仮面ライダーディケイド2〜平成二期の世界〜   作:らいしん

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「俺はブラッド族・エケイプラ!」

これまでの仮面ライダーディケイド2は……

「お前ら、バンド組んでたのか」
「言ってなかったか?」
「兵器ビルドの最後のライブだ。盛大にいくぞ」
「俺が破壊されるなんて……!」
「セントの笑顔、また見れた」


第6話「宇宙学園 フォーゼキター!」

 

 キーンコーンカーンコーン。今日も天ノ川学園高校のチャイムがなる。最初の鐘は開始五分前を表す。

 それを聞いて、青い制服に身を包んだ男女が急ぎだす。別のクラスに遊びに行っていた者。早弁をする者。部活の朝練を終えた者。

 

「急げ急げ! ほらかきこめ!」

「もごごっ!」

「あっ、ごめ……うわ汚っ。朝から飯食うな」

「はい間に合ったーーー!」

「汗臭い! ちょっとあんた! ちゃんと制汗剤ふってきなよ!」

 

 2年B組は騒がしい。個性豊かな生徒たちが教室を盛り上げる。そんな部屋の後ろを堂々と歩く男子生徒がいる。

 

「やれやれ。あんなに騒いで疲れないのかね」

 

 一番後ろの席の窓際に、その男子生徒が着席する。彼の隣に座る女子生徒が嬉しそうに彼に話しかけた。

 

「おはようケンゴくん! 今日もギリギリセーフだね!」

「ああ、おはよう。ギリギリでも間に合ってるんだからOKだ。それよりユウキ、なにか情報は?」

「いやーそれが全然。また放課後に探してみようよ。今日暇でしょ?」

「そうだが。とりあえず手がかりはなしか……」

 

 教室の前のドアが勢いよく開けられる。引き戸は勢い余って、全開から少し戻る。

 生徒たちはすぐに自分の席へと。

 

「ではホームルームはじめます」

 

 教師は日誌などを教卓の上に並べながら言う。彼は比較的若い教師だが、準備は手慣れている。

 

「突然ですが、今日から新しい先生に来てもらいました。学年主任の比部(ひべ)先生の意向です」

 

 生徒たちがどよめく。教師にどうぞと通され、一人の男が教室に入ってくる。「かっこいい」や「背高いな」など、生徒からはさまざまな感想が寄せられる。

 黒板に名前を書き、男は一言、こう挨拶した。

 

「門矢士だ。よろしく」

 

 

 

 

第6話「宇宙学園 フォーゼキター!」

 

 

 

 

 遡ること数十分前。

 新たな世界に来た士は、ワイシャツ姿になっていた。一緒に出現した鞄の中身は高校の教科書。それも教員用。お前が人に教えるなんて無理だと言うユウスケを無視し、この学校――天ノ川学園高校にやってきた。

 

「あ、あー! キミだね! 新しい先生!」

 

 校内をうろついていると、学年主任の比部に見つかり、職員室に連行された。どうやらこの世界で士は教師になったらしい。

 

「門矢くんはこちらの空市(そらいち)先生についていってくださいね。2年B組です。じゃあ空市先生に何かあったら門矢くん、リカバリーよろしくね」

「どうも」

「……空市です。よろしくお願いします」

 

 礼儀のなっていない挨拶をする士だったが、空市もまた、士の目を見ずにぶっきらぼうな挨拶をした。

 そして今。

 士は教室の後ろで、用意されたパイプ椅子に座ってホームルームの時間を過ごしていた。ふと、前から女子生徒の視線を感じる。

 

「門矢せーんせ☆」

「前向いとけ」

 

 士は小声で注意するが、目の前の女子生徒は首を振る。

 

「今先生いませんし! それに今日はイチゲンデーですから大目に見てもらえます!」

 

 彼女は得意気に言う。

 

「なんだそれ」

「一限から空市先生の授業なんですよ。苗字と下の名前とを合わせてイチゲンって略せるから、ダブルミーニングで私が勝手につけた名前なんですけど~」

「そうか」

「空市先生は生徒に全く興味ないって感じですけど、門矢先生は生徒とコミュニケーション取るの好きな方だと見た!」

「ハズレだぞ」

 

 面倒くさいタイプの生徒だな。士はそう思った。

 この世界でやるべきことが分かっていないまま、流されてここにいる。高校の臨時教師は、あの絵に描かれた月面のイメージとはあまりにもかけ離れている。

 

「門矢先生の担当科目ってなんですか?」

 

 女子生徒の隣の、窓際の席の男子生徒が質問する。士は、お前も話しかけてくるのかよと眉をひそめた。

 

「さあな。ま、俺ならなんでもできるだろ。リクエストがあればその教科を教えてやることになるのかな」

 

 いつも通りの調子で返事する。女子生徒は「うわ~! すごいですねー!」と拍手するが、男子生徒はその回答に少し引いた様子。

 

「あ。わたし新城ユウキです。一番に覚えちゃってください! で、こっちはケンゴくん」

「菅倉ケンゴです」

「よろしく」

 

 二人は対照的な性格に見えるが意外と仲は良さそうだ。席が近いからなのだろうか。個性を尊重する。それがこの学園の校風である。教室を見渡すとそれが如実に現れている。しかし、グループができてバチバチに対立しているなんてことはない。

 個性があるといっても、それはまだ現実の範囲内。以前、高校の中に怪人がいる世界を通り過ぎたことがあったが、今回はその時感じたような怪人の気配はない。

 

「見た感じ普通の学校なんだよな……」

「いえいえいえ! そんなことないですよっ!」

 

 ユウキは士の呟きを聞き逃さず、その言葉をを激しく否定する。椅子を横に向け、呆気に取られる士と向き合うように座りなおした。

 

「門矢先生は知らないですよね! なんとなんと、この学園には七不思議の噂があるんですー!」

 

 士に向かって言い放つ。と同時に頭を教科書で軽く叩かれた。

 

「新城、もう時間だぞ。授業は真面目に受けなさい」

 

 ユウキが振り返ると、無表情の空市が立っていた。

 

「……ひゃい」

 

 彼女は小さく返事した。

 

 

 

 

 放課後、士はユウキとケンゴに頼まれ、一人教室に残っていた。

 結局今日は一度も授業をすることはなかった。職員室で空市にそのことについて質問しても、問題ないですという返答。他の教師もよかったよかった、と胸を撫で下ろしていた。いったい何がよかったのか。

 

「門矢先生ー!」

 

 ユウキとケンゴが教室に入ってくる。

 

「お待たせしました!」

「で、俺をどうするつもりだ?」

「七不思議巡りをしようと思って! 今まで誰も興味持ってくれなかったし、私たちだけじゃ限界だったんです」

「すみません先生。お忙しいでしょうに」

「いいや、丁度いい。俺も探さなきゃいけないものがあるしな」

 

 ユウキはそれを聞いて笑顔になった。心のどこかで断られることを心配していたのだろう。嬉しそうに士の手を引いて教室を出る。

 

「俺とユウキは学園七不思議を解明しようとしてるんです。真面目に信じている人はいないけれど、生徒のほとんどが七不思議の噂を知っています」

「その七不思議ってのはなんなんだ?」

「え~っと~。なんだっけ、ケンゴくん」

 

 士の前を歩いていたユウキはスピードを緩め、後ろのケンゴに振り返り尋ねる。

 

「ったく、覚えててくれよ。『月の石』『校舎裏に出る巨人』『食堂に住む妖精』『存在しないはずの部活』『入ると人が消える部屋』『白い宇宙人』そして『蛇』だ」

「あーそうだ! 最近7つ目が『蛇』になったんだよね! 前はもっと長い別のだったんだけど……なんだったっけなあ」

「……蛇?」

 

 その言葉が引っかかった。

 

『この世界のお宝、コブラロストフルボトルだ』

 

 ビルドの世界でコブラのボトルを持ち帰った海東を思い出した。あれも蛇だが……。まあ、関係ないだろう。士はそう思うことにした。

 顔を上げた瞬間、士の頭は真っ白になった。

 士の視界の端で、女が職員室から出てきた。一瞬捉えたのは、学園内では浮いた不自然に真っ白い服。以前に同様のものを見たことがある。

 そうだ。鳴滝の。自分が新たにライダーの世界を巡ることになった理由。鳴滝を追っていた謎の男と同じ格好をしていたのだ。

 ハッと我に返り、振り返ってみるとすでに女は廊下から姿を消していた。追いかけようにも、ユウキに腕を抱きかかえられているため、それができない。

 

「門矢先生……? どうかしました?」

「いや……」

 

 女も士のことは気づいていたかもしれない。しかし、特に攻撃を仕掛けてくる様子はなかった。今はまだその時ではないのかもしれない。士は女の追跡を諦めることにした。

 だが、奴らがこの学園に出没したということは、間違いなく何かがこの学園にあるということだ。士はそう確信した。

 

「おい、俺たちはどこに向かってるんだ?」

「えーと、とりあえず校舎裏です! 『校舎裏に出る巨人』を探そうと思って! 大っきかったら見つけやすいでしょ!」

「そんなこと言って、俺たちはずっと見つけられてないだろ」

「う……。ケンゴくん、三人よればなんとやらだよ! 門矢先生が加われば見つかる!」

 

 ユウキの根拠のない自信はどこから湧いてくるのか。階段を降りながらケンゴはため息をついた。

 校舎裏に行く途中でふと一人の生徒が目に入った。部室棟の窓に向かって石を投げ込み、ガラスを割る。植木鉢をバットで割る。明らかな悪行だ。

 

「お前、何やってる? 学校を潰す気か」

 

 士は不良生徒の元へ駆け寄り、腕を掴んで言った。

 

「おお。あの人が言った通りだ。ちょっと暴れてやると正義面してやってくる。あんたがその正体なのか?」

「なに? 俺を呼ぶためにわざわざこんなことをしたのか? ガラスも花も、ただじゃないぞ。学校に迷惑かけるな」

「俺はこんな学校なんてなくなってもいいと思ってるよ。ずっと暴れたかったんだ。そして……ついに俺は力を手に入れた。この学校を破壊する力をなあ……」

 

 生徒は制服のポケットからゾディアーツスイッチを取り出した。スイッチを押すと彼の前に星座が現れ、ドラゴンゾディアーツに変身してしまった。

 

「こいつ……! おいケンゴ! あれが七不思議の一つ「蛇」か!?」

「さあ……俺はちょっと分かんないです……」

「蛇に見えなくもないですが龍ですね! 変わる時に一瞬星座が見えたんですけど、あの形はりゅう座でした!」

「お前よく分かったな」

「得意分野なので――うわあああああああ! 来たあああああ!」

 

 ケンゴはゾディアーツの登場に驚きつつも、冷静に距離を取ろうとする。ユウキは星座の解説後、絶叫して彼の襟を掴んで前後に振る。

 

「ほらよ!」

 

 ドラゴンゾディアーツは鉄球を投げる。それが落ちた地面はクレーターのように大きく凹んだ。

 

「それにしても星座ね……。真っ昼間から天体観測ってか?」

 

 士は二人とは対照的に、前に出た。ケンゴは士に心配の声をかける。

 

「かっ、門矢先生何してるんですか!? 逃げましょう!」

 

 士は片手を軽く上げて、大丈夫だと合図した。

 

「生徒を更生させるのも先生の役目だ」

 

 ディケイドライバーを取り出し、腰にかざす。ベルトが現れ、体に巻きつく。ケンゴとユウキはそれに目が釘付けになる。

 

「変身」

 

《カメンライド ディケイド》

 

 バックルからプレートが飛び、敵にぶつかる。しかし、ドラゴンゾディアーツの硬い皮膚には傷一つつかない。

 変身を終えたディケイドはライドブッカーからライダーカードを取り出した。

 

「まずは物理の補習でもしてやるか」

 

《カメンライド ビルド》

《鋼のムーンサルト ラビットタンク!》

 

 ディケイドの周りにフレームが現れ、赤と青のパーツが生成される。それが一つに合わさり、ディケイドの姿は変化した。

 

「はっ!」

 

 ディケイドビルドはドラゴンゾディアーツにキックを繰り出す。ガキンと金属の音が鳴る。戦車のボディを持ってしても、ドラゴンゾディアーツにダメージを与えることはできない。

 と、思いきや、ディケイドビルドの足裏のキャタピラが回った。激しく火花が散り、ゾディアーツは慌てて距離を取る。

 

「うがああっ! 熱い!」

 

 耐久力にも限度があるようだ。だがキックとキャタピラ回転だけで与えられるダメージにも同じく限度がある。

 ディケイドビルドは別のカードを取り出した。

 

「ドラゴンにはドラゴンで勝負だ」

 

《フォームライド ビルド キードラゴン》

《封印のファンタジスタ キードラゴン!》

 

 ディケイドビルドは高火力のキードラゴンフォームを選択した。

 

「クソがーーっ!!」

 

 やけくそで向かってくるゾディアーツに、ドラゴンの溢れるパワーをぶつける。拳は痛むが、それ以上にゾディアーツ側がダメージを負っている。

 

「ほらどうした! もう終わりか!」

「黙れッ!!」

 

 投げられた鉄球も攻撃の意味をなさない。ディケイドビルドに簡単に受け止められてしまった。それどころか、投げ返されてさらにダメージを負う始末だ。

 

「うぐ……クソ……」

「なかなか頑張るじゃないか──うおっ!?」

 

 ディケイドビルドがさらに攻撃を加えようとしたその時、高速で飛んできた謎の影に突き飛ばされた。謎の影はドラゴンゾディアーツの方に飛んでゆく。

 

《ロケット》

《ドリル》

《リミット ブレイク》

 

 ドラゴンゾディアーツの胸にドリルが突き刺さる。

 攻撃が止むと、ゾディアーツは変身が解除され、元の生徒の姿となっていた。生徒は気を失い、その場に倒れる。彼が攻撃を受けた胸部分からは、壊れたスイッチが落ちた。

 謎の影は、ロケットとドリルのモジュールをしまう。その白い姿は宇宙服を模したようなデザインだった。

 

「こいつは……」

 

 ディケイドビルドはライドブッカーから一枚のカードを取り出した。仮面ライダーフォーゼの、ブランク状態のライダーカードだ。

 

「『白い宇宙人』! 学園七不思議の一つですよ!」

 

 ケンゴが叫ぶと、フォーゼはそれに反応する。そしてディケイドビルドに殴りかかってきた。

 

「おいおい! またライダー同士でバトルか!?」

 

 ディケイドビルドはフォーゼの拳を避ける。と、同時にカードをドライバーに装填した。

 

「その三角頭はイカのつもりか?」

 

《フォームライド ビルド オクトパスライト》

 

「!」

 

 左肩を突き出し、そこについている発光装置でフォーゼの目を眩ませる。その隙に足払いをし、フォーゼに隙を生ませる。次に右肩のタコ型ユニットが足を伸ばし、フォーゼの足をつかんで投げつけた。

 

「イカがタコに勝てるか――」

 

《フラッシュ オン》

 

 スイッチの起動音と共に、フォーゼは右腕をディケイドビルドに突きつけた。まさか同じ目眩しをされると思っていなかったディケイドは思わず目を背け、手で光を遮る。

 

《ウォーター オン》

 

「え!? ぐわっ!?」

 

 フォーゼの左足に蛇口型モジュールが出現する。それをこちらに向けたかと思うと、激しい水流が発射された。そのまま校舎に叩きつけられるディケイドビルド。

 

《チェーンアレイ オン》

 

 右手のフラッシュモジュールはチェーンアレイモジュールに。遠くに飛ばされたディケイドビルドへ向かって刺付きの鉄球が飛ぶ。ドラゴンゾディアーツの丸い鉄球とは違う。その上今はパワーのあるフォームではない。ウォーターによってびしょびしょなままのディケイドビルドは受け止めることも避けることも出来ず、攻撃を受けた。

 

「くっ……やるな! 喉が乾いてんなら、炭酸ジュースでもどうだ!?」

 

《フォームライド ビルド ラビットタンクスパークリング》

《シュワッと弾ける! ラビットタンクスパークリング イェイイェェエイ!》

 

 ディケイドビルドラビットタンクスパークリングフォームは、その場で軽くぴょんぴょんと跳ねる。

 そして次の瞬間、その姿は泡になった。

 

「この速さならお前も追いつけないだろ!」

 

 次に彼が現れたのはフォーゼの背後だった。一撃、キックを与える。

 

《ファイナル アタックライド ビビビビルド》

 

 そして必殺技のカードを装填した。

 

《チェーンアレイ》

《ウォーター》

《リミット ブレイク》

 

 フォーゼも負けじと、ドライバーのレバーを引く。

 ディケイドビルドの前にワームホール型三次元グラフが現れた。彼は無数の泡と共にキックを繰り出す。それに対し、フォーゼはウォーターモジュールの噴射力で加速し、空中でチェーンアレイモジュールをディケイドビルドに向かって飛ばした。

 ディケイドビルドの泡は、チェーンアレイモジュールを包み込む。そしてそのままディケイドビルドはフォーゼにキックを喰らわせた。

 

「うぐ……ぐわあああ!!」

 

 フォーゼは地面を転がり、煙に包まれ変身解除する。

 ダメージを負ったのはフォーゼだけではない。チェーンアレイの威力を殺しきれず、棘付きの鉄球はディケイドに命中していた。ディケイドも地面に倒れ、変身を解除した。

 

「門矢先生!」

 

 ケンゴとユウキが士に駆け寄る。そして三人は倒れたフォーゼの方を見た。

 

「あっ」

 

 ユウキが声をもらす。

 なんと、フォーゼの正体は空市だった。

 

「あんただったのか」

「そちらも。門矢先生だったんですね。どうやら生徒を襲ってたわけじゃないようで……」

「当たり前だ」

 

 士は空市に向かって手を差し出す。掴まって立てるようにと親切心のつもりだ。

 その手を取ることなく、一人で立ち上がりながら空市は言う。

 

「スイッチを破壊してしまえば、無駄に生徒を痛めつける必要はないんです。菅倉の声が聞こえたので、あなたも生徒を襲うゾディアーツなのかと思ってしまいました」

「それで俺に無茶苦茶な攻撃を?」

「ええ。ゾディアーツではないようでしたので、対処法が分からなかったんです」

 

 空市は申し訳なさそうに頭をかいた。

 

「いつから見てたのか知らないが、とりあえず話を聞くところから始めたらどうだ? さっきの流れもただの勘違いだ。俺が怪人をボコボコにしすぎたのが悪いったって、さっさと敵の性質を教えてくれりゃよかったんだ。少なくとも俺はあんたがライダーだってのは分かってたぜ」

「すみません。でもわざわざ伝えるよりも俺が全部やっちゃったほうが早いと思いまして」

「……」

 

 士は返答に困り、押し黙る。

 

「先生が学園七不思議だったなんて……」

 

 ユウキは驚きのあまりいつもの高いテンションを失っている。

 

「新城、菅倉、このことは秘密にしておいてください。そして、二度とこれについて関わろうとしないでください。あなたたちには関係ないことですから」

「えっ……」

「なんでですか!? さっきの子が怪物になったこととか、みんなに話せば問題解決に協力してくれるかもしれないですよ。何も一人で──」

「関係ねえもんは関係ねえって言ってんだよ」

「!?」

 

 空市の口調の変貌具合に三人は驚く。空市本人も自身の発言が意外だったのか、口をバッと押さえる。そして、ユウキらにそれについても内緒にするよう頼んだ。

 

「門矢先生。あなたにはちょっと用事があるんです。ついてきてくれますか?」

 

 士は、歩き出す空市の後をついていく。ユウキとケンゴは、士に「ありがとうございました」「お時間取らせてすみません」と言い、その場に残った。

 生徒に正体を隠したがる。それなのに俺には個別で話したがる。どういうことだ? 口封じしようってんなら、こっちだって容赦はしない。

 前を歩く空市の背中を見ながら、士はそんなことを考えていた。

 

「やあ士。調子はどうだい?」

 

 校舎の窓から突然海東が顔を出して彼を呼ぶ。士が立ち止まっても空市は進んでいってしまう。

 

「海東か。お前はまたお宝探しごっこか?」

 

 士は皮肉を言ったつもりだったが、海東には効かない。

 

「そうさ。お宝はこの学校の中にある。僕は自由に探させてもらうよ」

「待て。お前、こないだのボトルはどうした?」

「ちゃんと持ってるよ。何? いくら士の頼みでもあげないよ。あれはもう僕のものだ。それに士に触らせると壊されちゃいそうだし」

「……」

 

 この様子だと『蛇』は海東ではないな。士は少し安心した。その後、この男のために安心した自分に吐き気がした。

 

「あっ、誰だあんた! 不審者! 不審者ー!」

「くっ、面倒な! じゃあね士ッ!」

 

 海東は、警備員に追いかけられて退場した。

 

「どうかしましたか? 門矢先生?」

「いや、なんでもない」

 

 空市が士を呼びに戻ってきた。士は急いでついていく。

 部室棟の使われていない奥の数部屋。その中の一つは、元からついていた鍵の他に、もう一つ別の巨大な鍵がかかっている。空市はそれを外し、部屋の中に入る。部屋に置かれた薄汚れたロッカーを開けると、そこは謎の光に包まれていた。

 空市と士がその中に入ると、学校内とは思えない近未来的な基地へと移動していた。

 

「……ここは」

「月面基地ラビットハッチ。学園に現れるゾディアーツに対処するためにあります」

 

 空市はメンテナンスルームに入り、フォーゼドライバーを台に置いた。士との戦いでついた傷を修復しているのだ。

 士は、殺風景な基地の中の椅子に腰掛ける。空市は机を挟んで反対側に座った。

 

「いいのか。俺をこんなとこに招待して。まだお互いのことも分かってないだろうに」

「分かり合う必要なんてないですよ。あなたがゾディアーツに対抗できる強さを持っていて、ゾディアーツと敵対関係にある。これだけでここに招待するに値します」

「ふうん」

 

 士は空市の話を聞きながら、窓の外に見える地球を眺める。

 

「ところで、なぜ菅倉と新城が一緒だったんですか?」

「あいつらが学園七不思議を解き明かしたがってたからな。あんたも知ってるのか?」

「ええ。俺も天ノ川学園(ここ)のOBですから。と、いうか七不思議の話を作ったのは俺なんですよ」

「どういうことだ?」

「抑止力になると思っていたんです。実際はそうならなかったみたいですが」

 

 空市は士に話しだした。

 

 

 

 

 ケンゴとユウキは2年B組の教室に戻っていた。

 

「まさか空市先生が学園七不思議の正体だったなんて」

 

 ケンゴは机に座り、言った。

 

「秘密にしとけなんて言われるしさ~」

「……もう学園七不思議を追うのはよした方がいいかもしれないな」

「え! なんでよぉ。むしろ今からでしょ! せっかく『白い宇宙人』の正体が分かったんだから。先生も、君たちには関係ない……とか言ってさぁ」

「それは、多分あの怪物が原因だと思うんだけど。現に今日、命の危機だったし。門矢先生がいないとどうなってたことか……」

「あれはびっくりしたけどさぁ」

 

 

「学園七不思議の正体は空市……。なるほど、そういうことだったのですね」

 

 夢中になって話す彼らの声を、教室の外で聞いている者がいた。そしてにやりと笑い、長い廊下を歩いていった。




次回 仮面ライダーディケイド2

「あれがバレたら、まずいことになる」
「懐かしいねぇ。空市くん」
「この学園に生徒が何人いると思っている?」
「大事な学校のために一人で戦ってきたんだ」
「仮面ライダーフォーゼ! タイマン張らせてもらう!」

第7話「超・友・情・剣」

全てを破壊し、全てを繋げ!
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