これまでの仮面ライダーディケイド2は……
「士くんは怪人じゃありません!」
「止められるのは同じディケイドであるお前だけだ」
「ならば次にお前たちを完全に殺し、その後にこの世界を破壊してやる……!」
「ショッカーが誇る大天才、死神博士だッ!!」
夜が明ける。世界の崩壊まで秒読みであることを思わせぬ、なんとも清々しい朝だった。
士はスタジオの扉を開け、中に入る。昨日鳴滝に預けたドライバーを受け取りに来たのだ。
「いよいよだな」
「ああ。ん……?」
士は、鳴滝の持っていたドライバーに違和感を持った。彼の手からドライバーを奪い、裏表を確認する。
ベースカラーは銀色から黒に変わり、ハンドルの色も赤青緑の三色から赤一色に。そしてなにより、真っ白だったドライバーは異彩を放つマゼンタカラーになっていた。
「……」
「ディケイドライバーは新たな進化を遂げた。もう世界融合マシンなどではない。仮面ライダーディケイドのためのバックル――ネオディケイドライバーだ」
「これが
「ああ。一晩でよくここまでやってくれたものだ」
鳴滝は頷く。そして、机の上で気を失った栄次郎を見た。士もそれに釣られて彼の視線を追いかける。
とても過酷な作業だったのだろう。栄次郎の足元には、ヒビの入った死神博士メモリが落ちていた。
「……? なんだこれ」
士は、眠っている栄次郎の手の下に何かが書かれた紙を見つけた。テーブルクロス引きのようにスッと引き取る。
『士くんへ 現像代とカメラの修理代に上乗せしておきます ちゃんと払っておくれよ 夏海に叱られてしまうからね』
「……はっ、世界のための仕事に金を取るのか。がめつい爺さんだ」
そして彼は手紙の最後の行に目をやる。
『いってらっしゃい』
士は手紙を二つ折りにし、机の上に戻した。
「ちゃんと払ってやる。ダークディケイドを倒したその後にな」
絶対に帰ってくる。士の決意は更に固くなった。彼は扉の前に立つ人影に視線を向ける。ユウスケも夏海も準備が整ったらしい。覚悟の決まった表情だ。
「待ちたまえ」
鳴滝は士にそう言い、一枚のカードを手渡した。士は黙ってそれを受け取る。
「必ずダークディケイドを倒してくれ」
窓から光が差し込む。暗かった部屋が明るくなった。
世界の命運は、彼らの手に委ねられた。
◆
第23話「通りすがりの仮面ライダー」
◆
士たちは決戦の地に向かっていた。
キバーラがダークディケイドライバーの一部を破壊したため、世界の崩壊は昨日の範囲以上には広がっていなかった。
ショッカーは同じ場所に鎮座していた。士の姿を確認すると、ゆっくりと立ち上がる。
「ちゃんと律儀に待っていてくれるとはな」
「お前を倒せば、どちらにせよ世界の崩壊は起こる。ならば完全な状態で、今度は逃げることもできないように徹底的に叩き潰すだけだと思っただけだ」
ショッカーの口調は落ち着いているが、表情は怒りと憎しみに満ちていた。
「ふん!」
彼の腰にダークディケイドライバーが現れる。キバーラにつけられた傷は完全に直っていた。
「逃げねえよ。そして、倒されるのはお前の方だ!」
士はドライバーを取り出し、腰に巻きつける。
「……? なんだそのベルトは」
ショッカーは見慣れないベルトに気づく。
「ああ、これか? お前に勝つために強化したんだよ。……金でな」
「適当なことを言いおって」
《カメンライド》
《カメンライド》
士とショッカーは同時にカードを装填する。そしてユウスケと夏海も変身の姿勢をとった。
「変身!」
「変身」
《ディケイド》
《ディケイド》
二人のディケイドが睨み合う。辺りに静かな時が流れる。風が吹き、土埃を舞い上がらせた。
ふとダークディケイドは高台から飛び降りた。それと同時に三人のライダーは走り出す。
《アタックライド イリュージョン》
ダークディケイドは空中で三人に増える。クウガとキバーラは増えた二人のダークディケイドと戦う。そして残った本体はディケイドと組み合う。
「何度向かってきても同じだということだ!」
「そいつはどうだかな!」
ディケイドはダークディケイドを突き放し、ライダーカードを持つ。同時に相手もカードを持った。
《アタックライド スラッシュ》
《アタックライド スラッシュ》
二人のライダーは腰のホルダーからライドブッカーを取り、持ち手を引き上げる。ブンと振ると、先から刃が飛び出た。
残像のエフェクトを出しながら二つのライドブッカーがぶつかった。両者の持つ武器から激しく火花が散る。
「はああああっ!!」
「ぐあっ!?」
押し勝ったのはディケイドの方だった。
アーマーから火花を散らしながら転がるダークディケイド。クウガやキバーラ、そして彼らと戦っていた分身のダークディケイドもそれを見て固まった。
「な、なぜだ。全てのライダーの力を研究し開発したダークディケイドが……!」
彼はよろよろと立ち上がる。ダメージを受けた箇所に手を当て、信じられないとばかりに首を振る。
「俺はもう、お前が知っているディケイドじゃない」
「……なに」
「今の俺は……そうだな。ネオディケイド、とでも呼んでもらおうか」
「小癪な!」
ダークディケイドはディケイドに殴りかかる。
「馬鹿な! そんな! ことが! あってたまるか!」
パンチの動きが、はっきりと見える。ディケイドは攻撃を避け、あるいは受け止める。
前回戦った時は明らかに劣勢だったが、ドライバーの進化によっていきなり対等に戦えるようになった。しかし、あくまで対等。攻撃を受けてしまえばたちまち立場は逆転してしまう。
そしてダークディケイドにあってディケイドにないカードもある。場合によってはその一手で勝負が決まってしまうかもしれない。
「ぐっ……!」
ダークディケイドの鋭いパンチがディケイドの肩を掠った。一瞬それを気遣ったディケイドに隙が生まれる。ダークディケイドはそれを見逃さない。
「ハアッ!!」
「ぐあああっ!」
今度はディケイドがダメージを負ってしまった。ダークディケイドの反撃が始まる。
時を同じくして、クウガとキバーラもダメージを受けていた。二人はディケイドとは違い、特に目立ったパワーアップがあったわけではない。依然ダークディケイドが研究したままの姿という絶望的な状況だった。
「夏海ちゃん……大丈夫?」
「はい……。でもちょっと、厳しいですね……」
「そうだ、夏海ちゃん――」
クウガはキバーラになにやら耳打ちをする。その間も敵の攻撃の手は止まらない。二人のダークディケイドはライドブッカーをこちらに向け、銃弾を発射する。
「よし……」
クウガは立ち上がり、一歩前に出た。
「超変身ッ! ……うぐっ!」
タイタンフォームに変身し、銃弾を全てその身に受ける。防御力が高い形態とはいえ、無数の攻撃に苦しそうな声を上げる。
しかし、彼はその状況でも一歩、また一歩と前に進み始めた。
「……」
痩せ我慢もその辺にしておけと言いたげに、二人のダークディケイドは右手で銃を撃ちながら左手にカードを構えた。
《アタックライド コピー》
《アタックライド コピー》
仮面ライダーウィザードの能力。彼らが左手を前に突き出すと、そこに魔法陣が現れる。その中から二丁目の銃を取り出し、クウガに発射する。合計四丁の銃から攻撃を受けながらも、クウガは足を止めない。
「ううっ……ぐはっ……」
そして、攻撃が届く範囲まであと数十センチというところで足を止めた。ゆっくりとクウガの視線が落ちていく。その大きな鎧が、糸が切れたかのように力を失い、倒れていく。
二人のダークディケイドは彼が力尽きたことを確信し武器を下ろした。
そんな二人の視界に映っていたのは、クウガの遥か後方で力を溜めていたキバーラだった。
「……!?」
キバーラの必殺技は、光の翼で飛翔しながら敵を斬りつけるもの。だが今回は違う。全てのエネルギーをキバーラサーベルに集め、それをこちらに向けて構えていた。
クウガの進撃はこれを隠すため。気づいた時にはもう遅い。
「やあっ!!」
クウガが完全に伏せた瞬間、キバーラは武器を投げつけた。
刃は猛スピードで空を切る。そしてかつての士のように、ダークディケイドのドライバーに突き刺さった。
「……ッ!?」
「今だあっ!!」
すかさず立ち上がるクウガ。
確かに並々ならぬダメージは受けていたが、倒れたのは力尽きたと思わせるための演技であり、キバーラへの攻撃の合図だった。
クウガはダークディケイドに突き刺さった武器の柄を両手で握った。キバーラサーベルはタイタンソードへと変化する。ダークディケイドはそれを引き抜こうとするが間に合わない。
「おりゃああああああッッ!!」
クウガは敵の体をねじ切るように武器を回し、隣にいたもう一人のダークディケイドごと切り裂いた。
二人のダークディケイドの体に紋様が浮かび上がり、爆散する。タイタンソードからはしゅうも煙が上がっていた。
ぜえぜえと息を切らすクウガはその場に膝をつく。そして駆け寄るキバーラに向かってサムズアップした。
◆
遠くの方から伝わる爆発の衝撃。
「あいつら、やったみたいだぜ」
「ああ。そうらしい」
二人のディケイド、士とショッカーは戦いながらそれを一瞥する。
仲間は勝利を手にした。自分も負けられない。ディケイドの手に力が入る。ダークディケイドはサッと後ろに引き、避けた。
「それも無駄だがね」
《アタックライド トリックベント》
同能力のカードを使用する。ダークディケイドは再び三人に増える。
「何度倒されても復活する……か。ライダーのガワを被っても怪人らしさは変わらないみたいだな」
「私はお前たちを軽く見過ぎていたようだ。かつてその油断をライダー共に突かれ、苦汁を飲まされてきたというのに」
三人のダークディケイドはそれぞれライダーカードを持つ。
《アタックライド キングラウザー》
《アタックライド メダガブリュー》
《アタックライド リボルケイン》
「今度は跡形もなく完全に消してやる。この最強の力を使ってな」
中央のダークディケイドはそう言って、発光する杖を振るう。
クウガとキバーラはまだ次の戦闘ができる状態ではない。ディケイドも一対一ならばなんとかなるだろうが、三対一は分が悪い。
三つの武器がディケイドに向けられた。
万事休すか。
《アタックライド ブラスト》
突如飛んできた光弾がダークディケイドたちを襲う。三人はそれぞれ手に持つ武器でそれを弾いた。
その隙に何者かがディケイドを掴み、猛スピードで崖の上まで移動して距離をとった。
「大丈夫かい、士?」
「海東!」
ディケイドの手を握っていたのはディエンドだった。ディケイドはそれを振り払う。
ディエンドは、ドライバーを構えて眼下のダークディケイドたちを見下ろす。
「それ、どうしたんだよ!?」
ディケイドは、彼のドライバーの変化に気が付いた。黒ベースだったディエンドライバーは雰囲気の全く違う、シアンカラーになっていた。
「うん。君のついでに僕のもいい感じに強化してもらったんだよね。これで僕も『ネオ』ディエンドだ」
彼はディケイドに対し、得意げにそう答えた。
「お前なあ――」
「……っ!?」
その時、彼らの立っていた崖が爆発を起こす。ダークディケイドの一人がメダガブリューを発射したのだ。
ディケイドとディエンドはそちらを見る。
「ネオだかなんだか知らんが、今更一人増えたところで戦況が変わるか? お前たちの情報がなかったとしても、先程の戦闘で十分理解した。実力は良くて互角だとな。数で見ればこちらの方がまだ有利だぞ。ダークディケイドライバーの力を侮ったな」
「ふっ。それはこっちのセリフだよ。二人増えたところでどうにかなるとでも?」
「……なに?」
「あ?」
ディエンドのその言葉にダークディケイド、そして隣に立つディケイドまでもが驚きの声を上げる。
「駒の数を増やせるのはお前だけじゃないってことさ。お前の敵は、全てのライダーの歴史だ!」
《カメンライド オールライダー!》
ディエンドが上空に放った銃弾がパッと散った。そしてその細かい光弾一つ一つが地面に着き、姿を形作る。
「これは……」
ショッカーにとって、見覚えがあるどころか深く記憶に刻まれた姿。黒いベーススーツ。銀色の手足。緑色のアーマー。そして赤いスカーフ。最初の仮面ライダー、仮面ライダー1号がそこにいた。
それだけではない。昭和ライダー。平成ライダー。合計三十二のライダーが召喚された。
「行け! ライダーたち!」
ディエンドの声を合図に、ライダーたちはダークディケイドに攻撃を仕掛ける。だが、それをものともせず、ダークディケイドは彼らを蹴散らしていく。
その景色はまるで夏海の見た夢のよう。数では圧倒しているはずの陣営だが、三人の敵にまるで歯が立たない。
「無駄だ! 言ったはずだぞ、お前たちの能力は全て解析済みだと!」
しかし、夢の通りにはいかない。
やられたライダーたちは消えることなく、再び立ち上がる。そしてダークディケイドたちに向かっていく。
「何度やられても立ち上がるとはしつこい奴らだ。フハハ……まるで怪人だな」
「大元を辿ればそうだからな」
崖から降りてきたディケイドがダークディケイドに飛びかかる。ダークディケイドはリボルケインでライドブッカーの一撃を受け止めた。刃の触れ合った箇所から光の粒子が飛び散る。
「かつてお前は世界征服のためにとある怪人を作った……。その怪人は仮面ライダーと名乗り、人々に勇気を与えた。お前という悪がある限りライダーは決して倒れないし、倒れるわけにはいかねえんだよ!」
ディケイドがその言葉を放つと、徐々にダークディケイドたちの方が押され始めた。ライダーたちの力が、既に集められたデータを上回ろうとしているのだ。
「バカな!? 最強のライダーであるダークディケイドが……」
「仮面ライダーは正義と自由の象徴なんだ。お前にライダーを名乗る資格はない!」
「ふん……ならばお前はなんだというんだ。怪人として生み出されたお前はァ!」
リボルケインの出力がグンと上がった。あまりのエネルギーの大きさにライドブッカーの刃が溶けていく。
「俺は仮面ライダーディケイドだ!」
ライドブッカーが完全に切断される。それと同時にディケイドは姿勢を低くし、リボルケインの一撃を避ける。そしてその折れた剣でダークディケイドのドライバーを斬った。
「!」
その瞬間二人の左右両側で爆発が起きた。分身のダークディケイドがライダーたちに敗れたのだ。
「う……グ……フフフ。まさか……ここまでとはな……」
ダークディケイドは攻撃を受けたベルトを押さえる。黒いドライバーにはヒビが入り、火花が散っている。
「何が可笑しい」
「ショッカーと共に生まれたライダーは、ショッカーと共に消え去る運命だ。そう思わないか?」
《ファイナル アタックライド》
ダークディケイドはカードを装填する。全身に禍々しい黒いオーラを放ちながら空中に浮かび上がった。ダークディケイドライバーからは激しく火花が散り、爆発寸前だ。
「士! ショッカーは自爆するつもりだ。自分の命を犠牲にしてまでもなお士を、ライダーの歴史を消そうとしている!」
「なに!?」
《ディディディディケイド》
カードエフェクトが現れ、ダークディケイドとディケイドとを一直線に結ぶ。
「ネオディケイドか。私が生み出した怪人がベースであるとはいえ、ライダーの歴史の終わりに相応しい強さだったよ。さらばだ、
最大出力のディメンションキックを放つ。
「いいや。こんなところでは終わらない」
ディケイドは走り出した。
「これからも仮面ライダーの歴史はずっと続いていく。俺はただの通過点。俺の物語もまた、通りすがるだけの一地点に過ぎない。俺は――仮面ライダーディケイドは、通りすがりの仮面ライダーだ! 覚えておけ!!」
開いたライドブッカーから飛び出したカードを掴み取る。鳴滝から渡された、最後のカードだ。
《ファイナル カメン アタック フォーム ライド》
「なに!?」
《ディディディディケイド》
ディエンド、クウガ、キバーラ、そして召喚された三十二のライダーたちがカードになってディケイドの方に飛んでいく。そして六枚一組の円を形成し、並ぶ。最後にディケイドのカードが加わり、合計六つの円が出来上がった。
「終わりだ! ショッカーッ!!」
カードを突き抜けていくダークディケイド。カードの中を通り過ぎていくディケイド。両者がぶつかる。
「うおおおおおおおおっ!!」
「アアアアアアアア!!」
叫ぶ二人。
周囲を巻き込む大爆発が起きた。
◆
煙が晴れると、ディケイドはディエンドたち三人と共に立っていた。
「勝負あったな」
彼らの視線の先には、地面に伏したダークディケイドがいた。
「またしても……ライダーにしてやられたか……!」
「お前の野望は阻止した。これで世界は救われたんだ」
「フ……甘い。私を倒しても……財団Xはなくならない。もう既にあれは私の意思とは別に動いている。第二第三の私が現れるのも……時間の問題だ」
残された財団Xは、元の目標を完全に忘れ去っていた。それぞれの支部で出資した研究が成長していく。それらはいずれライダーたちの脅威になりうるかもしれない。
「そして……ショッカーもまた滅びぬ! 『お前というライダーに倒された』という物語が存在する以上……そこからいずれ復活する! 次はお前以上の力を得てやるぞ……! ハハ……残念だったなァ……。ハッハッハッハ――」
「その時は」
ダークディケイドの高笑いをディケイドが遮る。そして彼に向かって指をさす。
「また仮面ライダーがお前を倒すさ」
「……!! おのれ……」
勝ち誇るでも虚勢を張るでもなく、ただ当然であるという口調。それを聞き、ダークディケイドは恨めしそうに拳を握りしめた。
「おのれ仮面ライダァァァアアーーッ!!」
ダークディケイドは天に向かって吠え、爆発した。
かくして、ショッカーの長年に渡る計画は失敗に終わったのだった。
◆
ダークディケイドライバーによって破壊されていた空間もいずれ元に戻るだろう。もうこの世に、世界を破壊する力を持ったドライバーは存在しないのだから。
光写真館のスタジオに戻ってきた一同は、ダークディケイド関連の出来事でする暇のなかった掃除をしていた。一生懸命働く夏海とユウスケとキバーラに対し、士はまたサボり気味。そんな彼に鳴滝が近づいてきた。
「よくやってくれた。ありがとう。全ての世界を代表し、私が礼を言わせてもらう」
「世界の代表とは傲慢だな」
士は久しぶりにレンズ越しの世界を眺めながら、そう言った。
「士くんもですよ! ちゃんと掃除してください」
夏海にハタキを手渡される。
「世界を救ったから疲れたんだ。このくらい、俺がいなくてもできるだろ。頼んだ」
「それはそれ、これはこれだろ。俺たちも頑張ったんだからな?」
ユウスケは「どいてどいて」と士の背後の窓の拭き掃除に取り掛かる。
「ようし、一旦こんなもんにして、ちょっと休憩しようか」
徹夜明けの栄次郎は一眠りした後、士らの帰還を喜び、今は掃除に勤しんでいた。そんな彼の一声で少しの休憩時間が取られた。
「これで士の旅も終わったんだよな? やれること全部やったし、破壊者でもなくなったし?」
「ああ。そうかもな」
「よかったですね。じゃあ、次はどうしましょう? またどこかに、宛のない旅でもしますか?」
「次の旅の先は決まっている」
三人は鳴滝を見た。まだ旅は終わっていなかったのか。後出しの情報もいい加減にしろ、と士は顔をしかめた。
「次にお前が行くべきはジオウの世界。平成ライダーを統べる王の世界だ」
鳴滝がそう言うと、彼の背後にオーロラが現れる。そしてそこに一人の高校生の姿が映し出された。
「王? こいつがか?」
「ジオウの……世界?」
オーロラの映像が変化する。高校生が変身した、なんとも奇抜な顔をしたライダーが戦う様子。
「この世界で、新たな時空の歪みが起ころうとしている。平成を揺るがす大きなものだ。ショッカーのしようとしたことと同じように、平成の歴史が無くなってしまうかもしれない」
「ほーう。なら、その原因を俺が倒してきてやろうか」
「お前では無理だ」
「じゃあどうすればいいんだよ」
「仮面ライダージオウを最高最善の魔王へと成長させる。これがお前の最後の仕事だ」
最高最善の魔王。矛盾しているような、そうでないような。夏海とユウスケはぼんやりとしたワードを聞かされてぽかんとする。士はそんなことは軽く受け流し、質問する。
「なるほど? で、具体的に言うと俺はその世界で何をすればいいんだ? 王様の召使にでもなれってのか? それはごめんだぜ」
「もう役割は必要ないだろう。お前はお前として、門矢士として行動すればいい。王はお前からライダーのあり方を学ぶだろう」
「そんな利口そうなガキには見えないがな」
普通の高校生常盤ソウゴ。どんな少年であるか不明。だが――面白そうだ。士の口元が緩んだ。
「士から勉強するなんて、この子可哀想にな……」
「ですね……。ちゃんと良い王様になるんでしょうか……」
「う、うるさいぞ」
ふと、鳴滝は士に手をかざす。そして次の瞬間、ブワッと強い風が吹いた気がした。
「……なんだ?」
「私の、歴史の管理者の力の一部を分け与えた。これで世界を渡ることも、限定的ではあるが新たな力を生み出すこともできるだろう。さあ、行け! 仮面ライダーディケイド、門矢士!」
オーロラの映像はいつのまにか消えていた。残されたオーロラはジオウの世界へと渡るゲートになった。
「士くん、行ってらっしゃい」
「あんまり虐めんなよ~」
「ああ。行ってくる」
そう言って、士は新たな世界に旅立ったのだった。
仮面ライダーディケイド2 完
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ディケイドが平成二期のリマジ世界を巡る物語はこれで終わりです。
この後は仮面ライダージオウ本編へ続く、というように想定しています。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!