「スマッシュから人々を守るために我々が開発した兵器ですよ」
これまでの仮面ライダーディケイド2は……
「俺、箱中セント。同じライダーとして、よろしく」
「隕石落下の時に一人で歩いてたところを、セントの親父さんが保護した」
「俺とセントは隕石落下地点と何か関係があると睨んでる」
「パンドラパネルを貰いに来たんだ」
《カメンライド エターナル》
白いボディに黒いマントをなびかせ、出現する仮面ライダー。ディエンドライバーで召喚されたエターナルはビルドにサムズダウンの仕草をした。
「お前も士みたいに不思議な力を使うんだな」
仮面ライダービルド・ラビット消防車フォームは、目の前に現れた新たなライダーを睨み付ける。
「士と一緒と言われるのはいい気分じゃないね! はっ!」
「危ねっ!」
ディエンドの発砲を間一髪で回避するビルド。ディエンドは銃をくるくると回して余裕を見せる。
「笑ってやがる。パネルはもうこっちにあるのに。なんなんだよ……」
「すぐに分かるさ」
《ゾーン マキシマムドライブ》
ビルドとディエンドが話している隙に、エターナルはベルトのマキシマムスロットにゾーンメモリを挿す。
「……なにっ!?」
ゾーンメモリの能力が発揮された。ビルドが持っていたパンドラパネルが消え、エターナルは自分の手元にそれを移動させた。ディエンドは彼からパネルを受け取る。
「ありがとう。それじゃあこれはもらっていくよ」
「待て! パネルを外に持ち出すな! まだ完全に解析できたわけじゃないんだ! 危険だ!」
「お宝については、全てを知り尽くさないほうがロマンがあるよね」
「訳わかんないこと言うんじゃねえ!」
《ハリネズミ》
《ベストマッチ!》
《レスキュー剣山 ファイヤーヘッジホッグ!》
ビルドはボトルを入れ替え、赤と白の二色の姿へとフォームチェンジした。
《ボルテックフィニッシュ》
「うおおおおおおお!」
左腕についた梯子型放水銃から水を後方に発射し、その反動で加速する。トゲのある右手で勢いよくパンチを繰り出す。
必殺技を撃つビルドを前に、エターナルはまた別のガイアメモリを使った。
《ユニコーン マキシマムドライブ》
エターナルの腕に一角獣の如きオーラが宿る。そのエネルギーはエターナルエッジに流れ、刃が光り輝く。
「うおおおおおおおおお……」
ビルドの刺々しい右腕はエターナルエッジの威力に敗れてしまう。
「うわああああ!!」
ビルドを弾き飛ばした後、エターナルはふっと消えた。ディエンドは満足そうに頷く。
「じゃあね。うっ!?」
立ち去ろうとしたその時、大きなエネルギーの塊が彼に襲い掛かった。
上空には機械ベースのスマッシュとはまた違う、生物らしい姿の怪人が浮いていた。垂直に下降し、二人のライダーの前に立ちはだかる。怪人は右手を前に出し、言葉を発した。
「パンドラパネルを渡して貰うぞ!」
◆
第5話「大天災とジーニアス」
◆
怪人はさらにエネルギーの塊を一つ、二つとディエンドに向かって放つ。凄まじい攻撃に、ディエンドはパンドラパネルを手放してしまった。急いでパネルに手を伸ばすが、それは怪人の手に吸い込まれるように飛んでいく。
「俺はブラッド族・エケイプラ! パネルは頂いていくぞ!」
パネルを高く掲げ、エケイプラは叫んだ。
「ブラッド族だと……!?」
「そうだ。宇宙の全ての星を破壊する者だ。このパンドラパネルを使ってなァ……」
「……! やはりパネルにはすごいエネルギーが秘められていたのか……!」
「ふん。今更知ったところで遅い」
「僕のお宝を……返せ……!」
ディエンドはよろめきながらドライバーを構える。彼がトリガーを引く前に、エケイプラは猛スピードで彼の前に近づく。
「ふん!」
「ぐあああああああああああ!!」
エケイプラが裏拳をディエンドに食らわせる。ディエンドは絶叫しながらスカイウォールに向かって真っ直ぐに吹き飛んでいく。距離が遠のき、声は小さくなっていく。そして、壁に激突する。力なく落ちていくシアンカラーが暗い色の壁に映える。
「まずい!」
エターナルから受けたダメージを引きずりつつも、ビルドはまた別のボトルを取り出した。
《ロケット》
《パンダ》
《ベストマッチ!》
ビルドはロケットパンダフォームへと。そしてスカイウォールの方へ飛んでいく。気を失ったディエンドを必死で追う。
「さて、次のパネルは……どこだァ?」
飛んでいくビルドを追おうとはしない。エケイプラはもうライダーに興味をなくしていた。そして別のパンドラパネルを求めて、彼らとは別の方向に飛んでいった。
◆
セントは傷だらけの海東に肩を貸すかたちで地下施設に戻ってきた。ふたりともフラフラで、今にも倒れそうだった。
「大丈夫か! セントォ!」
リュウガが駆け寄り、海東を受け取ろうとする。
されるがままだった海東だが、ふと二人の他に視線を感じた。地上──光家の冷蔵庫に続く螺旋階段に士が座っているのに気づいた。哀れむでも喜ぶでもない無の表情に、彼はいてもたってもいられなくなった。リュウガの手を振りほどく。
「やめてくれないか。僕は君たちにこんなこと頼んでいない」
「はあ!?」
「頼んでいてもいなくても関係ないでしょーが。万東に肩借りて、怪我人は大人しくしとけって」
「お宝が奪われたのにそんなことできるものか」
海東は無理やり立ち上がり、来た道を戻ろうとする。が、リュウガに腕を引っ張られ、ベッド代わりのソファに向かって投げられる。
「なにがお宝だ! お前が勝手なことしなけりゃ何も起きなかったんだよ! 通信で全部見てた。ブラッド族エケイプラ? 星を破壊する? パネルを奪われた俺たちはどうすりゃいいんだよ!」
「いや? やつは遅かれ早かれ出現していた。そもそもそれは君たちの仕事だろう、兵器の仮面ライダーさん?」
「てめぇ……!!」
リュウガが拳を振りかざす。
パァン!
彼よりも早く、ミソラが海東にビンタした。突然のことにリュウガは思わず拳を引っ込める。リュウガだけでなく、その場の全員が呆気に取られた。
「セントに無茶させないで!」
そして機嫌を悪くしたのか、そのまま部屋に戻っていく。先ほどまで彼女と遊んでいた夏海が彼女の名を呼びながらそれを追う。が、夏海が入る前に扉は勢いよく閉められた。
海東はミソラに叩かれた頬をさする。なぜ自分が叩かれたのか理解していない。間違ったことを言ったつもりはない。が、釈然としない。何か悪いことをしてしまったような、もやがかかった気持ちになった。
ふと、トゥルルルと呼び出し音が鳴る。セントの仲間からの連絡だ。彼らは海東をその場に残し、別の部屋に向かった。
広い地下施設の中には当然通信室が存在する。スカイウォールの範囲内ならばすぐに通話ができる。リュウガがセントの戦いを見ていたというのもここからだ。
「こちら東都! 応答願う!」
『セント……すまねぇ』
モニターの向こうに傷だらけの男が映った。背景の、北都の街並みは壊滅状態だった。あちこちで燃え盛る火を、住民たちがバケツリレーをして消そうとしている。
「カズミか!? もしかしてそっちにももうエケイプラが!?」
『ああ、そうだ。北都のパネルを奪われちまった……。あいつ、今までのスマッシュと比べ物にならねえくらい強い。西都にも連絡を入れたが、あいつらも多分……。東都はどうなんだ?』
「俺のとこのは取られたけど、飛んで行った方向と時間からして、東都政府のはまだ残ってるはずだ。だからエケイプラはパネルを狙って必ず戻ってくる。できればお前にも来てほしかったが……」
『おう。まかせろ! すぐに向かうぜ』
「いや、その体じゃ変身は無理だ。無茶するなよ!」
『はっはっは! 心配するな!』
通話は切られた。
セントは研究スペースへと急いだ。ビルドドライバーを調整し、今度こそエケイプラを迎え撃つために。
そして通信室にはリュウガと夏海、そして士が残された。
「セントさんは誰と話してたんですか?」
夏海はリュウガに尋ねた。
「北畑カズミ。うちのバンドメンバーであり、北都のビルドだ」
「お前ら、バンド組んでたのか。ライブどうこうってのはセントの個人的な趣味かと思ってたぞ」
士は適当な高さの発明品に腰かけて言う。
「言ってなかったか? セントと俺、そして北都のカズミと西都にいるメンバーを合わせて五人グループだ」
リュウガは指を折って人数をカウントし、言った。
「今は離れ離れなんですね。音楽活動をしていた皆さんが、どうして仮面ライダーに?」
夏海の質問に、リュウガは表情を暗くする。
「ビルドシステムは、セントの親父さん――箱中シノブが設計したものなんだ。まだ戦う準備が整ってなかった頃に殺された親父さんに代わって、セントがそれを完成させた。そして俺たちは三つの都市に別れ、ビルドとしてそれぞれの故郷を守るために戦うことを決めた」
「バンドは解散しちゃったんですか?」
「いーや。セントはまだ諦めてねえ。むしろ音楽でみんなの笑顔を作ろうと必死になってるくらいだ」
「セントカツラギ……とか言ってたな?」
「ああ。ミュージシャンとしてのあいつは、母方の苗字で葛城と名乗ってる」
「なんでわざわざそんなまどろっこしいことを」
リュウガは士の方にやってきて、隣に積んである紙の山を一枚一枚めくる。そのほとんどがビルドシステムの設計図だった。
「仮面ライダービルドの箱中セントは兵器だからさ。スマッシュをただ壊すために生み出された兵器。兵器は人を笑顔にできないからな。人を笑顔にするのはミュージシャン葛城セントの役目なんだとよ」
「あいつがそんなことを……」
「あいつは自分の音楽で、みんなが楽しめる場所を作りたいと思ってる。あ、ほらこれ。ファンレターだ」
リュウガはダンボールいっぱいの手紙を士たちに見せた。
「なんだ。すでに成功してるじゃないか。わざわざ俺が出る幕もなかったってことか」
「いや、たくさんのファンを抱えてるが、セントはまだ満足できてない」
「あ?」
リュウガはポケットから取り出した別の紙を見せる。何度も開いたり閉じたりしたため、くちゃくちゃだ。
「ほら、見てくれ。最近セントが書いた新曲『ラブアンドピース』だ」
「ハッ、ひでえ歌詞だな。……いや、そうでもない」
士は笑いのツボの構えを見せる夏海に気づき、訂正した。
「ここの歌詞。美しい空が云々ってあるだろ? で、サビ前のここのメロディ見てくれ。ミ、ソ、ラってなってんだ」
「これは?」
「あいつ、毎回曲のどっかに入れるんだよ。こだわりなんだろうな。どの曲もミソラに聞かせるために書いてる。何人熱狂させても、あいつが一番笑顔にしたいのは……ってね。ミソラもセントのことを心配してるし、二人ともお互いに相手のことを大事に思ってるんだ。同じ場所で生活する関係だしな」
「はたして、それだけか?」
「え? どういうことだよ」
士は立ち上がり、リュウガに背を向ける。彼は士に質問するが、士は答えない。
ジリリリリリリ!
地下施設中にスマッシュ反応を示すサイレンが鳴る。研究スペースからセントが飛び出してきた。
「来た!」
「こ、今度はなんですか!?」
「東都政府に……エケイプラが現れたんだ!」
「思ったより早かったな」
士はネクタイを締め直した。
◆
東都政府では、エケイプラを追って西都からやってきた二体の兵器がその異星人と戦っていた。トラユーフォーフォームの西のビルドと、ビルドシステムより安全だが出力が低いトランスチームシステムを用いたナイトローグだ。
戦場は既に建物の中。最後のパンドラパネルの目の前に迫っていた。
「ぐっ! こいつは俺が止める! お前は親父を頼む!」
「分かりました! さあ、こちらへ!」
「うむ!」
扉と一緒に倒れる西のビルドの声に、ナイトローグは頷く。翼を広げ、パネルを持ったタイザンを抱えて壁に空いた穴から外へ飛び出す。
「逃がすかァ!」
「うわぁあっ!」
エケイプラは腕から触手を伸ばし、ナイトローグの足に巻き付け引っ張る。彼はバランスを崩す。そして二本目の触手が、ナイトローグの腕の中のタイザンを弾き飛ばした。
「しまった!」
「うわあああ……!!」
タイザンはパネルを手放してしまう。
落下する彼のもとに新たな兵器が現れた。
「危ねえ!!」
落下するタイザンを受け止めたのはフェニックスロボフォームの北のビルドだった。だが変身するには体力を消耗しすぎていた。北都から空を飛んで東都に来る過程で既に変身時間に限界が来ていた。タイザンを安全に地面に降ろすと、そのまま変身が解除される。
「カズミが来たのか。よかった、親父……」
「安心している場合じゃないだろう?」
「……! ぐわあっ!」
西のビルドはエケイプラによって建物から飛ばされ、地面に叩きつけられた。カズミたちが彼の元へと駆けつける。
「ふ……フッフッフ……ハッハッハッハ!! ついに手に入ったァァァアアアア!! 完全な俺の、復活だあ!!」
触手を縮め、エケイプラが六枚目のパンドラパネルを掲げる。残りの五枚が宙を舞い、エケイプラの頭上で一つになる。パネルは面を構成し、パンドラボックスが生まれた。
「し……しまった! あいつにパネルが……!」
「これでこの世界を破壊してやる! 手始めにこの街からだ!」
エケイプラの手元でパンドラボックスが光り輝く。
それと同時に空に厚い雲がかかり、辺りが暗くなる。地面が大きく揺れ、割れていく。東都の人々は地面を走る裂け目を恐れ、反対方向に走っていく。が、その先にはスカイウォールが立っている。スカイウォールからはガスが噴出し、逃げ場はなくなった。
「ハハハハハ……!」
「やめろ!」
エケイプラは笑いを止めた。まだ自分にたてつく者がいる。それに驚いたのだ。
エケイプラの方に歩いてくる二人の影。
「セント!」
「箱中くん!」
カズミたちは彼の姿を見て喜びの声をあげる。
「エケイプラ! もうやめるんだ! お前の企みもここで終わる!」
「終わるのはお前たちの方だ。パンドラボックスは起動した。全てを無に帰す力の前には何者も存在が許されない……。破壊の前にはなにも……」
「無駄だ」
「ん?」
士はセントの肩に手を置き、言った。
「こいつは今まで、大勢の明日や未来、希望を作ってきた。誰かの力になるため、誰かを守るため、そして誰かを笑顔にするために、仮面で顔を隠して戦ってきたんだ。その純粋な思いは、そう簡単に壊せるものじゃない」
「何を言っている? ……お前はなんなんだ?」
「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ」
「ああ。俺たちがこの世界を破壊させないぜ」
二人はドライバーを腰に巻きつける。
《ラビット》
《タンク》
《ベストマッチ!》
《カメンライド》
《……アーユーレディ?》
「変身!」
「変身!」
《ディケイド》
《鋼のムーンサルト ラビットタンク! イエーイ!》
交わる複数の影。合わさる二つのパーツ。二人の仮面ライダーが変身完了した。
エケイプラは瞬間移動のような速さで二人の前に移動する。ディケイドとビルドは左右に避け、同時に銃を構える。ライドブッカーとドリルクラッシャーから同時に銃弾が発射された。
「破壊!!」
エケイプラはパンドラボックスのエネルギーを瞬時に引き出し、両側の弾を粉砕する。
体制を整えると同時に、二人のライダーは武器を近接用に変形させる。そして両側から敵に向かって斬りかかった。しかし、それもエケイプラの強化された腕に阻まれる。とても固く、武器の方が砕けそうだ。二人はいったん距離を取る。
「くっそ……。やるじゃねぇか、ブラッド族」
「おいセント、気づいてるか。あいつがパンドラボックスを使うと地震の揺れが小さくなる。ついでに壁の動きも止まってるぞ」
「……確かに! 破壊のパワーを使うタイミングでスカイウォールへのエネルギー供給がなくなっている? むしろ逆に吸ってるのか!? だったら壁を壊せば破壊のパワーが使えなくなるかも……。いや、スカイウォールはそう簡単に壊せないぞ。特に今は、壁自体もボックスからエネルギーを貰ってるんだから」
ライダーの攻撃が止まったことで、エケイプラに自由が戻る。ボックスに手をやると再びスカイウォールが動き出した。
それを見て、ビルドは慌てて攻撃を再開しようと武器をぐっと握る。そんな彼に、ディケイドは声をかけた。
「そういや、お前はライダーを兵器だと思ってるらしいな。兵器は笑顔を生み出せない、とか」
「ああ。仮面ライダーはスマッシュを倒すための兵器だ。それは絶対さ」
「
「え?」
「ビルドは兵器じゃなく、ただのライダーになるんだ。その力があれば誰かを助けることができるだろ。仮面ライダーのお前が、みんなを笑顔にするんだよ」
「ビルドの……俺が……!?」
その時、ライドブッカーが開き、ブランク状態のカードが宙を舞う。ディケイドがそれを掴むと、新たな力が解放された。
「兵器ビルドの最後のライブだ。盛大にいくぞ」
ディケイドはカードをドライバーに装填する。
《ファイナル フォームライド ビビビビルド》
「ちょっとくすぐったいぞ」
「えっ!? なにする……」
ディケイドがビルドの背を撫でると、そこから巨大なグリップとトリガーが現れる。体が宙に浮き、ねじられ、足先に銃の口が出てくる。あっという間にビルドは大きな砲撃武器『ビルドバスター』へと変化した。
『なんだこのナンセンスな……』
「文句を言うな」
それを見たエケイプラは、こちらに向かって手を突き出す。
「まだ何かするつもりか、地球人? 無駄だ。破壊! 破壊ッ!!」
「ハッ!」
ディケイドはビルドバスターで、エケイプラの放ったエネルギー弾を一発ずつ相殺していく。そして最後の一発は、エケイプラ本人に命中した。
ビルドバスターが放つのは、パンドラボックスのパワーでも破壊しきれないほどの大きなエネルギーを持った弾。エケイプラは防御した腕に痛みを覚え、直撃した部分をぐっと押さえた。ボックスの光が少し鈍くなる。
ディケイドはその隙を見逃さない。彼は別のカードを装填した。
《ファイナル アタックライド ビビビビルド》
「今だ! スカイウォールをぶっ壊す!」
ディケイドがスカイウォールに銃口を向けてトリガーを引く。極太のレーザーが発射され、目の前のスカイウォールをぶち破った。
そのまま真右を向く。そしてさらに右に。街を取り囲むように立っていたスカイウォールがどんどんと壊れていく。エケイプラはパンドラボックスに手を当てるが、光はみるみる消えていく。
『すげえ……! すげえよこれ!! あの忌々しいスカイウォールがなくなっていくぜ!?』
「お前はこんな、壁に囲まれた小さなとこに収まってるようなやつじゃない。もっとでかいところで歌ってやれ」
「なにをする……貴様らァア!!」
ついにはこの形を維持できなくなったパンドラボックスは六つのパネルに戻り、ばらばらになった。エケイプラが怒りをあらわにし、二人の方へ突進してくる。
ディケイドはそれを、ビルドバスターをバットのようにして空に弾き返す。そしてエケイプラに向かってレーザーを放つ。エネルギーのあまりの大きさに、ボックスを持たないエケイプラは身動きできない。レーザーに押され、エケイプラはどんどん上空へと移動していく。
「ぐおおおおおおおおお……!! なんだこのパワーはッッ……!!」
ビルドは元の姿に戻る。
「行くぞ、セント」
「ああ! 勝利の法則は……決まった!」
二人のライダーは必殺技を繰り出した。
《レディー ゴー!》
《ファイナル アタックライド》
地面がせり上がり、ビルドは空へ上っていく。上昇スピードはいつもより速く、到達高度はいつもより高い。エケイプラを追い越し、スカイウォールよりも高いところに立った。
《ボルテックフィニッシュ!》
白いグラフはエケイプラを拘束する。今回のグラフは、傾きが緩やかないつもの形状ではない。頂点から緩やかに下がったかと思えばほぼ垂直に落ちていく二次関数グラフのような形状。
「おらあああああああ!!」
ビルドは重力以上の加速でグラフ上を滑っていく。
《ディディディディケイド》
「はあああああああっ!!」
ディケイドはそこに向かって地上からキックを繰り出す。
上からビルド、下からディケイド。二人のライダーのキックがエケイプラを挟み込んだ。
「まさか……俺が破壊されるなんて……! うがあああああああああああ……!!!」
空中で大爆発が起きた。爆発の威力で暗雲はかき消える。それと同時に、パンドラボックスの力を失い脆くなっていたスカイウォールも、ディケイドたちがつけた傷からボロボロと壊れ始めた。
ディケイドとビルドは変身を解除し、空を見上げる。そこには窮屈な壁のない、美しい空が広がっていた。
◆
一同は光写真館へとやってきた。友達を連れてきたんだなと歓迎する栄次郎は、彼らがキッチンに向かうのを見ると不思議そうな顔をしていた。それも仕方がない。彼らが用事があるのは下の地下施設に繋がる冷蔵庫なのだから。
「おう、帰ってきたか。お疲れさん」
「いやーただいま! 見てたか万東! 俺の最ッ高のライブ! これでもうスマッシュは出ないはずだ。こうしてまたメンバー全員集まれたし、よかったよかった――」
そんなセントのもとにミソラがやってくる。そして彼に向かって笑顔で一言。
「おかえり。セント」
「……ああ。ただいま」
「うおーミソラちゃん今の顔かわよ! 俺の活躍も見てくれてたかい! カッコ良かったかい!」
「キモイ!」
「グホォ!」
「カズミ、ベタベタしすぎだ。いい加減嫌がられてるのに気づけロリコン」
「うるせーゲントク。俺は暴力系ヒロインも好きだよミソラちゃん……」
「気持ち悪いぞ」
「なんだとてめーリュウガ!」
「再会早々喧嘩ですか……騒がしい」
「ま、これが俺たちらしいよ」
「はいそこぉ! セントもナリアキも一歩引いてんじゃねえ!」
セントは士の方に向き直る。
「今回のこと、感謝してる。あんたのおかげでこの世界は救われた」
「どうかな。俺は破壊者だからな」
「ハハ、そんなこと言ってたなあ」
「今度はお前の夢も叶うといいな。でかいライブハウスで――」
「そうだった! こうしちゃいられねえ! スカイウォール崩壊のお祝いライブをしようと思ってるんだ! さぁー今から練習やるぞー! 準備しろお前らー!」
「……」
士は呆れた表情。
「あの」
「ん?」
いつの間にか士の隣にはミソラがいた。士の顔を見られないのか、下を向いてもじもじした様子。
「ありがとう。セントの笑顔、また見れた」
そう言った彼女の口元は綻んで見えた。
「イエイ! 天ッ才ボーカルセントカツラギ改め箱中セントに続きますはァ!? ツインギター・万東リュウガ・北畑カズミィ、そしてベース・南波ナリアキ、最後に控えるはドラム・和西ゲントクゥゥーッ!」
「その前置きいい加減やめろ! 長いしカッコよくねえ!」
「ええー! なんで!」
「……ああ。いい顔だ」
メンバーをまとめるセント。彼は今までで一番良い表情をしていた。大騒ぎする五人のバンドマンたちに向かって、士はこっそりシャッターを下ろした。
◆
「うん。生き生きした写真だね。いい。すごくいいね~」
栄次郎は士の撮った写真を眺めながら言った。
「楽しい人たちでしたね」
「うるさいの間違いだろ。だが、あいつらがいるからこの世界はもっと賑やかになるはずだ」
「ビルドの力を使ってがれき撤去とかしてるみたいだぞ。市民のヒーローなんだってさ」
士は椅子に座り、コーヒーを飲む。窓から見る外の景色には、もうスカイウォールはない。
「よかったじゃないか、士」
「海東!」
海東がスタジオの扉にもたれかかって士に話しかけた。いつの間に現れたのか。
「怪我はもう治ったんですか?」
「当然さ。この世界のお宝もこの通り」
海東は金色に光るフルボトルを見せた。
「コブラロストフルボトルだ」
「いやー! 綺麗じゃなーい! あたしにも見せなさいよー」
「うわっ、触るなっ」
海東は近寄ってきたキバーラを弾き飛ばす。
その衝撃でジャララララと新たな絵が出現する。
今回の絵は宇宙から見た地球だった。否、絵の下半分が地面であることを考慮すると月面か。
「どうやら今度はスケールがでかい世界みたいだな」
士は、まだ湯気が出るコーヒーカップを机に置いた。
次回 仮面ライダーディケイド2
「この学校には七不思議の噂があるんですー!」
「俺はこんな学校なんてなくなってもいいと思ってるよ」
「真っ昼間から天体観測ってか?」
「分かりあう必要なんてないですよ」
第6話「宇宙学園 フォーゼキター!」
全てを破壊し、全てを繋げ!