これまでの仮面ライダーディケイド2は……
「門矢士だ。本物の、な」
「お前が本当の士だと!?」
「この世界は、すでに、ずっと前から、終わっていたのだから」
「くそぉぉぉおおおっ!!」
「だから忘れないで。私が、私たちが必死に生きていたことを」
「絶対に倒しましょう。ダークディケイドを」
財団Xとダークディケイドの手によってネガの世界は消滅した。そして研究所も、財団の研究員も、ネガの世界の住人に成り代わった怪人たちも、全て崩壊する世界に巻き込まれて消えた。
夏海はアルバムを開く。士がネガの世界で撮った写真は全て色が反転している。
ネガの世界の夏海は最後まで生き残った。しかし、もう彼女はいなくなってしまった。
「……ネガの世界が!?」
夏海はアルバムをめくる手を止め、声のする方を見た。
目が覚めたユウスケは、士と鳴滝の説明に驚きの声をあげていた。そして自分がダークディケイドに操られていたことに対し唇を噛んだ。
「ああ。まさか最後にお前と戦う羽目になるとは思わなかった。奇しくも鳴滝に言われた通りになったな……」
「それに関しては本当にごめん! ……でも、ありがとうな。海東さんにも謝らないと。一緒に帰ってきてないんだろ?」
「あいつは別にいい。どうせどこかでしぶとく生きてるだろ」
士のいつもの塩対応に、夏海は「またそんなこと言って」と呆れる。
ディエンドは戦いの最中に場から離脱していた。いつも高みの見物を決め込む彼がわざわざ自分から戦線に出たのだ。急に心変わりして戦うのが面倒になるなんてことがあるのだろうか。何か狙いがあったのかもしれない。もっとも、彼に関しては気まぐれで離脱した可能性があるのがなんとも言えないところだ。
「それで、ダークディケイドは今どこに?」
「この世界だ」
ここは光夏海が元いた世界。世界の崩壊が、そして士の旅――ディケイドの物語が始まった世界。
「あいつ、今度は何をしようとしてるんだ? また財団を一から組織しようってのか。いや、違うな? まさか……」
「お前の考えている通りだろう。奴はこの世界を破壊しようとしている」
「……ッ」
一同は言葉を失った。夏海とユウスケは俯き、キバーラの世話をしていた栄次郎も黙ってこちらを見つめる。士もさすがにこたえたようで、頭の中が真っ白になっていた。
今までの言葉とは重みが違う。破壊者だ悪魔だと言われながら世界を救ってきたディケイドと対照的に、いとも簡単に一つの世界を破壊してみせたダークディケイド。その様子を目の当たりにしたばかりの彼らにはその危険性がひしひしと伝わった。
「ネガの世界を破壊したのはその力を試すためだろう。真の目的はこの世界の破壊だ」
「……そういえばあいつは俺を殺したそうだったな。出来損ないだなんだと好き勝手言ってくれたぜ。この世界に目をつけたのは俺への当て付けか?」
「それもあるかもしれないが、奴の目的は別にある」
「なに?」
そして鳴滝はこう言った。
「全ライダーの歴史の消滅だ」
その言葉には、怒りと悲しみと諦めと、さまざまな感情が入り混じっていた。
◆
第22話「ディケイドの真実」
◆
「とりあえず、コーヒーでも」
「ああ、ありがとう」
栄次郎がコーヒーを運んでくる。机に並べられたカップをそれぞれが手に取った。
「歴史、というのは?」
ユウスケが尋ねた。
「ライダーの歴史とは、ライダーの存在や概念そのものだ。歴史を破壊すれば、仮面ライダーはこの世に生まれなかったことになる」
「なるほど~……っていやいや、そんなことできるんですか?」
ユウスケは再度質問をした。突然スケールが大きくなり、話に頭がついていかない。
「できる。ディケイドはそのために生み出されたのだから」
「おお……」
鳴滝の言い切りで、ユウスケは何も言えなくなってしまった。
彼は士の方を見る。士は「なんだよ」と彼を小突く。ユウスケは手に持ったコーヒーをこぼしそうになった。
『その女を助けたところで、結局はその女を……いや、その女の世界を、破壊する運命なのだ』
かつてアポロガイストが士に投げかけた言葉だ。ただの捨て台詞ではなかった。全ては決まっていたのだ。士はうつむいた。
「ディケイドは……どうあってもこの世界を破壊するのか……」
握りしめた拳はわなわなと震える。
「確かに、滅びの現象がこの世界で始まったのはディケイドによるものだ。ライダーが存在しない世界でありながら、全ての世界に近しい世界。ライダーの歴史を消すにはとても都合が良かった」
「鳴滝さん、あなたの知っていることを全部お話ししてくれませんか」
夏海はそう言った。士はそこに「最初から全部、詳しくな」と付け加えた。
鳴滝は深く深呼吸する。
「ネガの世界で話したように、私はいくつものライダーの歴史を見てきた。いつの時代もライダーは戦い、人々を守ってきた。だが、それを良く思わない者がいた」
「それが、ダークディケイドですか?」
「ああ。奴は秘密裏に財団Xを立ち上げ、ライダーの歴史を破壊するためにディケイドという悪魔を作り出した。私がその計画を知った時にはもう、遅かった」
「それで散々俺の邪魔をしてくれたわけだ。ディケイドは悪魔だ破壊者だとその世界の奴らに触れ回って。なにせライダーの歴史のためだもんなあ」
理由を知ると、鳴滝の行動も理解できる。しかし士は嫌味ったらしくそれを窘める。そんな彼に夏海が親指を立てて見せると、首元を押さえて大人しくなった。
「私は自らの力を使ってライダーの世界を新たに生み出し、ディケイドにその世界を渡らせることにした」
「生み出した?」
「ああ。例えば、仮に私が作り出したクウガの世界をディケイドに破壊されたとしても、本来のクウガの歴史は残る」
鳴滝はそう言ってユウスケを見た。
キバーラの存在と同じ仕組みで世界を作ったと言ってもありえない話ではない。夏海とユウスケは、今まで巡った世界がディケイドの犠牲になることを前提として生み出されていたことに複雑な感情を抱いていた。
鳴滝は、生み出された世界のライダーたちがディケイドを倒すことを想定していた。しかし、世界は彼を拒絶してもその世界に生きるライダーたちは違った。ディケイドと仲間になる道を選んだのだ。
「ほう。それで生まれたのがユウスケたちってわけか。同じブレイドでも、カズマと剣崎一真がいたみたいに」
「半分はそうだ」
「半分?」
「お前が出会った剣崎一真は、正しくはブレイドの世界の意思が形になったものだ」
『本当に世界を救いたいなら、この世界からディケイドを排除するしかない』
『今から僕の仲間が、あなたの旅を終わらせます』
士は、かつて出会った二人の男を思い浮かべる。
「意思……あいつらがか」
彼らと共に必然的にライダー大戦のことも思い出してしまうため、あまり考えたくはない。士は、なんとなく窓の外に視線をやった。
その瞬間、外に見えるビルがふっと消えた。慌てて窓に駆け寄る。オーロラが次々に現れ、景色が変化していく。
「噂をすれば……来やがったな!?」
士はスタジオを飛び出していく。夏海とユウスケはその後を追っていった。
◆
士は夏海とともにマシンディケイダーに乗って、ユウスケはトライチェイサー2000に乗って街中を走る。
「士くん」
「なんだ」
彼の腰を掴み、バイクの後ろに乗る夏海が呼びかける。
「いえ……なんでもありません」
「じゃあ呼ぶな」
夏海は謎の不安を抱えていた。
士はダークディケイドに一度敗れている。それも、圧倒的な力の差で。ダークディケイドの強さは底が見えない。
夏海の夢の中のダークディケイドは大量のライダーを相手にしてもなおダメージを受けることなく勝っていた。それは過去の士も同じだ。しかしダークディケイドは、破壊者か否かどちらに転ぶか分からなかった士とは違う。
夏海は士をぎゅっと強く抱きしめた。
現場に着くまでの間も世界の崩壊が進んでいく。電柱がぐらりと傾いたかと思えば、倒れる頃には消えている。
消滅の中心地に近づくにつれ、だんだん人はいなくなっていく。逃げるよりも早く、消されてしまったのだ。
「あれは……」
士はバイクを止め、降りた。夏海とユウスケは彼に続く。
道の中央に立つ人間が一人。周りの建物が破壊されているというのに慌てもしないその姿は、士らを待っているようだった。
「流石に早いな。仮面ライダー」
「!」
士はその後ろ姿を睨みつけた。ネガの世界で聞いた、あの声だ。
「怪事件が起きれば、どこからともなくバイクに乗ってやってくる。忌々しき存在よ」
彼はこちらを向いた。
夏海とユウスケはあっと声を漏らす。その男は、ネガの世界で出会ったもう一人の士だった。
「士……が、二人……?」
「こいつとはネガの世界で会った。奴がおそらくダークディケイドだ」
三人は彼に近づいていく。士はもう一人の士に向かって指をさす。
「お前、一体何者なんだ」
「通りすがりの……」
もう一人の士は、士の問いに即答する。その答えに、士は顔をしかめた。
「――だったか。まさか仮面ライダーを破壊するために生まれた者が仮面ライダーを名乗ることになるとはな……」
「質問に答えろ! お前は――」
茶化すような口調の相手に、士が大声で叫ぶ。もう一人の士はバッと手を掲げて士の言葉を遮る。そして高らかに宣言した。
「我こそはショッカー。世界の破壊者だ」
彼の背後でまた建物が崩れ、消えた。整備された道路から、地面が剥き出しの場所に変化する。辺りに立ち並んでいたビルも、いつの間にか岩山に変わっていた。
「ショッカー……だと!?」
「ショッカーは俺たちが倒したはずだ! 大ショッカーとか、スーパーショッカーとか、色々な!」
「そうです! それに、ショッカーの狙いは世界征服。破壊ではないはずです!」
ユウスケが拳を握り、構える。夏海もそれに同意する。
「お前たちが見ていた組織はトップのいない紛い物に過ぎん。私こそが本物……ライダーの歴史の始まりと同時に生まれた、真のショッカーだ」
「つまり……お前が首領ってわけか」
ショッカーを名乗る士の正体は初代大首領。数々の組織を渡り、仮面ライダーを苦しめてきた存在だ。
「かつて私は仮面ライダーに敗北した。作戦を変え、部下を変え、組織を変えても、常に奴らは私の邪魔をした! だから私はお前を作ったのだ。全てのライダーを倒す最強の怪人・ディケイドをな!」
ショッカーの語気はだんだんと強くなっていく。怒りと憎しみが伝わってくる。
その言葉を聞き、夏海とユウスケは士を見た。
「……」
士はショッカーに怪人として作られていたという事実。なんでもそつなくこなしてしまうそのスペックの高さや、各世界のライダーや怪人を相手にしても戦えるその実力がその裏付けだった。二人は常にそれを側で見ており、自分自身の記憶が動かぬ証拠となっていた。
「つ、士くんは怪人じゃありません!」
「今はな。だが元は我々の作った怪人に過ぎん。ライダーどもの意思に利用され、世界を繋ぐことになるとは……」
「そうだ。士の妹――小夜ちゃんが言ってたぞ。士が世界を渡る力に目覚めたのは子供の頃だったって! その時から怪人だったとでも言うのかよ!」
「逆だ。怪人化によって世界を渡る力得たのではなく、既にその能力を持っていたそいつを選んだのだ。世界移動による影響を受けず、消滅することのない特別な存在。それが怪人・ディケイドになる資格だったのだ」
彼は夏海たちの反論にも冷静に対応する。
「ディケイドライバーとは我々が開発した『世界融合マシン』だ。秘密裏にライダーの世界を巡り一つ一つの歴史を、それと同時に世界を一つにまとめ最後に残った歴史も破壊する。これが当初の計画、そしてドライバーを持つお前に課せられた使命だった。だがお前は失敗した」
ショッカーは士を睨みつけた。
「そしてあろうことか、お前はあの日、仮面ライダーとして再び姿を現した! 西暦2009年1月25日! 全てを破壊する怪人であるはずのディケイドが仮面ライダーとなった日だ! ディケイドの存在が表に出たことで観測者に知られ、計画は全て泡と消えた! 歴史を消す存在であるはずのディケイドが、その歴史の一部となってしまったのだからな!」
歯を食いしばり、わなわなと震えていたショッカーの口角が上がっていく。
「だが、悪いことばかりではなかった。なにも破壊者は怪人である必要はないのだ。怪人は仮面ライダーに勝てぬが……」
ショッカーが両手をバッと広げる。黒いドライバーが現れ、自動で腰に巻き付いた。腰のライドブッカーから一枚のカードを取り出し、構える。
「仮面ライダーならば仮面ライダーに勝てる。お前たちが私に教えてくれた」
ショッカーはぐしゃりと押し付けるようにカードをバックルに装填した。
《カメンライド》
「変身」
《ディケイド》
いくつもの人影がショッカーに重なっていく。半透明のグレーだった影が一つになり、黒い姿になる。ドライバーから飛び出した板が顔面に収まる。変身が完了すると、辺りにブワッと風が吹き、砂煙を巻き上げた。
「これが財団Xの科学力を結集した最強兵器、その名も『ダークディケイドライバー』だ。そして私は仮面ライダー・ダークディケイド。もはや秘密結社や財団など必要ない。私がこの手で世界を破壊する!」
ダークディケイドの青い複眼が不気味に光った。ライドブッカーを構え、士らに向かって発砲した。
その攻撃はオーロラによって防がれる。
オーロラを経由して鳴滝がやってくる。戦力にならないのになぜ来たのか。その答えは、キバーラの輸送だった。
「夏海ちゃん、お待たせ♡」
「間に合ったようだな……」
鳴滝はダークディケイドを一瞥する。
「奴は最強で最悪のライダーになってしまった。止められるのは同じディケイドであるお前だけだ」
「ふん。お前に言われなくてもやってやる」
士も変身しようと、ディケイドライバーを取り出した。そして自身が手に持つ白いドライバーを見る。
「世界融合マシン……こいつにそんな意味があったとはな……」
ドライバーを腰に巻き付け、レバーを両側に引いてバックルを回転させた。カードを装填し、再びレバーを押す。
《カメンライド ディケイド》
「変身!」
士と同時に、ユウスケと夏海もそれぞれライダーに変身する。ディケイド、クウガ、キバーラ。三人のライダーはダークディケイドの前に立ちはだかる。
「ふふ……わざわざ全ライダーの世界のデータを集め作り上げたのだ。全ての力を持つ完全なライダーであるダークディケイドに敵うものはいない」
「そいつはどうかな。三対一だぜ。今度は負けねえよ!」
ディケイドはライドブッカーを持ち、銃撃しながらダークディケイドと距離を詰める。そしてすぐさまパンチとキックを繰り出す。クウガもそれに続いて、ダークディケイドと戦う。
ダークディケイドは二人の攻撃をいとも容易くかわす。そしてクウガの拳を掴み、そのまま彼の体ごと投げてディケイドにぶつけた。
「お前に物語などいらない。怪人として消えれば楽だったものを……」
「いかん!」
鳴滝はダークディケイドに手のひらを向けた。
その瞬間、ダークディケイドは視線を鳴滝に移し、猛スピードで彼の方に走っていく。そして鳴滝の首をガッと掴んだ。
「鳴滝よ。お前も随分邪魔をしてくれたな」
「うっ……」
鳴滝は抵抗するが、ダークディケイドの強い力からは逃れられない。
「お前の力は効かんよ。観測者たちは既にお前をディケイドの物語の一部と捉えている。ネガの世界では通用したかもしれないが、あいにく私はお前たちの物語の登場人物ではないのでな」
「ぐ……ああ……!」
彼の首を絞める力がだんだんと強くなっていく。
「鳴滝さん!」
キバーラがダークディケイドの背を斬った。
彼は鳴滝から手を離す。しかし、それはキバーラの攻撃が通ったからではなかった。現に、背中のアーマーには傷一つついていない。
「え……」
「こっちのライダーは……キバーラだったか」
キバーラは後退りする。ダークディケイドは振り返り、彼女を見た。
「ディケイドを倒すために、新たなライダーを作り出す必要があったのだな。だが、それも無駄に終わった! お前もディケイドの物語に組み込まれてしまったからな!」
「きゃっ!」
ダークディケイドがライドブッカーで斬りつける。一撃目で彼女のキバーラサーベルを吹き飛ばし、二撃目で彼女を両断しようとする。
「物語物語うるせえな!」
《アタックライド スラッシュ》
ダークディケイドの攻撃を、ディケイドが間一髪で受け止めた。そしてキバーラを連れ、ダークディケイドから距離を取る。そしてすかさず別のカードを使用する。
《アタックライド ブラスト》
《アタックライド ブラスト》
ダークディケイドも同時に、同じカードを使用した。空中で弾がぶつかり合い、爆発を起こす。
ディケイドは、ダークディケイドが持つ銃の形に違和感を覚えた。そのシルエットはライドブッカーではない。
「ディエンドライバー……だと!?」
「えっ? まさか……!」
ネガの世界で別れた海東と再会できていない。ディケイドたちは最悪の事態を想像した。
「がっ……ゴホッ! あ、慌てるな。あれは海東大樹のドライバーではない」
咳き込みながら訂正する鳴滝の言葉がその不安をかき消した。
「その通り。お前に改造される前の状態で再製造したディエンドライバーだ」
ダークディケイドはそう言って、ライダーカードをディエンドライバーに装填した。
《カメンライド》
トリガーを引き、赤・青・緑の三つの光がライダーの像を作る。
ディケイドらの目の前に、ディエンドが召喚された。
「ディエンド。ライダーどもとの戦いを有利に進めるために、ディケイドが使役する駒として製造した。……こいつも利用されることになったが」
召喚されたディエンドは武器を持っていないが、高速移動でディケイドたちを苦しめる。パンチやキックの威力は意外にも高いのだ。
「ぐあっ!」
「ちっ……本人が変身していなくても厄介なやつだ!」
ディケイドは動体視力だけでディエンドの攻撃を捌く。
「おまけだ」
ダークディケイドは更に二枚のカードを使う。
《ライド》
《ライド》
「正義と反する立場にあり敗北の物語がない仮面ライダーだ。お前たちに勝てるかな……?」
仮面ライダーエターナル・レッドフレアと、仮面ライダー幽汽・スカルフォーム。二人のライダーは、ディケイドに加勢しようとしたクウガとキバーラに攻撃を仕掛ける。
ぶつかる拳。互いに弾く刃。召喚されたライダーたちはディケイドたちの体力を奪っていく。
「はっ! やあっ! このライダーたち、強いですよ……!」
「でも、負けるわけにはいかない!」
《エターナル マキシマムドライブ》
《フルチャージ》
エターナルは両腕に、幽汽は刀身にエネルギーを溜める。
それを見たクウガは必殺技の構えをとり、走っていく。キバーラも剣にエネルギーを溜め、飛翔し幽汽に向かっていく。そしてディケイドはライダーカードを取り出した。
《ファイナル アタックライド》
「ハアッ!」
《ディディディディケイド》
「おりゃあああ!」
「はあああっ!」
クウガとキバーラが二人のライダーを貫いた。そしてディケイドはディエンドを吹き飛ばす。召喚された三人のライダーたちは同時に爆発した。
《ファイナルライド》
「!?」
ダークディケイドは高台に移動していた。爆発の煙がまだ辺りに充満している間に、ダークディケイドは次の攻撃の準備を終えていた。
彼は最初から、召喚ライダーでディケイドたちを倒せるとは考えていなかった。敵を撃破した後には隙が生じる。ダークディケイドはそれを狙っていたのだ。
「死ね!」
ダークディケイドは眼下のディケイドたちに向けてトリガーを引いた。ディエンドライバーから放たれる極太のレーザー。ディケイドたち三人の方に、猛スピードで伸びていく。
「ぐわああああ……!」
三人のいた場所で大きな爆発が起こった。ダークディケイドはふっと笑う。鳴滝は唖然としてそれを見つめる。
「……ん?」
ダークディケイドが違和感に気づいた。爆発の中で何かが光ったのだ。
《アタックライド ディフェンド》
ウィザードに変身したディケイドがギリギリでカードを使っていた。魔法陣から生まれた炎の壁が攻撃を打ち消し、その爆炎を吸収していく。
「今度はこっちの番だ! いくぞユウスケ!」
「おう! 超変身!」
クウガはドラゴンフォームにフォームチェンジし、高く飛び上がる。ディケイドウィザードがコピーのアタックライドカードで増やしたライドブッカーを受け取り、ドラゴンロッドに変化させた。
《フォームライド ダブル ヒートメタル》
空中でディケイドウィザードはディケイドダブルへと変身する。背の武器を取り、クウガと同時に振るう。
「はあっ!!」
二人の棒術がダークディケイドを捉えたかに思えた。しかし彼はドラゴンロッドとメタルシャフトを、第三の棒状武器でしっかりと受け止めていた。
《アタックライド ライドル》
「これは……Xライダーの力!?」
「他のライダーに変身しなくても力が使えるのか……!?」
「言ったはずだ。私は全てのライダーの力を持っているとな。お前も一度は到達しようとした領域だ。だがお前は真の破壊者になりきれなかった」
「っ……!」
ディケイドとクウガは過去のことを思い出していた。全てのライダーを倒す宿命を受け入れた士。それを止めようとしたユウスケ。二人が望んでいたのは世界を救うことだった。それでは破壊者にはなりきれない。
「私がお前を破壊してやろう。ショッカーにおいて『失敗』とは『死』を表すのだ。ライドルロープ!」
ダークディケイドの掛け声で棒が鞭になる。
「うわあっ!?」
ライドルでドラゴンロッドを絡め、放り投げた。クウガを投げつけられる展開はさっきも食らった。ディケイドダブルはそれを避ける。
「はあっ!」
《ファイナル アタックライド ダダダダブル》
メタルシャフトの両端に炎を纏わせ、ダークディケイドにぶつける。
《アタックライド インビジブル》
ダークディケイドはすっと消え、ディケイドダブルの必殺技を避けた。
「くそ!」
「士! あいつは今どこに――」
《アタックライド クロックアップ》
《アタックライド イリュージョン》
「うあああっ!!」
ディケイドとクウガは認識外から攻撃を受けた。透明化と高速移動、そして三人に増えたことによる多段攻撃。さっきから攻撃を受けっぱなしのクウガはそろそろ限界だ。
「これじゃ対処のしようが……」
「いや、これならいけるぜ」
ディケイドはライダーカードを取り出す。
「……! そうか! 超変身!」
《フォームライド ガイム ジンバーピーチ》
致命傷になる攻撃をギリギリで避けつつ、二人はフォームチェンジした。ドラゴンロッドに変化していたライドブッカーは、今度はペガサスボウガンへと変わる。
ディケイド鎧武とクウガは背中を合わせて立つ。次の攻撃はどこから来るのか。全神経を集中させ、辺りの気配を探る。
「そこだ!」
二人は同時に顔を上げる。別々の方向に武器を向け、発射した。
「グ……」
「アア……!」
二人の矢が見えない敵を撃ち抜いた。撃ち抜かれたダークディケイドはその場で爆発する。
「最後の一人は……」
「ここだ!」
また二人同時に矢を向ける。
透明化も高速移動も、完全に攻略したように思えた。
「甘い」
《アタックライド ムテキモード》
ダークディケイドの全身が輝く。十秒間の無敵モードに突入。こうなってしまえば一撃必殺の弓矢も通らない。ダークディケイドは今まで以上の素早さになり、ディケイドとクウガを完膚なきまでに痛めつけた。
クウガの変身は解け、ユウスケはその場に倒れる。
「や……やるじゃねえか」
「……」
同じくダメージを受けたディケイドだったが、こちらは鎧武への変身が解けただけだ。ダークディケイド側もイリュージョンの分身が二人やられたこともあり、少なからずダメージを負っている様子だ。
ディケイドは立ち上がり、バックルを回す。
「次はこっちの番だ!」
《アタックライド インビジブル》
見えなければ対処は難しい。それは最強のライダーとて同じ。
しかし、ダークディケイドは落ち着いた様子でカードを取り出す。
《アタックライド レーダーハンド》
ダークディケイドの両腕が金色に変化する。右腕のレーダーアイを打ち上げ、辺りの情報を即座に受け取る。
「……そこか」
「ぐあああっ!!」
ダークディケイドは左手を空中に向け、もう片方のレーダーアイを発射する。レーダーアイは透明化していたディケイドに命中し、爆発する。
ごろごろと床を転がるディケイド。更なる攻撃手段を探す。
「なら次は空だ!」
《フォームライド ブレイド ジャック》
《アタックライド カッターウイング》
ディケイドがブレイドに変身すると同時に、ダークディケイドの背中に飛行用ユニットが現れる。同時に飛び立ち、空中戦を繰り広げる。
二人ともライドブッカーという同じ武器を使っているため、なかなか決着がつかない。
「そろそろ終わらせてやろう」
「やれるもんならな!」
少し離れた距離から、全速力で近づいていく。二つの武器は交差し、お互いの体を切り裂こうとする。
しかし、ダークディケイドの背のカッターウイングがディケイドブレイドの刃を受け止めた。ディケイドの攻撃は届かず、相手の刃がディケイドを捉えた。大ダメージを受けてしまったディケイドブレイドは墜落する。
ダークディケイドはゆっくりと着地し、カッターウイングは消えた。
「これで分かっただろう。お前は私に勝てないということが」
「くそぉぉぉおおおっ!!」
《フォームライド エグゼイド ダブルアクション》
《アタックライド ムテキモード》
「これでどうだァア!」
ディケイドはエグゼイドに変身する。更に二人に分身し、左右両方からダークディケイドを挟み込んだ。
無敵モードは十秒間だけだが、ダークディケイドに一矢報いるのにそれほどの時間を要さないはずだ。
《アタックライド》
「懲りないやつだ」
《コンファインベント》
全ての能力が打ち消された。ディケイドエグゼイドの無敵モードは即座に解除されてしまう。
「な……」
《アタックライド エクスプロージョン》
二人のディケイドエグゼイドの正面に魔法陣が浮かび上がる。空中ではなすすべなく、ディケイドエグゼイドはそこに突っ込んでいく。
「さらばだ」
ダークディケイドが指を鳴らす。
「ぐわあああああああああ!!」
その瞬間、魔法陣が巨大な爆発を起こす。ディケイドエグゼイドの変身は解け、ボロボロになった士が膝をつく。
「ようやくだ。仮面ライダーディケイドは今! 死を迎える――」
「はっ!!」
その瞬間、キバーラがダークディケイドの腹を突き刺した。ずっとクウガとディケイドの相手をしており、キバーラのことなど頭から消えていた。
「油断しましたね……!」
「……そうだろうか」
キバーラの目論見通りとはいかず、剣はダークディケイド本人には届いていなかった。ダークディケイドはキバーラサーベルの刃を掴み、受け止めていた。
「余計な真似をしおって!」
「きゃっ!!」
ダークディケイドはキバーラを思い切り蹴り飛ばす。そして必殺技のライダーカードを手に持った。
その時、バチンとドライバーから火花が散った。ダークディケイドは動きを止める。
「ぐ!?」
剣の先端が微かにダークディケイドライバーに届いていたのだ。ドライバーの端がわずかに削れていた。
戸惑うキバーラの手を鳴滝が引く。士とユウスケは肩を貸し合い、側に立っている。
「こっちだ、夏海くん! 今はまだやられるわけにはいかない! 世界の崩壊までの猶予ができた! 次こそダークディケイドを倒すことができるはずだ!」
「貴様……まだそんな世迷言を!」
「世迷言ではない。ライダーは……ショッカーには負けない。それだけのことだ」
「フ……面白い。ならば次にお前たちを完全に殺し、その後にこの世界を破壊してやる……!」
ダークディケイドが動けない間に鳴滝が三人を連れてオーロラの中に消えた。
「……」
彼はダメージを受けたベルトを外す。士の姿をしたショッカーの表情に余裕はなかった。常に士たちを追い詰めていたように見えて、実際は少なからずダメージを受けていたのだ。
だが、士らが回復する間にショッカーもまた回復する。次に戦う頃にはお互い全快の状態からのスタートになる。
世界の寿命は延長されたのだった。
◆
その夜のこと。士たちはそれぞれ自室に戻っていた。明日の最後の戦いに向け、体を休める時間を取る。
二度目の敗北を経験し、三人の士気は落ちた。しかし、鳴滝の『次こそダークディケイドを倒すことができるはずだ』という言葉を信じるしかなかった。幸いにも、キバーラの攻撃でダークディケイドライバーの一部を傷つけたことにより、世界の破壊を中断することができた。この一晩が頼みの綱であった。
光写真館のスタジオには栄次郎が一人座っていた。アルバムをめくり、今までの旅を振り返る。
もうダメかもしれませんという、帰宅した孫娘のひどく落ち込み絶望した様子を見て、敵の恐ろしさが伝わってきた。これまでのようにはいかないのだろう。
「栄次郎さん」
鳴滝が部屋に入ってくる。栄次郎は手元のアルバムを掲げて見せる。
「これまでの旅を思い出していましてね。残念ですが、私にできることはない。ただ、信じるだけですからね」
「そうですね。彼らを信じましょう。ところで、一杯どうですか。最後になるかもしれませんし……」
「おっ、いいですねえ」
栄次郎はキッチンの方に酒を取りに行く。
その時、廊下の方でガタンと音がした。スタジオの扉が開き、服がボロボロになった海東が入ってきた。
「鳴滝さん。頼まれてたもの……盗んできましたよ」
「おお。よくやってくれたきっとやってくれると信じていたぞ」
「あなたも無茶言ってくれますね。ダークディケイドライバーの設計図を盗んでこいだなんて。ついでにこれも」
海東は端の焦げた紙の束を机の上に置いた。そして鳴滝には小さなアイテムを手渡す。
「鳴滝さん、ビールですよ~」
栄次郎がビールを持って帰ってきた。鳴滝はどこから取り出したのか、「こちらを」と皿に乗ったスルメを机の上に置いた。
「……お。イカじゃないですか。いいですね」
「栄次郎さん。先程、自分にできることはないとおっしゃいましたね。それは違います。あなたが、世界を救う最後の鍵になるのです」
「……?」
栄次郎はきょとんとする。
「何をまたまた。さあさあ、早く座ってくださいや。イカをつまみにビールを……ん? イカで……ビールを……。イカデ……ビール……。イカデビル……? えっ!?」
《シニガミハカセ》
鳴滝は海東から受け取った死神博士メモリを起動した。取り乱す栄次郎にそれを投げ、突き刺す。
海東が盗んできたのはダークディケイドライバーの設計図だけではなかった。全ての世界のものが集められた研究施設にはあらゆるものが存在した。この死神博士メモリもその一つだった。
みるみるうちに栄次郎の姿が変化していく。どこからともなくマントが飛んできて、彼に覆い被さる。
「我こそは……ショッカーが誇る大天才、死神博士だッ!!」
「では、よろしくお願いします」
「む……これを……?」
鳴滝が手渡したのは、海東が盗んできた設計図と士のディケイドライバー。一晩でディケイドライバーのスペックを大きく向上させるために改造を頼むのだ。
「あなたにしては、かなり危ない橋を渡るようなことをしますね」
「ダークディケイドに勝つ手段はこれしか考えられなかったのだ。だが、これで世界は救われるはずだ」
二人は、改造を施されていくディケイドライバーを眺めていた。
次回 仮面ライダーディケイド2 最終回
「何度向かってきても同じだということだ!」
「かつてお前は世界征服のためにとある怪人を作った」
「その怪人は仮面ライダーと名乗り、人々に勇気を与えた」
「ならば……お前はなんだというんだ」
「俺は――」
第23話「通りすがりの仮面ライダー」
全てを破壊し、全てを繋げ!