「人知を超えた凶悪な存在……」
これまでの仮面ライダーディケイド2は……
「俺は切札ショウタロウ。この街の顔だ」
「最近ドーパント絡みの事件が多くてな。警察もあっちへこっちへと連れまわされてる」
「この事件には裏があるかもしれねえな」
「これで仮面ライダーはいなくなった……!」
夜が明けた。ブラインドが開きっぱなしの探偵事務所に、朝日が差し込んでいる。小鳥のさえずりが窓越しに聞こえてくる。
ふと、ガチャッと扉が開かれる。
「ようショウタロウ。目が覚めたかあ?」
士は警察姿のまま、ずかずかと事務所に入ってきた。彼の目に映ったのは、昨日見た時と変わらずソファの上で眠り続けるショウタロウだった。
「呆れたやつだ。おい、朝だぞ、起きろ」
「ん……?」
顔に乗せられた帽子を退けてショウタロウの頬を叩く。目を覚ました彼は「どこだここ……」と寝ぼけている。再び目を閉じた彼に、士は呆れたようにため息をつく。視線をキッチンにやると、彼がいつも使っているカップが目に入った。
「お前の事務所だろ。ほら、これ飲め!」
「ん?」
ショウタロウは、士に手渡された飲み物を一口飲むと、ブッと霧を吹いた。
「なんじゃこりゃあ!」
「モーニングコーヒーだ。清々しい目覚めに一杯。俺のオリジナルブレンドだ」
「冗談じゃねえ! なに入れやがった!」
士は「さあな」とはぐらかす。キッチン台の上に、タバスコやワサビのチューブが半分空の状態で置かれているのを見て、ショウタロウは察した。「やりやがったな」と文句を言いながら片づける。
「昨日は何があったんだ? お前、港のど真ん中でぶっ倒れてたんだぞ」
「港? ……風都湾! そうだ! 昨日ドーパントが現れたんだ!」
「ほう。じゃあ、あの刑事の推理は当たってたんだな」
士は警察帽を被る。
「……あ?」
「風都署に行く。お前も来いよ。何か分かるかもしれない。当事者なんだろ?」
ショウタロウは、ちょっと待てよとキッチンから走ってくる。途中で足をぶつけてその場でしゃがみ込み悶絶する。
「なにやってんだ」
「寝起きなんだよこっちは……。あっ。そういえばガイアメモリが欲しいとかいうやつがいたな。自分のことをトレジャーハンターとか言ってたが──」
「ああ。そいつは適当に無視しとけばいい」
士は振り返ることなくそう言った。
◆
第3話「Wの世界/ライダーは二人で一人」
◆
二人は風都署の地下駐車場内にそれぞれバイクを停め、入り口に向かって歩いていた。
「ったく。お前のシャワー時間、長いんだよ。ちゃんと寝る前に風呂に入れ」
「寝っぱなしだったからな。……てか、お前が運んでくれたのか?」
「そうだが? ほら、感謝しろよ」
「……したくなくなった」
「お? お、お? おー!」
二人の背後から声がする。振り返って見てみると、笑顔でこちらに手を振る刃野の姿があった。士とショウタロウは顔を見合わせた。
二人は刃野と合流し、目的地である超常犯罪捜査課の部屋にやってきた。
「いやー久しぶりだなあ、ショウタロウ! 寂しかったぜ? ……なんだお前一人か? いつもはあのメガネの坊ちゃんと二人で来るくせによ。ほら、あの頭のいい」
「あ、ああ」
「あー、門矢。こいつ、ショウタロウってんだ。昔からやんちゃボウズでな。いっつも俺にどやされてよー、がっはっは」
歯切れの悪い返事をしたショウタロウの横で、足を組んで座っていた士が話題を変えた。
「昔話はいい。事件のことを話したいんだが──」
「おー、そうだそうだ。昨日は特にドーパントの出現回数が多くてなー。記録してた押谷も『一気に使いすぎだ』とか文句言ってやがったなー。ここの青い印、全部そうだ」
士の言葉を無視して、刃野は地図を広げる。色で分けられずとも、昨日に比べると一目で分かる程度に印が増えていた。やはり、主に街の南側で事件が起きたようだ。士が印がされた内の一ヶ所である風都湾を指さして「あんたの予想通りだったな」と伝えると、刃野はよせやいと照れながら言った。
「まあ、なんだ。ドーパントがこうも溢れちゃ、仮面ライダーも辛いだろうなあ」
「仮面ライダー?」
刃野の言葉に、士が聞き返す。ショウタロウはぴくりと体を動かした。
「仮面ライダーはドーパントどもからこの街を守ってくれるヒーローのことだ。俺たち超常犯罪捜査課もたびたび世話になってる」
「警察は世話になりっぱなしの立場だけど」
「うっ、い、言うじゃねぇかショウタロウ」
「……ところで、部下たちはまたパトロールに行ってるようだが、あんたはここで何してる?」
「なんだお前ら、嫌味言いに来たのか!? かっ、帰れ帰れ! 今言った以上の情報なんて入ってねえよ!」
二人は刃野に怒鳴られてしまった。
◆
二人は風都署を追い出された。仕方がないので、風都署を出てしばらくバイクを走らせ、川沿いの堤防に場所を移した。
士は川下の方に見える風都タワーを撮影した。ショウタロウおすすめの観光スポット。
「なにやってんだお前は」
「あのポンコツ刑事が悪いんだろ」
「おい、刃野さんをポンコツって言うな! いたたたたたたたた!」
ショウタロウの平手を受け止め、ねじる。そして手を離し、また悶絶する彼に向かって言った。
「お前が仮面ライダーなんだろ? 街を守るヒーローがこんなところで道草食うようなことしていいのか?」
「……知っていたのか」
「昨日、倒れてたお前がベルトを巻いていたのを見たからな。ま、大穴空いてぶっ壊れてたが」
「なるほどな。そこまで知ってるのか」
ショウタロウはガックリと肩を落とし、うつむいた。
「だからもうお前があのベルトで変身できないってのも知ってる。できることがないなら素直に帰った方がいいんじゃないか」
「バカ言え。そんなことできるか」
「いいじゃないか。たまには仲間を頼るとか、な」
「仲間か……。俺にとってのそいつはもう──」
「誰かと思えば、士じゃないか」
ふと自分の名前を呼ばれた。士は大方予想をつけながらも、声のする方を見た。そして不敵な笑みを浮かべる男を視界に捉えると深くため息をついた。
「海東……」
「今日は君じゃなく、隣の探偵くんに用事があるんだ」
視線を士から外し、ショウタロウと目を合わせる。
「あっ、お前は!」
「話は聞いたよ。君のドライバーは壊れてしまったんだろう? だったらガイアメモリも必要ないはずだ。ほら、渡したまえ」
「嫌に決まってんだろ。……ちょうどいいぜ。聞きたいことがあったんだ。お前、昨日出たドーパントのこと、警察に通報したか?」
「どうして僕がそんなことをする必要が。この世界の警察なんて、呼んだところで邪魔になるだけさ」
「……そうか」
「? ま、いいや。質問に答えたお礼に、君のメモリを差し出してもらおうか」
《カメンライド》
「やめろ、海東」
海東がディエンドライバーにカードを装填するとともに、士はショウタロウの前に出てディケイドライバーを装着した。
《カメンライド》
「変身!」
「変身!」
《ディエンド》
《ディケイド》
変身した二人の仮面ライダーは戦う。共に殴り合い、土手を転がり、川へ落ちた。
「ったく、いい加減泥棒から足を洗ったらどうだ」
「余計なお世話だね」
《アタックライド ブラスト》
ディケイドが放つ弾丸はディエンドに命中する。倒れるディエンドが、ばしゃあと水しぶきを上げる。
「くっ、僕の邪魔をする気かい、士! 君はこれからの世界のことをなにも分かっていない癖に!」
「なに? だったらお前は何か知っているとでも言うのか」
「もちろんさ」
《カメンライド》
「見たまえ。これが僕の新しい力だ」
《ルパン》
ディエンドが召喚したライダーは、全く見たことがない姿だった。赤いボディに黒いマント。あちこちに宝石をちりばめたような意匠。そして帽子のような頭。
「なんだこのライダー!? うわっ、危ねえ!」
驚きつつもディケイドはルパンの銃撃をかわす。そしてすかさずケータッチを取り出す。未知の力であろうとも、コンプリートフォームなら互角以上に戦えるはずだ。彼はそう考えたのだ。
コンプリートカードを挿入する。だが、ケータッチが起動しない。
「なに!?」
「忠告しておいてあげよう! この世界は今までの世界とは違う。僕たちにとって全く新しい世界だ。ゆえにこれまでのやり方は通用しない」
「どういうことだ」
「ひとまず今は、探偵くんのガイアメモリは見逃すことにしておくよ」
《アタックライド インビジブル》
ディエンドはその場から去る。
「待て! ……ぐはっ!」
それを追おうとしたディケイドを、ルパンは逃がさない。川の中では足場が悪く、長期戦には向いていない。
「だったらこれだ!」
《フォームライド キバ バッシャー》
ディケイドは緑色のキバへと変身する。そして手にしたバッシャーマグナムでルパンの銃撃を相殺した。
「おらおらおらおら!」
バッシャーフォームは水上を滑るように移動する。右へ、左へとルパンを翻弄する。
《ファイナル アタックライド キキキキバ》
ディケイドキバは川の水を纏い、大きなエネルギー弾を作り出す。
「はあっ!」
放たれた弾はルパンに命中する。爆発したルパンの姿は、ぼやけて消えた。
ディケイドは変身を解除してショウタロウのもとへと戻る。一連の流れを見て、彼は驚いた様子だった。
「お前も変身するのかよ。さっきのやつ、お前の仲間なのか?」
「違う。あんな泥棒知らん」
勘違いはやめてくれ、と士は首を振る。そして、士は気になっていたことを質問した。
「お前には仲間はいないのか? さっき刃野が言っていた二人ってのは……」
「……」
ショウタロウは視線を堤防の向こうを流れる川に向ける。そして独り言のように話しはじめた。
「
ひゅうと風が吹く中、ショウタロウは続けた。
「ここ最近のドーパントの事件でジョーカーの限界を感じた俺たちは、新たな力を試そうとした。だがそれは失敗した。俺があいつを急かしすぎた。新しいドライバーが不完全なまま戦ったから、あいつは消えちまったんだ。俺たちは二人で一人だった。あいつが欠けちまったら俺は……何もできねえただの半端なやつだ」
ショウタロウはそこまで言って、急に顔を上げ、直立した。自分の頬を思い切り叩く。
「なんてな。最後まで俺はあいつに頼ってばかりだった。こんな時は俺が頑張んなくちゃな」
ショウタロウの強がった笑顔。頬が赤い。士は一つ尋ねる。
「俺は帰るが、お前は事務所に戻らないのか?」
「もう少しここで風に当たる。風都タワーの近くはいい風が吹くからな。頭を冷やすのに丁度いいんだ」
「そうか」
士はバイクでビリヤード場もとい光写真館へと去っていった。
それを見送ったショウタロウは、自分のバイクのエンジンをかけた。十分頭は冷えた。一つ、引っかかっていることがある。行かなくてはいけない場所がある。それは彼の探偵のカンだった。
◆
士はビリヤード場へ戻った。夏海がビリヤード場の前に立っていた。士もおらず、ショウタロウも留守にしていたため、探していたのだ。
「あっ士くん!」
「バカ、お前、こんなとこでウロウロするな。危ないだろ。轢くぞ」
「どこ行ってたんですか?」
「ちょっとな」
士が向かおうとした先は写真館ではなく、その上の探偵事務所だった。
「あ、いけませんよ。勝手に入るなんて」
「違う。忘れ物を取りに来たんだ」
「忘れ物?」
「あいつの相棒が残した、大切なものだ」
その時、ビリヤード場の扉が勢いよく開かれた。ユウスケが冷や汗をかきながら出てくる。
「夏海ちゃん! 大変なんだ……あれっ士!? 丁度いい、お前も来い!」
「おい!? なんだよ!?」
ユウスケに引っ張られて写真館の中に連れられる。見せられたのは、栄次郎が釘付けになっていたテレビだった。
「ほら、このニュース!」
「ああ、お帰り士くん。なんだか大変なことになってるみたいだよ」
士は栄次郎の肩越しにテレビを見る。そこに映っているのは信じられない光景だった。
「風都ダムが破壊されただと!?」
◆
ショウタロウは風都タワーを登っていた。整備員用のドアを抜け、展望台よりさらに上にやってきた。手すりも柵もない、プロペラのすぐ近く。ここが最上部だ。
そこに、ちらりと人影が見えた。
ショウタロウは暗い表情になった。自分の推理が当たってしまったことが悲しかった。
「見つけたぜドーパント……いや、押谷刑事」
そこにいたのは刃野の部下の一人、押谷だった。
「よく分かったな」
「あんたが担当したらしい地図で、風都湾に印があったからな。あの時周りには誰もいなかったし、誰も通報していない。だからそれを知ってるのはドーパントであるあんただけなんだよ」
あの場にいたのはショウタロウとドーパントと海東の三人だけ。その海東も、先ほどの戦いの前の問答で警察に通報していないと言っていた。
「それにあんたはあの時、変身解除した俺を殺さなかった。顔なじみだからって見逃してくれたんだろ?」
「ほーう。俺だと特定したのはいいとして、なぜ風都タワーに来られた?」
「それも地図から分かった。ドーパントの出現場所がだんだん南に移ってるのは、警察の目をそっちに向けさせるためだ。そうすれば北側のダムまで注意が行かず、爆破しやすくなる」
「答えになってないぞ。俺が今、風都タワーにいる理由は?」
「あんたが水を使うドーパントだからだ。そして風都タワーは川沿いにある。ここからだと増水した川も見やすいだろ」
タワーの下には風都大橋がかかる川が、光を反射して輝いている。
「メモリをばらまいたのもあんたなんだろ? 急にメモリ事件が増えたのは、押収品のメモリを勝手に持ち出したから……違うか?」
押谷はハッハッハと大声で笑う。
だんだん川の様子が変わっていく。水面の揺らぎが大きくなり、川上からドドドドと大量の水が流れてくる。
「すごいな! 当たりだ! お前に情けをかけちまったのは間違いだったかもな! でも遅かったな、ショウタロウ。見ろ。ダムによってせき止められていた川の水が一気に押し寄せる。そしてその水が……」
《オーシャン》
「俺の力になる!」
押谷はオーシャンメモリを腕に刺し、オーシャンドーパントへと変身する。荒れる海面のように波打つ外皮。渦のようなパーツが体にぐるぐると巻き付いている。
オーシャンドーパントが手を上げると、川の水が巻き上げられ、風都タワーの柱を伝って上ってくる。
「はっ!」
ドーパントから放たれた水は昨日よりさらに威力を増している。ショウタロウの周りの床、風都タワーの一部をえぐりとっていく。
「はっはっはっは……ぐっ!?」
オーシャンドーパントは、背後から攻撃を受けた。物陰に隠れてディエンドが銃口を向けていた。
「またお前か!」
「どうやらそっちのメモリの方が強そうだ。それをいただくとするよ」
「できるものならな!」
川の水が彼らのいるところまで登ってきた。その水を使い、オーシャンドーパントは十体の分身を作りだした。
ディエンドは落ち着いて二枚のカードを装填する。
「新たな兵隊の出番だ」
《カメンライド ライオトルーパーズ》
《カメンライド クロカゲトルーパーズ》
「いってらっしゃい」
それぞれのカードから三人ずつ、合計六人のライダーが召喚される。ライダーたちは水でできた分身体と乱戦を始めた。
「分身は俺と同じ強さを持っている。そう簡単に片付けられんぞ」
「なかなか侮れないね、この力! 更に欲しくなったかも」
ディエンドたちはオーシャンの分身と戦いながら、徐々に遠ざけられていった。
「押谷刑事! なぜこんなことを!」
ショウタロウは余裕のオーシャンドーパントに食ってかかる。
「俺が風都を手に入れるためには、どうしても仮面ライダーが邪魔だった! お前が街をうろついていたら、計画が実行できないからな!」
「……風都を手に入れる?」
「そうだ。俺はこの力を使って世界を支配する。そのためにまずこの風都を水に沈める」
「なんだと!?」
「知ったところでお前だけじゃなにもできまい? 探偵ごっこもお前ではなく、ライトがいてこそだったんだ! 今のお前はただの悪ガキでしかないんだよ!」
「ぐ!」
一発、ショウタロウの右足に弾が命中する。ついに膝をつき、倒れてしまった。だが、痛みを我慢し、息を吸い込み、大声で叫ぶ。
「ああそうだ!」
彼の必死な様子に、ドーパントは攻撃を止める。
「ダメなんだ! 俺じゃきっと! そんなの分かってんだよ! でも、俺はあんたを止めないといけねぇ! ライトがいない分、今度は俺が頑張らなくちゃいけねえんだ!」
それを聞いて、ドーパントはハッハッハと高笑いをする。
「なんの力もないお前が、何を言おうと無意味だ! 風都タワーと共に潰れるがいい!」
ドーパントに操られた水は、風都タワーを包み込む。プロペラが水を切り、大雨のようにショウタロウに降り注ぐ。
「風都タワーが……泣いている……!」
「ハッハッハッハ! もうここも終わりだ。風都は俺の街になるのさァ!」
「そうはならない」
「……ハ?」
タワー最上部への入り口の側。士が腕を組んでそこに立っていた。
「お前のその企み、こいつらが許さないぜ」
「こいつ……ら?」
ショウタロウは話が飲み込めない様子。
「やっぱり気付いていなかったか」
士が手に持っていたのはダブルドライバーだった。
「お前……それは!」
「なんだそのベルトは……!?」
ショウタロウもオーシャンドーパントも、それを見て衝撃を受ける。
「戦いの中で相棒がいなくなったって言ってたよな。新しいドライバーの誤作動で二人の肉体が一つになっちまったってとこだろ。ほら、お前はこれを見逃していた」
「なんだ?」
ドライバーと共に手渡されるメモ。
『ダブルドライバーの最終調整は完了した。今度こそ変身できるはずだ。僕たちの街のためにともに戦おう。 ――君の相棒 風巻ライト』
「ライトの書き置き……?」
「お前の長いシャワータイムの間に、あの部屋の中でこれを見つけた。ライトってやつはお前がこれを見つけると踏んでいたらしい。お前は相棒に頼り切っていた自分を振り切ろうとしていたため、そうはならなかったがな」
「入ったのか!? あの部屋に! ……でも、なぜライトが」
「昨日、お前がドーパントにやられた時にお前の中にいた相棒が目覚めたんだろう」
「そんな偶然が……」
「お前を助けるためだったりしてな」
士はショウタロウに手を差し伸べる。彼は手を取り、よろけながら立ち上がった。
「仮面ライダーが復活!? くそ……なぜだ!」
「簡単なことだ」
「!?」
士は一歩前に出て、こう言った。
「こいつらは、この街を愛している。この街では誰も……この街そのものも泣いていて欲しくないんだ。一人では届かなくとも、信じあえる相棒とならできることがある。だから何度でも立ち上がれる。この街を守るために!」
「なんなんだ……なんなんだお前はァ!」
「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ! ショウタロウ! 行くぞ!」
「……ああ」
彼はダブルドライバーを構える。肌身離さず持っていたサイクロンメモリを右手に持ち、ぐっと握りしめる。
「また力貸してくれ、相棒。頼りにしてるぜーっ!」
《サイクロン》
《ジョーカー》
両手で二つのメモリを起動させ、左右のスロットに挿す。
《カメンライド》
バックルのハンドルを引き、ライドブッカーから取り出したカードをドライバーに挿す。
「変身!」
「変身!」
《サイクロン ジョーカー》
《ディケイド》
緑がかった風が彼らを包み込む。ドーパントが発射した水弾は、飛んできたプレートにかき消される。そのプレートが顔に収まった時、二人の仮面ライダーがそこに立っていた。
『やあショウタロウ。調子はどうだい?』
「感じる……。ライト……ライトなんだな! 生きてたんだ……!」
『呆れるねぇ。僕の写真に花まで供えちゃって。思い込んだら止まらないのが君のいいところであり、悪いところだ』
「ああ、すまねえ。許してくれるか?」
『当然だ。なぜなら僕らは?』
「二人で一人。唯一無二の相棒だから!」
『そういうこと』
久しぶりの会話を果たし、ダブルとディケイドはオーシャンドーパントに向き直る。
「こっからが本番だあ、ドーパント。さあ!」
『お前の罪を』
「数えろ!」
ダブルとディケイドは指を向ける。
「小賢しい!」
ドーパントは水の触手を操り、二人のライダーに攻撃を仕掛けてくる。
「はっ!」
「おらあ!」
二人はそれを受け流す。
ダブルは素早くドーパントに近づき、キックをくらわせる。
「どうだ! これが俺たちの力だ!」
「今は俺たちが、街を守る仮面ライダーだ」
ディケイドのその声と共に、ライドブッカーからカードが飛び出す。ブランク状態だったダブルのライダーカードと共に、それに関するカードが解放される。
彼はその中から一枚のカードを選び、ドライバーに装填する。
《ファイナル フォームライド ダダダダブル》
「お前ら、ちょっとくすぐったいぞ」
「なんだ?」
『ん?』
ダブルの背に手をやり体を分ける。半分ずつになった体は、もう片側が補完された。仮面ライダーダブル、サイクロンサイクロンとジョーカージョーカー。ライトとショウタロウがそれぞれの体を持った。
《サイクロン サイクロン》
《ジョーカー ジョーカー》
「おお、二人になったぞ!」
「僕の体が復活したんだ!」
三人はドーパントに向かっていく。
「一人増えたところで……この強大な力の前では無意味だああああああ!!」
オーシャンドーパントは水を纏う。水は流動しており、その塊の中は濁ったようにくすんでいて見えない。塊から水の触手が伸び、ライダーたちを攻撃しようとする。彼らはそんな攻撃を簡単に弾き返す。
「クソッ! 水が集まるまでやり過ごすつもりだ。やつがどこにいるか分からねえぞ!」
「いや、大丈夫さ」
「え?」
焦るショウタロウに、ライトは落ち着いた様子で言う。
「なぜなら風都タワーの中を駆け抜ける風は……」
「この街で一番いい風らしいからな! いくぞお前ら!」
《ファイナル アタックライド ダダダダブル》
とても強い風が吹いた。
風都タワーの羽根がグルグルと回る。あちこちから金具の軋む音が聞こえる。激しい風の勢いで、オーシャンドーパントの水の鎧が剥がされていく。
「そんなバカなァァァアアアア!?」
「それが、街を泣かせた罰だぜ!」
「とどめだ!」
三人のライダーが飛び上がり、オーシャンドーパントに向けてキックを繰り出す。
「うああああああああああああっっ!!!」
ドーパントは断末魔と共に爆発し、倒れた。その場に残ったのは、砕けたオーシャンメモリと、それに手を伸ばした格好で気を失った押谷だった。
変身を解除したショウタロウとライトは、オーシャンの水によって雨に打たれた直後かのような風都の景色を見る。風都タワーのてっぺんから眺める街には、虹がかかっていた。
士は彼らの後ろ姿にレンズを向け、シャッターを切った。
◆
押谷刑事は逮捕された。彼が盗んだガイアメモリの全てが見つかったわけではないらしいが、仮面ライダーが解決してくれるだろう。
「ショウタロウさん、喜んでましたね」
夏海は士の撮った写真を机に広げながらそう言った。
「まさに息ピッタリの相棒って雰囲気で、いい感じのコンビだったよな~」
「ああ、あいつらがいればこの世界は大丈夫だろ」
開いた窓から入ってくる風にあたりながら、士は返事した。
風都はやはりいい風が吹く。
「あー! 半額券がっ! 窓、窓を閉めてくれっ!」
栄次郎が部屋に散らばる紙切れを追っている。出前で頼んだ風麺で、次回以降使える半額券をもらったらしい。そして自分でスープを作るほどラーメンにハマってしまった。今日の昼食もラーメンになる予定だ。
「うわっ」
栄次郎が柱にぶつかると同時に、ジャララララと新たな絵が出現する。
映し出されたのは大地に突き刺さった大きな壁。根元に描かれた木との比較から、かなりのサイズがあることが分かる。
「次の世界は風通しが悪そうだな」
士はそう言って、窓を閉めた。
次回 仮面ライダーディケイド2
「天ッ才シンガーソングライター! セント・カツラギだーっ!!」
「十年前に隕石が落ちてから、我々はこのような生活をすることになったのです」
「世界の破壊者・ディケイド。すごいインパクトだよ……」
「俺がプロデュースしてやる。大船に乗ったつもりでいろ」
第4話「箱の中のビルド」
全てを破壊し、全てを繋げ!