 ブザーが鳴る。インベス反応だ。

 

「あなたも、ぜひ来ていただけるとありがたいのですが」

 

 氷雨は士にそう言った。

 

「いいのか? 部外者の俺が」

「あなたの強さを見込んでのことです。きっとトラブル対策も順調になるでしょう」

 

 悪い気はしない。士の口もとが綻び、彼は「いいだろう」といい返事をした。

 五人はそれぞれのドライバーを持ち、腰に巻きつける。四人はロックシード、一人はライダーカードを構えた。

 

《メロン》

《レモンエナジー》

《ピーチエナジー》

《スターフルーツエナジー》

《カメンライド》

 

「変身」

 

 五人はライダーに変身した。

 

 

 

 

 その頃、キバーラ、クウガ、鎧武、龍玄の四人はヘルヘイムにいた。

 イベントは通常通り開催されており、トラブルが起きたという報告は全くない。彼らの他にもヘルヘイムに潜るライダーがいるくらいだ。

 その参加者らについて、キバーラは不審に思ったことを話した。

 

「今日の参加者、かなり少なかったですね」

「一日目は150組を超えていたらしいですけどね? どうしたんですかね」

 

 イベント司会の実況によるとまだ数組しか入っていないらしく、盛り上がりに欠けるとぼやいていた。300以上のライダーが参加していたはずのヘルヘイムには、現在彼ら以外の姿はなかった。

 

「それにしてもロックシードがないな。やっぱ全員おんなじクラックから入るのはよくない」

「ダメですよ。ルールなんですから」

 

 鎧武はサクラハリケーンのロックシードを取り出す。彼は昨日のこともあり、焦っていた。龍玄は上から自分の手をかぶせる。鎧武は分かったよとそれを引っ込めた。

 

「それは?」

「こいつがあれば好きなとこからヘルヘイムに飛び込めるんだ。普段は街中にクラックが開くことなんてないから、こいつを使ってる」

「おっ……これ、ラッキーじゃない?」

 

 クウガが足元に落ちていたロックシードを発見した。ランクが低いものばかりだが、数が多い。両手の指にロックシードをぶら下げ、クウガは嬉しそうにしている。

 

「……おかしいですね。ロックシードは自然発生するものじゃないのに……」

「え? でも落ちてたし」

「うーん……」

 

 その瞬間、茂みからツタが伸びてクウガと龍玄の足をとった。

 

「うわっ!」

「なんだ!?」

「くそっ! 安全対策はどうなってる!」

 

 鎧武は大橙丸を、キバーラはキバーラサーベルを使って植物を斬り刻んでいく。だが、ツタは斬っても斬っても伸びてくる。それも、一方向からだけではない。

 

「うわああっ!!

「ユウスケッ!」

「ミッチ!?」

「夏海ちゃん! 士を……! 士を連れて――」

「コウタさん! ここは……逃げて……!」

「ユウスケーっ!!」

 

 キバーラが駆けつけても間に合わない。クウガと龍玄、二人は茂みの中に飲み込まれ、消えた。

 

「ミッチーッ!」

 

 駆け寄ろうとする鎧武を、キバーラは引っ張って制止する。

 

「ここは危ないです! 一度逃げないと!」

「うるせえ! 助けないとダメだろ! ミッチが死んじまう! ヘルヘイムはお遊びの場所じゃねーんだよ!」

 

 キバーラを振り払い、大橙丸と無双セイバーの二刀流で迫りくるツタを切る。

 ツタはその隙間を縫い、鎧武の腹部へと伸びる。彼はその存在に気づいていた。だが、体が反応できなかった。

 鋭い攻撃で戦極ドライバーは砕かれ、変身が解除されてしまった。

 

「ぐはっ……!?」

「コウタくん!」

 

 キバーラはコウタを連れて逃げようとする。だが、それは無茶だ。戦えない人間一人を連れてクラックまで帰ることは難しすぎる。

 キバーラはコウタからサクラハリケーンのロックシードを奪い、錠を外し、その場に落とす。ロックシードが変化し、バイクの形になった。

 

「乗ってください!」

「あんた……運転できんのか!?」

「できます! ……多分」

「~~! ああもう!」

 

 コウタはサクラハリケーンにまたがり、キバーラに後ろに乗るように指示した。エンジンをかけ、アクセル全開。クラックが開き、現世に出た。

 あれは一体なんだったのか。二人はどこに行ってしまったのか。ユウスケの言葉通り士を呼ぶため、夏海は一度光写真館に戻ることにした。コウタを誘ったが、彼は元気をなくしていた。抜け殻のように、生返事をしてどこかに去っていくのだった。

 

 

 

 

 ディケイドたちはヘルヘイムを進む。だが誰も出てこない。反応があったはずのポイントに近づいても、インベス一匹見つからない。

 道中聞いた話によると、ユグドラシルはヘルヘイムの対策をするために作られた企業らしい。そのために街中に監視の目を作る必要があり、街を支配するようなかたちを取ったとのことだ。

 

「それにしても、人類の進化ねぇ」

 

 ディケイドは近くにあった果実をちぎった。アーマードライダーたちと違い、ロックシードに変化しない。それを隣を歩くデュークに押し付けると、パインロックシードに変化した。

 

「確かランクによってポイントが違うとか言ってたな。得られるエネルギーとやらも違うのか?」

「おっ、その通り。君、察しがいいね! ランクとエネルギーに相関関係がある。例えば今回のイベントで貸し出しているロックシードのランクは低く、公認アーマードライダーや私たちのランクは上だ。……そうだ氷雨くん! そろそろ君のロックシードを見せてくれないかい! それは未確認のロックシードだったはずだ! どういう経緯で生まれたか、ぜひ調べたい……!」

 

 デュークがニヴルに近づいていく。マリカはまた始まったかと呆れる。研究室の様子通り、彼は好奇心の塊らしい。

 

「ん……待てよ……? 確か君はうちのプロジェクトに来たときにはすでにロックシードを持っていたな……。それはセンゴクから受け取ったものじゃないのか?」

 

 先頭を歩いていた斬月が立ち止まり、振り返る。

 

「へ? それ、タカトラのプレゼントじゃないのかい? 君の推薦で来たという書類があったからヘルヘイム調査組に加入させたんだけど」

「違う。それに、俺はそんな書類通した覚えはない。百崎、お前か?」

「いえ、私でもないわ。私もあなたと同じく、またセンゴクの勝手な決定とばかり……」

「おいおい、またってのはひどいんじゃないか」

 

「つまり、こいつはいつの間にかユグドラシルに入り込んでいたってわけか?」

 

 ディケイドのその言葉を聞き、三人のライダーはニヴルを見つめる。

 

「チッ……余計なことを」

 

 ニヴルは小声でそう呟く。

 

「ん? 氷雨く――ぐわっ!」

 

 ニヴルはソニックアローの刃を使って、デュークを斬った。叫び声を上げてデュークは地面を転がる。

 

「ど、どうして……!」

「あなたたちが悪いんですよ。余計なことに気づいてしまったばかりに、死を迎えるのがほんの少し早くなってしまった」

 

 ニヴルがソニックアローを天に向けて発射する。それが合図になっていた。ライダーたちはあっという間にインベスに囲まれてしまった。

 

「インベス!? 君がこいつらを操っているのか!?」

「まさか行方不明者は……! 氷雨、貴様ァァアア!」

「フン! 今更気づいても遅い!」

 

 斬月はメロンディフェンダーを使ってニヴルの連撃を防ぐ。そして腰のホルダーから抜いた無双セイバーを振り、攻撃を仕掛ける。が、突撃してきたインベスが身代わりになり、ニヴルに攻撃が当たらない。

 その隙にニヴルが弓を引き、斬月に発射する。胸アーマーから火花を散らし、斬月は膝をついた。

 

《フォームライド アギト フレイム》

 

 ディケイドはアギトに変身する。フレイムセイバーとソニックアローがぶつかり合う。

 

「お前がバケモンを指揮してやがったとはな」

「そうですよ! ヘルヘイムに人間は勝てません! ユグドラシルの考える、ドライバーによる進化など無意味!」

「やたら人間人間と……。お前は違うとでもいうのか」

「話す必要がないですね!」

 

 炎の刃と氷の刃が互いにダメージを与えていく。遠距離攻撃を持つニヴルだったが、ディケイドアギトはそれを尽く打ち落としていく。打ち返した弾がニヴルに命中し、ダメージを与えることもあった。そうして一歩一歩確実に近づいていくディケイドが若干優勢かと思われた。

 

「んん!?」

 

 ディケイドアギトは突如現れたシカインベスによってはがいじめにされた。動きはじめるのが遅すぎた。なんとか振り払いたいが、低級インベスとは勝手が違う。

 

「よぉおし、そいつを動けなくしておけ……」

 

 斬月、マリカ、デュークはインベスを一体一体撃破していたが、数の暴力で押し切られてしまう。

 ニヴルはドライバーのレバーを二度押し込む。

 

《スターエナジー フローズン》

 

 武器を地面に突き刺すと、そこから凍っていく。氷は円状に広がり、そのままインベスごとディケイドらを飲み込んでしまった。

 

「ドライバーのせいで、これで死なないのは厄介ですね。だが、しばらくそこで眠っていてもらいますよ……! あとでじっくり殺してやりますから……!」

 

 ニヴルは森の奥へ消えた。

 

 

 

 

 コウタは街を歩いていた。景色が褪せて見える。人も建物も何もかも、昨日までのそれとは違って見える。

 

――もう俺はアーマードライダーじゃない。

 

 それを自覚することが恐ろしい。ずっとアーマーライダーとして生きてきた。それが途端に自分の役割、自分の意味を見失ってしまうなんて。

 

「コウタくん!」

 

 不意に名前を呼ばれた。そちらを見ると夏海が息を切らして立っていた。

 

「士くんが帰って来てないんです! イベント会場も閉鎖されてましたし……。コウタくんなにか知りませんか」

「俺が知るわけないだろ」

 

 今は誰とも話すつもりになれない。彼女と真逆の方向に歩きだす。夏海はコウタの腕を掴んだ。

 

「待ってください。二人を助けないと。力を貸してください」

「しつこいな! 戦極ドライバーが破壊されたのにか!? あんたも見ただろ、俺のドライバーが壊されたとこを! もう放っといてくれ!」

 

 夏海の手を振り解こうとするが、彼女はしつこく腕を掴み続ける。コウタが無理やり足を動かすと、夏海も抵抗しつつゆっくり移動する。

 

「コウタくんはそれでいいんですか。ミツザネくんを見捨てることになるんですよ。そんなの……そんなの悲しすぎます。きっとマイちゃんや、コウタくんのお姉さんまで――」

「姉ちゃんだって俺のことはどうでもいいと思ってる! 自分のためにアーマードライダーやってる俺に、愛想尽かしたんだ」

 

「それは違います!!」

 

 夏海はぴしゃりと言い放ち、手を離した。反動でコウタは転びそうになる。彼は立ち止まった。

 

「お姉さんだってあなたのことを心配してます! 家族が危ないことに突っ込もうとしてるのに、心配じゃないわけないじゃないですか!」

「じゃあなんで俺を放ってるんだよ! 俺がアーマードライダーになった時も、ライダーをやめると言った時も! いつも笑って肯定するだけだ!」

「それが! ……それがあなたの決めたことだからじゃないでしょうか。どんなに心配でも、たとえそれが完璧なものじゃなかったとしても、あなたが決めた道だから。そしてあなたを信じてるから。だから笑って……送り出すしかないんです」

 

 二人の間に沈黙が流れる。

 

「……あんたもそういう人が?」

「どうでしょう」

 

 夏海はコウタに近づき、戦極ドライバーを渡した。

 

「……これは?」

「貸し出しのドライバーです。私、返し忘れてたんです。もう一度、一緒にヘルヘイムに行ってください。みんなを助けるために」

 

 みんなを助けるために。その言葉が、コウタの心を大きく揺さぶった。そして彼は、サクラハリケーンロックシードを取り出していた。

 

「いつまでもうだうだ言ってる場合じゃない、か……。変わらなくちゃいけないよな」

「行きましょう」

 

 二人は頷きあった。

 

 

 

 

《カメンライド ヒビキ》

 

 召喚された響鬼は、口から放出される鬼火で氷を溶かしていく。氷が溶けて暴れだすインベスは、ドライバーの発砲で確実に消していく。

 

「た、助かった」

「お前もたまには役に立つな」

「感謝したまえ」

 

 ディケイドにそう言われたのは、ディエンドだった。彼らの目の前でドライバーをくるりと回す。

 

「氷雨は!?」

 

 斬月はディエンドの肩を掴み、勢いよく質問する。ディエンドはそれを振り払い、手を差し出した。

 

「さあね。それより、助けてもらったお礼かなにか必要だと思わないかい」

「あいつ……!!」

 

 斬月は走り出した。ディエンドの言うことは彼の耳に届いていない。デュークとマリカもそれに続く。

 

「残念だったな」

 

 ディケイドは、彼が無視されたことが愉快だったのか、肩をポンポン叩き、笑う。そして横を通過し、斬月たちが走っていった方へ。

 

「士」

 

 ディエンドはディケイドを呼び止めた。

 

「気をつけたまえ。君が相手にしようとしているのはとても大きなものらしい」

「……」

 

 返事をせず、ディケイドはその場を去った。

 

 

 

 

 ニヴルは、一際巨大な樹の前に座っていた。飲み込んだライダーたちをエネルギーにするのには時間がかかる。それをここで静かに待とうということだ。

 

「……!?」

 

 側に置いていたソニックアローを握り、空中を斬った。そこに火花が散る。何かがいる。

 

「誰だ!」

「ぐっ……よく分かったな!」

 

 そこにはステルスモジュールで透明化していたディケイドフォーゼが。攻撃を受け、フォーゼのカメンライドが解ける。

 

「セコいことをしますね」

「セコさも戦術、戦術はすなわち実力だ」

 

 地面に倒れながらも、ディケイドは指をパチンと鳴らす。

 それを合図に四方八方から攻撃が飛んでくる。ニヴルはそれを避ける。

 

「調子に乗るな人間!」

 

 ニヴルのソニックアローが、物陰に隠れていたデュークとマリカの二人を狙い撃つ。

 二人。一人足りない。彼は――

 

「ここだろう?」

 

 ソニックアローを真後ろに向け、発射する。ディケイドたちと真反対にいた斬月がまともに被弾し、悲鳴を上げながら吹き飛ぶ。

 ニヴル一人に、ディケイド、斬月、デューク、マリカの四人はやられてしまった。

 

「そう来るだろうと思っていたさ! 詰めが甘いんだよ、雑魚が――」

「君もね」

「なに!?」

 

 そこに現れたのは五人目のライダー。インビジブルで姿を消していたディエンドがニヴルのアーマーを撃ち抜く。頑丈なゲネシスドライバーだったが、ディエンドライバーの一撃でバラバラになってしまった。

 変身が解除され、氷雨の姿になる。

 

「やった!」

「まだだ! むしろ本番はここからだよ」

 

 喜ぶデュークに、ディエンドは注意を促す。

 

「まだ完全に吸収したわけではないが……仕方ない」

 

 ディエンドの言う通り、氷雨の様子がおかしい。ライダーたちは彼から一定の距離を取り、武器を構える。

 

「うおおああああああああ!!」

 

 氷雨の体にヘルヘイムの植物が巻きつく。ライダーたちはそれを阻止しようと弓を撃つが、一切の攻撃を通さない。

 

「人間の進化など無に等しい! これが! 生物を凌駕する力だ……!」

 

 彼の体はツタに覆われ、オーバーロード・ニヴルヘイムに変化――否、進化した。

 

「お前……」

「私はヘルヘイムそのもの……。お前たちを倒し次第、この森は地球に進出し、すべてを飲み込む。人類は今日滅びるんだ」

「そうはさせるか!」

 

 一斉に立ち上がり、銃を構えるライダーたち。ニヴルヘイムは周りにツタを飛ばし、武器を振り落とした。それを拾おうとしたところを、衝撃波でダメージを与えた。

 変身が解除された一同は、その場で動けなくなってしまう。

 

「やはり弱いな! 人間は!」

 

 

「セイッハーーー!」

 

 

 叫び声と共に現れた鎧武が、サクラハリケーンに乗りながらニヴルヘイムを両断する。が、傷口に植物がすぐに元に戻った。

 

「ぐっ……また人間が!」

 

 鎧武はバイクごと吹き飛ばされる。変身が解除され、生身でヘルヘイムの地面を転がる。

 

「おい! お前!」

 

 士はコウタに駆け寄った。そして、彼の目が変わったことに気がついた。

 今度は自分じゃなく、誰かのために。

 

「俺は俺の道を進む。もう迷わない。俺は生まれ変わったんだ!」

「フッ……。どうやら、一皮剥けたみたいだな」

 

 ニヴルヘイムは二人の前に立つ。そして語り出した。

 

「どう変わろうが、アーマードライダーに未来はない。何しろ黄金の果実なんて存在しないのだからね。全て私の、作り話さ!」

「……」

「餌をちらつかせば君たちは簡単に飛び込んでくる。あまりにも愚かすぎる生物なんだよ。こんなもの、いずれ滅びる。ならば今ここで滅びても変わらないだろう?」

 

「違うな」

 

「ん?」

「人間はお前が思ってるほどバカな生物でも弱い生物でもない。少なくともこいつは、例え世間にどう見られようが、どう扱われようが関係ない。自分の生き方を自分なりに考え、強くなり、進化してきた。人間の価値を決めるのは人間だ。お前じゃない」

「お前……何様のつもりだ!」

「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ」

「お前の番は終わりだ。ここからは俺たちのステージだ!」

 

 士とコウタはドライバーを腰に巻き、それぞれライダーカードとロックシードを持つ。

 

《オレンジ》

《ロック オン》

《カメンライド》

 

「変身!」

「変身ッ!」

 

《オレンジアームズ 花道・オンステージ!》

《ディケイド》

 

「はああああっ!!」

 

 二人は剣を持ち、目の前の怪人に向かっていく。ニヴルヘイムはそれぞれを片手で受け止める。

 

「力あるものに弱者は淘汰されていく。生物はそうやって生死が決まっていくんだよ」

「強さは単純な力だけじゃないんだぜ。それを教えてやるよ」

「なに?」

 

 鎧武の言葉を聞き返したのはニヴルヘイムだけではなく、ディケイドもだ。鎧武はフッと笑う。

 

()()()()()()()()と言っただろ! 二人だけだと思ったら大間違いだぜ」

「まさか!!」

 

 ニヴルヘイムの視線は巨大樹の方に向けられる。そこには、背中に光る翼を持ち、幹の周りをぐるりぐるりと何周もしながら剣を振るうキバーラがいた。

 

「なんてことを……!!」

「力で勝てなくても、お前の目を引き時間を稼ぐことが俺の役目。さあ、解放だあーッ!!」

 

 鎧武の叫びと共に、巨大樹が真っ二つになった。そこから溢れ出てくるライダーたち。ヘルヘイムでの行方不明者がそこに現れた。中にはクウガや龍玄もいる。

 

「お前、やるじゃないか」

「仲間との信頼、これが俺が見つけた新たな強さの形だ。仲間は助けないとな!」

 

 鎧武はディケイドに向かってそう言った。

 その瞬間、ライドブッカーが開きカードが飛び出す。鎧武のライダーカードに力が宿る。ディケイドはその中の一枚を取り、ドライバーに装填した。

 

「いくぞ。あいつを倒す」

「おう」

 

《ファイナル フォームライド ガガガガイム》

 

「ちょっとくすぐったいぞ」

「え? うおおお!?」

 

 鎧武の鎧がめくれ上がり、そこから鋭い刃が。そして足側には大きな銃口が現れた。あっという間に彼は『ガイムダイダイジュウ』へと変身する。

 戦況がガラリと変化した。ニヴルヘイムは焦り、大量のインベスを生み出した。そして自分はそれらに隠れるように後退する。

 

『俺たちに続けー!』

「うおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 大量の初級インベスを相手に黒影トルーパーたちが戦う。それ以上の強さを持つ上級インベスには公認のアーマードライダーたちが対応する。

 

「食らえー!」

「おらあ!」

「私たちも行くわよッ!」

「はい! 店長!」

 

 

 

 

 その頃、現世ではヘルヘイムの中継が再開していた。

 

「いけ!」

「頑張れ!」

 

 指示する人間は皆戦いに参加しているはずだ。

 では誰がこれを?

 ライダーたちも視聴者も、それを知る由もない。ただモニターに釘付けになり、目の前で起こっている大合戦の行方を見守っていた。

 

 

 

 

「おらおらおらおら!!」

 

 ディケイドはガイムダイダイジュウを連射しながら敵陣に突っ込んでいく。無限に湧き続けるインベスたちを容赦なく倒していく。

 

『こういうタイプの鉄砲って連射するもんじゃねーだろ』

「できちまうんだからしょうがないだろ」

 

 くだらない会話をしているうちに、パワーを溜めるニヴルヘイムの前に来ていた。

 

「人間んんんん!!!」

 

 ニヴルヘイムがツタを伸ばし、ディケイドたちを攻撃しようとする。ディケイドはそれを撃ち抜き、爆破する。

 連射できるといっても、それには限界がある。無限の手数を持つニヴルヘイムにだんだんと差をあけられていく。

 

「これで終わりだ。死ィィイイ……ねぇェエエ!!」

 

 四方八方からツタが伸び、ディケイドたちを囲うように地を這う。そして一斉に飛びかかった。その中心で爆発が起きる。

 

「ハハハ……これが人間の限界だ!」

『んなわけねーだろ』

「なにっ!?」

 

 ディケイドは、地面に向かって高威力で発砲することで空へと逃げていた。鎧武の声を聞き、ニヴルヘイムが空を見上げる。

 

『とどめだ!』

 

《ファイナル アタックライド ガガガガイム》

 

 ガイムダイダイジュウの形が変わる。銃口の近くに持ち手が生まれ、巨大な剣になる。ディケイドはそれを空中で持ち替え、ニヴルヘイムに向かって振り下ろした。

 

「はああああああ!!!」

「バカなッ!! グググググ……ガァァアア!!」

 

 今度は再生できないように、巨大なエネルギーで焼き尽くす。その衝撃波で周りのインベスは爆発していく。

 

「うおらあああああーーっ!!」

『セイハァーーッ!!』

 

 二人の息が合った。

 ニヴルヘイムは一瞬のうちに炎に包まれ、悲鳴とともに燃え尽きた。

 大将をなくしたことで、インベスたちは各自バラバラに動き始めた。より簡単に倒されるようになり、中には逃げ出したものもいる。

 ライダーたちは勝利を喜んでいた。傷だらけの者や変身を解除された者、老若男女問わず、皆一緒に。

 

「やったな」

「ああ」

 

 ディケイドは変身を解除した。それに釣られて鎧武もドライバーからロックシードを外す。

 

「よう」

 

 満足げなコウタの顔を見ていると、後ろから何者かに声をかけられた。

 そこにいたのは、例のイベントの実況をしていた男。ライダーでない者がヘルヘイムにいることは不可解だ。狼狽する士とコウタだったが、実況の男は話を続ける。

 

「まずは礼を言うぜ。ありがとう」

 

 彼は深々と頭を下げる。

 

「あいつは、この森の邪な意思そのものだ。それが実体をもってしまったんだな。立場上、俺からはあいつを倒せないからなあ。今回はお前たち人間の新たな強さを見られて嬉しかったぜ」

「何を言ってるんだ……?」

「まあ、いつ再び脅威が現れるか分からないからな。お前たちの日々の奮闘を見守らせてもらう。とにかく、これからも頑張れよ! アーマードライダーズ!」

 

 一瞬光に包まれたかと思うと、実況の男の姿は形を変え、拳くらいの大きさの物体になった。

 

「まさか……」

「黄金の果実だ! やはりあったんだ!」

「待て海東」

 

 それを手に取ろうとする海東の足を引っ掛け、彼を転ばせる。

 士が見ていたのは、目の前の黄金の果実を見つめるコウタ、そしてアーマードライダーたち。美しいその輝きは皆に平等に降り注ぎ、彼らの心を癒した。

 士はシャッターを切った。

 

「あれ!?あのロックシードはどこにいったんだーッ!? まだ解析していなかったのにィ~!」

 

 そんな中、デュークはニヴルに変身するためのロックシードを探していた。喜び飛び跳ねるライダーたちに踏まれながら地面を這いつくばり、目を皿にする。ドライバーが破壊された時のことを考えるとこのあたりに落ちているはずだ。

 しかし、既にそこにはロックシードはなかった。

 

 

 

 

 その頃、白服の研究員が研究開発室をあとにしていた。その手にはスターフルーツエナジーロックシードが握られていた。

 

「人工ロックシードの力、存分に試させてもらったぞ……」

 

 白服は満足そうに部屋を出た。

 

 

 

 

 あの一件で世間からアーマードライダーを見る目が変わったらしい。社会的に認められ、アーマードライダーとしての活動にも更に多くのファンがつくようになったとか。

 

「おっ、これは……! ほら、今日のランキング」

 

 ユウスケが士らに見せた記事では、鎧武が一位になっていた。

 

「すごいじゃないですか」

「コウタくんも、いつかユグドラシルと完全に和解できたらいいね」

「その日が来るのはそう遠くないような気がします」

 

 二人は晴れやかな顔。

 それと対照的に、海東は難しい表情だ。

 

「はーあ! 士の邪魔さえなければあの時黄金の果実を手に入れられていたというのに」

「まあそう言うな」

 

 士が写真を撮ったと同時に黄金の果実は地面に吸い込まれてしまったのだ。今も森のどこかにそれはあるのかもしれない。

 

「その代わりと言ってはなんだけど、これをもらってきたよ。本物の黄金の果実の足元にも及ばないがね」

 

 海東がポケットから取り出したのは、黄金に輝くリンゴのロックシード。研究室にあったものを盗んできたのだ。

 

「ったく。転んでもただでは起きない泥棒だ……」

「はいはいはいはい」

 

 キッチンの方から栄次郎が人数分のジュースを持ってきた。横から見れば層を成しており、見た目も美しい。

 

「新鮮なフルーツたっぷりのミックスジュースだよ」

「栄ちゃん器用ね~」

「えへ。そうでしょ」

「へ~本当だ。綺麗にできてますね――おわあ!!」

 

 ユウスケは机の足につまずき、転びそうになる。それを士や夏海、海東までもが協力して支え、ジュースの方へ倒れるのを阻止した。

 その瞬間、ジャララララと新たな絵が出現する。

 机の上に、タワー状に積まれた銀色のメダルが何束も並べて置かれている。そして、その中に鮮やかな色がついたメダルが数枚。メダルには動物や虫の絵柄が描かれている。

 

「なんだ? カジノ?」

「コインゲームみたいに見えますけど」

 

 推測を立てる二人。その時士は残る四枚のブランクカードを取り出していた。残る世界はあと四つ。その間に鳴滝の真意が分かるのだろうか。

 士はジュースを手に取り、ストローでぐるぐるとかき混ぜた。




次回 仮面ライダーディケイド2

「ライダーは助け合いだろ」
「いいや、競い合いだね」
「なんだその歌」
「二兎を追うものはなんとやらってね」
「僕が手伝ってあげようか」

第12話「オーズとアイス屋と強欲の器」

全てを破壊し、全てを繋げ!
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