仮面ライダーディケイド2〜平成二期の世界〜   作:らいしん

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「キミだね! 新しい先生!」

これまでの仮面ライダーディケイド2は……

「変わる時に一瞬星座が見えたんですけど、あの形はりゅう座でした!」
「スイッチを破壊してしまえば、無駄に生徒を痛めつける必要はないんです」
「……ここは」
「月面基地ラビットハッチ。学園に現れるゾディアーツに対処するためにあります」


第7話「超・友・情・剣」

 

 翌日。士は職員室に向かって歩いていた。引き戸をがらりと開けると、教師たちが集まって会話をしている。

 

「また生徒が一人病院に……」

「空市先生も居なくなって……」

「ですよねぇ! 怪しいですよね! ああ、門矢先生! 今日は空市、午前休むらしいですよ! 授業は門矢先生に任せるって言ってるんです! どう思いますかこれ!」

 

 士に気づき、話を振ってきたのはベテラン地学教師の大杉。顔を必要以上に近づけ、圧をかけてくる。

 

「いや、あいつは……」

 

 そう言いかけた士だが、昨日ラビットハッチで空市と交わした会話を思い出した。

 

『俺がフォーゼなのは、秘密にしておいて欲しいんです。スイッチをばらまくのが誰か、まだ分かっていませんから』

『だったら俺が……』

『門矢先生の手を借りるまでもありません。これはこの学園の――俺の問題ですから』

『……分かった』

 

 あくまで空市は一人での解決を望んでいる。ここで彼を裏切るのは悪手だろう。士は不本意ながら大杉に同意した。

 

「……それは、ひどいな」

「そうですよねぇ! 信じられませんよ! 学生の時からなんっも変わってない!」

 

 士は日誌などをさっと用意し、逃げるように職員室を去った。そして2年B組へと向かう。

 

「おはよう」

 

 空市ではなく、士がやってきたことで教室のざわめきはさらに大きくなった。

 

「お前ら静かにしろー。今日は俺が担任の代わりだ。ホームルーム始めるぞ」

 

 日誌を教卓にバンバンと叩きつけ、静かにするように促す。が、騒ぎは一向におさまらない。首を傾げる士の前に二人の女子生徒がやってきた。彼女らの口からは驚くべきことが伝えられた。

 

「あの……空市先生が一年の子を病院送りにしたって本当なんですか……?」

「は!?」

 

 

◆

 

 

第7話「超・友・情・剣」

 

 

◆

 

 

 その情報の元となったのは新聞部の記事だった。

 士は、一限の授業終わりの休憩時間に生徒たちに連れられ、学内新聞が貼られている掲示板の前にやってきた。

 毎週更新されるそれは、ごく一部の生徒たちのささやかな楽しみになっていた。毎回掲載されるのは代わり映えのない、面白みのない記事ばかり。だが今回は違う。

 

「なんだこれは」

 

 大きく並ぶ『暴力教師空市!?』の文字。おそらく昨日のゾディアーツの件だろう。どこかで見られていたのかもしれない。それにしてもこの見出しは多くの生徒の注目を呼ぶ。

 だが、士は慌てない。

 

「写真がないじゃないか。ほら、証拠がないだろ。こんな文字だけの記事、誰にでも書ける。普段の態度を見てるんだろ? これが真実だと思うか? 簡単に騙されるな」

 

 士の言葉に、周りの生徒たちはハッとした。そしてそれぞれ教室に戻っていく。

 彼はもう一度記事を見る。戦いを見ていたにしては、ライダーに変身したことに全く触れられていないのが不自然だ。学園七不思議と関連づければより多くの人の目を引くことができるというのに。

 

「門矢先生~! いったい何ですか今の騒ぎは~! ……ええ!? 暴力教ッ……あいつめぇええ! そんなことやる奴じゃないと信じてたのにぃぃ~~!!」

 

 遅れてやってきて、生徒たちとワンテンポずれて騒ぎ出す大杉。士の肩に手を回し、あいつを訴えましょう、学校から追い出しましょうと怒りだす。当然士はそんなことをするつもりはない。

 その時、窓ガラスが割れる音と、キャーッという生徒たちの悲鳴が聞こえた。

 

「おぉぉおおい、今度はなにが起きたんだーっ!」

「おい、この状態のまま動くな!」

 

 大杉と一体になりながら、共に声のする方に向かう。

 教室では蛇の頭を持つ、忍者の姿の怪人・ダスタードが暴れていた。適当に机を蹴飛ばしたりガラスを割るだけで、生徒を狙っているわけではないようだ。逃げ遅れた一部の生徒たちは教室の後ろに固まって怯えている。

 

「お、お、お、お前ら逃げろーっ! 俺も逃げるーっ!」

 

 大杉は後ろの扉を開けて生徒たちを誘導した後、自分も全力で走って逃げた。その場に残されたのは蛇頭の忍者と士だけだった。

 

「昨日の今日ので物騒な学校だな」

 

 ディケイドライバーを取り出し、腰に巻く。

 

「変身」

 

《カメンライド ディケイド》

 

 机を跳ね除け、怪人に斬りかかるディケイド。ダスタードはそれを忍者らしくアクロバティックな動きで素早く避ける。

 

「門矢先生!」

 

 廊下から、教室の割れた窓越しに士を呼ぶ生徒がいる。視線を向けると、そこにはケンゴとユウキがいた。

 

「お前ら! なにしてるんだ、逃げろ!」

「嫌です! やっぱり私たちも手伝います! 私たちだって天校の生徒ですから!」

「新聞部のやつに聞いてきましたよ! あの記事は自分たちが書いたものじゃないって! 誰かが空市先生をはめようとしてるんです!」

「なんだと!? うわっ!」

 

 気を取られた隙に、怪人の素早い動きによって斬り付けられた。どこから取り出したのか、怪人はいつのまにか忍者のような小刀をもっていた。

 

「クソッ!」

 

 ライドブッカーを振るが、相手には当たらない。

 

「剣は当たらないと思った方がいいです! でも避けた後、一瞬の硬直があります! ここは連続攻撃ができる銃で――」

「おりゃあ!」

 

 ケンゴが怪人の特徴を言った直後、ユウキが怪人に向かって隣の教室から持ってきたチョークを投げつけた。怪人は飛んでくるチョークを反射的にバク宙で避ける。ディケイドはケンゴの言った、回避後の一瞬の隙を見逃さない。

 

《アタックライド スラッシュ》

 

 素早く近づき、ズバッと斬る。

 怪人は黒い霧になって消えた。

 

「やったーーーっ!! 門矢先生ナイスーッ!」

「剣で勝てちゃいましたね……」

「消えたのか?」

 

 変身を解除し、怪人が最後に立っていたところに近づく。そこにはスイッチもなにも落ちていなかった。

 

「先生、大丈夫ですか? この学校は大丈夫なんでしょうか……」

「お前ら、聞いてくれるか」

「なんですか?」

 

 ゾディアーツと戦う意思を固めた二人に、士はあることを話した。

 

 

◆

 

 

「あいつ信じられないよ! 門矢先生もそう思いますよねぇ!」

 

 職員室では、相変わらず大杉が騒いでいた。ウザ絡みをしてくる彼に、士は質問をした。

 

「そういえばあんた、あいつのことを昔から知ってるみたいだな」

「ま、まあ、あいつが生徒の時から知ってますから……。そう、とにかく昔から空市は変なやつでしたよ! 誰に対しても距離が近い! そして当時でも珍しいツッパリスタイル! ヤバイでしょ! だから教師として天高に来た時は、その変わりように驚いたもんですよ!」

「はは。でも当時の彼は楽しそうでしたよね」

 

 数学担当の教師が前のデスクから話に入る。その言葉に大杉は顔をしかめて腕を組む。

 

「確かに……。今のあいつは堅苦しいっていうか……って、ちーがーいーまーすーよー! 昔っから授業を抜け出す癖は変わってないし! 教師として失格ですよ、失格!」

 

 その時、ガララッと職員室の扉が開く。そして空市が入ってきた。

 

「あ、丁度来た! おい空市ィ~!」

 

 手を振り上げてのっしのっしと近づいていく大杉には目もくれない。空市の表情が示すのは焦りだった。

 

「……いねえ!」

「どうかしたのか」

「まずいことが起きたかもしれね……しれません」

 

 ひどい取り乱し方をする空市に対し、士は落ち着いていた。

 

 

◆

 

 

 校舎の中を走る二人。士と空市はある場所を目指していた。

 

「おい、こっちになにかあるのか」

「七不思議の『月の石』! 学園の中庭にある石の下に、12個の強力なゾディアーツスイッチ、ホロスコープススイッチを隠してあるんです……!」

「なんのためにそんなことを」

「スイッチを壊せなかったんです! そしてその有り余るエネルギーにロッカーの道が耐えられず、月に持ち出すこともできなかった。だからスイッチは学園のどこかに隠すしかなかったんです!」

「……! まさかそれが?」

 

 士の質問に、空市は頷く。

 

「はい。今、奪われようとしています!」

 

 中庭に着いた二人。『月の石』は石というより岩のような大きさだった。すぐ分かる場所にあり、周りに地面を掘った形跡がないため、まだスイッチが奪われていないと思われる。

 だが、石と共に一人の男が二人の目に映っていた。

 

「遅かったですねー、お二人とも」

 

 月の石に座り、背を向ける男。声や格好から生徒ではないことが分かる。空市も士も、その正体はすぐに分かった。

 

「比部先生……!」

「いやあ、懐かしいねぇ空市くん。確かに、この石が現れたのは君の在学中の出来事だったね」

 

 比部はスイッチを取り出した。ただのスイッチではない。空市が月の石の下に隠したものと同じ、ホロスコープススイッチだ。

 

「13個目のホロスコープススイッチだと……!?」

 

 空市すらも、その存在を知らなかった様子。

 

「数年前、誰かがどこかからか持ってきた石。ただの悪戯かと思いきや、スイッチの隠し場所になっていたとは……。なるほど、いくら生徒をゾディアーツにしてもホロスコープスに目覚める者が生まれないわけですよ」

「比部先生! あなたが生徒たちにスイッチを!?」

「はい、その通りです」

「なぜです! 先生は昔から天校にいたじゃないですか! この学校の素晴らしさが分かってたはずじゃないですか!」

「素晴らしさ?」

 

 月の石から降りた比部はスイッチを構える。

 

「私が天校(ここ)に居続けたのはスイッチを集めるため……そして私の宇宙を作るためですよ!」

 

 カチリ、とスイッチが押される。黒いもやが発生し、巨大な星座が現れる。もやが晴れ、次に見えた彼の姿は、星に絡みつく大蛇を模していた。

 

「やめろ! そこから離れろ!」

「フン!」

 

 駆け寄る空市を、手を払う衝撃だけで吹き飛ばす。

 

「これは私が貰う!」

 

 ゾディアーツになった比部は、岩を簡単に破壊した。

 だが、そこには目的のものがない。

 

「なにもない……?」

 

 

「スイッチはそこにはないぞ!」

 

 

「なに!?」

 

 空市とゾディアーツは同時に声のした方を向く。その瞬間、強烈なパンチがゾディアーツを吹き飛ばした。グラウンドを突っ切り、スタンドに思い切りぶつかる。

 ゾディアーツにパンチしたのは、黄色い巨大ロボットだった。

 

「あれは蛇遣い座! かなり手強いですよ!」

「パワーダイザー!? ……って、この声は新城!?」

 

 空市は驚く。

 パワーダイザ―のコックピットが開く。そこには、二人の生徒が定員オーバーの状態で搭乗していた。

 

「空市先生! スイッチです! この子が掘ってくれたんですよぉ。か~わいい!」

 

 降りてきたのはユウキ。袋に入ったホロスコープススイッチを空市に手渡した。彼女の手にはスコップのついた小型メカ、ホルワンコフが。

 岩から離れた地点から地下トンネルのようにしてスイッチを回収していたため、岩付近には土を掘った形跡がなかったのだ。それが丁度、比部を油断させることに繋がった。

 

「フードロイドまで! おい、これはどういうことだ!? こんな危険なことに生徒を巻き込むなんて!」

 

 空市は思わず大声になり、士に言う。

 

「ケンゴは頭がよく、機械の操作も器用にこなす。ユウキは行動力があり、準備も抜かりなく計画できる。スイッチを先に掘っておくってのもユウキが考えたことだ」

「だからといって!」

 

 空市は士に掴みかかる。

 

「先生! 私たちも天校が大好きなんです! だから一緒に守りたいんです!」

「一人で抱え込むのはやめてください!」

 

 ユウキは二人の間に入って説得をする。ケンゴもダイザ―の中から空市に呼びかける。

 

「こいつらはずっとあんたのことを心配していた。誰かを信頼するのも強さだ。こいつらならあんたを支えられる。もう一人で戦う必要はない」

「……天校を守ると一口に言っても、実際は簡単じゃない。つらいぞ。しんどいぞ。途中で投げ出すことは許されない。それでもいいのか?」

「はい!」

「俺たちの手で学園を守りましょう!」

 

 空市は膝をついた。士はまた、彼に手を差し出した。

 

「じゃあここで宣言してもらおうか。俺たちとあんたの仲間の証を。」

 

 空市は士の手を握った。

 

「よし、信じるぜ。こうなったら一蓮托生で構わねェよな? 俺たちは今から、ともに学園を守る仲間だ。俺と一緒に戦ってくれ! 空市ゲンタロウ──仮面ライダーフォーゼと共に!」

「ようやく素のあんたが見られた」

 

 士はふっと笑い、彼の手を引いて立ち上がらせる。ユウキは笑顔で頷いた。

 

「ハアアアアッ!!」

 

 雄叫びとともにスタンドの一部が吹き飛ぶ。

 ケンゴのパワーダイザー不意打ちも虚しく、蛇遣い座の怪人――オフュカスゾディアーツは無傷だった。

 

「スイッチを渡せェ!」

 

 壁を蹴って猛スピードで向かってくる。

 

「行くぞゲンタロウ!」

「おう!」

 

 士と空市はドライバーを装着する。変身の衝撃を避けるため、ユウキはパワーダイザーの後ろに隠れた。

 

《3》

《2》

《1》

《カメンライド》

 

「変身!」

「変身!」

 

《ディケイド》

 

 プシューと辺りに煙が充満する。

 仮面ライダーディケイドと仮面ライダーフォーゼ。二人のライダーが並び立った。

 

「さて……」

「門矢先生ェ、共にって言っときながらすまない。奴とは一対一でやらせてくれないか」

「それはどういう理由だ?」

「俺は許せない。天校の生徒たちにスイッチをばらまいたあいつと、それにずっと気付けなかった俺を。ここでケジメ、つけさせてくれ!」

「……いいぜ。勝手にしろ」

 

「そこをどけェ!」

「!」

 

 オフュカスゾディアーツとフォーゼが組み合う。両者一歩も引かない。

 

「スイッチを渡せ!!」

「比部先生……いや、もうあんたは先生じゃない……。オフュカスゾディアーツ! 俺はあんたを倒す! 仮面ライダーフォーゼ! タイマン張らせてもらう!」

 

 フォーゼはオフュカスゾディアーツにガツンと頭突きをする。ダメージを受けたオフュカスはフォーゼの腹を蹴り、その反動で距離をとる。

 

「タイマンだあ……? 時代錯誤だぞ、空市」

「俺の信念だからな!」

「まあいい。信念がどうだろうが、お前が私に勝てるわけがないからな!」

 

 パンチがぶつかり合う。オフュカスはまだ余裕があるのに対し、フォーゼは拳をさすって痛みを抑えている。

 

「勝てるさ」

「なに?」

 

 ディケイドの言葉に気を取られるオフュカス。

 

「こいつは今まで、一人で戦ってきた。大事な学校の中で、誰も危険な目に遭わないようにするために。そして今日、初めて仲間を得た。共に肩を並べ、協力する仲間をな!」

「仲間だ? そんなものは必要ない。宇宙に浮かぶ無数の星のように、意のままに動かせる駒があればいい。この学園に生徒が何人いると思っている? 一つや二つ無駄にしたところで、私の宇宙は変わらない」

「教師にとって生徒は数多くいるかもしれないが、その一人一人が大切な存在なんだ。無駄になっていい生徒なんて一人もいない。そんなことも分からないなんて、お前は教師失格だ!」

「黙れ教師もどきが! 一体お前は何なんだ!」

 

 オフュカスはディケイドに手を伸ばす。ヘビの形をしたオーラが放出され、撃ち出される。ディケイドはそれをライドブッカーで両断した。

 

「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ」

「~~~~~!!」

 

 オフュカスはわなわなと震える。

 

「行けェ! 私の宇宙の星屑どもよ!」

 

 オフュカスゾディアーツはディケイドたちに手をばっと向ける。

 空間が揺らめき、戦闘員ダスタードたちが現れる。オフュカスが召喚したダスタードは蛇のような格好をしており、戦闘員といってもそこそこの強さを持っていた。教室に現れたのはこれだ。

 フォーゼの背後からダスタードの不意打ちが決まる。そして正面からオフュカスの攻撃。既にタイマンの勝負ではなくなった。フォーゼは後退りする。

 

「ゲンタロウ……! 大丈夫か!?」

「くそ……ダメだ! これじゃあいつと戦えない……!」

 

 ダスタードと一対一ならば互角以上に戦えるが、不幸にも相手の数は十を超えている。やられないように致命傷を避けるのが精一杯の状況だ。

 

《アタックライド クロスアタック》

 

「!?」

 

 校舎の屋上から音がする。

 次の瞬間、二つの巨大なエネルギービームがダスタードたちを襲う。この攻撃で数体のダスタードが散った。

 

「海東!」

 

 ディケイドの言う通り、そこにいたのはディエンド。そしてその隣には、彼が召喚した仮面ライダー斬月・真がいた。

 二人はディケイドとフォーゼがいるところへと飛び降りる。

 

「お前、次は何を企んでる?」

「助けてもらってその言い草はないんじゃないかな。君たちだけじゃ荷が重いんじゃないかと思ってね」

「あんた……」

「ほら、君は早く行きたまえよ」

「……! 感謝するぜ!」

 

 フォーゼはオフュカスが去った方へ走って行った。

 

「さてと……。行けるかい、士?」

「それはこっちのセリフだ」

 

《カメンライド》

 

 ディエンドは更に二枚のカードを装填した。

 

《ポッピー》

《ビースト》

 

 新たに召喚される、恋愛ゲームモチーフのライダーと獅子をモチーフにしたライダー。

 五人のライダーはその倍近く数のあるダスタードを相手に、戦闘を始めた。

 

 

◆

 

 

「待てぇぇええ!」

 

 フォーゼは右手をロケットに変化させ、猛スピードでオフュカスに迫る。

 

「しつこい奴だ! ここで貴様を倒してやる! 私の邪魔をするつもりならばな!」

 

 フォーゼに気づくとオフュカスは足を止めた。右手に蛇の牙を生やし、フォーゼに襲いかかる。相手のスピードを逆手にとって串刺しにしてしまおうという作戦だ。

 

《ドリル オン》

 

 フォーゼは左足にドリルモジュールを出現させ、それを弾いた。

 

「あんたの邪魔はする! でも倒れるのはあんただ!」

「なに!?」

 

 フォーゼはドライバーのレバーを勢いよく引いた。

 

《ロケット》

《ドリル》

《リミットブレイク》

 

「うおおおおおおおお!!!」

「ぐううっ……!」

 

 必殺のリミットブレイクが、オフュカスゾディアーツを貫く。フォーゼは勢い余って地面に突き刺さる。

 

「どうだ!」

 

 ドリルの回転が止み、フォーゼはオフュカスに向き直る。体にヒビが入り、ゾディアーツ特有の黒い霧が噴き出ている。だが、変身は解除されない。

 

「私が負けることはあり得ぬ……!」

「!?」

「超ォ……新星ェェエエ!!」

 

 オフュカスは叫び、白く綺麗な光を体に取り込む。体に巻きついた蛇が巨大化し、蛇の首が増えた。星のようにゴツゴツしていた体表も、宇宙のような模様へと変化している。

 フォーゼは変化に巻き込まれないように後ろに下がった。

 

「私が、この学園という宇宙の支配者だァァアア!」

 

 蛇の頭がフォーゼを襲う。

 それが直撃する前に、ビークルモードのパワーダイザーが蛇の頭をはじき飛ばした。ディケイドとディエンドはそれの後方につかまってついてきていた。

 

「助かった、ケンゴ」

「ずいぶん荒いタクシーだね」

 

 着地と同時に二人はオフュカスゾディアーツ・ノヴァに発砲する。

 

「大丈夫かゲンタロウ」

「なんとかな」

 

 フォーゼは巨大な球体状になったオフュカス・ノヴァを見上げる。蛇の頭の乱打と、宇宙の身体から飛んでくる流星がライダーを襲う。

 

「うわああッ!」

「私に逆らうからだ……! 強大な宇宙に逆らうことは死を表すのだ……!」

「くそ……どうにもならないのか!?」

 

 

「頑張れー!」

 

 

 彼らの頭上で声がした。

 ディケイドとフォーゼ、そしてオフュカス・ノヴァまでもがそちらを向く。

 そこには、校舎の窓から彼らをみる生徒たちの姿があった。学園を守ろうとするライダーに向かって、必死に声援を送っている。

 

「負けないでー!」

「先生は学園を守るヒーローだ!」

「ライダー!」

「お前らー! 負けたら許さないからなぁあ!」

 

 生徒だけでなく、教師も一緒になって声援を送っている。

 

「……はは。大杉先生まで」

「いよいよあんたは噂なんかじゃなく、真に天校を守るライダーになったってことだな」

 

 ディケイドがフォーゼの肩を叩くと同時にライドブッカーが開き、中からカードが飛び出す。

 仮面ライダーフォーゼのライダーカードが色を取り戻す。ディケイドはその中の一枚を選び、ドライバーに装填する。

 

「行くぜゲンタロウ。あいつを倒して学校を守るぞ」

「おう!」

 

《ファイナル フォームライド フォフォフォフォーゼ》

 

「ちょっとくすぐったいぞ」

「ん? おう」

 

 ディケイドはフォーゼの背に手を突っ込む。背中から真っ直ぐに伸びる刃。そして手足は折りたたまれ、その代わりに剣の柄が出てくる。フォーゼは、巨大な剣『フォーゼコズミックソード』へと姿を変えた。

 

「なんだ……それは!」

 

 攻撃を止めないオフュカス・ノヴァ。ディケイドは、フォーゼコズミックソードから噴射するロケットの推進力で、右へ左へとそれを避ける。攻撃をかいくぐり、ディケイドは身体の下に潜り込んだ。そして剣をバットのようにしてオフュカス・ノヴァを打ち上げた。

 

「うおー! すごい、いけるぞ……!」

「タクシーくん、ここまでついてきたついでだ。君も手伝ってみるかい?」

「え?」

 

 ディエンドは二枚のカードを取り出し、連続で能力を発動した。

 

《カメンライド ブレイド》

《ファイナル フォームライド ブブブブレイド》

 

「痛みは一瞬だ」

「うっ!」

 

 召喚されたブレイドは、ファイナルフォームライドの効果でブレイドブレードへと変化し、パワーダイザーの手元へと。

 

「これは!?」

「君も戦うんだろう、彼と一緒に」

 

 ディエンドは再び迫りくる蛇の頭を撃墜しながら言う。

 

「ふん、海東め。粋なことをするな」

『いいねェ! 菅倉、合わせるぞ!』

「は、はい! 先生!」

 

 ディケイドとダイザーは同時に飛ぶ。

 

《ファイナル アタックライド フォフォフォフォーゼ》

《ファイナル アタックライド ブブブブレイド》

 

「うおおおおおお!」

「おらぁぁあああああ!!」

 

 空中で巨大な身体が見事に三分割される。そして大爆発が起こった。

 

「うあああああああああああ!!」

 

 オフュカスゾディアーツ・ノヴァは断末魔と共に大爆発を起こす。

 地上ではそれを見ていた生徒たちが歓声を上げ、喜んでいた。

 

 

◆

 

 

「……先生! 比部先生!」

 

 自分を呼ぶ声で、比部は目を覚ました。やられた衝撃で、服はボロボロになっていた。

 彼を見つめるケンゴとユウキ、そして士。首を上に動かすと、そこには空市の顔があった。

 

「うう……そ、空市……くん?」

 

 彼は、倒れた比部にずっと声をかけていた。

 

「な……なぜだ。私は……」

「先生も、天高の一部だからです。俺の大事な天高の。それに先生が暴走したのはスイッチのせいです。あれはもう誰にも渡しません」

「……」

 

 比部は小さく頷いた。

 

「聞かせてください。ホロスコープススイッチは12個しかないはずです。あれはどこで手に入れたものなんですか」

「ああ。あのスイッチは――」

 

 言いかけた比部の胸を、一つの弾丸が貫いた。

 血を吐き、ぐったりとする比部。

 

「先生!?」

 

 空市は必死に彼に声をかける。だが、返事はない。

 士は弾丸が飛んできた方を見た。そこには、昨日学園内で見かけた白服の女が立っていた。

 

「……! おいお前!」

「もうこの世界で取れるデータはない。処理は完了した」

 

 そう言い残し、白服はふつと消えた。

 

 

◆

 

 

 士は光写真館に戻ってきた。この世界ですべきことを全て終えた後だが、明らかに気持ちは沈んでいた。

 

「……あいつ、なんかあったのかな」

「さあ。分かりません」

「あんなにがっくりしてると不気味よねー」

 

 夏海とユウスケ、キバーラはそんな士を見てこそこそと話す。

 士は自分の写真を見た。校舎と星空をバックに、空市たちが歪んで映っている。彼はそれを机に雑に置いた。

 

「士くん、元気ないみたいだからほら、今日は鍋にしてみたよ」

 

 栄次郎がぐつぐつと煮える鍋を食卓の机に置いた。士は立ち上がり、それを覗く。

 

「なんで鍋なんだ」

「みんなで同じ鍋をつつけば、暗い気持ちも明るくなるからね。鍋はね、心の特効薬だよ」

「……適当言うな」

 

 そう言いつつも彼は椅子に座る。彼に続いて夏海もユウスケもやってくる。

 

「さあ、そろそろかなー。あっちゃ!」

「んぎゃ!」

 

 熱い鍋の蓋を掴んだ栄次郎が、反射で手を振り上げた。そしてそこに偶然いたキバーラが彼の手によって吹っ飛ばされる。彼女が柱に勢いよくぶつかった衝撃で、ジャララララと新たな絵が出現する。

 

「うわっ。なにこれ」

 

 ユウスケが不気味な絵に思わず言葉を漏らす。

 周りを木々に囲まれた、祠のようなものが映る。そしてその前には、不気味に光る目の意匠を施した模様が空中に浮かんでいる。

 

「次の世界か……」

 

 士は呟いた。

 





次回 仮面ライダーディケイド2

「おにぎりいかがですかー!」
「俺も早く一人前にならないといけないんですけど」
「お前! 死ぬつもりか!」
「超変身!」

第8話「歓迎!ゴーストの街!」

全てを破壊し、全てを繋げ!
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