仮面ライダーディケイド2〜平成二期の世界〜   作:らいしん

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「ロイミュードは人間をコピーして、その行動や思考を学習するんです」

これまでの仮面ライダーディケイド2は……

「日輪さんはドライブとしてこの街を守っていました」
「俺には無理だったんだよ。もう信念も折れちまったんだ」
「だいたい分かった」
「僕は世界のお宝を集めるのが仕事でね」
「どっちにしろ捕まえるがな」


第17話「なにが刑事を再び走らせるのか」

 ベルトさんを奪おうとするディエンドと、それと交戦するシンノスケ。抵抗する彼らに対し、ディエンドはなでしことシグルドを召喚する。シンノスケはシフトカーたちを指揮し、ベルトさんには指一本触れさせない。

 その時、突如重加速が起こり、辺りの動きはスローになる。

 それに気づき、いち早くシフトカーをホルダーに収めることで影響を受けないようにしたシンノスケ。しかし、その重加速を引き起こした謎のロイミュードが彼の後ろに立っていたのだった。

 

「うわああああっ!!」

 

 ロイミュードがシンノスケに向かってエネルギー弾を放った。シンノスケは両腕を交差させて顔を隠し、叫んだ。

 その時、彼の前に白い姿のライダーが現れた。

 

「オラァ!」

 

 シンノスケに弾が当たるギリギリのタイミングでマッハが駆けつけ、パンチでエネルギー弾をかき消した。拳からしゅうと煙が立つ。

 

「大丈夫ですかァ、日輪さん!?」

「ゴウ、ナイスタイミング! バッチグーだぜ!」

「……姉の代わりに言わせてもらいますけど、そういう言い回しイマドキしないです」

 

 自分もダメージを負っているが、まずはシンノスケの心配をする。反撃されないよう、目の前のロイミュードにゼンリンシューターを乱射して牽制した。

 

「なんですかあいつ。進化態のロイミュードですか」

「ああ、多分。分かんねぇけど」

 

 目の前にいるのは見慣れたプレーンな状態のロイミュードではない。

 黒と紫を基調としたボディカラー。鎌のような尖った武器が備え付けられた腕。肘や肩などいたるところに破れた布きれが付いており、ひらひらと風に揺られている。その姿は正に死神。リーパーロイミュードとでも呼ぶべきか。

 

「進化態だと? 俺はそのレベルのロイミュードではない」

「喋った!」

 

 マッハは身構える。

 

「いずれロイミュードを超える超次元進化態になるのだ。108の頭脳を持つことで、全てのロイミュードを統べる者にな。そうなれば人間から学ぶことはなくなる。つまり、人間はいらなくなる」

 

 リーパーロイミュードはそう言った。

 

 

 

 

第17話「なにが刑事を再び走らせるのか」

 

 

 

 

 シンノスケとマッハは、リーパーロイミュードの言葉に動揺する。十分な学習を終えた通常進化、体が肥大化する暴走進化、物体を取り込む融合進化。どの進化にも当てはまらない。

 これまでにもロイミュードが事件を起こすことはあったが、ここまで凶悪に豹変した例はない。

 トライドロンがシンノスケの隣に停まる。ベルトさんが二人に忠告する。

 

「二人とも! あのロイミュードは危険だぞ!」

「そうですね……。あっ、そうだ。日輪さん、あっちで止まってるのは?」

「あいつは泥棒だ。重加速に対応できてないみたいだから、後で捕まえるとする」

 

 ディエンドの説明は適当に済ませる。まず相手すべきはリーパーロイミュードだ。

 

「おい! 重加速だけならまだしも、万が一ロイミュードが人に危害を加えた場合、ボディを破壊することになってる。さらに行き過ぎた行為をしたらコアを砕くぞ! 覚悟はできてるか!?」

「やれるものならやってみるんだな、人間」

「んだと! ぶっ壊してやる!」

 

 マッハは高速移動でロイミュードに攻撃を仕掛ける。が、敵に効いている様子はない。それもそのはず。ロイミュードはマッハの攻撃を予測し、紙一重で避けているのだ。

 

「なに!?」

「お前の攻撃の軌道を計算しただけだ。次はこっちから行くぞ」

 

 ロイミュードが鎌のついた腕を振り下ろす。マッハは猛スピードでバックする。重心を右に左に傾けて、怪人の攻撃をかわしていく。

 

「スピードなら負けるつもりはないぜ」

 

 リーパーロイミュードが横一文字に腕を振る。マッハはそれを、背を反らせて避けた。怪人はマッハの代わりに街灯を斬る。

 すると街灯は切り口からロイミュードに吸収されてしまった。

 

「嘘だろ!?」

 

 それを見て驚くシンノスケ。

 

「あの鎌は、攻撃したものを吸収する能力があるのか」

 

 ベルトさんは冷静に分析する。

 

「ハアッ!」

「く……!」

 

 ロイミュードの振り回す鎌が、マッハのドライバーを微かに捉えた。付近の部品がロイミュードに吸い込まれていく。

 マッハは体を更に反らせ、地面に手をついて地面を蹴り、逆立ちの要領でロイミュードの顎を蹴り上げる。危なげなく着地し、おまけにゼンリンシューターで追撃した。

 

「やるな……。他の奴らを吸収した後にまた来てやる……」

 

 リーパーロイミュードはマッハの足元を爆発させる。そしてマッハが怯んだ一瞬の隙をついてその場から逃げた。

 同時にマッハの変身は解除された。実は先ほどの部品吸収でドライバーが破損し、変身時間が危うくなっていたのだ。

 ロイミュードがいなくなったことで重加速は解除される。周りの時間が再び動き出す。

 

《アタックライド》

 

 重加速が終わった瞬間、ディエンドのカード装填音が鳴る。

 

「はっ! 待て!」

 

 シンノスケが駆け付けるが、すでにトリガーは引かれている。

 

《インビジブル》

 

 ディエンドは光となってその場から姿を消した。

 

「……ったくよぉ! なにがなんだってんだ」

 

 シンノスケは重加速が終わった世界で、頭を抱えた。

 

 

 

 

 シンノスケとゴウは久瑠間警察署に戻り、リーパーロイミュードのことを話した。死神のような姿をしていること、厄介な吸収能力を持つこと、そしてロイミュードを超えるという発言。ホワイトボードに書いた内容は、今までのロイミュード関係の事件の生温いそれとは一線を画している。

 

「あのロイミュードは危険すぎる。なんとかしないと! とりあえずマッハ隊を各地に配備したけど、量産型マッハであんなやつと戦えるかというと……」

「ま、無理だろうな」

 

 特状課の課長の椅子に座った士はきっぱりと言い切った。

 

「部外者は黙ってくれるか。あと、そこ座るな」

「部外者じゃない。俺も刑事で仮面ライダーだ。それにしても、貴重な戦力がいなくなっちまったのはでかいな」

「……」

 

 先ほどの戦闘で、マッハドライバー炎は調整が必要になったのだ。次にリーパーが出現した時、マッハが前線に出るのは難しい。

 ゴウは士の取り調べをしたこともあり、彼を認められない様子。士はゴウの肩に手を置き、片手でカメラのシャッターを切る。そして彼を後方に押しやった。

 転びそうになった彼を夏海が支える。お礼を言ったゴウだったが、すぐに刑事でもない彼女が特状課にいることに気づき、狼狽しつつ責めるようにいる理由を問いただした。

 

「やめなさい、ゴウ。夏海さんたちは私たちに協力してくださっているの」

「……マジか」

 

 夏海はこの世界のことを知るために、ここ最近の事件に関する情報を収集する手伝いをしていた。

 ユウスケはというと、量産型マッハに混じってロイミュードを探していた。誰でも重加速に対抗できる姿に変身できるのが量産型の強みだ。

 

「とりあえず今までの事件をもう一度見直してみるのはどうだ」

 

 士に言われ、キリコはホワイトボードを裏返す。そしてそこに今までの事件に関しての情報を書きはじめた。

 

「最初に事件が起こったのは先週。ロイミュード101の原因不明の暴走です」

「あ、それ止めたの俺だ」

 

 ゴウが小さく手を上げる。

 

「はい。マッハがボディを破壊。コアの状態にすると異常は治りました。101は、その二日後にボディを新調しています」

「暴走っつっても広範囲で重加速が起こり続けるだけだったしな。それを止めるにはボディを壊すしかなかったわけだけど」

 

 コア状態になった101は、マッハにボディに異常があったと訴えていた。自分の意思ではなく、勝手に重加速が起こってしまったと。

 ホワイトボードの101と書かれた下に、重加速現象と書き加えられた。

 

「一昨日に四体のロイミュード、013、018、020、028が動作を停止。目撃者によると、急に耳を押さえてロイミュードの姿に戻り、倒れたそうです」

「それぞれ距離が近かったんだよな。付近を調べたがなんも出てこなかった」

 

 シンノスケが言った。

 位置情報から、四体が近くにいることが分かっていた。他の場所ではそれが起こらなかったため、範囲を絞って原因を探していた。だが、彼の言う通り、事故の原因になり得るものは見つからなかった。

 

「それは日輪さんの調査が雑だったのかも……」

「ま、そうかもな。はっはっは」

「せめて否定してください!」

 

 キリコが怒るが、シンノスケは彼女に手を向けてなだめる。そしてホワイトボードに近づいていく。

 

「日輪さん。これはロイミュードに致命的な異常があるということでしょうか」

「いいや違うな。俺が思うにこれらの事件は――」

「今日現れたロイミュードに関係がある」

「え?」

「そうなのか!?」

「お、やるねえ。俺も言おうとした」

 

 士が彼に割り込んで言う。シンノスケは彼を褒め、ご褒美だと飴を投げて寄越した。そしてホワイトボードをくるくる回転させ、キリコたちに両側の情報をまとめつつ解説する。

 

「まずは先週からだな。かなり広範囲の重加速だったが、そいつは何をするために起こったか」

()()()()()()? これが人為的なものであると?」

 

 キリコが尋ねる。

 

「ああ。答えはロイミュードを見つけるためだ。重加速下で自由に動けるやつがロイミュードってわけだな。次いくぞ」

 

 シンノスケは淡々と話していく。

 

「一昨日の事件。これはただの実験だ。しかも失敗してる」

「実験? 失敗? どういうことか全く分かんねえ!」

「緊急停止事件はロイミュード自体が原因だったってことだ。近くに原因となる物体があったわけじゃない」

 

 今度は士が言う。

 

「その通り! 手がかりが見つからなかったのはそういうことだ。……俺だってまじめに仕事してたんだぜ?」

「はいはい。……で、実験というと?」

「ロイミュードを繋げる実験だ。先週の件であらかじめロイミュードを見つけておき、なんらかの方法で四体を同時に通信させたんだ。だがその結果、意識が変に混じってショートしてしまった」

 

 シンノスケは実験と書いたところにバッテンを書き足す。

 

「そこで別の方法を取ることにした。それが今日出た謎の死神ロイミュード。あの能力で他のロイミュードを全て吸収するつもりなんだろう」

「無線で繋げられないなら直接繋ぐってことか……」

「なるほど……? では全てのロイミュードを吸収して、その目的は?」

 

「分かんね」

「知らん」

 

 シンノスケと士は同時に言った。

 

「ええ!? そこまで分かっていながらですか!?」

「いながらだよ。そこをこれから調べないといけないんだよなァ」

 

 シンノスケは使い終わったボードを壁に寄せつつ言う。

 

「考えたくはないが、こうしているうちに何体か既にやられてるなんてこともあり得るからな、ロイミュードの総人数をチェックしてくる。もしかしたら死神の場所が掴めるかもしれないしな」

 

 彼はすぐに出て行こうとする。士はそんな彼の肩に手を置き、引き止めた。

 

「俺も行かせてもらおうか」

「お前……士、だっけか。構わねぇけど」

「あんたは何かを見逃している。それを確かめさせてもらう」

「ああ……?」

 

 シンノスケと、それを聞いたキリコはその言葉の意味が良くわからなかった。

 二人は部屋を出て、エレベーターに乗った。

 久瑠間警察署内には、ロイミュード事件対策のために色々な施設がある。彼らが向かっているロイミュード位置情報マッピングルームはその一つだ。ロイミュード一人一人から発せられる波長から、区域全体のどこにどのロイミュードがいるかを細かく記録する。

 これらの施設は外部からの侵入を防ぐため、地下に存在している。また、部屋には基本シンノスケだけが入る。これは彼がドライブだった頃の名残だ。

 鍵を開けて中に入り、マップを見たシンノスケは驚きの声を上げた。

 

「おい嘘だろ! もう六十体のロイミュードが殺されてることになるぞ!」

 

 士もシンノスケの後ろからそれを覗き込む。マップには久瑠間市の地図が映し出され、所々に光の点が表示されている。そして左下には『Signal:47』の文字が見えた。

 

「おい、簡単な計算ができてないぞ。ロイミュードの総数は108なんだろ。だったら食われたロイミュードは六十一体だ」

「あ……」

 

 シンノスケは即座に何も言い返せなかった。士もそれ以上踏み入るつもりはない。

 部屋には妙な沈黙が続いた。

 

「……悪かったな。俺はもう戻る。とりあえず残りの数を伝えておくぞ」

 

 士は部屋を出た。その場には、思考を停止させて立ち尽くすシンノスケだけが残された。

 その頃、地上の特状課本部に残された一同は、事件の目的について考えていた。一連の事件を引き起こした犯人が別にいることは明らかだ。しかし、問題はロイミュードを使って何ができるか、だ。

 

「日輪さん、珍しく推理キレてたなー。あと、あの士ってやつも」

 

 ゴウはそう呟く。

 

「士くんは本当に分かっているのか……。それより日輪さん、元に戻ったんですかね」

「いいえ。いまいちエンジンがかかりきってないです……。そもそも何が原因なのか……」

 

「それについては私が答えよう」

 

 通る声が部屋に響いた。部屋の入り口には夏海の見覚えのある男がいた。彼が開けっぱなしにしたドアはゴウが閉める。

 

「お邪魔するよー」

「海東さん……。ナビさんを……何してるんですか!?」

 

 夏海の言う通り、海東は手にドライブドライバー――ベルトさんを持っていた。

 

「ナビ? ふっ、とんでもない。彼はスタインベルト博士。この世界のお宝だ。ただ意思を持っているのが厄介な点でね、彼がここに来いとうるさいんだよ」

 

 海東はそう言ってベルトさんを軽く掲げて見せた。

 

「ベルトさんをどうする気ですか!」

「落ち着くんだ、キリコ。シンノスケが地下に行ったことはシフトカーで見ていたからね、退席中に彼のことを話しておこうと思ったんだ。キリコ、ゴウ。どうか私の代わりにシンノスケを支えてやって欲しい」

 

 ベルトさんの頼みに、キリコは肩を落とす。

 

「日輪さんはあなたの支えが必要なんですよ」

「仕方ない。今のシンノスケが私を必要としていないのだから……」

 

 ベルトさんの画面に表示される表情は辛く悲しそうだ。

 

「さあ、早くしたまえよ。僕はそう言う話には興味ないんだ」

「ベルトさんを急かすんじゃねえよ」

「落ち着きたまえ、ゴウ。では聞いて欲しい」

 

 海東はデスクにベルトさんを置く。四人はその前に立つ。

 

「……シンノスケは、いつも一体のロイミュードを連れていた」

 

 ベルトさんは話し出した。

 

 

 

 

 あの日、日輪シンノスケはパトロールをしていた。

 街の中でトライドロンを走らせる。運転席にはシンノスケ。隣には彼と同じ顔をしたロイミュード088を乗せて。

 

「飴、一つもらいますよ」

 

 088はダッシュボード部分のシフトカーホルダーに立てた飴の袋に手を伸ばした。

 

「日輪さんもどうですか」

「おいおい。仕事中だぜ? 俺が飴を食べるのは一段落して、エンジン止めて休む時だ」

 

 そう言い、フッと笑って運転を続ける。

 

「カッコいいですね~。俺もあなたのそういうとこを学びたくて姿を借りてるんですけど」

 

 市民を守るのが警察の仕事。それがシンノスケの信条だった。

 088はシンノスケの正義感に感化され、彼の姿を借りている。シンノスケもそんな彼を頼もしく思い、パトロール時にともに行動するようになった。

 

「……!? 日輪さん!」

 

 088がシンノスケに車を停めるように言った。シンノスケは彼に従い、ウインカーを出す。

 車の前方少し上。工事中の高層ビルで、クレーンに吊るされた鉄骨が揺れた。その下には子どもたちが歩いている。

 

「危ない!」

 

 シンノスケは車を路肩に停車させ、飛び出した。トライドロンを最寄りの駐車場に停めるのは088に任せる。

 

「行くぜベルトさん!」

「オゥケー!」

 

 シンノスケはドライブに変身し、猛スピードで向かう。急に風が強く吹いた。鉄骨が大きく揺れ、落ちてくる。ドライブは鉄骨を跳ね飛ばし、子どもたちを守った。

 ドライブは特状課のシンボルとして市民に受け入れられていた。「ありがとう」とお礼を言われ、いい気分になっていたところをベルトさんが強い口調でこう警告した。

 

「シンノスケ! ここは危険だ! 離れろ!」

「え?」

 

 その時だった。彼の背後が爆発した。

 ドライブが跳ね飛ばした鉄骨が、ガスのタンクにぶつかっていたのだ。

 

「日輪さん!!」

 

 その時、トライドロンを停めてドライブのところへ来ていた088がロイミュードの姿になり、彼を庇うように間に割って入った。だがその程度で威力は弱まらない。二人は爆発に飲み込まれてしまった。

 次にシンノスケが目が覚めたのは病院のベッドの上だった。怪我をしたのはシンノスケだけ。その他に怪我をした人間は一人もいない。

 だが、088はいなくなってしまった。現場を探したが、爆発跡には機械の体の残骸すら残っていなかった。

 咄嗟のこととはいえ、余計なパワーを使いすぎた。調子に乗ってしまった。周りを見る注意力が足りなかった。そもそもドライブになる必要があったのか。湧き出る後悔がシンノスケの頭に次々と詰まっていく。

 

「俺が……殺した……」

 

 それがシンノスケの心の破滅の日になってしまったのだった。

 

 

 

 

「それからシンノスケはドライブになることをやめてしまった」

 

 ベルトさんは話し終えると、ふうとため息をつくような声を漏らし、目を閉じる表情を画面に映し出した。

 

「私、行きます」

 

 キリコは支度を始める。

 

「行くってどこに?」

「死神ロイミュードを探しに! 日輪さんの熱意を、私が引き継ぎます。市民を守るためにロイミュードを倒します!」

 

 ベルトさんを手に取り、彼女は部屋を飛び出していく。

 

「いいんですか海東さん。キリコさん、お宝持ってっちゃいましたけど」

 

 夏海は海東を茶化すような質問をする。

 

「構わないさ。どうせ最後には僕のものになるんだ。少し貸すくらいの余裕はある。それより、君も行くんだろ」

 

 その言葉の対象は夏海でもゴウでもない。部屋に戻ってきた士に向けてだった。彼は、話は既に聞いているぜという表情を浮かべ、頷いた。

 

 

 

 

 リーパーロイミュードは、工場を襲っていた。リーパーに追われた一般ロイミュードが逃げた先がここだったのだ。

 作業員たちは裏口から脱出をはかる。

 

「どけ」

 

 リーパーロイミュードは工場の壁を壊し、機械を壊し、人を弾き飛ばし、目的に向かって歩いていく。棚が崩れて彼に降り注ぐが、強靭なボディはびくともしない。それどころか工場内の機械類を吸収して進んでいる。

 作業員たちは工場の外に出て、散り散りになって逃げた。だが、リーパーは人間には興味がない。今必要なのはロイミュードだ。

 

「なっ、なんだよお前。なんだその姿……」

 

 不気味な紫ボディは返事をしない。鎌のついた腕を高く振り上げ、一般ロイミュードを吸収しようとした。

 その瞬間、怪人のボディを何者かが撃った。衝撃で怯み、数歩後ろに下がる。続いて一発、さらに一発。次第に攻撃は激しくなっていく。

 攻撃をしていたのはトライドロンだった。ドアが開き、キリコがリーパーロイミュードに向かって銃を向けた。一発一発を的確に当てて、相手に動く隙を作らせない。

 

「今度は警察か!?」

「あなたロイミュード!? ナンバーは!?」

「ぜ、053!」

「とりあえず乗って!」

 

 キリコは053の手を取り、トライドロンに引き込んだ。

 

「ベルトさん、お願いします!」

「よし!」

 

 ドアを閉め、ハンドルをグルリと回し、来た方へと車を向けた。そしてアクセルをグンと踏んだ。

 リーパーロイミュードは先ほど吸収した金属を球状にして、トライドロンに高速で発射する。急な攻撃にハンドルがとられ、トライドロンはクラッシュしてしまう。キリコと053は車外に投げ出された。

 

「大丈夫か二人とも……」

「はい、なんとか……痛っ!」

 

 ベルトさんは車外の二人に声をかける。が、そこにロイミュードの足音が近づいてくる。

 

「逃げても無駄だ」

「くっ……」

 

 怪人が053に向かって鎌を振りかざす。が、そこに赤い円錐型の光が現れ、リーパーロイミュードの動きを封じた。

 

「はああああああっ!!」

 

 次の瞬間ディケイドファイズが飛んできて、怪人にキックをかました。追撃にディエンドが銃を撃つ。

 

「あなたたち……!」

「ここは任せろ。あんたは逃げるんだな」

 

 キリコは頷く。ベルトさんを持ち、053と一緒に足を引きずりつつその場を去った。

 二人のライダーはリーパーロイミュードに向き直る。

 

「お前が死神ロイミュードだな」

「仮面ライダー……俺の邪魔をする気か」

 

 ディケイドファイズはライドブッカーを開き、カードを取り出す。

 

「ロボット相手にはロボットだ」

「いいね。面白い」

 

 ディケイドがカードを構えるとともに、ディエンドもカードを手にする。二人は同時にドライバーにカードを入れた。

 

《アタックライド オートバジン》

《カメンライド グリス》

 

 ディケイドはマシンディケイダーをオートバジンに変化させる。そして三人のライダーと一機のマシンはリーパーロイミュードに攻撃を仕掛ける。

 ライドブッカー、ディエンドライバー、ツインブレイカー、バスターホイール。遠距離攻撃ならばロイミュードの吸収能力の間合いに入ることなく戦える。そして彼らが前後左右の四方向に分散することで、簡単に距離を詰められることもない。

 このまま簡単に鎮圧できるはずだった。

 突如三人のライダーとオートバジンに火花が散り、彼らはその場に倒れる。ディケイドファイズとオートバジンは変身が解け、グリスは消えてしまう。

 

「邪魔をしないでいただけますか」

 

 現れたのは白服の男。初めて会う顔だが、その格好はもはや見慣れている。彼が指を鳴らすと、リーパーロイミュードはよろよろと立ち上がり、キリコたちが逃げた方に向かう。

 

「やっぱりお前らが一枚噛んでるのか。鳴滝を追ったりライダーの世界をめちゃくちゃにしたり、目的はなんなんだ」

「知る必要はありません」

 

 男は懐からガシャットを取り出した。

 

《ゲキトツロボッツ!》

 

 それを胸に突き立て、ロボルバグスターへと変身した。

 ディケイドはライドブッカーを銃型に変形させる。

 

「じゃああの怪人のことでも話してもらおうか!」

「本来ロイミュードと人は滅ぼし合う運命にあるのです。私が、それを手助けしてあげただけですよ。……フン!」

 

 力強い右腕は、ディケイドたちの遠距離攻撃を跳ね返す。そして腕をロケットパンチの要領で発射し、二人にダメージを負わせた。

 

「重加速を超えた重加速……それが絶対重加速! 起動すれば、この世界の時間は永遠に動かない。つまり、あなたたちの旅はここで終わる……」

「そんなことさせるか!」

 

 二人のライダーはロボルバグスターと交戦を始めた。

 

 

 

 

 キリコと053は互いに支え合って歩いていた。キリコは車外に放り出された時の傷が痛むのか、歩き方がぎこちない。

 

「……まさか人間に助けられるなんて」

「そんなに不思議なこと?」

 

 053の呟きにキリコが反応した。

 

「そりゃそうだろ。俺たちロイミュードは人間を助ける側だ。その代わりに人間はロイミュードに自分たちの言動を学習させる。むしろ人間の中にはそれをよく思ってない奴がいるほどだ。俺たちロイミュードの実験が早く終わってほしいと。それが普通だろう」

「ふふ」

「可笑しいところがあったか?」

「この街はそういう街。ロイミュードに、人間を学習させるために作られた。当然ロイミュードをロボットだなんだって見下す人もいるでしょう」

「そうだな」

 

 キリコは053の腕を背負い直す。機械の重さがズシリと伝わる。

 

「でも私の尊敬する人は、ロイミュードも人間も同じに見てた。人とロイミュードは友達になれるんですよ」

「……」

 

 静かな空間が突如、爆発に巻き込まれた。

 

「きゃあああっ!」

「ぐわああっ!?」

 

 爆風が彼らを襲う。二人して地面に倒れこむ。

 

「待て……次はお前を吸収する……」

 

 黒と紫のボディが近づいてきた。

 ふとリーパーは053からキリコに視線を向けた。

 

「まずは散々邪魔をしたお前を殺してやる。時間が止まった世界で生き続けることは叶わないが……俺に殺されることを誇れ!」

「……ッ!」

 

 リーパーロイミュードがキリコに銃口を向けた。バンと銃撃音が辺りに響く。だがキリコは死んでいない。

 恐る恐る目を開けると、目の前には機械生命体の背中があった。

 

「053!」

「お前が俺を助けたんなら……今度は俺が助けてやる番だ」

 

 053は、人間からロイミュードの姿になり、キリコの盾になった。致命傷にはならなかったが、大きな損傷だ。銃撃を受けた右肩からバチッと火花が飛んだ。

 キリコは膝をつく053に寄り、心配する。

 

「無駄なことを。もう一発だ」

 

「オラアアアアアア!!」

 

「なに!?」

 

 突然現れたシンノスケが窓を突き破り、リーパーロイミュードに特攻する。

 不意を突かれたロイミュードは、ダメージこそ負うことはなかったがシンノスケと揉み合うかたちになって床を転がる。そしてシフトカーたちがシンノスケの上に被さったロイミュードを吹き飛ばす。

 シンノスケはスーツを砂塗れにしながら、立ち上がる。

 

「間に合ったァ~! 危ねえ! いやあ、そこのロイミュードくん、ナイスだ!」

「あ、ああ……」

「日輪さん! なんでここが分かったんですか」

「刑事の勘だ。いや、男の勘……というべきか」

 

 シンノスケは砂埃を手で払いながら、そう言った。実際は勘などではなく、シフトカーに案内されてトライドロンの近くに来て、発砲音で場所を知ったのだ。

 

「なにが男の勘ですか……そんなのイマドキ流行らないですよぉ……」

 

 キリコはこんな時でも調子の変わらないシンノスケに安心感を覚え、涙を浮かべた。彼はそれを軽く拭った。

 そんな二人のもとにディケイドがやってくる。ロボルバグスターの方は、ディエンドが更なるライダー──G4とマッドローグを召喚することで対処している。

 

「来ると思ってたぜ。じゃあさっさと変身しろ。お前のことはベルトから聞いた。昔のようにライダーになれ!」

「お前、士か。そうか……聞いたんだな。だったら知ってるはずだぜ、俺は……088を殺したも同然なんだと……」

「なんだ、まだ気づいてなかったのか?」

「え?」

 

 シンノスケと会話しつつ、飛んでくる火球をディケイドは両断した。彼らの左右で爆発が起きる。

 

「何度も邪魔をしやがって! 許さんぞ貴様ら!」

 

 怒るリーパーロイミュードに、ディケイドは斬りかかった。そしてシンノスケに向かって言う。

 

「おい、よく聞け! あんたはロイミュードを壊したわけじゃない! 考えろ。こいつはロイミュードを吸収するのが目的なはずだ。それがなぜあんたを襲ったのか!」

 

 確かにそうだ。リーパーロイミュードの目的は全ロイミュードの吸収だと結論づけたばかりだ。今も053を狙ってここに出没した。

 

「事故後にあんたが見たモニターにはロイミュードは107体しかいなかった! それはあんたが壊したからじゃない。電波が遮断されている場所に最後の一体がいたからだ!」

「お前……何言ってんだよ」

 

 シンノスケとキリコは、警察署での会話を思い出した。

『知ってる? 重要な部屋とかだと電波とかも遮断するらしい。すごくね?』

 重要な部屋。それは地下の特状課専用のロイミュード事件対策設備のことだ。もちろん、ロイミュード位置情報マッピングルームもその一つだった。

 

「ロイミュード088はあの時、日輪シンノスケ――あんたと融合したんだ!」

「……嘘だろ?」

「それが、日輪さんが見逃してたもの……!」

 

 まさか。

 シンノスケはベルトさんをキリコから受け取り、腰に巻いた。

 ドライブドライバーは人間のための装備。故にロイミュードはそれを着けることはできない。ベルトを装着した途端、シンノスケと088の体は分離した。

 目の前に現れる自分の顔。かつて相棒として、友として一緒に行動していたロイミュード。

 

「088……」

 

 シンノスケは彼に手を伸ばす。088は目を開け、微笑む。

 

「やっと話せるようになった。……あなたの中からずっと見てましたよ。日輪さんは俺のこと、かなり責任感じていましたね」

「あ、当たり前だろ」

「俺は責任感じる必要なんてないと思ってました。人間を、あなたを助けられたらいい。それがあなたから学んだことだから。でもこうしてまた戻ってこれた。もうそんな勘違いの責任なんて放って、全力で突っ走ってください。日輪シンノスケ刑事」

「……ああ! 全力で!」

 

 シンノスケは頷いた。その顔には太陽のような眩しい笑顔が。

 

《アタックライド クロスアタック》

 

 大爆発と共に建物の奥から壁を突き破ってロボルバグスターが飛んでくる。ディケイドとリーパーロイミュードが戦う場に転がった。

 バグスターはシンノスケたちの方を見て地面を叩く。

 

「に、人間とロイミュードが手を取り合っただと? 人はロイミュードを恐れ、ロイミュードは人を憎む。そのはずじゃなかったのか!?」

「ロイミュードだ人だなんて関係ない。守りたいから守る。それだけだ。なぜならみんなこの街の市民だから。それが警察……それが仮面ライダー……それがこの男だからだ」

「そんなバカなことが……。なんなんだお前たちはッ!」

「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ! シンノスケ、変身だ」

「ああ、士! ベルトさん、行けるか!?」

 

 シンノスケは頷き、腰に着いたベルトさんを呼ぶ。

 

「私は常に準備オゥケーだ。エンジンをかけるのは変身者(ドライバー)であるキミだ!」

 

 ベルトさんの声はいつになく嬉しそうだ。

 

「そっか。ずっと待っててもらってたんだな。じゃあベルトさん――」

 

 シンノスケはシフトブレスを腕にはめ、ネクタイをグッと締めた。

 

「ひとっ走り付き合えよ!」

「オゥケーシンノスケ! リスタート・ユア・エンジン!」

 

 シフトスピードが宙を舞い、シンノスケの手に収まる。彼はドライバーのキーをひねり、シフトカーをブレスにはめる。久しぶりの変身を思わせない、安定した手つき。

 

「変身!」

 

《ドライブ! タイプ スピード!》

 

 ベルトさんのシャウトと共にシンノスケをアーマーが包み込む。

 ロボルバグスターとリーパーロイミュードがシンノスケに向かって弾を乱射するが、トライドロンの前輪から飛び出したタイヤがそれを全てはじき飛ばし、アーマーの胸に収まる。

 複眼――ヘッドライトをピカッと光らせる赤い戦士。仮面ライダードライブが再びこの世界に現れた。

 

「はあっ!」

 

 ドライブは急発進する。一瞬でディケイドと交戦するリーパーロイミュードに近寄り、そのボディにキックをした。

 リーパーを壊されてなるものかとかかってくるロボル。ドライブはパンチを受け止め、それを引っ張って逆にパンチし返した。

 

「ギア上げるぞ!」

 

 ドライブは、ブレスのシフカーを再度倒す。

 

《スピ スピ スピード!》

 

 胸のタイヤが高速回転する。

 ロボルバグスターに足払いをし、体勢を崩したところをアッパーで空中に飛ばす。そして目にも止まらぬ速さでパンチを打つ。最後に飛び蹴りをし、ロボルを吹き飛ばした。

 

「なん……て……強さ……! 完全なエネルギーにはまだ早いが、仕方ない……!」

 

 瀕死のロボルバグスターはリーパーロイミュードに手を向け、何かの信号を送った。リーパーはハッと何かを感じ取ったように一瞬動きを止めた。

 そしてロボルは自爆して、変身者ごと消滅してしまった。

 爆発の後、付近にはチップが散らばった。ドライブはそれを手に取る。

 

「なるほど。これでロイミュードをおかしくしてたってわけだな」

 

 リーパーロイミュードは苦しそうに頭を振る。彼のコアの振動が辺りに響く。

 

「いかん! 重加速が来る! それもかなりの規模だぞ」

 

 ベルトさんは危機を察知し、警告した。

 時間そのものを完全に停止させる絶対重加速にこそ到達しないが、ロイミュードやシフトカーを装備した人間でも動きが制限されるレベルの重加速。しかしそれを発動させるには溜めが必要になる。

 ディケイドは武器を構えるが、ドライブがそれを持つ腕を下ろさせた。

 

「待て! ロイミュードだって市民だ」

「そうか。警察は市民を守るもの……だったな」

 

 その瞬間ライドブッカーが開き、ライダーカードが飛び出す。ディケイドはそれをキャッチした。新たにドライブの力がカードに宿る。

 彼はその中の一枚をドライバーに装填し、バックルを回す。

 

《ファイナル フォームライド ドドドドライブ》

 

「ちょっとくすぐったいぞ」

 

 ドライブの背を持ち上げるように、下から上に叩く。背から車の前半分のボディが現れる。ドライブはそのまま前屈の姿勢を取り、車のボディになった。そして事故って動けないトライドロンから飛んできた四つのタイヤが左右に付いた。

 『ドライブトライドロン』に変形したドライブは、ディケイドの周りをぐるぐると回る。

 

『これならもっと速く走れる……! よし、俺に合わせろ!』

 

 ドライブトライドロンが発進すると共に、ディケイドは別のライダーカードを使用した。

 

《ファイナル アタックライド ドドドドライブ》

 

 ディケイドは地面を勢いよく蹴り、リーパーロイミュードに向かってキックをかます。ロイミュードは後方に吹っ飛び、ディケイドは反動で逆側に。そして丁度目の前に走ってきたドライブトライドロンに跳ね返され、再度ロイミュードに攻撃する。

 ドライブトライドロンが二人の周りを超高速でぐるぐると回る。地面を走るだけではなく、宙を飛び、球を描くように全面を回る。

 ディケイドはロイミュードの上下左右前後からキックをくらわせる。

 

『行けええ! 士!』

「はあああああーーーッ!!」

「グウッ……!」

 

 最後の一撃を与える際、ロイミュードの急所をわざと外した。彼は狙い通り、白服の男が埋め込んだチップを粉々に破壊した。

 勢いのままに着地し、足から火花を散らすディケイド。ドライブは変形から元に戻り、ディケイドの隣に着地した。

 

「グガ……ああああああああっ!!」

 

 リーパーロイミュードは爆発する。その瞬間、彼のボディがあった場所から何十個ものロイミュードのコアが飛び出した。

 

「吸収されていた者、吸収される危険に晒されていた者、合計ロイミュード108体、救出完了……だ……」

 

 ドライブは変身を解く。そしてシンノスケは立つこともままならなくなり、後ろにゆっくりと倒れていく。

 

「よっと」

「危ない」

 

 088と053が彼を支えた。隣にはキリコが。

 

「へへ……やっぱ久しぶりの変身はきついわ……」

「お疲れ様です、日輪さん。そしてお帰りなさい、ドライブ」

「うむ。シンノスケ、ナイスドライブ!」

 

 シンノスケは笑い、全体重を二人に任せた。急に重くなったため、088と053は彼を落としてしまう。慌てて持ち上げる088。変なところを掴まれてしまい痛い痛いと訴えるシンノスケ。キリコはベルトさんが傷つかないように暴れるシンノスケの腰から回収する。

 士は彼らにカメラを向け、シャッターを切った。

 

 

 

 

 かくして一連のロイミュード事件は終わりを告げた。

 被害に遭ったロイミュードたちは、新しいボディが作られるのを待っている。コアだけのロイミュードの相談所と化した特状課は大忙しだ。

 人間とロイミュード。同じ世界で生きていれば、またいつか衝突する時があるかもしれない。だが心配ないだろう。この世界には仮面ライダードライブが、日輪シンノスケがいるのだから。

 

「おい」

「おう、士」

 

 士は、トライドロンの洗車中のシンノスケに写真を見せた。最初に会った時に撮った一枚。いつも通り少し歪んだ写真だったが、彼は喜んで受け取った。写真の中の、どこか悲しそうなキメ顔とは違う、晴れやかな笑顔で。

 写真館に戻った士がスタジオに入ると、ユウスケと夏海がこの世界で士が撮った写真を並べていた。

 

「人間とロイミュードが一緒になって笑う世界……か」

「よかったですよね。相棒のロイミュードも生きていて」

「ああ」

 

 そう。この世界に悪の怪人はいなかった。士はあの白服のことを考えていた。奴の干渉でこの世界はおかしなことになった。真の目的を知ることはできなかったが、奴は同時に士たちの邪魔をしようともしていた。

 

「……士? どうした?」

「いや、別に」

 

 士は椅子を引き、どすんと座る。

 その瞬間、ジャララララと新たな絵が出現する。

 机の上に魔法陣の書いた紙。そして辺りにはゴツゴツとした宝石の原石。中央にはそれを加工したものと思われる指輪が一つ。

 

「次の世界……九つ目の世界か」

 

 士の言葉に、スタジオの空気は張りつめる。

 最後の世界への旅が、始まる。




次回 仮面ライダーディケイド2

「ここが最後の世界かあ」
「3、2、1、ハイ!」
「街を守る。これが俺の使命なんだよ」
「私がいなくても立派にやれているか」

第18話「アマチュアウィザード奮闘中」

全てを破壊し、全てを繋げ!
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