仮面ライダーディケイド2〜平成二期の世界〜   作:らいしん

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「ヘルヘイムに人間は勝てません!」

これまでの仮面ライダーディケイド2は……

「強さは単純な力だけじゃないんだぜ」
「人間の価値を決めるのは人間だ」
「これからも頑張れよ! アーマードライダーズ!」
「人工ロックシードの力、存分に試させてもらったぞ……」



第12話「オーズとアイス屋と強欲の器」

 士一行は次の世界に来た。この世界で一際目立つのが、一等地に立つ高層ビル。とある財団の拠点となっている場所である。

 紫龍(しりゅう)ファウンデーション。それがこの財団の名前だった。

 廊下を忙しそうに歩くスーツの男女に、清掃員は通路を譲る。人がいなくなると、窮屈な業者の帽子を外し、サボりを始めた。

 士のこの世界の役割は、このビルの清掃員だった。

 

「ったく。なんだこの格好」

 

 いい加減夏海たちに笑われるのも飽きた。

 清掃員も楽じゃない。士にかかればチリ一つないように掃除できるが、なにせ階数が多い。そこまでする気は毛頭なかった。

 

「これがこの世界で俺がすべきことかよ!? ……おっと」

 

 また社員が廊下に出てきた。それを見た士はサッと帽子を被り、掃除機をかけ始める。仕事をしているフリをしておかないと面倒だ。紙の山を抱えている彼は、士の横を素通りする。

 その際、資料の束の一番上が風に乗ってひらひらと舞った。士はそれをキャッチする。

 

「おい、落としたぞ」

「おっ、ありがとう」

 

 短いやりとりだったが、士はその資料の表紙に書かれた文字を見ていた。

 メダルシステム。

 どうやらこの世界にはメダルというものがあり、それがこの財団が所有する財産の一つらしい。写真館の絵に描かれていたのもこれだった。もしかするとこの世界で重要な役割を持っているのかもしれない。

 ふとビルの外――地上で、何か爆発が起きた気がした。

 

「……?」

 

 士はガラスに顔を近づける。

 その瞬間、急に大音量でブザーが鳴る。士は驚いてガラスに頭をぶつけた。ヤミー出現、ヤミー出現。機械音声がそう繰り返す。

 ビルのシャッターが開き、地下駐車場からライドベンダーに乗った武装部隊が出ていく。そして、数が多い屑ヤミーたちを一体ずつ集中射撃で攻撃していく。部隊の中の一人は、大暴れするメインの怪人――カマキリヤミーの方に向かってバイクを走らせた。

 

「変身」

 

 バイクに乗りながら腰に巻かれていたベルトのバックルにメダルを投入し、ハンドルを回す。バックル中央のトランサーシールドがパカッと音を立てて開く。そしてドライバーから放出された装甲が彼の体を覆い、仮面ライダーバースへと変身させた。

 バースはライドベンダーを停め、ヤミーの前に立つ。バースバスターを連射するが、全て鎌で真っ二つにされてしまう。バースは冷静に戦況を見て、新たにセルメダルを取り出しドライバーに投入する。

 

《ドリルアーム》

 

 腕にセルメダルのエネルギーを纏い、ドリルの装甲が出現した。

 攻撃に特化したユニットを振り回し、カマキリヤミーにダメージを与えていく。ドリルをヤミーに喰らわせるたびにそこからメダルがこぼれ落ちる。

 士はその様子をじっと見ていた。

 

「……ん?」

 

 遅れてやってきた一台のバイク。それは猛スピードで一般部隊たちの方へ向かっていく。ハンドルを握る黄色い手。目立つ赤い頭。片手には剣型の武器を持っている。

 

「お、おい!? なんだあいつ! 何する気だ!?」

 

 士は慌てる。思わず、磨いたばかりのガラスに素手をついていた。

 バイクは更にスピードを上げた。剣を持つ手に力が入る。肩に刃を乗せるように剣を構え、銃撃の中を駆け抜けていく。彼が通り抜けた後、屑ヤミーは爆散し、欠けたセルメダルを吐き出した。バイクに乗ったまま、ヤミーだけを倒したのだ。

 上下三色のライダーはバースの前に停車した。

 

「ま、待たせた!」

 

 

 

 

第12話「オーズとアイス屋と強欲の器」

 

 

 

 

 仮面ライダーオーズの登場でバースの攻撃に激しさが増していく。より強く。より速く。敵から漏れ出たセルメダルを掴み、自分のドライバーに投入する。

 

「大丈夫か、アキラ!」

「来るな!」

 

 近づこうとするオーズに、バースはドリルアームを振って牽制した。

 

「お、おい! なにやってんだ!?」

「こいつは俺が倒す!」

 

《セル バースト》

 

 ハンドルを回すとドリルの出力が更に上がる。彼はそれをカマキリヤミーに突き刺した。

 が、ヤミーの俊敏さに負けた。怪人は素早く後ろに飛ぶ。獲物がいなくなり、バースはバランスを崩して前のめりになってしまう。

 カマキリヤミーは鎌にエネルギーを貯め、バースの首を狙ってジャンプした。

 

《スキャニングチャージ》

 

「せいっ……ヤーッ!!」

 

 オーズはメダジャリバーを振った。普通なら当たらない距離だ。だが、メダジャリバーは空間をも切り裂く。カマキリヤミーは動きを止め、次の瞬間爆散し、セルメダルの雨になった。

 バースはそのまま倒れ、地面に手をつく。オーズはメダジャリバーを下ろし、チャリンチャリンと音を立てて地面に散らばるメダルを眺めていた。

 バースはドリルのモジュールと変身を解除して立ち上がり、オーズの方に近づいていく。

 

「アキラ、お疲れ」

 

 彼も変身を解除し、ハイタッチのために手を上げたが、バースの変身者・アキラは息を整えながらそれを払い除けた。

 

「エイジ……なぜ余計なことをした」

「お前がやられそうだったからだよ。ヤミーを倒せたんだ。それでいいじゃん。ライダーは助け合いだろ?」

「いいや、競い合いだね。俺は誰よりも強くないと意味がない。お前に助けられるくらいなら、あのまま攻撃を受けた方がマシだった」

 

 アキラが指を鳴らすと、メダルを集めにタカカンドロイドが群れをなして飛んできた。一匹につきメダル一枚を咥え、どこかに飛び去った。

 

「そんなこと言うなよ。無茶はダメだって。アキラ死んじゃったら嫌だからな」

「死ぬか! 言っておくがな、俺はお前よりも強くなる。バースの力を侮るな」

「いや侮ってなんか……あっ! 俺そろそろバイト行かないと。人足りないんだよね。アキラもどう? ライダーもいいけど、人と関わる仕事も」

「ハッ。バイトだと? オーズの資格を持つ者の自覚がないな。いい加減そんなものやめろ」

「そ、そんなものって……」

 

 アキラはライドベンダーに跨り、武装部隊を引き連れて帰っていった。

 

「めんどくせー奴だな」

 

 不意に声をかけられた。エイジが振り返ると、そこには長身の清掃員がいた。「あなたは?」と尋ねるエイジに士は「門矢士。清掃員兼カメラマンだ」と答え、シャッターを切った。

 

「あのままほっといてやればよかったんだ。一度痛い目に遭えば考え方も変わるだろ」

「そうはいきませんよ」

「なぜだ。向こうはお前のことをよく思ってないみたいだぜ。助けてやる義理なんてないはずだ」

 

 そして言葉尻に「バイトはどうした?」と付け加える。エイジは時計を見て絶望の表情を浮かべ、走り出した。士はそれについていく。

 

「で? あいつはお前のなんなんだ?」

 

 エイジは士の方を見ずにこう答えた。

 

「紫龍アキラ。俺の、昔からの友達です」

「紫龍……?」

 

 士はその苗字に聞き覚えがあった。

 

 

 

 

 紫龍ファウンデーションの会長室。先ほど現れたカマキリヤミーの件について、アキラが報告をしていた。

 

「――この件でヤミーによる市民への被害はありません」

「ご苦労。では下がりなさい」

「いえ、まだエ……オーズについてお話が」

「下がれと言っている」

「いや、だから親父――」

「何度も言わせるな。もうこの場で話すことはない。そして私のことは会長と呼べ。分かったな、ライドベンダー隊総隊長紫龍アキラ」

「……はい」

 

 アキラは一礼し、会長室を後にした。扉を乱暴に閉めたのは反抗心の現れだった。

 高いカーペットが敷かれた廊下をズンズン歩き、エレベーターのボタンを押す。誰かが降りるのに使ったらしく、全八基あるエレベーターは全て低階層に止まっていた。ここまで上がってくるのには時間がかかる。アキラはじっとしていられず、階段を使うことにした。

 

「やあ。隊長くん」

 

 階段の踊り場に立っていた男から声をかけられた。彼のようなラフな格好はこの建物内では見かけたことがない。

 

「誰だお前。社員じゃないな。見逃してやるから、警備員に見つからないうちにとっとと出ていきな」

「君はあのオーズというライダーにご執心みたいだね」

「……お前には関係ないだろ」

 

 海東の言葉にアキラは足を止める。

 

「いいや。僕は取り引きをしに来たのさ」

「取り引き?」

「そ。僕が助っ人をして、オーズに勝たせてあげるってことさ。それで君が彼より優れていることが証明されるよ」

「俺を馬鹿にしてるのか!? お前の助っ人なしに俺がエイジに勝てないだと!?」

 

 アキラは海東に掴みかかる。海東はその手をいなし、逆に彼の手を掴んで後ろに回し、背後を取った。アキラは動けなくなる。

 

「ほら。そんなプライドを持っているようじゃ君はいつまで経ってもオーズの背中を追う側だ。強くなるには何かを手放さないといけないよ。特に君みたいな不器用な人は。二兎を追うものはなんとやらってね」

「ぐ……!」

「心配しなくていい。僕がオーズを攻撃することはないよ。取り引きは成立ってことでいいかな?」

 

 海東は笑顔を見せ、彼を解放した。

 

 

 

 

「お待たせしました」

 

 エイジは客の親子にアイスキャンディーを渡した。

 彼のアルバイトは移動屋台料理店の従業員だった。今は『到来!サマーフェア』を開催中らしく、冷やし中華といった夏を感じさせる料理やスタミナがつく料理が注文できる。そして熱中症対策にとアイスキャンディーの値段が安くなっていた。

 アイスを受け取った子供がありがとうとお礼を言う。それを聞いたエイジの嬉しそうな顔を見て、士は思わずシャッターを切っていた。

 

「意外と客が来るもんだな。だが、人手が足りないってのは嘘だろ」

 

 士は屋台に近づき、エイジにそう呼びかける。何度か行列ができることもあったが、客を何分も待たせるほどではなかった。

 

「あら、あなたエイジくんのお友達?」

「まあそんなとこか。朝からの長い付き合いってやつだ」

 

 店主のチヨコが士に食いついた。お近づきの印にと言ってに士にアイスを差し出す。士がそれを受け取り口にすると、彼女は代金を要求した。

 

「は!?」

 

 驚きの表情を浮かべた士を見て、大笑いして「もう。冗談よ」と言った。癖の強い人だ。士は苦笑した。

 

「あっ。そうだ。エイジくんもう上がっちゃいなさいな」

「えっ!? まだ早くないですか!?」

「平気よー。忙しい時間帯も終わったし、後は私だけで回せるわ。エイジくん最近ずっといてくれたから、たまには休まないとでしょ?」

「ありがとうございます」

 

 エイジはエプロンを外した。

 

「えっと、お名前、門矢さん……でしたっけ」

 

 会話はエイジの質問から始まった。二人は店を離れてしばらく歩き、木陰のベンチに腰を下ろした。

 

「俺は赤羽(あかば)エイジ。門矢さん、俺に用事があるってことは紫龍ファウンデーションの人なんですかね?」

「いいや。だがお前にいろいろ聞きたいことがあるのは確かだ」

「あ、はい。なんでもどうぞ。俺が答えられることなら答えますけど」

 

 人を疑うというものを知らないのか。エイジの無邪気な笑顔を見ると士は変な罪悪感を覚えた。少なくとも自分や自分の知り合いたちは会ったばかりの怪しい人間にここまでオープンにすることはない。

 

「とりあえずあのメダルでできた怪人のことだな」

「ヤミーですか」

 

 エイジは士にヤミーのことについて話した。

 ヤミーは人間の欲望から生まれる災害のようなものであること。大昔グリードと呼ばれる怪物が生み出され、それらがヤミーを作っていたということ。現在グリードの一部は封印され、紫龍ファウンデーションが保管しているということ。そしてその全てにメダルが関わっていること。

 

「あの……これ何かの役に立ちますか?」

「さあな。だがどんなことでも聞いておくに越したことはないだろ。どうやら俺は世界を救わなくちゃいけないらしいからな」

「ははっ。世界ですか」

 

 士の台詞に、エイジは乾いた笑いで返事した。

 

「きゃああああああああ!」

 

 悲鳴が聞こえた。二人は同時に立ち上がり、声がした方に走っていく。

 ビルのガラスが粉々になっており、その中の宝石店に大きな被害を出していた。

 

「門矢さん、ヤミーはこういうところに出やすいです。宝石ってのはやっぱりみんな欲しいみたいで、欲望が生まれやすいんですね」

「そうだな……ん?」

 

 遠くの地面で何か小さいものが動いた気がする。士は目を凝らした。エイジの肩を叩き、何かがいたと思われる方向を指差す。

 また地面が揺らぐ。やはり何かがいる。小動物か昆虫か。

 その正体は背ビレだった。士とエイジに向かって、地面を泳ぐサメヤミーが飛び出してきた。

 

「水生系のヤミーか!」

 

 エイジがオーズドライバーを手にすると、士もディケイドライバーを取り出した。

 

「……!? 門矢さん、それは!?」

「これがさっき話を聞いた理由だ」

 

 二人は腰にドライバーを巻き、それぞれライダーカードとコアメダルを装填した。

 

《カメンライド》

 

「変身!」

「変身ッ!」

 

《タカ》

《トラ》

《バッタ》

《ディケイド》

《タ・ト・バ タトバ タ・ト・バ》

 

「……なんだその歌」

「え、聞こえてるんですか!?」

「……? まあいい」

 

 二人は仮面ライダー、ディケイドとオーズに変身した。ディケイドはライドブッカーを銃状にして、逃げるヤミーに向けてダッシュする。だがオーズは何かを探して別方向へ。

 街の大通りの隙間をヤミーは猛スピードで泳いでいく。ディケイドの攻撃はヤミーに当たらない。

 

「ったく。俺だけ残してどっか行きやがって。逃げる魚には釣り人だ」

 

《フォームライド》

 

 オーズと共に戦う予定だったが、作戦変更。彼はライダーカードを取り出し、ドライバーに投げ入れる。

 

《デンオウ ロッド》

 

 ディケイドのマゼンタカラーから一転。青いアーマーの電王ロッドフォームに変身した。デンガッシャーロッドモードを竿のように振るい、サメヤミーを釣り上げた。

 

《ファイナル アタックライド デデデデンオウ》

 

 空中で身動きが取れないヤミーにデンガッシャーを投げる。六角形の紋章が浮かび、ヤミーはディケイド電王の方へ飛んでくる。彼は高く足を上げ、それを蹴った。再び空中に飛ばされたヤミーはそのまま爆発し、セルメダルになった。

 落ちてくるメダルをキャッチし、それをまじまじと見つめる。表裏の模様を眺めていると、背後から攻撃を受けた。

 

「なに!?」

 

 そこには大量のサメヤミーがいた。二体や三体ではない。十体を越えるヤミーがそこに群れている。ある個体はヒレのみを出して泳ぎ回り、ある個体は地面から顔を出し、そしてある個体は既にディケイド電王に向かってスピードを出していた。

 

「危ない!」

 

《ラタラタ ラトラーター》

 

 オーズはライドベンダーに乗り、ラトラーターコンボにコンボチェンジした。そしてライオンヘッドのたてがみを発光させ、ヤミー全体をスタンさせた。

 

「大丈夫ですか!? すみません。自販機(これ)探してたら時間かかっちゃって……」

 

 そう言いながらオーズは黄色いカンドロイドの蓋を開け、放り投げた。地面を跳ねた缶は巨大化し、ライドベンダーと合体してトライドベンダーになった。横の黄色いラインが光る。

 

「ハアッ!」

 

 オーズの掛け声とともにトライドベンダーは大きく吠え、散り散りになるサメヤミーを空中に吹き飛ばす。それを狙ってオーズはメダジャリバーで斬る。ディケイドも竿を伸ばしてオーズのアシストをした。

 そうなってからはすぐだった。ヤミーは一体残らずメダルになった。

 

「やったな、エイジ」

「ありがとうございます。門矢さんがいなかったらもっと被害が出ていたかも」

 

「ここにいたかエイジ!」

 

 オーズとディケイド電王、二人はそちらを見た。緩やかな階段の上、そこには新たなライダー、バースとディエンドがいた。

 

「俺と戦え! オーズとバース、どちらが優秀かハッキリさせてやる」

「急に現れてなに言ってんだよ!? どっちが優秀だとか関係ないだろ! ライダーが争っても無意味だぞ!」

「うるさい! 俺の言う通りにしろ!」

 

 バースバスターをオーズに向かって撃つ。オーズはチーターレッグの能力で、高速でそれを避ける。

 

「そういうわけだ。オーズくんを借りるよ」

「海東、この世界では何を考えてるんだ」

「僕が考えているのは、いつもお宝のことだけさ」

 

《カメンライド》

 

 ディエンドは二枚のライダーカードをドライバーに装填する。

 

《オウジャ》

《ローグ》

 

 二人の紫のライダーが召喚され、ディケイド電王に向かっていく。ベノサーベルを巧みに操る王蛇と、とにかく硬いローグ。今のディケイドには相性が悪い。

 

「だったら手に入れたばかりのこいつを試してやる」

 

《カメンライド ガイム》

 

 空からオレンジ型の鎧が降ってくる。振り下ろされるベノサーベルをがっちりガードし、跳ね返した。

 鎧武に変身したディケイドは、ライドブッカーと無双セイバーを持ち、二人のライダーと戦闘を始める。ディケイド鎧武は二つの剣を使うことで、二対一の構図を二つの一対一の構図へと変えてみせた。

 その横ではオーズとバースの戦いが繰り広げられる。

 

「アキラ! 急にっ! なんだよ! ヤミーはもう倒したってのに!」

「ヤミーとの戦いは終わったんだろ、だったら俺との戦いに集中しろ! オーズとバース、純粋な力比べだ!」

「だから何度も言ってるようにそんなことする意味ないって! 一緒に戦って市民を守る仲間じゃないか!」

「問答無用だ!」

 

 バースは武器付きの腕をブンブン振り回すが、オーズはそれを避け続ける。彼からバースに攻撃することはなかった。

 

「ぐあっ!」

 

 背後から苦しそうな声と打撃音が聞こえる。オーズが振り向くと、だんだん劣勢になっていくディケイド鎧武が見えた。オーズは体をそちらに向ける。

 

「門矢さん! こっちです!」

 

《タカ》

《ウナギ》

《ゾウ》

 

 タカウゾにフォームチェンジしたオーズはタカの目で狙いを定め、ウナギのムチを伸ばしてローグと王蛇を掴んだ。そして身動きが取れないように自分の近くへと引き寄せた。二人のライダーが暴れても、ゾウレッグのずっしりとした安定感は揺らがない。

 

「ナイスだ!」

 

《ファイナル アタックライド ガガガガイム》

 

 ライドブッカーと無双セイバー、二つの剣を同時に上から下へと大きく振る。斬撃が飛び、王蛇とローグを一刀両断。ダメージを受けた二人は消えた。

 

「よそ見をするなぁーっ!!」

 

《セル バースト》

 

「!!」

 

 バースはオーズに向かって必殺技を撃つ。苦しそうな声を上げて地面に転がるオーズ。ディケイド鎧武はバースとディエンドの方を見る。

 

「自分が攻撃を受けようとも人を助けることを優先するんだな。そうだ……お前はそういう奴だったよ……」

「やったじゃないか。君はオーズに勝った。これは今目の前で起こった、まぎれもない事実だ!」

「……あ、ああ」

 

 ディエンドはバースの肩を叩き、回れ右をして歩いていく。階段を挟んだ位置関係でディケイドからは彼らが去っていった方は見えない。

 ディケイドはドライバーを外し、変身を解除した。

 

「痛てて……」

「おい、大丈夫か。あいつ、ついにお前を撃ったぞ」

 

 士は倒れているエイジに手を貸す。

 

「はい。まあ、見てなかった俺が悪いですね。隣にいた人は門矢さんのお知り合いですか」

「あいつはただの悪い奴だ。どうせお前の友達を利用してお宝入手を企ててるんだろうな」

「そうなんですか。……ところで、お腹減ってますよね? 紫龍ファウンデーションの食堂行きましょ」

 

 エイジは服についた砂埃を払いながら言う。

 オーズである彼はヤミーを退治することで財団に所属しているというかたちになっているため、好きに社員食堂を使える。給料は出ないが、代わりにライドベンダーやカンドロイドの使用制限がない。

 

「え?」

「タカの目です。そういうのもお見通しなんですよ」

 

 エイジは自分の目を指差して、得意げにそう言った。

 

 

 

 

 紫龍ファウンデーションのビル。海東とアキラがエレベーターに乗って地下に向かっていた。

 もうすぐ目的のものが手に入ると確信して胸を弾ませる海東に対し、アキラの表情は優れない。

 

「隊長くん、どうだ? 満足した?」

「……いいや。ほぼ不意打ちに近い形になっちまった。こんなことで勝っても虚しいだけだ」

「ああそうかい。ま、僕にとってはどっちでもいいんだけどさ。君が素直になれないうちはオーズくんもまともに戦ってくれない気がするよ」

「さっきあんたの方のやりとりを見て思ったが、あんたもだいぶ屈折してる方だと思うぜ」

「ふん」

 

 そうしているうちに目的地についた。財団のビルの最下階、財団が所有する宝物類が保管されている場所だ。

 アキラはカードキーを使いロックを解除する。ライドベンダー隊の総隊長であり、会長の息子である彼だからできたことである。

 

「本当に開けてくれるとはね」

「俺はこんなものに価値を見出せないからな。十個でも二十個でも、あんたにくれてやるよ」

 

 アキラの言葉を無視し、海東は奥へ奥へと進んでいく。アキラもそれに続き、歩いていく。

 彼らが去った後もエレベーターが動いていることは、二人は気づいていなかった。一度地上に出たエレベーターの表示階数はどんどん下がってくる。

 海東がおっと声を漏らした。

 

「お目当てのもんは見つかったのか」

「ああ。あれが幻の、黒のコアメダルだ」

 

 彼の目の前には、ガラスケースに入った黒いメダルが三つ。それぞれサソリ、カニ、エビの模様が入っている。

 

「よし待ってろ。今セキュリティを――ぐ!?」

「隊長くん?」

 

 海東は顔だけ振り返り、アキラに声をかける。さっきまで立っていた場所で床にうずくまる姿を見て、海東はアキラに駆け寄った。

 

「どうした!?」

 

 呼び掛けても苦しそうに呻くだけだ。

 その時、視界の端に動くものを捉えた。

 それはアキラの背に直撃し、彼の体の中に吸い込まれていった。

 飛んできた方には、全身白い服に身を包んだ謎の男が。彼がコアメダルを投げるとアキラの中に入り、そのたびに彼は苦しそうにする。

 

「うぐっ……あがっ……!!」

「何をするんだっ!」

 

 海東はディエンドライバーを白服に向かって撃った。

 白服は瞬時にガイアメモリを取り出してマスカレイドドーパントに変身した。弾が命中したが、メモリを使ったことで人間以上の耐久力を得て、数秒耐えられる体に。九枚目のメダルを投げ終えた直後、彼は爆死した。

 

「隊長くん! 大丈夫かい!」

「うう……あああああああああああ!!」

 

 自身を抱きかかえていたアキラは、悲鳴にも似た叫び声を張り上げた。声は衝撃波となり、辺りに火花を散らす。海東もただではすまない。物陰に身を隠し、アキラを観察した。

 海東は自分の目を疑った。彼の腕が。足が。体が。異形になっていく。

 

「な……なんだその姿は……」

 

 

「グオォォォォォオオオ!!」

 

 

 アキラの咆哮でいくつかのセキュリティ装置が破壊されたため、緊急ブザーが鳴り響く。地上のビルにも警報が鳴り、地下への侵入者を通知する。

 警報は士とエイジが軽食を取る食堂にも聞こえてきた。

 

「なんだ!?」

「地下か……。地下は確か金庫があるって、昔アキラに聞いたことが」

「ってことは海東かぁ? あのお騒がせ者め」

 

 士が悪態をつくと、地面が揺れだした。

 

「今度はなんだ!」

 

 食堂の床の中央を打ち破り、何かが飛び出した。それの正体を見る間もなく、謎の物体は天井に穴を開けて次のフロアへ消えていく。

 天井の穴から悲鳴が聞こえる。

 

「ヤミーが出たのか?」

「またですか!? 一日にこんなにヤミーが出ることは珍しいことですよ!?」

「とにかく行くぞ」

「はい!」

 

 外に出ると、ビルに穴を開けた怪人がはっきり見えた。黒に近い紫色の姿。所々に現れた恐竜を思わせる意匠。ゴツゴツした体はヤミーのそれよりも力強く、禍々しい。

 怪人は溢れる力を制御できないのか、辺りを殴りつけるばかりだ。一発パンチを打つごとにその場にクレーターができていく。

 

「こいつは強そうなのが出たな」

「あのベルト……間違いない、グリードです!」

 

 エイジはグリードの腹を指差した。きらりと光るベルトがグリードである証だ。

 

「でもおかしい……本来、グリードはメダルと同じ種類しかいないはずなんです。紫のメダルなんて聞いたことありませんよ!?」

「でも現にこうやって出てきてるんだ。だったら倒すしかないだろ」

 

 士はディケイドライバーを取り出した。

 

「変身!」

 

《カメンライド ディケイド》

 

「へ、変身!」

 

《タカ》

《トラ》

《バッタ》

 

 ディケイドとオーズは武器を持ち、恐竜グリードを追いかける。

 先に飛び出したのはディケイド。背後をとったかに思えたが、グリードは手を後ろに伸ばしてライドブッカーを受け止めていた。

 

「なに!?」

「ムン!」

 

 力を込めるとディケイドは思い切り吹き飛ばされ、ビルの壁面にめり込んだ。

 

「門矢さん!」

 

 グリードは、今度はディケイドを心配するオーズに狙いを定めた。よろよろと歩いていた足は次第に速くなり、オーズに突進していく。

 

「グオオアアアアッ!!」

「くっ!」

 

 グリードはオーズに向かって拳を振り下ろす。オーズはメダジャリバーでグリードの一撃を耐えた。そして一枚、二枚とセルメダルを入れていく。隙を見て必殺技を発動させてカウンターアタックを狙っているのだ。

 

「エ……エイ……ジ……」

 

 そうグリードが喋った気がした。

 

「え……。お前……」

 

 オーズは動きを止める。三枚目のセルメダルが地面に落ちて金属音を立てた。

 

《アタックライド ブラスト》

 

 横から銃弾が飛び、恐竜グリードに命中する。そして怯んだところをディケイドが蹴りを入れ、オーズを助けるかたちになった。

 

「ボサッとするな」

「は、はい!」

 

 今のは……。

 

 オーズはやはりさっきのことが気になっていた。

 ディケイドはそんなことはつゆ知らず、グリードと距離を取って相手の出方を伺っている。

 

「ウオオオオオオオオッ!!」

 

 恐竜グリードは一つ、大きく吠えた。

 




次回 仮面ライダーディケイド2

「無茶させられないに決まってるじゃないですか」
「オーズの力を捨てろ!」
「人間は欲望にまみれた生き物さ」
「俺が変えられる世界は、俺の手の届くとこだけ」
「人はその欲をコントロールできるからな」
「その欲望、解放しろ」

第13話「恐竜と赤い翼と伸ばす腕」

全てを破壊し、全てを繋げ!
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